「僕の任務」
僕がスリーのレッスンの送り迎えをしているのには理由がある。 あくまでも任務なのだ。 何故なら、一度彼女は拐われそうになったのである。 きみのことは僕が守る。と。
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たぶん送迎を始めてから5回目か6回目だったと思う。 だから、その日もいつもと同じように言った。
「えっ?ええ・・・」 なんだかぎこちない笑みを浮かべるスリー。 「どうかした?何か用事でもあるのかい?だったら」 その日はスリーはなかなか車を降りなかった。 「何?」 僕は無言でスリーを見た。スリーは僕の視線を避けるように下を向く。 ・・・まったく。 「スリー。僕のガードじゃ安心できない?」 跳ねるように上がった顔。頬が赤い。 「そんなこと思ってないわ!ただ、ナインに付き合ってもらうの、悪いなって思って、・・・だから」 僕は溜め息をついた。 「勘違いしてもらっては困る。これは任務だ」 スリーは少し冷静になったのか静かに頷いた。頬の赤みも退いている。 「そう・・・よね、・・・任務、よね」 スリーは小さく、わかったわと言うと車を降りた。
今日は急いでいたのだろうか。
任務、か。
確かにそれは事実だったけれど。
僕の大事な女の子。
きみはそれくらいわかっているよね。
敢えて口にしなくても。
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