国語篇(その十六)


国語篇(その十六)

<方言概観(その三。「ナ」から「ワ」まで)>

(平成21-12-6書込み。平成27-8-5最終修正)(テキスト約148頁)


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[おことわり]

 この篇は、全国の方言の主要なものの中に残る語源不詳または意味不詳の縄文語の意味を解明しようとするものです。これまで国語篇(その二)で東北方言(庄内語・遠野語)を取り上げ、また地名篇や雑楽篇の各篇などでも随処で方言を取り上げてきましたが、これから全国の方言をくまなく解明しょうとすれば、国語研究所『日本言語地図』 大蔵省印刷局、『日本方言大辞典』小学館、佐藤亮一著『都道府県別全国方言小辞典』三省堂などに拠らなければなりませんが、これらはあまりにも膨大で、これらを対象とすることは時間の余裕から不可能です。
 そこで、数ある方言辞典や方言集のうちから、収録語数が約1,200語と比較的にコンパクトで、最近普及しつつある電子辞書数種(カシオXD-GP6900、シャープPW-M100、ソニーIC-700Sなど)にも搭載されている次の辞典を選び、その中に残る縄文語の意味を解明することとしました。
 江端義夫・加藤正信・本堂寛編『全国方言一覧辞典』学研、1998年

 この辞典の内容は、三部に分かれ、第一部は主要な方言219語の都道府県別の一覧を示し、第二部は都道府県別方言ランキングとしてお国言葉番付表各約20語を載せ、第三部は方言についての概説となっています。
 この辞典は、『日本言語地図』などでは意味の規定が難しいとして調査対象から除外されていた語(挨拶、人間の評価、心情、動作、行為、人生儀礼など)も対象とし、さらに全項目アクセント付きという特徴を有します。
 なお、方言は、地域的差異が顕著で、大まかにみても都道府県ごとにそれぞれ幾つかの地域ごとに異なるのが通例です(例えば岐阜県は東美濃、西美濃、飛騨の各地域ごとにかなりの差異が見られます)が、この辞典では、都道府県ごとに原則として一つの方言(沖縄県のみ那覇方言と首里方言の二つ)しか載せないという物足りなさは残ります。しかし、どちらかといえば普通名詞に偏した従来の方言集と比較すれば、今も生き続ける日本人の言語の実像をより具体的に捉えた辞典として評価できると考えます。

 この篇では、上記の第一部および第二部に載せられた方言の中に残る語源不詳または意味不詳の縄文語の意味を解釈することとします。上記の第一部は「ア」から「コ」までの「その一」、「サ」から「ト」までの「その二」と「ナ」から「ワ」までの「その三」と、第二部は「その四」と分割して掲載します。似た方言で容易に音韻の変化が推測できるものは重複して解釈することを避け、現代語で容易にその意味が理解できるものは除外しました。また、すでに国語篇(その二)や地名篇、雑楽篇の各篇において取り上げたものは、その旨注記しました。

 縄文語のポリネシア語による解釈は、他の諸篇と同様、原則として、その起源となったと推定される原ポリネシア語から変化したマオリ語(すでに失われた語彙でハワイ語に残るものについてはハワイ語とし、その旨を注記しました)とその意味を英語および日本語によって表記しました。主として使用したマオリ語・ハワイ語の辞典は次の通りです。
 (1)H.W.Williams M.A,Dictionary of the Maori Language,seventh edition,1997,GP Publications.
 (2)P.M.Ryan,The Reed Dictionary of Modern Maori,1995,TVNZ.
 (3)Mary Kawena Pukui and Samuel H.Elbert,Hawaiian Dictionary, revised and enlarged edition,1986,University of Hawaii Press.  

目 次 

第一 項目別方言一覧(「ナ」から「ワ」まで)

「ナ」

152なきむし(泣き虫)・ナキベッチョ・ナギムシ・ナギビッチョ・ナギミソ・ナキプシ・ナイカンボー・ナキミシ・ナキベソカキ・ナキメソ・ナキミソ・ナキンヅラ・ヨワミソ・ナキビス・ホエゴミソ・ビッタレ・ナキベソ・ナケヅラ・ナケベシ・ナチブサー・ナチムサー・ナギメロ・カンナイ・ナキジビ・ジビー・ジュージュームシ

153なぐる(殴る)・ハダグ・フタツケル・ブタラグ・クラスケル・カックラス・カックラカス・ハッコクル・ブンナグル・シャグ・タタク・ブサラウ・ドーヅク・クラワス・ナグー・ニヤス・テベス・ハリマス・クラス・クラスル・チチマース・ウッタクイ・スグイン・シバク・ハットバス・ウッタタク・グンチョツク・チッタタク・ヨズク

154なげる(投げる)・ブナゲル・ブンナゲル・ホール・ホンナゲル・ホカル・ホカス・ナゲー・ホータル・ナグッ・ナンギャル・ナギーン・ホーツ

155なこうど(仲人)・ナカド・オナゴドサン・ナグド・ゴシナンサマ・ナゴードサマ・バイシャク・カミサン・オナコード・オチューニン・セワニン・チューニン・ナカドサン・ナコードサン・コージニン・ナカオド・ナカウンド・ナカダチニン・ナカダッツァン・キモイリドン・ナカダチドン・ナカダッ・ナカラチ・ナカダティ・テンガサマ・クチキキ・ショワニン

156ななめ(斜め)・ハス・カダツラ・ハスッパ・ハスッペ・ハスカイ・ナノメ・ハスケァ・ヨドゴッ・シェーガー・ナナミ・ニンベ・カタガットル・カタンチ

157なまけもの(怠け者)・カラッポヤミ・カラポネヤミ・ズベコタレ・タレカモノ・セヤミコギ・オッジャグモノ・モノグサボーズ・ブショーモン・ノメシ・ナマクラモン・ダワモン・ジクナシ・ズクナシ・ドナマカワ・ナマカワ・ナマクラ・ノークリ・グータラ・ヘッテクライ・ノラ・ンゴクンドー・ズルケモン・フユーモン・ヌラクラモン・スッタクロ・フユッゴロ・フユークラサー・ナマキタムン・セッコギ・セヤミ・クサシ・キドロ・ゴクトレ・ズーソー・ブラボー・ゴクドー

158なまける(怠ける)・カラッポヤム・カラポネヤム・セッコギスル・タレカコガス・セヤム・オッジャグスル・タレカ・アブラウル・ノメシコク・ブラブラスル・ダワル・ズヤル・ズクオヌカス・ナマケー・ノータクレル・ズルケル・ズルクッ・ズンダレル・ズルクル・ユラリーン・ナマキーン・カダム・コク・オーチャクスー・アブローウル・ブショースル

「ニ」

159にんしんする(妊娠する)・ハラム・ハラオキグナル・カガエル・ハラタゲグナル・ハラオッケグナル・ジョーブニナル・オナカガオーキクナル・デキル・ハラデコナル・ミモチンナル・コドモガデキル・コガデキル・ハラボテニナル・コガデキヨル・ハラオーキナル・オメデタンナル・コドモガデキー・ミゴモル・ミモチニナル・サンマエスル・ハランフトーナットイナッ・ドンバランナル・コガデクル・ハラガフチナル・ハラガフトナッ・カサギーン・ハラボッケニナル・ヤヤノデキル・オメデタジャ

