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どうして「戦士」としてみてくれないのだろう。 じっと見つめるナインの黒い瞳を避けるように、下を向く。 いつもいつも、「女の子なんだから」と言うナイン。 だから、みんなと一緒に戦いたい。ひとりだけ後方にいるのなんてイヤ。 私が言葉に詰まっていると、 「迷惑かけていいんだよ」 さらりとジョーの声が言った。 「いいんだよ。それこそ湯水のように、浴びるようにかけてくれ」 真面目な声で変な例えをするから、思わずジョーの顔を見てしまう。 「戦う機械は、僕ひとりでいい」
――戦う機械。
放たれた言葉の刃は、いとも簡単に私たちを貫き通し、返す刀で更に傷を抉る。 「僕はそう簡単に死ねない。そう造られている。だから、戦い続けるのが僕の存在価値なんだ」 それは違う。 「だから・・・頼むから、やめてくれ。君が前線に出て行ったら、僕の存在価値がなくなってしまう」 存在価値? 「フランソワーズ。聞いてる?」 聞いてなんかいなかった。 「僕は君を――ああ、もうっ!」 急に強く抱き締められた。それこそ、戦闘中のように。 「――ジョー?」 ・・・敵襲? 「動かないで聞いてくれ」 ジョーは私の肩を、私の頭を抱き締め――この距離だからこそ聞こえるくらいの、小さな小さな声で言った。 「僕は君を守るために戦っている。だから、戦う機械で在ることを決めた」 耳元で囁くように言うジョーの声は、聞き慣れなくて――何を言っているのか理解するのに時間がかかった。 「だからフランソワーズ――君は、ならなくていい」 そう何度も繰り返すジョー。 「いいんだよ。僕が好きでしている事なんだから。それに」 そっと私に回していた腕を離す。そのまま、私から視線を逸らし――目の前に広がる海を見つめる。 「――戦わせたくない」 それっきり、黙った。 ――でもね。ジョー。 私は心の中で彼に話しかける。 ――やっぱり私は、後ろで守られているだけ。っていうわけにはいかないの。 だから。 あなたのために強くなりたい。
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