レストランを出たあと、フランソワーズが歩きたいと言うのでパリの街を歩いた。
雪が降っていて寒かったけれど、隣にいる彼女の存在が温かい。
ジョーの腕に自分の腕を絡ませて、にこにこ幸せそうに微笑んでいる。
数時間前の、涙を流すもんかと頑張っていた様子など微塵も感じられない。
「ねえ、ジョー?私ね、思うんだけど・・・」
いちばんめの願いは叶わなかったけれど、にばんめの願いは叶っていると思うのよ?
「・・・奇遇だね。僕もそうなんだ」
いちばんめの願いが何で、にばんめの願いが何なのか。
それはお互いに言わないけれど、知らなくても構わなかった。
きっと永遠に知らなくても構わない。
「ねぇ、今夜はもしかして・・・私とジョーの二人っきりなのかな」
「そうだね」
「パリで二人っきりなんて、あのとき以来ね」
「・・・そうだね」
「あのときは泣いてジョーを困らせちゃった」
ごめんね、と小さく言う。
「・・・いいよ。だって」
君、可愛かったし。と口の中で言う。
「二人だけなんて、なんだか変な感じ」
「そうか?」
「うん。日本でならともかく、パリで、・・・なんて」
「・・・そのうち慣れるよ」
「そうね。・・・そうかもね」
そうして寄り添って歩く帰り道。