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あの日以来、ナインは毎日やって来て、そうしてずうっとこうしている。 本人曰く、「見張ってないとどんな無茶をしでかすかわからない」のだそうだ。 確かに、動くのが辛かった時期はナインがそばに居てくれて随分助かった。 それは本当に助かったし嬉しかったのだけど。 だけど今は、もう自分で歩けるし、痛みも気にならなくなってきたし・・・むしろこうしてずっとそばに居られると落ち着かなかった。
・・・落ち着かない。 ナインの存在が。
暴行を受けた直後は、私は痛みと痛み止めの注射のせいで半分朦朧と過ごしていた。だから、ナインがそばにいてもそんなに深くは考えたりしていなかった。
ナインがそばにいる。 ナインの気配がする。
それって普通の日常なんかでは絶対に、ない。
呼べば答えてくれるくらいに近くに居るナイン。 ・・・呼ばなくても、ナインの方を見ただけで「何?」と優しく答えてくれるナイン。
それって――
――そんなことって・・・・
私は状況についていけず、結局、毎日熱を出してしまっていた。 ううん。 違う。 熱を出していたわけじゃない。 ただ、鼓動が速くなって、顔が熱くなって、手が震えて・・・どうしていいかわからなくなってしまっているだけ。
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