「思ったより遠かったね」
「本当。足が痛い」
甘えた声で言う彼女に、しょうがないなぁと言いつつもどこか嬉しそうなジョー。
鍵を開けた後に、さっと彼女を抱き上げてしまう。
「お嬢様。足の具合はいかがですか」
「ん・・・こうしてると治りそうよ」
言いながら廊下を進み、リビングのドアを開ける。
「・・・遅かったな」
そういえば、どうして部屋に明かりが点いているのか不思議に思ったんだったっけ。
フランソワーズを抱き上げたまま、頭の隅で考える。
フランソワーズはというと、ジョーの首に両手をかけたまま呆然と目の前の人物を見つめている。
「・・・お兄ちゃん」
慌ててジョーの腕から逃れ、兄の元へ。
「どうしたの?彼女さんは?」
「ん?」
「やだ、もう振られちゃったの?!」
可哀想なお兄ちゃんと嘆く妹の額を軽くつつく。
「お前なー。俺は、クリスマスイブは新しい家族と過ごすとは言ったけれど、クリスマスもそうだとは言ってないぞ」
憮然とする兄。
「ワインがたくさんあるって言っただろう?ジョーと飲むのを楽しみにしてたんだからな。
だから、今夜はジョーはお前にはやらん。」
「やらん、って・・・ジョーはお兄ちゃんのものじゃないもん」
「お前はもう寝ろ。俺はジョーと男同士の話があるんだ」
「なにそれ。・・・変な話をジョーにしないでよね」
「変な話ってどんな話だ?」
にやりと嗤う。
「どんな、って・・・やだもう」
ジョーも何か言って、と話を振る。
「えっ・・・」
戸惑いつつも、彼女の兄と目を合わせて。
「・・・男同士の話っていえば決まってるさ」
こちらもにやりと嗤って。
「だからフランソワーズはもう寝なくちゃ」
「もう。ジョーまでそんな事言って」
「早く寝てよい子にしてないとサンタさんが来てくれないよ?」
兄とジョーはワインをがぶがぶ飲んでいる。
明日どうなっているのか考えたくもない。
自室でベッドに転がり、兄からもらった航空券をかざしてみる。
この日付。
私の誕生日。
・・・もう。
この日まで帰るなってこと?お兄ちゃん。
駄目よ。
やーよ。
お誕生日は恋人とふたりで過ごすんだもん。ずっとそう決めているんだから。
もしジョーをパリに連れてきたら、またお兄ちゃんにとられちゃうもの。今日みたいに。
そんなのイヤ。
だって、ジョーは私のだもん。
誰にもあげない。
誰にも渡さない。
にばんめのお願いは叶ったんだから。
神様が決めたんだから。
私に、ジョーをあげます。って。私に、ジョーをくれる。って。
だからずっとそばにいるの。
いくらお兄ちゃんでもだめ。
ジョーはあげない。
朝起きたら枕元にプレゼントが置いてあった。
開けてみたら、それは・・・