「強くなる」
「何故一緒に来たのかって?そんなの、決まってる。一緒に来てくれって頼まれたからだ。問答無用で攻撃してくる輩など悪に決まってる。だから粛正してやろうと思っていたところにみんながやって来て口々に一緒に戦って欲しいとお願いするから、こうして一緒にいるってわけだ」 もちろん自分ひとりでも十分戦えると思ったけどな、とナインは胸を張った。 あまりにも大上段からの物言いにスリーは呆れつつもナインらしいわと思った。
傍らのスリーを見つめ、ナインが首を傾げた。 「顔が青いけど」 そうっと手が伸びてスリーの頬に触れる。 「…どうもしないわ」 ナインはそのままスリーの頬を両手ではさみ、自分の方を向かせた。 「――あのさ。何か誤解しているかもしれないから言っておく。僕はみんなを足手まといに思った事は一度もない。もちろん君の事もだ。むしろ、ありがたいと思っている。僕はおかげでよりいっそう強くなることができたからだ」 スリーには何のことかわからない。だからじっとナインを見つめた。 「……守るべきものが、できたからね」 やっぱり自分は足手まといのお荷物なんだとスリーは落ち込んだ。 「僕が強いのは当たり前のことだ。誰よりも強いのも当たり前。そんな強い僕が君を守ったからって足手まといに思うわけないだろう?それに僕は君を守るたびにどんどん強くなれるし、そんな自分を誇らしく思っている。だから何も気にすることはないんだ」
単純に嬉しかった。 が、何か引っかかるものがあるのも事実だった。
――守るたびに強くなる。
それが誇らしいと彼は言った。 しかし。
――そうして強くなって、それで…
……あなたは、どうするの?
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