高く振り上げられた棒は、狙い違わず目標物に命中した。 手応えを感じたあと、更に一撃を加えた。――が、その瞬間、周囲に赤い飛沫が散った。 ――しまった。と、思った時には遅かった。
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「アニキ!何やってんだよもう・・・あーあ」 セブンが怒ってナインの周りをぴょんぴょん跳ねているから、余計に被害が拡大していく。 「セブン。そんなことしたら余計、ぐちゃぐちゃになっちゃうわよー?」 「ナインも、もうちょっと手加減してくれないと。――あーあ。もう。ダメね、これ」 スイカは見事に砂だらけで、しかも原型を留めていなかった。 「もう・・・二人にスイカ割りなんてやらせるんじゃなかったわ」 目隠しを外して、棒にもたれるように立っているナインを見つめる。 「?どうかしたの、ナイン」 ふいっと視線を逸らせ、そのままスタスタ行ってしまう。 「待ってナイン。足、洗わないと後でベタベタになるわよ?」 聞こえているのかいないのか。
蒼い空に広がる白い入道雲。 週末なんかに来るもんじゃない。 そんな事を思いながら、僕はじっと自分の番が来るのを待っていた。 「カキ氷、ふたつ」 注文して出来上がるまではわずかな時間。 「あ、ジョー。もう・・・どこに行ったかと思ったわ」 真っ白いビキニを身につけたスリーが立っていた。手にはおしぼりを持って。 「足がベトベトでしょ?」 有無を言わさず、そのまま近くの海の家へ連れ込まれてしまった。 「氷が溶けるから、こっちが先だ」 スリーの前に両方を差し出すとメロンを受け取った。 しばらく無言で、並んで氷をつつく。 「・・・ねぇ、ジョー?」 彼女は人目がある時は僕のことをナインとは呼ばない。名前で呼ぶ。 「何?」 思わず見つめると、少し身を乗り出して僕の氷を覗き込んでいた。 「だめ?」 ――まったく。こういう時のスリーは子供みたいだ。言い出したらきかない。 「・・・しょうがないな。――ホラ」
――え? てっきり、氷の入った容器ごと差し出されると思ったのに。 え? これって、 これって・・・つまり。 ナインのスプーンから直接・・・ってこと・・・よね? 一瞬のうちに様々な思考が脳内を駆け巡る。 「――」 えい、という思いで氷を口に入れた。ナインのスプーンから。 「・・・ん。おいしい」 そうして私は自分の氷をひとくちすくって、ナインに差し出した。 「――はい」
えっ。 何で? 僕は目の前に差し出されたスプーンを信じられない思いで見つめた。 これって、つまり。 ――このまま食えということだよな? たった今、自分がしたことに対してスリーがとった行動も信じられなかったのに、更にこんなことが―― ちらりとスリーを見つめると、微かに頬が赤くなっているものの僕が食べるのが当然、というような顔をしていた。 「あら、ジョーはメロン味要らない?――じゃ、あげない」 あっさり言って引っ込めようとするから、思わずスプーンを口に含んでいた。 「・・・メロンだな」 変なジョー。と言いながらコロコロ笑う。 「・・・はい。あーん」 ――自分の口には持っていかず、なぜかまた僕に食べさせようとする。 「え、いいよ。甘いし」
微かに頬の赤いナインの顔を見つめ、自分はもしかしたらとんでもなく大胆なコトをしているのかもしれない。と思っていた。 だけど、考えてみればナインは男で・・・こんな子供っぽいことをしたら呆れられてしまうかもしれなかった。 「――しょうがないな」 言って、ナインがぱくりと氷を食べた。 「ん・・・やっぱり甘いな」 ふと、目が合った。 「そんな顔しなくても、ちゃんとひとくちやるって。――ホラ」 そうして、自分のスプーンで氷をすくって、そうして・・・
「あー!!いったい二人で何してんだよ!」
ナインのスプーンを口にした途端に、目の前にセブンが現れた。 「っ!!」 突然の事に、私もナインもフリーズしてしまった。 「オイラに内緒でカキ氷なんてひどいや!!なんだよ、二人ともイチャイチャしちゃってさ!」
・・・イチャイチャなんて、してないもん。
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