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ナインはあの日以来、姿を見せない。 結局、クリスマス会には顔を出すのかどうかの返事ももらっていない。 ――ナインがいなくても、クリスマスは楽しく過ごそう。 ・・・どうして今年に限ってナインは恋人と過ごすことにしたんだろう? 今まで恋人と呼べる人がいなかったから、私たちと過ごしていた? きっと、そういうことなのだろう。 私は出かけるために装った自分を鏡に映してチェックした。 ナインがくれたイヤリング。 いつだったか、二人でドライブした先のお店で見つけた――元々はピアスだったもの。 ――あの頃は幸せだったのに。 ナインに特別な人がいるなんて、知らなかったから。 どんなひとなんだろう? どこで知り合ったんだろう? 今日も会うのかな。 それとも、もう既に会ってきたのかな―― ――だめだ。 ナインには決まったひとがいる、ってはっきりわかったのだから。 これ以上、好きになっちゃだめ。 だってナインは、私の・・・ 大事な仲間で ――お兄さん。なんだから。 鏡の向こうの自分が泣きそうな顔になっていて、手でほっぺたを軽くはたいた。 しっかりしなさい、フランソワーズ。こんな泣き虫じゃなかったはずでしょう? そう・・・今日はこれからバレエを観に行くのだから。 これからも、きっと。 軽くクラクションの音がして、私はバッグを持って部屋を出た。
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