「いつも言ってるのよ、彼。フランソワーズの料理は最高なんだから、って」 いつも言ってる。 何故――胸がつぶれそうになるんだろう。 「だから、それを再現して欲しいみたいで、いつも食材を張さんの店にもっていくのよ」 管理栄養士・・・さん? 私が呆然としていると、遠くからナインの呼ぶ声が聞こえた。 「フランソワーズ!醤油ってこれでいいかい?」 彼が右手に持っているのは、確かにお醤油だったけれど銘柄が違っていた。 「ダメよ、ジョー!銘柄が違うわ!」 私が言うより先に、彼女が大きな声で応えていた。まるっきり同じセリフを。 「えー、どれも同じだろう?」 広いスーパーの中で、かなり離れているのに近付きもせず、大きな声で遣り取りしている。 「違うわよ。味が違うの」 そう言うと、「まったくもう・・・」と大きくため息をついて
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なんだか、頭の中がぐるぐるして考えがまとまらない。 彼女はシックスの店の栄養士さんで、で、店に来るナインと親しくて、で、ナインが言う料理を作るための食材を調達するために ・・・本当に、そう? だって、もしナインが本当にそう思っているのだったら、ひとこと私に「また作って」と言えばすむこと。 彼女と一緒にいたいから、無理言って彼女を連れ出す口実を――
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