「眠れない」
眠れない。 それに、さっきから何度目の寝返りだろう? いっそのこと、眠るのは諦めて起きてしまえばいいのかもしれない。 それもいい考えだと思ったところで、携帯電話がメールの受信を知らせた。 でも。 メールがくるのは嬉しいけれど、起きているなら電話してくれたらいいのに。 そんなことを思いながらメール画面を開く。 『外を見て』 えっ? 二階から見下ろした前庭には、闇と同じ色の瞳をもつひとが静かに佇んでいた。 *** 以心伝心ってこういうのを言うのかしら。 腕のなかで言ったら、笑いながらそうだよと肯定された。 ・・・イヤだったら、こうしているわけないでしょう、ジョー。 だから、言おうと思っていたけれどやめた。 ・・・でも。 だってきっと、寂しそうに笑ってみせるだろうから。 「一緒じゃないと眠れないみたい」 でもね。 もしも私がもう眠っていて、メールに気付かなかったらどうするつもりだったの?
寝返りをうってみた。
が、向きを変えたところで眠気が起こるかというと、そんなわけはなかった。
思わず跳ね起きた。
このメロディは・・・
ベッドサイドに置いてあった携帯電話を掴む手が揺れる。
なんだか嬉しい。
ちょっと頬が緩む。
声を聞くのは好きだから。
静かに、でも急いで窓辺に寄り、そうっとカーテンを引く。
でも、ひとつ間違えたらストーカーよ?
そして、そんなのはイヤかなって。
「まあ、そんなことは知ってたけどね」
ずるいわ、そんなの。
あなたと一緒じゃないと眠れないみたい
って。
内緒。
秘密。
悔しいから。
きっと言ってしまうんだわ。
瞳を見たらすぐに。
強がりなひと。
強がりナイン。
正義の戦士、009。
でも本当は、寂しがりやな男の子。
そんなジョーが好きだから。
ほら、言っちゃった。
嬉しそうに笑うジョー。