「今日は楽しかったよ。――ありがとう」 ――本当に? ささやかなお誕生会だった。 帰るナインを見送りに玄関口まで来ていた。 「うん。本当に楽しかったよ」 やだ。私、声に出して訊いていた? 「――そんな顔しなくても」 ナインは私のおでこをちょんと突いて笑った。 「急に来た僕が悪いんだからさ」
そう――確かにそれは事実だった。 そうして、今日という日がさっさと通り過ぎるのを待っていた。ひとりで。部屋にこもって。
「ごめんね。急に来て。だけど」 微かに頬を赤くするナイン。 「――嬉しかったよ。ありがとう」 お礼を言われる筋合いなんてなかった。だって私は何にも―― 俯いた私を持て余したのか、「じゃ、帰るね」と言ってさっさと車へ向かう。 「あの、――待って」 ナインは笑って言った。 「そんなの。今日、お祝いしてくれただけで僕は嬉しいんだからさ」 くすりと笑って、ナインはひらりと運転席に着き―― 「ジョー、待って」 「待って――お休みなさい」 ・・・・・。 「――っ!!」 ナインが真っ赤になって身を退いた。 「な、何を・・・っ」 「そ、そんなの」 「こ、子供のすることじゃないだろっ!」 「ば、ばかっ。子供は早く寝ろ!」 真っ赤になって、こちらを見もしないでさっさとエンジンをかけて―― 「おやすみなさい。気をつけてね」 私の声に、一瞬ちらりとこちらを見つめ――急発進して行ってしまった。 ・・・変なナイン。
明日。 ごめんね。 お誕生日おめでとう。ジョー。 大好きよ。
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