「ジョーったら。何言ってるの?」 くすくす笑いとともに、持っていた写真を取り上げられる。 「これは、結婚情報誌のモデルをしたときに写したの」 キレイに映ってるって言ってもらえて安心したわ。という彼女の声を遠くに聞きながら、ジョーは満身の力をこめて 「ジョー?」 一瞬、体を固くするフランソワーズ。 「…どうしたの?」 ジョーの背中を優しく撫でつつ、フランソワーズが訊く。 「――なんでもないよ」
――今日はただの勘違いだった。 いつか、きっと君は行ってしまう。 君は、僕のものにはならない。 今までちゃんとわかっているつもりだったけれど、全然わかっていなかった。 ――世界が終わるところだったよ、フランソワーズ。
心の中で自嘲気味に言ってみる。
だけど、僕は――僕たちは、そんなんじゃないから。
本番はいつやってくるんだろう? その時、僕は……今日よりも、少しはマシな反応ができるだろうか? フランソワーズ。僕は君を……
「――ジョー?」 フランソワーズの声に我に返り、彼女をそっと体から離す。 「あのね。これ…ジョーが持っていてくれる?」 お願い、と言われても彼女の意図することがわからなかった。 「…だって」 いつか本当に誰かのために――あなたのために――装う日がくるよう望むことなんて贅沢だから。 「――うん。わかった」 彼女が何を考えているのかはわからない。 本音を言うなら――『その日』が永遠に来なければいい。 僕は君の幸せだけを―― ――君が幸せなら、それで――いい。
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