ジョーはずうっと何やらぶつぶつ言っているけど、気にならなかった。


だって最近、少しだけわかってきたんだもの。
ジョーのこと。


あのね。

彼のほっぺが少しぴくって震えた時は、怒った顔をしていても本当じゃないの。

照れ隠し。

・・・だと思う。たぶん。


だって今も、苦い顔をしているけれど繋いだ手を離そうとはしないし。
歩く速度だって、私に合わせてくれている。


ねっ?ジョー。

本当は照れているんでしょう?


「なんだ?」


怒った顔で見るけれど。


「うふ、ジョーったら」
「なんだよ?」
「教えない」
「なんだよ、いったい」
「ヒミツ」


ジョーはじっと私を見たあと、フンと鼻を鳴らした。


「僕に隠し事か。十年早いぞ、フランソワーズ」
「十年なんてすぐ追い付くわ」
「ふふん。甘いな」
「あら、意外とあっというまよ、きっと」
「そうかな。だったら十年経ったら僕のこともわかるってわけかい?」
「そうね。そういうことになるかしら」
「無理だね」
「無理じゃないわ」
「だって十年だろ」
「いいじゃない」
「無理無理」
「だってこれから十年、ずうっとそばでジョーのことを見てるんだから!絶対、わかるようになっちゃってるんだから」


ジョーの頬がぴくっと震えた。


「ふん。わかるもんか」


だから、そのあと急に早足になっても私には全部わかってしまった。


照れ屋さん。


でもそんなところも大好きよ。