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「馬鹿ッ!君はどうしてそう無茶するんだっ!!」
怒鳴られたのは、セットした起爆装置が爆発したのを背後に見てからしばらくしたあと。
操縦しているセブンはちらちらとこちらを見るけれど、ナインの剣幕に恐れをなしたのか無言のままだった。
「――ごめんなさい」
「いきなり姿が見えなくなって。僕が行かなかったら今頃どうなって」
「ごめんなさい。・・・悪かったと思ってるわ」
「いいや、わかってない」
睨むように見つめられ、いたたまれず視線を外す。
倒したシートに横たえられ、身動きができない私には逃げ場所はなかった。
「――フランソワーズ!いいか、君は――」
始まった。
いつものお説教。
君は女の子なんだから。
君は子供なんだから。
だからもっと僕に頼れ。仲間に頼れ。
ひとりで無茶をするな。
・・・
わかってる。
ナインの言いたいことは全部。
わかりすぎてて――今は聞く気力も何もなかった。
だから、ナインの顔は見ないまま、いつものお説教を聞き流すつもりだった。
けれど。
「――君は、可愛い女の子なんだ。」
――えっ?
いつもと違う言葉に思わずナインの顔を見てしまう。
けれどもナインの表情は変わらず、にこりともしない怒った眼のままだった。
「なのに、どうして自分から可愛くあることを捨てるんだ?可愛い女の子がそれを放棄するのは罪だ。可愛くしていないということはただの怠慢で義務規定違反以外の何者でもない!」
「あの・・・ジョー?」
「どうしてもっと可愛くしていないんだ!そのままでも十分可愛いと思っているなら、それはただのおごりだ。自分をわきまえろ!」
「・・・あの」
「なんでもひとりでやってやろうというのは全然、可愛くないぞ!僕が知っているスリーはもっと可愛いんだ」
「・・・・」
「こんな可愛くしていないスリーなんて僕は知らない。もう助けてなんてやらないぞ、いいか!」
「・・・・」
「何かいう事は?」
「・・・あの」
「何だ」
「・・・どうして、わかったの?」
「何が」
「私が、殴られた順番。相手に、私がされたのと同じ順序で攻撃してたでしょ・・・?」
「そんなの、見ればわかる」
そう言って、そうっと私の左頬に手をあてる。
「――痛かっただろう?」
「ううん・・・平気」
そう言うと、急に泣きそうな顔になった。
そして
「馬鹿っ。可愛くしてろ、って言っただろう?――ったく、何を聞いてたんだっ」
怒られた。
「――ごめんなさい」
「全く君は・・・どうして助けてとか早く来いとか叫びもしなかったんだ。悲鳴ひとつでも聞こえていれば、僕は・・・!」
そう。
私は暴行を受けている間も悲鳴なんてあげなかった。
そんな弱音は吐きたくなかった。
だから、ナインに助けを求めたり・・・泣いたりなんかも、しなかった。
自分の油断が引き起こした事態だったのだから、自分で何とかするしかないと思っていた。
・・・だけど。
そうっと手を伸ばして、そして・・・私の頬に触れているジョーの手に触れた。
「――ええ。痛かったわ。とっても」
私を見つめるジョーの姿が滲んでゆく。
そうして私はやっと泣いた。
ずっと我慢してた。
怖かったこと。
すごく
すごく
怖かったこと。
私に触れているジョーの手が震えていたことは・・・誰にも言わない。
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