「ヌ」

160ぬすむ(盗む)・カッパラウ・ガメル・トル・ノスム・ヌスットスル・イボル・オットル・オットッ・ヌスムン・ギル・パチル・オガス・カスムル・イラブカス

「ネ」

161ねんねこ・ネネゴ・ダギヨギ・ネンネコバンテン・オブイバンテン・カメノコバンテン・ドンコ・オンブバンテン・モリドーギ・ドンチ・コオビ・オイネ・オイコ・オイバンテン・コーイギ・オサル・オイノコ・ナカコ・トージン・ネンネコタンジェン・ダンブクロ・ブク・コンゴ・ワタジン・アワイ・ショイコバンテン・コンゴバオイ

「ノ」

162〜のに・〜ケド・〜バテ・〜ドモ・〜ゲントモ・〜ゲンチョモ・〜キット・〜ダニ・〜ガニ・〜ヤニ・〜ニ・〜ヤケド・〜ケーガ・〜ケンド・〜ジャケンド・〜トイ・〜バッテンガ・〜トニ・〜チカイ・〜チ・〜ドン・〜ムンガ・〜シガ・〜ネ・〜ツニ

163のろま・ドンケ・ノロスケ・ノッツォ・ノッペ・ズクスケ・ウスノロ・ユージン・グズ・ショロショシテル・ノッソリ・シンギクサイ・ノロサク・グズマ・ノロ・トロイヤツ・チョレーモン・ヌルサク・トロクソ・ドンクソ・トロイ・ユットライトアッ・ドンジュー・グズロ・ヌリー・トットロー・ダラー・ウスラ・クズ・ドシ・トロコイ・テレンチャン・フータンヌルカ・トリ

「ハ」

164ばか(馬鹿)・ハンカクサイ・ホンジナシ・トボゲ・ホンデナス・バガケ・アンポンタン・バガ・デレ・ウスバガ・ダラ・アホ・ヌケサク・タワケ・アンゴ・ダボ・ダラズ・ダラジ・ホッコ・ポンケ・ニトハッシュ・バカタン・シチリン・フラー・フリムン・マヌケ・タフランケ・ホンツケネ・ボヤスケ・オンツァー・タロー・アヤ・ウツケ・ホッコマイ・フーケモン・トンマ・オタンチン

165はかどる(捗る)・ハガイグ・ハガエグ・ハカエグ・ハカイグ・ハカガイク・ハカイク・ラチンアク・ヨーケヤレル・デケル・ハカイキガツク・ハカドー・ミャーガアガル・サバケル・ハカンドル・ハカノイク・サバクッ・ススム・ッアガチュン・ハバチュン・ダチガエータ

166はしる(走る)・ハセル・ハッケル・サラウ・ハスル・ハネル・カゲル・トブ・カケル・カクッ・ハシッ・ハーエースン

167はずかしい(恥ずかしい)・メグセ・オショス・オショスエ・ショーシ・ハズガスエ・ハツカシエ・コッパズカシー・オカシー・メンドナ・テーサイガワリー・キマリガワリー・テレクサイ・カッコワルイ・ハチカシ・ミットモナイ・メンドラシー・ハンドゥーカシー・オカシカ・チャーガツカ・ハズカシカ・ウストロカ・ゲンナカ・ハジカサン・ショスガル・キノドクイ・ゲンネ

168はだし(裸足)・ハンダシ・スアシ・ハンダス・ハダス・ツブアシ・スッパダシ・ツボアシ・ハダシバキ・ハダシバシー・ハダシバラ・カリッサ・カラヒサ・ハラシ

169はらわた(腸)・ジンバラ・ミノコ・ナカ・ナイ・ワタ・ハラバタ・ゾーモツ・ヒャクヒロ・ハラ・ドブ・ゾーワタ・ゾーフ・ゾーバタ・ジゴ・ワタミームン・クスブクル

170ばんめし(晩飯)・ユーハン・バンゲメシ・バンゲノゴハン・バンメス・バンゲノママ・ヨーメシ・オイハン・ヨーハン・ユーメシ・バンゴハン・バンゲ・オヨーハン

「ヒ」

171ひかげ(日陰)・オロ・カゲ・コサ・カゲンダ・オンジ・カゲンボ・カゲビラ・カゲクロ・カーギ・カンゲチ

172ひさしぶり(久しぶり)・シサシ・ヒヤシブリ・ヒサスブリ・ヒシャシブリ・ヒシャスブリ・シシャシ・シバラクブリ・シバラクダッタ・シバラク・フサシブル・サシー・ハールカブリ・ヤットカメ・ヒサシカブリ・セカドブリ・サシブリ・ヒサシブー・ヒーサ・エットブリ・メズラシー・オトンドシー・ヒサシブイ・サシカブイ・ナゲーサ・オヒサシノー・ヘダシブリ・ヒサシカナー・ヒサシーノー

173ひじょうに(非常に)・ナマラ・ナンボ・トッテモ・エギナリ・ント・バガニ・ウント・イラク・マッサカ・イラ・ズイブン・バカ・コッテァ・テンポニ・カスナ・エライ・ドエレァー・ドエラェー・モノスゴ・ホンマニ・ガイニ・ホンネ・ボッケー・エロー・ブチ・ゴッツイ・ギョーサンナ・ショー・タイソー・ホンナコテ・ヒドー・バサロー・ガート・ワッゼ・レージナ・イッペー・ウダデ・スゴク・ガッツリ・ナンダモナグ・メッポー・ナカラ・ホンドリ・マッコト・ショーマッコト・チョーット・ダイギャ・バサレー・タイゲー・ギョーサン

174びじん(美人)・キリョーヨシ・オナゴヨシ・オナゴブリイーヒト・キレーナオナゴ・エーオナゴ・キリョーイー・イーオンナ・フリガイーヒト・キレーナヒト・ベッピンサン・オジョーモン・ベッピン・エーニョーバ・ベッピンナヒト・ジョーモンサン・ヨカオナゴ・チュラカーギー・キリョーモノ・カオノニンガイー・エトシゲナオナゴ・オシャン・チュライナグ

175ひたい(額)・ナズギ・ナンズギ・デンビ・ヒテーコンビ・ヒタエ・デビ・オデコ・フテー・フテァ・コペブチ・コベンタマ・ヒテーグチ・ミケン・コベ・デコチン・デボチン・ヒタエグチ・フチャーグチ・デコ・デブチン・フタエ・フタイ・ヒチャーガシラ・メッケン・ムコヅラ・ズッデコ・ヒチェー・フィチャイ・ナデコ・メンテー

