「だったらアニキ、帰らなけりゃいーじゃん」
セブンの声に、ふたりは慌てて離れた。
「どうせアニキの部屋だってあるんだし。ねっ?そう思わない、スリー」
「えっ?ええ・・・そう、ね」
そうしてじっとナインの顔を見た。
ナインもスリーを見る。
「そ、」
それはいい考えだ。と、言いかけてナインは言葉を呑み込んだ。
いかん。
いったい僕は何を考えているんだ。
有事にはギルモア邸に泊まるのは常だった。だから、しばらく泊まったとしても変ではないだろう。
が、しかし。
部屋があるのに、スリーの部屋へ行ったきり戻ってこないとか、スリーを部屋に呼んで帰さないとか、そんなことをするのは変なのだ。
しかも、だからといってナインがそれをせずに過ごせる保証はないし、情けない事に自信もなかった。
夜這いしないで過ごすなど、ナインにとっては拷問に等しい。
「い、いや、ダメだ!全く、とんでもない事を言うなセブンは!」
「ええっ。でもそしたら、毎日来る手間が省けるよ?」
「ふん。きみは何か勘違いしてるようだな。僕は車の運転が好きなんだ。だから、朝ここに寄るのはほんのついでさ!」
「ふうん。そうなんだ」
「ああ、そうだとも!」
「じゃあ、スリーの事は関係ないんだね」
「・・・えっ?」
ちらりとスリーを見ると、何故か悲しそうな顔をしていてナインは血の気が引いた。
「え、あ、違うよフランソワーズ、ついでなんかじゃなくてっ・・・」
「あれっ、アニキ、やっぱり違うんじゃないか」
「いや、断じて違わない!」
「ジョーがここに来るのはついでなのね」
「違うよフランソワーズ」
ああもう、メンドクサイ!
ナインの怒髪が天をついた。
「乗って」
「えっ、でも」
「いいから!」
ともかく、さっさと立ち去るためスリーを拉致した。
「ジョー?」
とはいえ、プランがあるわけでもない。
が。
「・・・ふたりっきり、ね」
頬を染めるスリーにナインは小さく頷いた。