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世界が激変した。 「これは・・・何か変じゃないか」 ギルモア邸ではテレビのニュースを見ながら会議が行われていた。 「うん。作為を感じるな」 ナインの言葉に全員が彼に注目した。 「作為ってどういうことさアニキ」 スリーの声に頷いてから、ナインは身を乗り出した。 「001、君はどう思う。いま世界が何か・・・ニュースには載らない何かの脅威にさらされているとかそういうことはないか」 ううむと唸り、ナインが自分の考えを検討し始めた時、001が口を開いた。 「ソウイウ脅威ハ無いケド、トアル組織ガ実験シテイルコトハアル」 そんなわけで、その機械が量産される前にそのシステムと組織を壊滅させることに決定した。
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会議が終わった。 「――じゃあ、また」 夜もすっかり遅くなっていた。 「ジョー。待って」 くるりと振り返ったナイン。 「・・・ううん。別に用ってわけじゃないの。ただ」 ただ――おやすみなさいと言いたかっただけで。 しかしそれは胸の奥にしまわれたまま言葉にはならなかった。 「・・・おやすみ」 ナインは小さく言うとひらりと車に乗り込んだ。 「あっ、待って」 慌てて車のドアに手をかける。 「その、」 不審そうにこちらを見つめるナインにスリーは一回深呼吸をした。 「その・・・最近、コーヒーを飲みに来ないでしょう?だから、どうしたのかしらって思って、それで」 そうしてぎこちない笑みを浮かべ、スリーは車から離れた。 「なんだか私、」 避けられてるような気がするの。 「――また寄るから。心配するな」 微笑むナインを見つめ、スリーは大きく息をついた。 「そうね。そうするわ」 そうして去ってゆく車を見つめ、スリーはいつまでも動けなかった。 最近、二人きりで会っていない。 いったいナインはどうしてしまったのか。 スリーにはさっぱりわからなかった。
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