176びっくりする・タマゲル・ドデンスル・ソボレル・ビックリシル・ビックラコク・オドケル・オドロク・オベル・オペー・オブケル・オーケル・タマガル・ビックイスッ・ウッタマグッ・タマガッ・ッウルルチュン・ウドゥルチュン

177ひなたぼっこ(日向ぼっこ)・ヒアダリサイル・ヌグダマリ・ヒナタバッコ・ヒガタブクリ・ヌクトマリ・ヒナタボッコリ・ヌクタンボリ・ヒナタヌクモリ・ヒナタブクロ・ヌクダマイスッ・ヒナタビックル・ヒナタボックリ・ティーラブーイ・ティーダブック

178ひらたい(平たい)・ペッタラコイ・ヒラテァ・タッピラコエ・ペッタラコエ・ヒッダチー・ヒラベッタイ・テーラ・ヒラペッタエ・ヒラクタイ・ベタコイ・ロック・ナルイ・ヒラベッテャー・ヘラベタイ・ヒラベッタカ・ペチャーッテシトッ・ヒラタカ・ビッタラカ・ヒラテーッテー・フィラー・ヘラタイ

179ひるめし(昼飯)・チューハン・ヒルメス・オヒル・チーハン・ヒル・ヒルゴハン・ヒルジャ・ヒラガリ・ヒリメシ・ヒンメシ・ッアサバン・アサバン・オイハン

「フ」

180ふくろう(梟)・フグロ・オッホ・モホ・ホーホードリ・ホロスケ・トースクボー・フクロコ・ボーズッコ・ブロチョ・フルツク・ヨズク・フルトゥク・コーゾ・コーズドコ・コーズドリ・コズ・トッコ・マヤージグク・ミミズク・ノロスケ

181ふざける(巫山戯る)・オダツ・ジョサケル・ジャバゲル・オンダズ・フジャケル・オドゲル・ギスル・ジャジケル・ハシャグ・カスゲル・キザエル・ワニワニスル・チャケル・チョースク・チョケル・イチビル・ホタエル・ヒョーゲル・チバケル・ツバエル・アラビル・ダダケル・ソバエル・トゴユッ・ヒョーグル・トゴユル・ドークル・メアガル・ガンマリスン・ワチャクスン・ホゴル・オドケル・アバサケル・オチョケル・サイアガル・ジャレル・フザクル

182ぶしょう(無精)・カラポネヤミ・セッコギ・カンバネヤミ・ブショタガレ・スンピタレ・クサシ・ブショッタガリ・モノグサ・ブショッタカリ・ノメシ・ナマクラ・ショータレ・メメッチガリ・ズクナシ・ナマカワ・オーチャク・シミタレ・ブショータレ・ブショモン・ズボラ・ドーラクナ・ヒキタレ・ノラ・フユーモン・ヒューナシ・フユージ・ヨダゴロ・フユッゴロ・フユー・ナマキタムン・カラッポヤミ・オーチャクモン・ヘッテクライ

183ふすま(襖)・カラカミ・フシマ

184ぶつかる・ブチアタル・ゴッチンスル・ブッツク・ガッツク・カチンコスル・イカタル・イキャタル・コズム・アタル・カッチャウ・トゥキアタル・ウチアタル・ツッガタッ・ブチカイン・ブチタタュン・チッツクル・ツキアタル

185ふとい(太い)・フテ・フテァ・フットエ・ブットイ・フトカ・フチー・マギサン・クェートーン

186ふとる(太る)・コエル・デコナル・フトー・コユッ・フユッ・クェーイン・クェーユン・デブル

「ヘ」

187へそくり・ホマチ・ホタコ・ホマツコ・ホマズ・ホマチコ・ホンマズ・シンガエ・シンガイジェン・ナイショガネ・マツボリ・キャーフゼン・ヘソクイ・ワタクシ・ホンマチ・ホマチガネ・ホリタ

188へた(下手)・ヘタクソ・テズナシ・ヘダカス・ヘタッペ・ドン・ヘタカ・ブチホ・ヒタ・ジョージェーアラン

189へび(蛇)・ナガナワ・ヘンビ・クチナワ・クツナ・クチナオ・クチナゴ・ヘツ・ハブ・ミーサン・ミーサマ・ヒラクチ・ナガタロー

「ホ」

190ほお(頬)・ホッペタ・ホッタンブ・ホッタブ・ホータン・ホーダマ・ホーゲタ・ホータ・ホーカンバチ・ホータンボ・ホーベンタ・ベップ・フーベタ・ビンタ・フータン・フ・フータイ・ホッペ・ホッカイ・ボータブ

191ほそい(細い)・ホソコイ・ホセ・ホソッコエ・ホソエ・ホソッケー・コマカ・ホソカ・ホシー・コンメ・コマンカ・グマサン・クマサン

192ぼたもち(牡丹餅)・オハギ・ボダモズ・ハンゴロシ・カイモチ・アンモー・アンコロモチ・フチャギ・アンムチ・アンカケ・アンコロモツ

193ぼち(墓地)・ハガショ・オハガ・ランバ・ラントバ・ハガバ・ハカ・ハカバ・ナント・オハカ・ハカショ・サンメァー・サンマイ・ハカワラ・シンジュ・ハカジー

「マ」

194また(股)・マッカンダ・ヨロタ・マタグラ・モモッケタ・ウチモモ・モモタン・マタバイ

195まっすぐ・マッチグ・マッスー・スグイ・チョク・マッスグイ・マッスグカ・マットーバ

196まないた(俎・俎板)・サイバン・キリバン・セァバン・マナエダ・キーバン・マルチャ・マナチャ

197まねく(招く)・ヨブ・ヨンバル・ヨバウ・ヨバル・キテモラウ・サソウ・ヒトオヨーッ・ッウンチケースン・ユブン・ヨバワル

198まぶしい(眩しい)・マッコイ・マンツコイ・マッペ・マツポエ・マチポイ・マジラッポエ・マジッペー・ヒデップシー・カガッポエ・マバヤシー・マブイ・ヒドロイ・ヒドロッコイ・カガハエー・ヒドロシー・ヒドロェー・マバイー・ヒズラシー・ババイー・マバユイ・マバイカ・マバユカ・メハリー・ミーヒチャラサン・ミーフィチャラサン

199まめ・ヘゴマ・マデ・ネッズエ・マメナ・コズクガアル・コマメ・マメッタイ・リチギ・キジョーナ・キチョーメンナ・シンブズヨカ・マメカ・キチョーメン・マクトゥー・チグマ・ショーラシー・ヨジー

「ミ」

200みせびらかす(見せびらかす)・ミセブラガス・ミシェビラガス・ミシェズラガス・ミセビラガル・コーマンスル・セキラカス・ヘケラカス・ヒケラカス・セブカス・ケナリガス・セビラカス・ヘケラス・ミシェブラカス・ウラヤマシガラス・ミセタクッ・ミシーン・チュンカイミシーン・ヘケル

