「大丈夫じゃないからね?」

まるで自分の心を読んだかのような、彼女の言葉に驚く。
じっと見つめる蒼い瞳。
自分の心の奥まで見透かされているような感覚。
けれど不快ではなかった。

「ジョー?あなたがいなくなっても他の仲間がいるから、私は大丈夫。・・・なんて、思わないでね?
全然、大丈夫になんかならないもの。・・・もう二度と、あなたが消えてゆくのをただ見ているだけなんて、絶対に嫌」

・・・そうだった。
彼女は僕が・・・宇宙で散るはずだった時、平気じゃなかった。と、仲間から聞いて知っていたのだった。
そうだった。
忘れていた。
彼女の気持ち。
僕の孤独感が彼女にはわからないのと同じように、僕は愛する者の命が消えてゆくのをただ見ているしかない状況、その時の気持ちというのが
ほんとうにはわかっていない。
だから、彼女が・・・僕がイシュキックと共に去ろうとした時。どんな想いでいたのかなんて、わかるはずもなかったんだ。
そして、迂闊にも僕は。
それとは気付かずに、僕は彼女に対してあの大気圏突入の夜の疑似体験をさせてしまった。

「・・・ごめん」

もう一度、重ねて言う。

本当に、ごめん。
僕は君の気持ちを、ほんとうにはわかっていなかった。

「・・・だから、ね」
けれども、彼女の蒼い瞳は曇ることなく澄んだまま言うのだ。
「今度、同じ事がおこったら・・・私も一緒に連れて行ってね?」
「え?」
「だって、定員なんてないでしょう?あなた一人しか行っちゃダメって事もないんでしょう?」
「・・・ウン」
「だったら、私も一緒に行く」
ね?と、明るく見つめて。
「だめ、って言われても、そうする。絶対、あなたを一人でなんて行かせない」