「・・・キスしているの」 呆然。 言うだけ言うと、さっきまで頑なに車を降りなかったフランソワーズだったのに、あっさりとドアを開け車から降りていった。 キキキキキスしてるって??俺が? という謎と 100歩譲って、まぁ俺が誰かとそういう行為をしてたとしても、だ。 という謎に包まれて。 でも。 俺が、誰かとその・・・そういう行為をしていたのなら、彼女が平静でいられるわけがない。・・・たぶん。 ・・・ううむ。 わからない。 とりあえず車から降りてフランソワーズに訊いてみようと姿を探したが、ジョーが車の中で固まっている隙にさっさと邸内に入ったようだった。 なんでこんなときは素早いんだ。
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部屋に向かいながらも、部屋に入って着替えてからも、ずーっと考えていた。 大体、事務所がそんな写真を一般大衆に出すだろうか?むしろストップをかけるのではないだろうか? しばし回想してみる。 ・・・・・・・・フランソワーズ以外とキスしたのって、何年前だ? つまり、ここ数年は彼女以外とそういう行為をしたことはないわけで・・・。 そういえば、最近スクープされたばかりだった。 だから「シークレットカード」なのか? だからフランソワーズは特に妬くでもなく暴れるでもなく・・・ただ「妙な」行動をしていたのだろうか?
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ドアを開けたフランソワーズはちょっと驚いた顔をして、けれどもいつものように部屋に通してくれた。 「どうしたの?」 今日の帰りの出来事をすっかり忘れたかのような彼女の表情に、なんだか酷く疲れたような気になり、ベッドに腰を降ろしてしまう。 「・・・どうもこうもないだろ?言うだけ言っておしまいなんてずるいよ」 やっぱり何だか疲れてきた。・・・もう、今日は早く寝よう。 自分の隣を指し示し、ここに座るように言う。 ・・・・どうしてこういう意地悪を時々言うんだろうなぁ。こんな可愛い顔して、さ。 「・・・俺が――僕が、君以外とそういうコトをするなんて本当は思ってないよね」 ほらやっぱり。 「じゃあ・・・その、シークレットカードとやらの話も嘘?」 ・・・なるほど。 ひとつの謎には納得がいったけれども、それでもまだまだ謎は満載なのだった。 「・・・その、相手はフランソワーズだよね?」 ――なんか、おかしい。 ――なんか、変だ。 数年前の、キャシーとのキス未遂事件を最後に、本当にフランソワーズ以外とそういうコトはしていないのに。 |