「魔界の白雪姫」
私の彼氏は魔界の王子様。 名前はジョー。
だってジョーがいるんだもの。 そう・・・どんな生き物がいても平気よ。全然大丈夫。
でも・・・
・・・・。
どう見ても人間にしかみえない女のひとたちは、いったいどういうことなんでしょう?
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白雪姫――フランソワーズが魔界にやってきて一週間が経っていました。 そろそろホームシックになるだろうと心配していた魔界の王子ジョーでしたが、その心配は杞憂でした。 ジョーとしては、怖がるより楽しんでくれたことにほっとしてはいたものの、自分が不在のとき彼女はどうやってすごすのだろうかとそんなことも思ったりしておりました。
ある日フランソワーズに訊かれました。 「それはね・・・」 半分は修行のためでした。身分を隠して宮廷つきの魔法使いになる。そうしてひとに使われる身になることは魔界王子に課せられた帝王学のひとつでした。 でもそれはフランソワーズには言わず、ジョーはこう言うにとどめました。 「たぶん、白雪姫に会うためだったんだろ」 これだってある意味本当のことです。 「ま。ジョーったら」 フランソワーズのかじったリンゴ。そのひとくちサイズをことあるごとに持ち出すジョーです。 「いいじゃない、おなかがすいてたの!大体、ジョーだってどうなのよ。いくら女王に命令されたからって毒リンゴを私に食べさせるって酷くない?下手したら死んでたのよ」 それを言われると弱いジョーです。 「もう・・・嘘よ。怒ってないわ」 フランソワーズはジョーの腕に頬を寄せました。 「あなたが毒を作るのが下手なのは知ってるって言ったでしょう?そうじゃなかったら食べたりなんかしないわ」 ジョーが宮廷付きの魔法使いになってから、フランソワーズはしょっちゅうその実験室に出入りしていたのでした。そうして仲良くなったふたりです。 「――俺を信用してるんだ」 ジョーがそう真面目な顔で言った途端、フランソワーズは笑い出しました。 「なんだよ」
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「私はリタ」
延々続く自己紹介。 これはまるで後宮です。
――後宮。
そう考えてフランソワーズは身震いしました。 だって、あってもおかしくはないのです。
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