「ごめんね、フランソワーズ」
side F
いつもまっすぐで正しい、正義の味方。 それが、ナイン。 私の恋人。私のカレシ。
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「怖いわ、ジョー!」 「大丈夫。僕がついてるよ」
博士の友人の娘を救助するときも、変わらず優しい。
「大丈夫か、スリー」 「ええ、大丈夫よ」
ナインが振り向く。 ナインは手を貸さない。
「ケガは?」 そうしてまた走り出す。 捻挫したなんて報告はしない。 そんなことは許せなかった。 だから、ナインから少しずつ遅れてもなんとかするつもりだった。 追手は来ない。多少、足を引きずっても歩けるうちは問題ないだろう。
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たぶん、敵は私たちを追うのを諦めたのだろう。少なくとも、それらしい影は見えない。 大丈夫。まだ歩ける。 まだ大丈夫。
***
ふっと体が宙に浮いた。
えっ?
見えたのは、白い防護服。 「・・・ナイン」
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私の足首は一部骨折していた。 そしてナインは。
「・・・無茶するな」
静かにひとこと。 その代わり、すごく痛そうな顔をする。 それでも、無言でそういう顔をされると何て言ったらいいのかわからない。 「・・・ジョー?」 黙ってベッドサイドに佇んでいるナインにおそるおそる声を掛けてみる。 「・・・痛む?」 ナインの声を遮って、私はわざと明るく言う。 だって、ナインが責任を感じる必要なんか無いのだから。 「フランソワーズ」 そんな怖い顔をしてもダメ。 「すぐに良くなるから、本当に心配しないで。ね?」 ナインは黙った。 「もう、私ったらとんだ足手まといで嫌になっちゃう」 そう言った途端、ナインはベッドに拳を打ち付けた。
いったい、何?
「黙れ!」
ジョー?
「なんでいつもそうなんだよ?いつ誰が足手まといだなんて言った?」 要救助者であって、私ではない。 「なんでわからないんだよ!?僕が守りたいのはフランソワーズ、きみだ!」 ナインは優しい。 でも。
「・・・ありがとう。嬉しいわ」 優しい嘘なのは、わかっているから。 「違う!そうじゃない!何でわからないんだ!?」
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