突然のことにフランソワーズは腕で両目を覆っていました。
闇に慣れた目に昼間の光は眩しすぎたのです。

それでも、徐々に慣れてくるとフランソワーズはそっと腕を外しました。

 

世界は一変していました。

 

あやしげな形の植物やどうぶつはそのままでしたけれども、世界には光が満ち溢れ――魔界の禍々しさは失われておりました。
魔界とはいっても、元々は人間界とそんなに大きな差はない世界だったのです。


「・・・ジョー?」


フランソワーズは自分のまわりをぐるりと見回しました。
けれども、先刻までそばにいたはずの魔界の王子ジョーはどこにもいません。


「ジョー?」


フランソワーズは泣きそうになりました。
そういえば呪文を唱える前にジョーが気になることを言っていました。自分のことは忘れてくれ、と。
でも、そんなことを突然言われてもフランソワーズにはわけがわかりません。


「ジョー・・・」

 

途端に心細くなりました。