「予約していたシマムラですが」
そう言ったジョーを蒼い瞳が不審げに見つめる。
予約したのはお兄ちゃんじゃないの?
でもジョーは答えない。
「ご予約は・・・2名さまですね?」
「はい」
「2名?違うわ、3名よ」
フランソワーズが慌てて訴える。
「ですが、2名さまと伺っておりますが」
「何かの間違いよ」
更に言い募ろうとする彼女の肩に手をかけ「いいんだよ2名で」という兄。
振り返ったフランソワーズの瞳は、怒りよりも驚きが支配していた。
「お兄ちゃん?」
意味がわからない。
どうしてジョーの名前で予約してあるの。
どうして3名じゃなくて2名なの。
「ごめんな、フランソワーズ。今年からはクリスマスイブは一緒に過ごせないんだ」
微かに笑って言う兄に、返す言葉もない妹。
兄の言葉は続く。
「俺は、自分の家族になるひとと一緒に過ごすことになっている。
だから、今日はお前とは一緒に居られない」
一瞬、間。
「フランソワーズ。いつかそういう日が来るのはわかっていただろう?」
彼女の顔は見えなかったけれど、おそらく泣いているであろうことはジョーには簡単に想像できた。
それは、彼女の前に立っている彼女の兄の表情でわかる。
「・・・なにも今日ここで言わなくたって・・・」
小さくポツリと涙で湿った声で言う。
「だから、ごめんな」
そうして妹の髪をそっと撫でて。
「でも、お前にも大事なひとがいるだろう?だから・・・わかるよな?」
そして一瞬、妹をそうっと抱き締めてから、ジョーのほうに彼女の肩をそっと押した。