「ム」

201むく(剥く)・ヒンムグ・ミク・ムクジル・ハグ・ムーッ・ンーチュン・ミーッ

202むす(蒸す)・フカス・オムス・ウムス・オモス・モシ・ッンブスン・ンブスン・モス

203むずかる・ダハンコグ・ムンズガル・ムンツケル・ズゴネル・ムジケル・ダダコネル・ズグネル・グズル・ナンカンユー・ジャミル・ヤンチャマク・ドジル・ヤカラキル・グズグズユー・ダラケル・グンタハル・ヤゴイー・ネダレル・ホグレル・ヤカラユー・ダダオコネル・グゼル・アセガル・ゴネル・ヤカラオユーッ・フンレースン・アカングワヌウティチカン・ゴンボホル・イジレル・タダケル・ヤゴガデー・クジュークル・ネジカリュー

「メ」

204めだか(目高)・メザッコ・メンダガッコ・アソビザッコ・メダガ・ペンペンダコ・ウルメ・トロメンコ・ミトバヨ・メメジャコ・ネンパゴ・チリンビヤ・カンコロ・タイコンボー・ベベン・ビビン・メンダカ・ゾーナメ・ビビンチョ・タカマメ・タカマーミ・ウルメコ・オキンタ・オキンチャ・オキンチャボ・コメンジャコ・チリンゴ・ビビンジャコ・メメンジャコ

205めっきり・ズンブ・ナンボ・ズッタリ・ガダガダト・ガラット・グエラ・ズイブン・キューニ・テンポニ・メッポー・メッタ・エロー・アタダニ・アンギャーニ・ヒドー・ドヒョーシ・ニワカニ・ヨイヨ・ドンド・ヒョロット・ゴロット・アタデー・ヒジュー・メッキー・ッアッタニ・アッタニ・タイブン・ポクット

206めんどう(面倒)・メンドクサイ・メンドイ・メンドクセァ・スズメンドクセー・メンドクシェ・スズメンドクサエ・メンドクサエ・ダヤイ・メンドーナ・ジャマクサイ・ゴッチョ・オトロシー・メンダー・メンダナ・メンドークシャー・ヤネコイ・センナイ・オトマシ・セカラシカ・ヤグラシカ・メンドクサカ・ヤヤコシー・メンデクセ・ミンロー・ミンドー・シェカラシカ」・ヒチメンドクセー

「モ」

207もったいない・イダマシー・イダワシ・エダマスネァ・エダマスエ・エダマシ・アッタラモン・モッタナイ・モッタネー・オトマシー・モッタェナェー・ホシー・モッテャーニャー・モッタイナー・モッタイナカ・モッチャニャ・アタレー・アッタラシカ・ッイチャサン・アタラサン・ツーエナ・オシナギー

208もどる(戻る)・モンドル・モドリゲル・カエル・ヒッカエス・ヒッケール・カイル・トッテケース・イッテモンデクル・イヌ・モドー・キャーモドル・モドッ・ムルイン・ムドゥイン・カェァール・イヌル・モンテクル

209ものもらい(麦粒腫)・メッパ・ヨノメ・ノミ・バガ・ホイト・ノメ・モノモラエ・メカゴ・メッパツ・メモライ・メコジキ・メンボ・メーボ・メバチコ・デバツク・ホイタ・メボイト・メボ・メイボ・オヒメサン・ナイマズ・モライ・インノクソ・インモレ・ミーンデー・ミンベー

「ユ」

210ゆいのう(結納)・ユエノー・ユーノ・サダメ・ヘンジ・クチガダメ・タルイレ・イーノー・シルシ・オユイノー・キメザケ・タノミイレ・ノシイレ・タノメ・イーイレ・オチャ・カタメ・ユイ・モジギ・ホンザケ・ニービチジン

211ゆうだち(夕立)・ニワカアメ・オレサマアメ・ラエサマアメ・オシグレ・ヨダチ・ニワカ・サダチ・ソバイ・サンダチ・イッカケアメ・サダッ・カタブイ・カンダチアメ・ライサマアメ・ヨラチ・ソバエ・ユーズ・タカヌシーバイ

212ゆうべ(昨夜)・ユンベ・ユンベナ・インベ・ヨンベナ・ヨンベ・キニョーノバン・ユービ・チヌーヌユル・サギノバンゲ・ヤゼン・キノノバン

213ゆっくり・ジンタンジンタン・ユッタド・ソロソロド・モックラモックラ・ユッタラ・ジックリ・ボツボツ・ユックラ・ユルット・ボチボチ・ソロット・ユーニ・オチラト・シワシワ・オッチラ・ソーロー・ソローソロ・ヨーラヨラ・ユックル・ユックイ・ヨンナー・チョッコシズツ・ユッタリ

214ゆでる(茹でる)・ユガグ・ユンデル・ニル・ウデル・モドル・ユレル・エデー・イデル・インデル・イガク・イズッ・イズル・ユズッ・ユリーン・ユディーン

「ヨ」

215よだれ(涎)・ビロ・ベロッコ・ヨンダレ・ユダレ・ヨズ・ヨド・ゴボジ・ユライ・ユダイ・ベロ・ツバ・ツバキ・イダレ・ツ・ヨラレ

216よめ(嫁)・ヨメッコ・アネチャン・ヨメサマ・ヨメサン・ヨメハン・ヨメサ・ヨメクサン・ヨメジョ・ユミ・アネ・オンバコ・オカチャン・オナケー・ハナカッサン・ネー・ゴリョンサン・カカ

「ワ」

217わがまま・カラキジ・カッテ・ダジャグ・キママ・ワガンマ・ヨクナシ・ガテレン・ジブンカッテ・オーチャク・カッテモン・キママハッピャク・キズイ・ワガサ・ジラ・ワゲママ・ワガイチマキバカユー・シタカホーダイ・ワガエーゴツ・キカンタロ・ルーナーカッティー・フンデー・ダハンコギ

218わずらわしい(煩わしい)・シチメンドクサイ・オモヤミダ・メンドクセァ・ズンケネー・スズメンドクサエ・メンドクセー・ヤッカイ・ショウシナイ・シンキクサイ・ヤブセッテー・ヤッカイダ・メンドクサェー・ウルサイ・ヤヤコシー・シンドクサイ・オトロシイ・ウタテー・メンダー・メンダクセ・ヤゲローシー・ヤネコイ・センナイ・メンドイ・シワシカ・シェカラシカ・ヒチメンドクサカ・ヒッチャカマシカ・ノサン・ミンローサン・カシマサン・セズネー・メンドナ・ジャマクサイ・ウルサェァ・シャーシカ・セカラシカ・シシカマシー・ウットーシー・セセロシー

219わんぱくもの(わんぱく者)・キカンボ・キカネーワラシ・キカネヤズ・オダズモッコ・キカナス・キカズボー・アバレ・アンパク・ワンパク・イタズラッコ・キカンコ・ヤンチャボ・ガータク・ワンパクボーズ・ドーチャークボー・コマリモン・オーチャクモン・ゴンタ・ヤンチャ・ヤンチャボシ・ショーカラゴ・イケジゴ・ガンボー・テンゴ・ワリコトシー・ガキ・ワルソー・ワルソボー・オードボーズ・ワルゴロ・ワルガネ・ワレコッボ・ッウーマクー・ウーマク・ワンパクコ・ヤンチャモン・オテンバ・ドーチャクアマ・ドムナランコー・ショーカラ・ニガシロ・ワルボーズ・マクワラビ・ボーチリムン

