全く君はどうしてそう無防備なんだ。 セブンから聞いた時は耳を疑った。事実だと知って血の気が引いた。比喩ではなく、本当に。 だけど、君が楽しんでいるならそれでいいと思っていた。楽しそうに笑う君は、本当に可愛かったから。 僕はそれを遠くから見ていることしかできなかったんだ。
「・・・ごめんなさい」 小さな声がして、思わず振り返った。 「ごめんなさい。・・・ナイン」 その顔があまりにも可愛くて――可愛くて、僕は思わず抱き締めそうになった。 けれど。 ――駄目、だ。 いま彼女に触れたら、僕は二度と彼女を離せなくなる。 だから。 僕はただ手を握りしめ、再び歩き出した。半ば乱暴に彼女の腕を引き寄せて。
帰る道すがら、車はどうしたのかと聞かれた。
***
研究所に着いて、僕は口の中で悪態をついた。 ナナメに止まっているオープンカー。 彼女――スリーは、僕に手を引かれながら不思議そうに車を見つめていた。そして僕の方を見て。 果たして彼女は、その意味に気付くだろうか。 僕が一体、どのくらい慌てていたのかを――何故、慌てていたのかを。 そして 僕がずっと――君を尾行していたことを知ったら、どう思うのだろう。 でも、スリーは何も言わない。 「・・・スリー。眠い?」 もう寝るね・・・と言い残し、自分の部屋に向かった。
彼女は何か気付くだろうか?
それとも――気付かないだろうか?
僕は、さっきまで彼女の手を握っていた手を見つめた。
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