「秘密兵器」

 

 

「寄せて上げる・・・何だって?」


ナインはスリーの口許に耳を寄せた。
その頭を避けるように手で押しやってスリーは答えた。


「だから、そういうアイテムがあるの。・・・んもう、女の子の秘密兵器なんだからジョーは知らなくていいの!」
「秘密兵器・・・これ、が?」


ナインは難しい顔をして、ベッドの下からソレを取り出した。
さっき、彼が外してそこに置いた彼女の下着。
薄いピンクのレースが幾重にも連なり、確かに秘密兵器と言えないこともないなと思った。
そのピンクのひらひらの中には何が息づいているのか、期待させるものがある。
さっきまで、ゆっくり観察するココロのヨユウなんてなかったけれど。


「いやっ、ジョー、返してっ」

スリーが真っ赤になって手を伸ばす。が、ナインは苦もなくそれを避けながら、なおも秘密兵器の観察をやめない。

「返してってば!」

ひょいひょいとかわしながら、ナインはちらりとスリーを見て、そして吹き出した。

「なによ、何がおかしいの!」

笑っているナイン。その隙にスリーは秘密兵器を取り戻し、両手でかき抱くように抱き締めた。

「いやあ、だってさ」

ナインはふと真顔に戻ると、真面目な声で続けた。

「揺れてたから」
「・・・?なにが?」

小さく首を傾げたフランソワーズに、なおも真面目な顔でナインは言う。

「・・・胸」
「えっ!なっ」

今、じゃれていた時に観察したというのだろうか。

「君が言うように貧乳だったら、揺れたりしないと思うんだ。だから、動くと揺れるということはつまり、貧乳ではないという証明になるわけで・・・」

真面目な顔で、「スリーは貧乳ではない証明」をしてゆくナイン。
スリーは最初は呆然として、次に恥ずかしくて顔をあげられなかったのだけれど、あることに気が付いてぱっと顔を上げた。

ナインと目があった。

「うん?なに?」
「ねぇ、ジョー」

証明を中断され訝しげな視線を返して来るナイン。
スリーは頬を染めたまま、小さな声で聞いた。

「・・・そんなに私の胸が好きなの?」

途端、真面目な顔が朱に染まった。

「なっ・・・違うよ!」
「だって」

「僕は胸が好きなんじゃない、フランソワーズが好きなんだ!」

 

 

一瞬、時間が凝固して。

 

解けた時には、ナインはベッドに突っ伏していた。

 

「いやん、ジョーったら、そんな大きな声でそんなはっきり・・・」


頬を染めて身をよじるスリー。ナインの背中はぴくりとも動かない。


「・・・私も」


しかし、スリーが小さく言った途端、素早く手が伸びて・・・スリーはあっという間にナインのものになっていた。