「やっぱり一緒に見て貰えて良かったよ」 ナインたちが醤油を手に、仲良く並んでやって来る。 「だったら今度は彼女と一緒に来ればいいでしょう?そうしなさいな」 目の前に来ても、ナインと彼女の会話は止まらない。 「――あ。もしかして――言ったな?」 くすくす笑う彼女を何ともいえない表情で見つめるナイン。 「ね。フランソワーズさん。彼ね、あなたの作るハヤシライスが一番好きなんですって。それでね、私も張さんも 話し出した彼女をぎょっとしたように見つめ、ふいっとそっぽを向いてしまうナイン。 「だから私言ったのよ。そんなに彼女のが食べたいなら、ちゃんとそう言いなさい、って。――そうでしょう?ジョー」 軽く彼女を睨んでから、ナインは私のほうを見た。 「まだ買うものある?なかったら、レジに持っていくけど」 ナインは――いつものナインだった。 「ううん。大丈夫」 ナインの後ろ姿を見つめて、ぼうっとしていたら軽く肩を押された。 「いいの?彼、お財布持ってないわよ」 ぱちんと鮮やかなウインクひとつ。 「ほんというと、これから彼が来るのよ。だからちょっと困ってたの」 彼・・・。 「じゃ、そういうことで」 片手を上げて、鮮やかな笑顔を残して――スーパーから出て行った。 「おーい、フランソワーズ。お金ーっ」 レジで大きな声で呼ぶナインに苦笑して、私は駆け出した。
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