走行中の車中の様子はよくわからない。 小高い丘の、夜景を見下ろす展望台の駐車場に車が入ったのは、かれこれ一時間あまり走ったあとだった。
・・・最悪だ。
僕は中の様子を窺いながら、いつでも踏み込めるように気持ちを落ち着けた。 闇の中にひっそりと溶けている車体を見ながら、僕は言いようのない虚しさと怒りと不安に襲われていた。
夜景は確かに綺麗だった。 ――なぜ僕はここにいるのだろう? ミッションを遂行するとはいっても、要は――何も起きなければ何もしないわけだし、あるいは――何かが起こっても、それが対象にとって苦でなければ、僕が手を出す場面ではないのだ。 何もせずに。 気配も悟られずに。
――どうして僕はここにいるのだろう?
ここで・・・見たくもないモノを見て、確認するためだけにいるのだとしたら。
・・・僕は。
助手席でシートベルトを外そうとする気配がした。が、外れない。 重なる人影。 逃げる。――追う。 ――避ける。追う。――逃げられない。
僕はもう何がどうでもよくなり、飛び出していた。
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