「確実な未来」

 

 

ジョーの部屋でお昼ごはんを食べて、いちゃいちゃしていた時だった。

つけっぱなしだったテレビに元アイドルタレントが映った。
今ではママだという。
でも、引退せずママドルとしてお仕事も頑張っている。
で、そのママドルが言うのだ。

『子供の笑顔があるから頑張れます』

彼女の子供はテレビには映らなくて、代わりに一般のお子様たちが映っていて、確かにとっても可愛かった。


「・・・子供かぁ」
「うん?」


私の背中からジョーが肩越しに顔を覗かせる。
いちゃいちゃした結果の今の位置関係は、ジョーは私を背中から抱き締めている。
何をするでもなく。
時々、ちょっとくすぐったくて、お互いにくすくす笑いながら。


「見て。可愛いわねえ」
「うん。そうだね」
「子供って、やっぱり半分ずつ似てるのかしら」
「・・・さあ。一概にそうとは言えないんじゃないかな。いくら半分ずつといっても、遺伝子を構成している塩基配列が」
「もうっ、難しい話はナシ!」


くすくす笑うジョー。

もう。


「ね。半分ずつだとしたら、私たちだったらどうなるかしら」
「うん?・・・そうだなあ」
「髪は黒いのがいいわ。ジョーとおんなじ」
「ふむ。じゃあ目は?」
「もちろん、黒よ」
「・・・黒髪に黒い瞳?」
「ええ、そう」
「それ、普通の日本人じゃないか」
「ん・・・そうね」
「目は蒼にしたら?」
「イヤ。ジョーとおんなじがいいの」
「うーん・・・」
「だって、ちっちゃいジョーがいいんだもの」
「・・・」

ちっちゃい頃のジョー。どんな男の子だったんだろう?

「あのさ、フランソワーズ」
「なあに?」
「子供ってさ、・・・自然にできるものじゃないんだよ。つまりその、やることやらないと」
「・・・こうのとりが」
「フランソワーズ。それは子供が言うことだよ?」
「・・・」
「やっぱり子供だなぁ」
「し、知ってるもん。もう大人だもん」
「・・・ふうん?」
「だ、だからっ・・・」

急に体が熱くなった。
やだもう、私ったら何言ってるんだろう?

「・・・そうだね。だから・・・ずうっとずうっと先の話だよ」


ずうっと先の話。


「・・・うん」


ずうっと先の未来。

いつか、以前やって来た私たちの子孫に繋がる子供と会える日がくるだろう。


でもそれはまだ先の話。

まだ先の未来。

 

でも――おそらく、確実な未来。