部屋でメールを書いていたフランソワーズはノックの音に顔を上げた。 「アラ。どうしたの?」 アルベルトが差し出したポラ写真を見て「あ」と言ったきり、頬を染めて黙ってしまう。 「大事なモンなら落とさないことだな」 アイスブルーの瞳をひたと見据え、フランソワーズは思いっきり首を横に振った。 「だったら、何でこんなカッコ…」 セリーヌとはモデルであり、フランソワーズの友人である。 「ええ。その…セリーヌと食事をしようって事になって、で、彼女の撮影が長引いているから良かったらスタジオで待ってて、って言われて」 行ってみたら、結婚情報誌の撮影中だったらしい。 「普段なら絶対に引き受けないのよ?――でも、断ったらセリーヌが困ると思って」 承諾したのだそうだ。 「――なるほどな。ってコトは、その雑誌にオマエも載るわけだ」 小さく消え入りそうな声で言うフランソワーズを見つめ、そっと頭に手を置いて軽く撫でる。 「…そういう姿は、オマエの本当の結婚式の時までとっておけ。新郎以外に見せるもんじゃないだろうが」 「――でも」 きっぱりと言い切るフランソワーズに向かってため息をつく。 「そんなの、わからないだろう?サイボーグだって幸せになる権利はある。ましてやオマエは最も生身に近いんだ。 少しおどけたように言うアルベルトに、やっとフランソワーズは笑みを洩らした。 「うん。そうするわ」
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