<修正経緯>

第一 項目別方言一覧(「ナ」から「ワ」まで)
 

「ナ」

152なきむし(泣き虫)・ナキベッチョ・ナギムシ・ナギビッチョ・ナギミソ・ナキプシ・ナイカンボー・ナキミシ・ナキベソカキ・ナキメソ・ナキミソ・ナキンヅラ・ヨワミソ・ナキビス・ホエゴミソ・ビッタレ・ナキベソ・ナケヅラ・ナケベシ・ナチブサー・ナチムサー・ナギメロ・カンナイ・ナキジビ・ジビー・ジュージュームシ

 「なきむし」の方言には、北海道の「ナキベッチョ」、青森、福島の「ナギムシ」、岩手の「ナギビッチョ」、宮城の「ナギピチョ」(「ナギビッチョ」と同語源)、秋田、山形の「ナギミソ」、茨城の「ナキプシ」、千葉の「ナイカンボー」、新潟、山梨の「ナキミシ」、富山の「ナキベソカキ」、石川の「ナキメソ」、福井、三重などの「ナキミソ」、静岡の「ナキンヅラ」、奈良、愛媛の「ヨワミソ」、鳥取の「ナキビス」、島根の「ホエゴミソ」、広島の「ビッタレ」、山口の「ビータレ」(「ビッタレ」と同語源)、福岡、佐賀などの「ナキベソ」、宮崎の「ナケヅラ」、鹿児島の「ナケベシ」、沖縄那覇の「ナチブサー」、沖縄首里の「ナチムサー」があります。

 上記のほか、秋田の「ナギメロ」、千葉の「カンナイ」、香川の「ナキジビ」、「ジビー」、大分の「ジュージュームシ」(悪口)などがあります。

 この「なきむし」、「ナキベッチョ」、「ナギムシ」、「ナギビッチョ」、「ナギミソ」、「ナキプシ」、「ナイカンボー」、「ナキミシ」、「ナキベソカキ」、「ナキメソ」、「ナキミソ」、「ナキンヅラ」、「ヨワミソ」、「ナキビス」、「ホエゴミソ」、「ビッタレ」、「ナキベソ」、「ナケヅラ」、「ナケベシ」、「ナチブサー」、「ナチムサー」、「ナギメロ」、「カンナイ」、「ナキジビ」、「ジビー」、「ジュージュームシ」は、

  「ナ・キヒ・ム・チ」、NA-KIHI-MU-TI(na=by,belonging to,indicating parentage or descent;kihi=indistinct(of sound),murmur of the sea;mu=insects,murmur at,show discontent with,silent;ti=throw,cast)、「かぼそい・しくしくと(泣くような)声を・立てる・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「チ」が「シ」となった)

  「ナ・キヒ・ペ・チオ」、NA-KIHI-PE-TIO(na=by,belonging to,indicating parentage or descent;kihi=indistinct(of sound),murmur of the sea;pe=crushed,soft,like;tio=cry,call)、「かぼそい・悲鳴に・似た声を立てる・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ペ」が「ベ」から「ベッ」と、「チオ」が「チョ」となった)

  「(ン)ガ(ン)ギ・ム・チ」、NGANGI-MU-TI(ngangi=cry of distress,noise;mu=insects,murmur at,show discontent with,silent;ti=throw,cast)、「悲鳴のような声(泣き声)を・忍ばせて・立てる(人。泣き虫)」(「(ン)ガ(ン)ギ」の最初のNG音がN音に、次のNG音がG音に変化して「ナギ」と、「チ」が「シ」となった)

  「(ン)ガ(ン)ギ・ピ・チオ」、、NGANGI-PI-TIO(ngangi=cry of distress,noise;pi=young of birds(pipi=half grown,flabby,squeak);tio=cry,call)、「悲鳴のような声(泣き声)を・弱々しく・立てる(人。泣き虫)」(「(ン)ガ(ン)ギ」の最初のNG音がN音に、次のNG音がG音に変化して「ナギ」と、「ピ」が「ビ」または「ビッ」と、「チオ」が「チョ」となった)

  「(ン)ガ(ン)ギ・ミ・ト」、、NGANGI-MI-TO(ngangi=cry of distress,noise;mi=urine,stream;to=drag,haul)、「悲鳴のような声(泣き声)を・長々と・(引っ張る)立てる(人。泣き虫)」(「(ン)ガ(ン)ギ」の最初のNG音がN音に、次のNG音がG音に変化して「ナギ」と、「ト」が「ソ」となった)

  「ナ・キヒ・プ・チ」、NA-KIHI-PU-TI(na=by,belonging to,indicating parentage or descent;kihi=indistinct(of sound),murmur of the sea;pu=blow gently,pipe;ti=throw,cast)、「かぼそい(泣くような)声を・しめやかに立てる・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「チ」が「シ」となった)

  「ナイ・カニ・ポウ」、NAI-KANI-POU(nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating;(Hawaii)kani=sound or noise of any kind,cry out,roar;pou=pour out)、「長々と・泣き声を・立てる(人。泣き虫)」(「カニ」が「カン」と、「ポウ」が「ボー」となった)

  「ナ・キヒ・ミ・チ」、NA-KIHI-MI-TI(na=by,belonging to,indicating parentage or descent;kihi=indistinct(of sound),murmur of the sea;mi=urine,stream;ti=throw,cast)、「かぼそい(泣くような)声を・(川が流れるように)長々と・立てる・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「チ」が「シ」となった)

  「ナ・キヒ・ペ・ト・カキ」、NA-KIHI-PE-TO-KAKI(na=by,belonging to,indicating parentage or descent;kihi=indistinct(of sound),murmur of the sea;pe=crushed,soft,like;to=drag,haul;kaki=neck,throat)、「かぼそい(泣くような)声に・似た声を・長々と・喉から出す・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ペ」が「ベ」と、「ト」が「ソ」となった)

  「ナ・キヒ・メ・ト」、NA-KIHI-ME-TO(na=by,belonging to,indicating parentage or descent;kihi=indistinct(of sound),murmur of the sea;me=as if,like,as it were;to=drag,haul)、「かぼそい(泣くような)声を・まるで・(引っ張るように)長々と立てる・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ト」が「ソ」となった)

  「ナ・キヒ・ミ・ト」、NA-KIHI-MI-TO(na=by,belonging to,indicating parentage or descent;kihi=indistinct(of sound),murmur of the sea;mi=urine,stream;to=drag,haul)、「かぼそい(泣くような)声を・(川が流れるように)長々と・(引っ張るように)出す・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ト」が「ソ」となった)

