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僕はフランソワーズの肩を乱暴に掴んだ。手加減しなかった。 ヤツの腕の中から。 「っ、ジョー!」 不安そうな顔をヤツに向けて叫ぶフランソワーズ。
何故?
自分の大事なひとだから傷つけるなとでも言うのか? フランソワーズ!! 僕は握った拳をそのまま――ヤツの顔面めがけて叩き込んだ。
そんな――
――そんな。
そんなことってあるのか。
・・・フランソワーズ。
「もうやめて、お願い!」
おそらく僕は、半分笑っていただろう。怒るより、泣くより、なんだか自分が滑稽で笑うしかなかった。 僕は――ずうっと、ずうっと、きみのことが好きだよ。フランソワーズ。 そうじゃなかったんだね。 僕は、きみを好きだという男達のなかのひとりにすぎなくて、きみにとっては特別でもなんでもない存在だった。
・・・・本当に、大切な女の子なんだ。
だから、――嫌いになんてなれないよ。フランソワーズ。
こんな場合なのに、僕はきみから目を離す事ができないでいる。 そんなもの、見たくないのに。 ――泣き顔なんか。 僕のフランソワーズ。 お願いだ、泣かないでくれ。 ・・・でも。 いま、きみが泣いているのは僕のせいなんだよね? 胸が痛い。 ヤツを殴った拳から血が出ていたけれど、そんなものより胸の奥が焼けるように痛くて、フランソワーズの涙が痛くて、痛くて痛くて痛くてもう何も考えたくなかった。 フランソワーズ。 僕の。 大事な。 可愛い・・・女の子。 きみしか要らない。 きみしか欲しくない。 だけど僕はきみにとって不要な男だった。 どうか――泣かないでくれ。
僕は息が詰まるほどの苦しみのなかで、ただフランソワーズが泣かないようにそれだけを願っていた。
お願いだから。 最後にちょっとだけでもいいから・・・ 笑ってくれないか?フランソワーズ。
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