「やきもち」
第8話「金色の眼の少女」より
基本的にスリーはやきもちをやかない。 それは、ナインを全面的に信頼しているからであり、彼が心変わりするなどこれっぽっちも思っていないからである。 これはナインにとっては有り難いことだった。 何故なら、彼は確かにスリー以外の女性に恋愛感情を抱くことなどないからである。 ただ、時には――やきもちをやくスリーというのも見てみたいなあと思う。 贅沢な願いだとは思うし、実際には非常にメンドクサイ事態になるだろうけれども。 *** 「ねぇ、スリー?」 ギルモア邸である。 「その、さ・・・いいの?」 何か言いにくそうなセブン。 「だってさ。・・・アニキ、きっと今、リタと一緒だと思うよ」 にっこり微笑みを浮かべて言われ、セブンは二の句がつげなくなった。 「でもさ、そのう、リタってアニキのこと・・・」
だから、彼が他の女性と二人っきりで出かけても、例えば――何かの弾みで抱き合っているのを見たとしても、おそらくいたって平然としているはずである。
例え、他の女性と接触することになっても――それだけ、である。
任務以外の何ものでもなく、そこには同情や義務感や責任感しか存在しない。
怖がるひとを慰め力づけるのはナインにとっては当たり前のことだったし、役目だとも思っている。
だから、そんなことくらいで妬かれた日にはなんともやりきれない思いがするに違いない。が、幸か不幸か、今のところナインにはそんな心配は全くなかったのであった。
「なあに、セブン」
ここ数日はナインも寝泊りしている。が、今、彼の姿はない。リビングにはスリーとセブンの二人だけであった。
「何が?」
そんな彼にきょとんとした視線を向けるスリー。
「そうね」
「気にならないの?」
「どうして?」
「どうして、って・・・だって、ふたりっきりなんだよ?」
「ええ。きっとリタも心細いでしょうしね。ナインが一緒にいれば心強いと思うわ」
「好きなんでしょうね」
「でしょうね、って・・・・」
「さっき見たもの」
「えっ」
「リタの部屋に、新しいシーツを届けに行ったの。そうしたらナインがいて、リタを抱き締めていたわ」
「えっ!?」
「リタ、泣いているみたいだったから。しょうがないわよね」
「ええと・・・スリーはそれでいいのかい?」
「だって、泣いてたんだもの。それにナインは優しいから」