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どのくらいそうしていただろうか。 動けば、危害を加えられ――最後には気力も体力も使い果たし、ただそこにうずくまっていた。 いつどこで眼球を摘出されるのかどうでもよくなってしまっていた。 ナインの足手纏いになるくらいならそうする。 それを実行する時が来たのだ。 覚悟を決めた。 決めてしまえば、後は楽だった。 だから、 「――全く、弱すぎて話にならないね!」 よく知っている声が響いた時、咄嗟には何が起こっているのかわからなかった。 空気がざわ、と動いた。 「もっと強いのを見張りにしておくんだったな!これでは全く意味がないぞ!」 「待て!これが眼に入らないのか。これ以上来るとこいつの命は」 言われると同時に乱暴に身体の向きを変えられた。 あんなにいた兵士の半分以上が地を這っていた。 そうして、その真ん中に仁王立ちになっているのは・・・ 「――ジョー・・・」 「フランソワーズ。全く君はどうしてそう無茶ばかりするんだ!」 赤いマフラー。ところどころ汚れている白い防護服。ほっぺたには血。 つかつか歩いてくる途中にも、無造作に群がる兵士をなぎ倒してゆく。 「――スリーを殴ったのはお前か?」 目の前に立ち、私を捕まえている男に問いかける。 「・・・」 男は答えない。 男の腕を捩じ上げて、無造作に私から引き離す。 目の前には、ナインと男が組み合っていた。 それらは連続した一瞬で――私が、それが私に加えられた攻撃の順序そのままだと理解したのは、全てが終わってナインの腕に抱き上げられた時だった。 私を抱いて走るナイン。その後ろからは、実はナインと一緒に登場していたセブンの姿があった。ずっと見えていなかったけれど、彼は彼でナインがとりこぼした相手を片端から片付けていたらしい。 「ともかく、こんなとこさっさとオサラバさ」 時限装置をセットしたという。 そんな訳で、いろいろなわけを話すのも後回しのまま――ドルフィン号に乗り込んでいた。
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