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「――それで?きみはその窮地をどうやって抜け出したんだい?」
イワン。 「イワンは兵器を壊しただけよ。後は何もしてないわ」 訝しげに眉を寄せるナイン。 「・・・もしかしたら、これも現実ではないのか・・・?」 カップを持つ手が震えた。だから私は、急いでナインの隣に座り、両手で彼の手を握り締めた。カップは彼の手から静かに引き剥がしてテーブルに置いて。 「違うわ。現実よ?」 そうして、ナインの手に唇を寄せる。ナインはくすぐったそうに手をひっこめようとする。でも、離さない。 「――あのね。ジョーは自分の力で勝ったのよ」 そうなのだ。 私はその時のことを思い出して胸が熱くなった。 後に博士とイワンが語ったところによると、それこそが彼の、ナインの「思いの根源」であり、彼の中の最も大切な侵さざるべき強い部分なのだという。彼は、それがあるから立っていられる。敵に向かっても行ける。 「自分の力?」 首を捻って思案顔のナイン。 私は偶然、知ってしまったけれど。
私はナインの胸に顔を埋めて彼のシャツを濡らした。
本当よ?
「・・・スリー。フランソワーズ。泣かないで」 耳元でナインが優しく言う。あやすみたいに。 「何も怖いことなんかないんだよ?――僕がいるんだから」 私は頷いて泣きやむつもりだったのに、ナインの言葉を聞いて余計に涙が溢れてしまった。 そう――私にはナインがいる。
いつも。
これからも、ずっと。
***
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精神波が乱れ、ぼろぼろになった009は私の腕からゆらりと立ち上がった。
ゆらりと立ち上がり、ぐるりと360度を見回す009。
そうして009は自身の力で、自身の持つ精神力で、精神兵器に打ち勝ったのだった。
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