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数時間後。 フランソワーズを見つけなくては。しかし、僕の姿を見られてはならない。 いったい、どこへ行くというのだろう?
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彼女は3階へ上がって――手当たり次第にショップへ入っていった。 そうしているうちに、クイーンズスクエア中央にある巨大ツリーの前へ向かった。 ――くそっ。 いっそのこと、そばへ行ってしまおうか。他の野郎が彼女の可愛さに目を留める前に。 演出なのか、薄暗くなった店内に舞う雪を嬉しそうに見上げている彼女を見て、心を決めた。 「――島村さん?」 まさに移動しようとしたところへ背後から声がかけられた。 「やっぱり!珍しいわね、こんなところで会うなんて」 確かにこういう所で知り合いに会うなぞ珍しい事だろう。 「やあ」 そう言って腕を掴まれる。 「何事だい?」 彼女はキャンペーンガールのひとりである。 「そんなの、奴は喜ばないと思うよ」 僕だったら、フランソワーズが他の男と一緒に選んだものなど絶対に受け取らない。 「ううん、そうじゃないの。いちから選ぶんじゃなくて――ちょっと来て!」 腕を掴まれ、引き摺るように連れて行かれた先は、衣料品の置いてある店だった。 「Tシャツなんだけど、迷ってるの」 そう言って広げられたままになっているシャツ数枚を見せられる。どれも柄は一緒だった。が、色が違う。 「どの色のを持ってたのか、すっかり忘れちゃってて」 「――奴はこの色は持ってるよ。でも、他は・・・うん。どれも嫌いな色じゃなかったと思うから、大丈夫だと思う」 途端に、僕など眼中にない様子で手元のシャツの吟味を始めた。 ――女の子って可愛いな。 「――じゃ、僕はこれで」 軽く手を振って店を出る。 プレゼントか・・・ そういえば、クリスマスプレゼントをまだ用意していなかった。フランソワーズのぶんだけ。 僕はひとつ頷くと、その先にあるアクセサリーショップへ向かった。
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