  「ナ・キヒ・ナ・ツラハ」、NA-KIHI-NA-TURAHA(na=by,belonging to,indicating parentage or descent;kihi=indistinct(of sound),murmur of the sea;turaha=keep away,be separated,open,wide)、「かぼそい(泣くような)声を・あからさまにする・ような・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、次の「ナ」が「ン」と、「ツラハ」のH音が脱落して「ツラ」から「ヅラ」となった)

  「イ・オワ・ミ・ト」、I-OWHA-MI-TO(i=be stirred of the feelings;owha,owhaowha=used of a baby just able to turn over;mi=urine,stream;to=drag,haul)、「(やっと寝返りが打てるような)赤ん坊の・泣き声を・(川が流れるように)長々と・(引っ張るように)立てる(人。泣き虫)」(「イ・オワ」が「ヨワ」と、「ト」が「ソ」となった)

  「ナ・キヒ・ピ・ツ」、NA-KIHI-PI-TU(na=by,belonging to,indicating parentage or descent;kihi=indistinct(of sound),murmur of the sea;pi=young of birds(pipi=half grown,flabby,squeak);tu=stand,settle,fight with,energetic)、「かぼそい(泣くような)声を・雛が・懸命に泣くように立てる・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ピ」が「ビ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ホヘ・(ン)ゴ・ミ・ト」、HOHE-NGO-MI-TO(hohe=active,strong;ngo=cry,grunt;mi=urine,stream;to=drag,haul)、「力強い・泣き声を・(川が流れるように)長々と・(引っ張るように)出す・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「ホヘ」の第二のH音が脱落して「ホエ」と、「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「ト」が「ソ」となった)

  「ピ・タレ」、PI-TARE(pi=young of birds(pipi=half grown,flabby,squeak);tare=hang,gasp for breath,be drawn towards)、「雛の鳴き声が・長々と続くような(泣き声をたてる人。泣き虫)」(「ピ」が「ビッ」または「ビー」となった)

  「ナ・キヒ・ペ・ト」、NA-KIHI-PE-TO(na=by,belonging to,indicating parentage or descent;kihi=indistinct(of sound),murmur of the sea;pe=crushed,soft,like;to=drag,haul)、「かぼそい(泣くような)声に・似た声を・長々と出す・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ペ」が「ベ」と、「ト」が「ソ」となった)

  「ナ・ケ・ツラハ」、NA-KE-TURAHA(na=by,belonging to,indicating parentage or descent;ke=produce a sharp abrupt sound(keke=creak,quack,armpit);turaha=keep away,be separated,open,wide)、「なんとも不快な(泣き)声を・あからさまにする・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「ツラハ」のH音が脱落して「ツラ」から「ヅラ」となった)

  「ナ・ケ・ペ・チ」、NA-KE-PE-TI(na=by,belonging to,indicating parentage or descent;ke=produce a sharp abrupt sound(keke=creak,quack,armpit);pe=crushed,soft,like;ti=throw,cast)、「なんとも不快な(泣き)声を・放り出す・ような・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「ペ」が「ベ」と、「チ」が「シ」となった)

  「(ン)ガチ・プ・タ」、NGATI-PU-TA(ngati=tribal prefix;pu=blow gently,pipe;ta=dash,beat,lay)、「しめやかな(泣き)声を・ぶつける・部族に属する(人。泣き虫)」(「(ン)ガチ」のNG音がN音に変化して「ナチ」と、「プ」が「ブ」と、「タ」が「サー」となった)

  「(ン)ガチ・ム・タ」、NGATI-MU-TA(ngati=tribal prefix;mu=insects,murmur at,show discontent with,silent;ta=dash,beat,lay)、「しめやかな(泣き)声を・ぶつける・部族に属する(人。泣き虫)」(「(ン)ガチ」のNG音がN音に変化して「ナチ」と、「タ」が「サー」となった)

  「(ン)ガ(ン)ギ・メ・ロ」、NGANGI-ME-RO(ngangi=cry of distress,noise;me=as if,like,as it were;ro=roto=inside)、「悲鳴のような声(泣き声)を・まるで・(身体の中に入れる)外へ漏れないように立てる(人。泣き虫)」(「(ン)ガ(ン)ギ」の最初のNG音がN音に、次のNG音がG音に変化して「ナギ」となった)

  「カニ・ナイ」、KANI-NAI((Hawaii)kani=sound or noise of any kind,cry out,roar;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating)、「長々と・泣き声を立てる(人。泣き虫)」(「カニ」が「カン」となった)

  「ナ・キヒ・チ・ピ」、NA-KIHI-TI-PI(na=by,belonging to,indicating parentage or descent;kihi=indistinct(of sound),murmur of the sea;ti=throw,cast;pi=young of birds(pipi=half grown,flabby,squeak))、「かぼそい(泣くような)声を・雛が泣くように・立てる・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「チ」が「ジ」と、「ピ」が「ビ」となった)

  「チ・ピ」、TI-PI(ti=throw,cast;pi=young of birds(pipi=half grown,flabby,squeak))、「雛が泣くように・(泣き声を)立てる(人。泣き虫)」(「チ」が「ジ」と、「ピ」が「ビー」となった)

  「チウチウ・ム・チ」、TIUTIU-MU-TI(tiutiu=thrush;mu=insects,murmur at,show discontent with,silent;ti=throw,cast)、「(茂みに隠れて鳴く)ツグミのように・しくしくと(泣くような)声を・立てる・(人の)子孫に属する(人。泣き虫)」(「チウチウ」が「ジュージュー」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

153なぐる(殴る)・ハダグ・フタツケル・ブタラグ・クラスケル・カックラス・カックラカス・ハッコクル・ブンナグル・シャグ・タタク・ブサラウ・ドーヅク・クラワス・ナグー・ニヤス・テベス・ハリマス・クラス・クラスル・チチマース・ウッタクイ・スグイン・シバク・ハットバス・ウッタタク・グンチョツク・チッタタク・ヨズク

 「なぐる」の方言には、北海道、宮城の「ハダグ」、岩手の「フタツケル」、秋田の「ブタラグ」、山形の「クラスケル」、福島の「クラツケル」(「クラスケル」と同語源)、茨城の「カックラス」、栃木の「カックラカス」、群馬の「ハッコクル」、埼玉、神奈川などの「ブンナグル」、新潟の「シャグ」、富山、石川などの「タタク」、山梨の「ブサラウ」、岐阜の「ドーヅク」、愛知、鳥取などの「ドズク」(「ドーヅク」と同語源)、滋賀、京都などの「ドツク」(「ドーヅク」と同語源)、和歌山、宮崎の「クラワス」、島根の「ナグー」、広島の「ニヤス」、山口の「テベス」、徳島の「ハリマス」、香川、高知などの「クラス」、佐賀の「クラスッ」(「クラス」と同語源)、長崎、熊本の「クラスル」、大分の「チチマース」、鹿児島の「ウッタクイ」、鹿児島那覇・首里の「スグイン」があります。

