「やあ、フランソワーズ。奇遇だなぁ。ここで何をしてるんだい?」 何を、って・・・スーパーの中で買い物以外のどんな用事があるというのだろう。 「――買い物よ。見ての通り」 カートの中を示す。 「ふぅん?」 まじまじと中身を見つめるナイン。 「もしかして、今晩はカレー?」 だって。 ナインの数歩後ろに控えているのは、同じく買い物カゴを手にした女性。 「・・・今日はジョーのぶんは考えてなかったから」 だって。 夕方にスーパーでお買い物をする。ということは、当然、今晩のおかずのことを考えているわけで。 「えーっ。じゃあ、せっかくここで会ったんだからさ、僕のぶんも考えてよ。足りなかったらいま取りに行くから。何が足りないか言ってくれ」 どのくらい必要なのかも聞かずに行ってしまう。 気まずい。 共通の話題も何もないんだし――と、ちょっと考え。 ヘンなの。 だって、おそらく彼女はナインの恋人で――私はナインのただの「仲間」で。
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