「好きな・・・ひと?」

「うん。もし、特にそういうひとがいないなら、」
「いるわ!とっても特別なひとが。だから、ごめんなさいっ」
「あ・・・そう・・・」

ごめんなさいともう一度言ってから、スリーは小走りにそこを離れた。
少し先には白いジャケットに黒いシャツの男の姿。

「ジョー!」

頬を上気させ、息を弾ませて。

「ちゃんと言えたわ、私」
「そのようだな」

遠くから呆然とこちらを見ている青年に、一瞬険しい目を向けてからナインはスリーに向き直った。

「それにしても、もてるなぁ君は。きりがないな。こうしてるこっちの身にもなって欲しいよ」
「えっ? こうして待っててくれたのって初めてよね?」
「あ」

なぜいつも都合よくナインが現れていたのか。

「偶然って凄いわよね」
「・・・そうだね」

気付いているのかいないのか。
ナインは胸の裡でほっと息をついていた。


まったく。あんまり可愛くてとても目を離せないよ。

 

 

 

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