「あの・・・フランソワーズさん。でしょう?」 見ると、にっこりと微笑まれた。――とっても可愛くて、オトナなひとだった。 「これ、ジョーに渡しておいて貰える?」 そう言って、重そうに持っていた買い物カゴを差し出してくる。 「えっ?」 意味がわからなかった。けれど、流れで買い物カゴを受け取っていた。 「あの。あなたは」 ナインとどういう関係なの?――なんて。聞いてどうしようというのだろう。 「私は――」 彼女が口を開いた瞬間、風のようにナインが戻ってきた。 「ほら。これでいい?」 無造作にカゴに入れられたのは数個のたまねぎと牛肉。 「足りる?」 心配そうに見つめるナイン。 「ええ、大丈夫」 何とか笑顔らしきものを作ってみる。 「待ってジョー、それ・・・」 笑顔で言って、調味料コーナーへ向かう。 どうしてどこに何があるか知ってるの? 「凄いわね。もう覚えちゃったのね、彼」 背後から彼女の声が聞こえる。笑いを含んだような、優しい声。耳に心地いい。 「最初はどこに何があるのか全然、わからなかったのよ」 最初は――ということは、ここに数回彼女と来ているということで・・・ ナインは――ジョーは、私がスーパーへ行くのに付き合ってくれた事はない。
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