「好き」

 

 

最初からわかっていたことなのに。

なのに、いざそれが目の前に突きつけられると、どうしたらいいのかわからなかった。
だから私は、ただ突っ立っていた。

それしかできなかった。

――わかっていたことなのに。

 

***

 

ジョーは、私の事なんか好きにならない。
もしかしたら、って思っても、それは全て私の勘違い。
だってジョーは私の事なんて何とも思ってないもの。

大事な女の子。

そう言ってくれる。
でもそれは、「仲間として大事」であって、「003として大事」なのであって。
恋とか愛とか――そんな、甘い感傷から出た言葉ではない。決して。

仲が悪いわけじゃない。むしろ、いい方ではある。
だけどそれは、単純に「年齢が近い」からであって深いわけがあるのではない。
時々、勘違いしてしまいそうになるけれど。
ジョーが私と一緒にいてくれるのは、「仲良しだから」なんだ。って。
だけど本当はそうじゃない。
私はジョーが大好きだから一緒にいたいけれど、ジョーはそういうわけで一緒にいてくれているのではない。
一緒にいるから、「仲がいい」という証明にはならない。
だって実際に――私の片思いだもの。
ジョーがどう思って一緒にいてくれるのかはわからないけれど、だけどそれは絶対に恋愛感情なんかじゃない。
それだけはわかっていた。
最初から。

最初から、わかっていた。

なのに。

 

***

 

胸の奥に重い塊があるみたいに、のどが詰まった。声がでない。
それを言うなら、身体もウソみたいに重かった。足は地に張り付いて動かすことなど不可能に違いなかった。

・・・ジョー。

お願い。私に気付かないで。

通り過ぎて。

お願いだから。

私の前に来ないで。

いつもの笑顔で「やあフランソワーズ」なんて言われたら、私――