今日もいつものように、大好きな人の腕の中で目を覚ます。
今はそれが当たり前のように慣れてしまって、彼がいない時はとても寒くてとても寂しい。

気がついたら泣いていた。

何が悲しいってわけでもないのに、あとからあとから涙は湧いてきて止まる気配がない。

何が切ないんだろう?

胸の奥を何かにぎゅっと掴まれたみたいに苦しい。
涙は目から溢れて、耳を伝って流れてゆく。
そして彼の腕を濡らしてゆく。

「・・・・っ」

でも、涙は止まらない。
堪えても堪えても、胸の奥に重い何かがあって、それは涙で流してしまおうとしてもびくとも動かなかった。

心が痛い。

 

私はジョーにふさわしくない。

 

唐突に心の中に浮かび上がる。

ふさわしくない、って・・・どうして?

 

私はサイボーグだから。

 

サイボーグだから、ふさわしくないの・・・?

 

どんなに好きでも、どんなに愛しくても、サイボーグだから駄目なの?
好きでこんな身体になったのではないのに。

私だって、生身の――生まれたままの身体でいたかった。
普通にみんなが与えられていたそれを、根こそぎ奪われた私。
そんなの、私のせいではないのに。

誰でも良かった――と、後で聞いた。
せめて、私でなければいけなかったと言われた方がラクだった。
だって、あの時、あと5分・・・いいえ、あと1分、その場所を通るのが遅かったら。あるいは早かったら。
私以外の別の誰かが連れて行かれていたはずで・・・

けれども、そんな自分勝手な考えに胸が悪くなった。
他のひとだったら良かったのになんて、何て事を考えるの?
誰でも良かったのに、運命に選ばれてしまったのはこの私なのに。

 

神様は、乗り越えられる試練しかその人に課さないという。
だとしたら、私のこの気持ちもいつか――乗り越えられる日がくるのだろうか?

けれども「サイボーグだからジョーにふさわしくない」という事は既に決定事項であるかのように
私の心の奥に深く深く根付いてしまった。もう抜けない。