ちゅっとまぶたにキスされた。

「おはよう。何泣いてるの?」

そうして、流れた涙を唇で拭う。

「・・・何でもないわ」

何とか笑顔をつくって答える。
涙はジョーのキスで止まっていた。

「そう?」

優しく笑って、ジョーは私の顔にキスの雨を降らせる。

「んっ・・・ジョーったら」

このまま食べられてしまうのかと本気で心配になった。
でも、ジョーだったら、いい。食べられても。

「――ねえ、ジョー」

ジョーのキスが止まって、じっと瞳をのぞきこまれる。
私の唇をジョーの指がゆっくりなぞる。

「なんだい?」
「私・・・」

だけど言葉にならない。
ジョーの唇が軽く私の唇に触れる。

「――何?」
「・・・ううん」

ジョーは微笑むと、そのまま唇を重ねた。
深く深く入ってくるジョーの想いを受け止める。

 

 

どうあっても、私はサイボーグなのだ。元の身体に戻ることはできない。
こんな身体だから、ジョーにふさわしくないかもしれない。
どうしてこんな身体にされてしまったのか、悔しくて仕方ない。

・・・だけど。

あの時、運命に選ばれたのが私で良かった。
あの日あの時、あの場所にいたのが他の誰でもない、この私で良かった。
だって、そうじゃなかったら――私はジョーに出会うこともなかったのだろうから。
おそらく私は、ジョーと出会うためにこうなったのだ。
それは大きな代償だったけれど、だけど神様は大きなプレゼントを用意してくれていた。

009。

島村ジョー。

私はあなたに出会うためにここに来たのだ。

 

「ジョー。大好き」

耳元で囁く。

あなたに出会えて、私は幸せだった。