今日はナインの誕生日だから、プレゼントとおめでとうの言葉を贈ろうと朝から彼を探しているのだけど。
なかなかじっとしていてくれなくて捕まらなかった。
――プレゼント。何がいいのかけっこう迷ったのにな。
事前に「何がいい?」と訊いても
「何でもいい」「別に何も要らない」のどちらかしか言って貰えず凄く困ったのだ。
だってこれは基本的には何を貰ってもどうでもいいという意味ではないか。
贈る側から見れば、相手の喜ぶ顔が見たいのだ。はなからどうでもいいものなど贈りたくはない。
だから訊いているのに――とスリーは怒ったし困り果てた。だからつい、兄に訊いてしまったのだが、当然の如く兄は面白がるばかりでまともに考えても答えてもくれず。
「高校生男子なんかどうせエッチなコトしか考えてないよ。エロ本でもやれば喜ぶんじゃねーの」
などと言う。
兄に訊いたのがバカだったとスリーは深く反省したものだ。
まさかナインに本当にエロ本を贈るわけにはいかない。大体、どんな顔をして買えばいいのだ。
だから結局、クッキーを焼いて持ってきたのだけど――何でもいいと言っていたから何でも喜ぶのだろうと勝手に決めた――その主役が捕まらないのだから話にならない。
胸に抱いた包みにそっとため息をつく。
――チョコチップクッキー、好きだったかな。
生徒会の仕事中に何度か一緒におやつをつまんだことがある。が、彼の好みは何故かわからなかった。
何しろ彼は差し出されたものは何でも食べる。残すとか要らないということがない。
だから、甘いものが大丈夫なのかどうかもわからない。礼儀正しいのにもほどがあるわとスリーは思うのだが、彼にとってはそれが正しい事でありあるべき姿なのだろう。
「もう…どこ行っちゃったのよ、ジョー」
***
その頃、ナインは生徒会室にいた。
今日は委員会もないし特に生徒会の仕事があるわけでもない。なのになぜそこにいるのかというと――おそらくスリーがやって来るだろうという淡い期待だけが根拠であった。
今朝から彼女が何か言いたそうにしているのも知っているし、何か持っているのも知っていた。
だからきっと、誕生日のプレゼントなのだろうと思っているのだが、みんなの前で普通に渡されるのは嫌だった。
どうせ貰うのなら、二人っきりの時がいい。
だからこうして勝手に待っている。
スリーは「ねえ、何か欲しいものある?」と一ヶ月前から何度もしつこく訊いてきた。
それをのらりくらりとかわし続け今に至る。
――まったく、気付けよな。僕は君から貰うものなら何でも嬉しいんだから。
甘い物以外なら。
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