 上記のほか、北海道の「シバク」(若年層・多)、群馬の「ハットバス」(倒れるほどに)、新潟の「ハタグ」(上品)(「ハダグ」と同語源)、佐賀の「ウッタタク」、「グンチョツク」(げんこつで)、大分の「チッタタク」、「クラース」(激しく)(「クラス」と同語源)、「ヨズク」(軽く)などがあります。

 この「なぐる」、「ハダグ」、「フタツケル」、「ブタラグ」、「クラスケル」、「カックラス」、「カックラカス」、「ハッコクル」、「ブンナグル」、「シャグ」、「タタク」、「ブサラウ」、「ドーヅク」、「クラワス」、「ナグー」、「ニヤス」、「テベス」、「ハリマス」、「クラス」、「クラスル」、「チチマース」、「ウッタクイ」、「スグイン」、「シバク」、「ハットバス」、「ウッタタク」、「グンチョツク」、「チッタタク」、「ヨズク」は、

  「ナ・クル」、NA-KURU(na=by,belonging to;kuru=strike with the fist,pound,pelt)、「拳骨で・殴る(殴る)」(「クル」が濁音化して「グル」となった)

  「パ・タ・ハ(ン)グ」、PA-TA-HANGU(pa=block up,prevent,assault;ta=dash,beat,lay;hangu=scrape strips og flax with a shell to make it softer)、「勢いよく・(麻の繊維をしごくように腕を振って)打撃を・加える(殴る)」(「パ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハ」と、「タ」のA音と「ハ(ン)グ」のH音が脱落し、NG音がG音に変化して「アグ」となったその語頭のA音が連結して「タグ」から「ダグ」となった)

  「プタ・ツケ・ル」、PUTA-TUKE-RU(puta=battle,battlefield;tuke=elbow,angle,nudge;ru=shake,agitate,scatter)、「戦場で戦うように・腕を・振う(殴る)」(「プタ」のP音がF音を経てH音に変化して「フタ」となった)

  「プタ・アラ・ハ(ン)グ」、PUTA-ARA-HANGU(puta=battle,battlefield;ara=rise,raise;hangu=scrape strips og flax with a shell to make it softer)、「戦場で・奮起して・(麻の繊維をしごくように)腕を振る(殴る)」(「プタ」が「ブタ」となったその語尾のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「ブタラ」となり、更にその語尾のA音と「ハ(ン)グ」のH音が脱落し、NG音がG音に変化して「アグ」となったその語頭のA音が連結して「ブタラグ」となった)

  「クラ・ツケ・ル」、KULA-TUKE-RU((Hawaii)kula=plain,field,open country;tuke=elbow,angle,nudge;ru=shake,agitate,scatter)、「(例の場所)戦場で戦うように・腕を・振る(殴る)」(「ツケ」が「スケ」となった)

  「カ・クラ・ツ」、KA-KULA-TU(ka=take fire,be lighted,burn;(Hawaii)kula=plain,field,open country;tu=fight with,energetic)、「(心を火のように燃やして)奮起して・(例の場所)戦場で戦うように・懸命に行動する(殴る)」(「カ」が「カッ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「カ・クラ・カハ・ツ」、KA-KULA-KAHA-TU(ka=take fire,be lighted,burn;(Hawaii)kula=plain,field,open country;kaha=strong,strength;tu=fight with,energetic)、「(心を火のように燃やして)奮起して・(例の場所)戦場で戦うように・力強く・懸命に行動する(殴る)」(「カ」が「カッ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ハコ・クル」、HAKO-KURU(hako=straight,erect;kuru=strike with the fist,pound,pelt)、「ただ(直に)・拳骨で殴る(殴る)」(「ハコ」が「ハッコ」となった)

  「プ(ン)ガ・ナ・クル」、PUNGA-NA-KURU(punga=reason,cause,origin;na=by,belonging to;kuru=strike with the fist,pound,pelt)、「何かの理由・で・(拳骨で)殴る(殴る)」(「プ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「プナ」から「ブン」と、「クル」が「グル」となった)

  「チ・ハ(ン)グ」、TI-HANGU(ti=throw,cast;hangu=scrape strips og flax with a shell to make it softer)、「(麻の繊維をしごくように腕を振って)打撃を・加える(殴る)」(「チ」が「シ」と、「ハ(ン)グ」のH音が脱落し、NG音がG音に変化して「アグ」となり、「シ・アグ」から「シャグ」となった)

  「タタ・アク」、TATA-AKU(tata=beat down,strike repeatedly;aku=delay,scrape out,cleanse)、「繰り返し打撃を与えて・ぶちのめす(殴る)」(「タタ」の語尾のA音と「アク」の語頭のA音が連結して「タタク」となった)

  「プタ・ラウ」、PUTA-RAU(puta=battle,battlefield;rau=hundred,multitude)、「何回も・戦場でのように戦う(殴る)」(「プタ」が「ブサ」となった)

  「タウ・ツク」、TAU-TUKU(tau=attack,draw or push a sliding board;tuku=side,edge)、「(人の顔の)側面に・襲いかかる(殴る)」(「タウ」のAU音がO音の変化して「ト」から「ド」または「ドー」と、「ツク」が「ヅク」または「ズク」となった)

  「クラ・ワ・ツ」、KULA-WA-TU((Hawaii)kula=plain,field,open country;wa=so and so;tu=fight with,energetic)、「(例の場所)戦場で戦うように・懸命に・あの何をする(腕を振る。殴る)」(「ツ」が「ス」となった)

  「ナ・ハ(ン)グ」、NA-HANGU(na=by,belonging to;hangu=scrape strips og flax with a shell to make it softer)、「(麻の繊維をしごくように腕を振って)打つ・部類に属することを行う(殴る)」(「ナ」のA音と「ハ(ン)グ」のH音が脱落し、NG音がG音に変化して「アグ」となったその語頭のA音が連結して「ナグ」から「ナグー」となった)

  「ニヒ・イア・ツ」、NIHI-IA-TU(nihi,ninihi=move stealthly,surprise party in war;ia=indeed;tu=fight with,energetic)、「実に・突如として・懸命に襲う(殴る)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「イア」が「ヤ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「タイ・パエ・ツ」、TAI-PE-TU(tai=tide,wave,anger,violence;pae=lie across,be cast ashore,be thrown down;tu=fight with,energetic)、「荒々しい・力で・懸命に襲う(殴る)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「パ・リマ・ツ」、PA-RIMA-TU(pa=touch,reach,strike;rima=ringa=hand;tu=fight with,energetic)、「懸命に・手で・叩く(殴る)」(「パ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「クラ・ツ」、KULA-TU((Hawaii)kula=plain,field,open country;tu=fight with,energetic)、「(例の場所)戦場で戦うように・懸命に行動する(殴る)」(「ツ」が「ス」または「スッ」となった。また「クラ」が「クラー」となった)

  「クラ・ツ・ル」、KULA-TU-RU((Hawaii)kula=plain,field,open country;tu=fight with,energetic;ru=shake,agitate,scatter)、「(例の場所)戦場で戦うように・身を震わせて・懸命に行動する(殴る)」(「ツ」が「ス」となった)

