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僕の大事なフランソワーズ。

いったい、見知らぬ男の車に乗ってどこへ行くつもりだ?
もしかしたら、深く考えもせず乗ってしまったのかもしれなかった。
何しろ、彼女は――男という生物が、場合によってはとてつもなく危険なものになるということを全然わかっていないのだ。
疑うことを知らない、コドモのように無邪気で。
僕はその微笑を守るためなら、どんなことだってしてきたつもりだった。
だけど、それは間違いだったのだろうか?
ちゃんと――男という生物は怖いものなのだと教えてやるべきだったのだろうか。

けれども、後ろから窺う限りでは、車内の男女はとても楽しそうで、何も心配するようなことはなさそうだった。

楽しそうに話している。フランソワーズが。

複雑な思いに囚われながら、それでも僕は前をしっかり見て車を走らせた。
もしも彼女に気付かれても構わない。

その時は堂々と言うだけだ。

 

 

***

 

 

着いた先は、イルミネーションの煌く横浜だった。
みなとみらいクイーンズスクエア。
何度か彼女と一緒に来たことがある。

どうしてここに彼女は男連れで――

頭の中にある「答え」を見ないようにして考える。

楽しそうだったから、拉致されたわけではない。
もちろん、ブラックゴーストでもない。

そうだ、もしかしたら、博士の知り合いとかで――横浜を案内してくれと頼まれたのかもしれない。
それはじゅうぶんに有り得ることだ。
今までにもそういうことは何度かあった。
ただ、その時はいつも――僕も一緒だったけれど。

フランソワーズと見知らぬ男がふたりきり。

その事実が持つ意味を、僕は考えたくなかった。