  「チチ・マツ」、TITI-MATU(titi=peg,stick in pegs etc.;matu=fat,=ma atu=go,come)、「十分に・(棒で)打つ(殴る)」(「マツ」が「マース」となった)

  「ウ・タ・クイ」、U-TA-KUI(u=be firm,be fixed,reach its limit;ta=dash,beat,lay;(Hawaii)kui=to pound,punch,strike,box)、「とことん・ぶち・のめす(殴る)」(「ウ」が「ウッ」となった)

  「ツ・クイ・ナ」、TU-KUI-NA(tu=fight with,energetic;(Hawaii)kui=to pound,punch,strike,box;na=by,belonging to,satisfied,content)、「懸命に・満足するまで・殴る(殴る)」(「ツ」が「ス」と、「クイ」が濁音化して「グイ」と、「ナ」が「ン」となった)

  「チ・パク」、TI-PAKU(ti=throw,cast;paku=make a sudden sound or report,beat,knock)、「打撃を・与える(殴る)」(「チ」が「シ」と、「パク」が「バク」となった)

  「パ・トパ・ツ」、PA-TOPA-TU(pa=touch,strike,assault;topa=fly,soar;tu=fight with,energetic)、「力を込めて・(相手が)飛ぶほどに・殴る(殴る)」(「パ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハ」から「ハッ」と、「トパ」が「トバ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ウ・タタ・アク」、U-TATA-AKU(u=be firm,be fixed,reach its limit;tata=beat down,strike repeatedly;aku=delay,scrape out,cleanse)、「とことん・繰り返し打撃を与えて・ぶちのめす(殴る)」(「ウ」が「ウッ」と、「タタ」の語尾のA音と「アク」の語頭のA音が連結して「タタク」となった)

  「(ン)グ(ン)グ・チオ・ツク」、NGUNGU-TIO-TUKU(ngungu=eat greedily,gnaw;tio=cry;tuku=let go,send,blow from any quarter as wind)、「(人の頭をあらゆる方向から)あちこち打撃を・しつこく加えて・悲鳴を上げさせる(殴る)」(「(ン)グ(ン)グ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「グヌ」から「グン」と、「チオ」が「チョ」となった)

  「チ・タタ・アク」、TI-TATA-AKU(ti=throw,cast,overcome;tata=beat down,strike repeatedly;aku=delay,scrape out,cleanse)、「圧倒するまで・繰り返し打撃を与えて・ぶちのめす(殴る)」(「チ」が「チッ」と、「タタ」の語尾のA音と「アク」の語頭のA音が連結して「タタク」となった)

  「イオ・ツク」、IO-TUKU(io=spur,ridge,lock of hair;tuku=let go,send,blow from any quarter as wind)、「(人の)頭を・あちこち(風が当たるように軽く)打つ(殴る)」(「イオ」が「ヨ」と、「ツク」が「ズク」となった)

の転訛と解します。

154なげる(投げる)・ブナゲル・ブンナゲル・ホール・ホンナゲル・ホカル・ホカス・ナゲー・ホータル・ナグッ・ナンギャル・ナギーン・ホーツ

 「なげる」の方言には、秋田の「ブナゲル」、栃木の「ブンナゲル」、群馬、石川などの「ホール」、富山の「ホンナゲル」、岐阜、愛知の「ホカル」、三重、滋賀などの「ホル」(「ホール」と同語源)、兵庫の「ホカス」、島根の「ナゲー」、山口の「ホータル」、佐賀、長崎などの「ナグッ」、熊本の「ナンギャル」、鹿児島那覇・首里の「ナギーン」があります。

 上記のほか、佐賀の「ホーツ」(近い距離)、大分の「ホタル」(「ホータル」と同語源)があります。

 この「なげる」、「ブナゲル」、「ブンナゲル」、「ホール」、「ホンナゲル」、「ホカル」、「ホカス」、「ナゲー」、「ホータル」、「ナグッ」、「ナンギャル」、「ナギーン」、「ホーツ」は、

  「ナ・(ン)ゲイ(ン)ゲイ・ル」、NA-NGEINGEI-RU(na=by,belonging to;ngeingei=stretching forth;ru=shake,agitate,scatter)、「遠くへ・放り出す・部類に属する(行動。投げる)」(「(ン)ゲイ(ン)ゲイ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ゲイ」から「ゲ」となった)(「捨てる」の意味の「投げる」とは違う語と解します。国語篇(その十五)の110すてるの項を参照してください。)

  「プ・ナ・(ン)ゲイ(ン)ゲイ・ル」、PU-NA-NGEINGEI-RU(pu=origin,cause,root;na=by,belonging to;ngeingei=stretching forth;ru=shake,agitate,scatter)、「何かの理由で・遠くへ・放り出す・部類に属する(行動。投げる)」(「プ」が「プ」と、「(ン)ゲイ(ン)ゲイ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ゲイ」から「ゲ」となった)

  「プ(ン)ガ・ナ・(ン)ゲイ(ン)ゲイ・ル」、PUNGA-NA-NGEINGEI-RU(punga=reason,cause,origin;na=by,belonging to;ngeingei=stretching forth;ru=shake,agitate,scatter)、「何かの理由で・遠くへ・放り出す・部類に属する(行動。投げる)」(「プ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「プナ」から「ブン」と、「(ン)ゲイ(ン)ゲイ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ゲイ」から「ゲ」となった)

  「ハウ・ル」、HAU-RU(hau=property,spoils;ru=shake,agitate,scatter)、「品物を・放り出す(投げる)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」または「ホー」となった)

  「ハウ(ン)ガ・ナ・(ン)ゲイ(ン)ゲイ・ル」、HAUNGA-NA-NGEINGEI-RU(haunga=besides,not includind;na=by,belonging to;ngeingei=stretching forth;ru=shake,agitate,scatter)、「脇(または何も無いところ)の・遠くへ・放り出す・部類に属する(行動。投げる)」(「ハウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「ホナ」から「ホン」と、「(ン)ゲイ(ン)ゲイ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ゲイ」から「ゲ」となった)

  「ホカ・ル」、HOKA-RU(hoka=soar,fly,run out;ru=shake,agitate,scatter)、「飛ばすように・放り出す(投げる)」

  「ホカ・ツ」、HOKA-TU(hoka=soar,fly,run out;tu=fight with,enwegetic)、「懸命に・飛ばす(投げる)」(「ツ」が「ス」となった)

  「ナ・(ン)ゲイ(ン)ゲイ」、NA-NGEINGEI(na=by,belonging to;ngeingei=stretching forth)、「遠くへ出す・部類に属する(行動。投げる)」(「(ン)ゲイ(ン)ゲイ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ゲイ」から「ゲー」となった)

  「ハウ・タ・ル」、HAU-TA-RU(hau=property,spoils;ta=fash,beat,lay;ru=shake,agitate,scatter)、「品物を・叩き付けるように・放り出す(投げる)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」または「ホー」となった)

  「ナ・ハ(ン)グ」、NA-HANGU(na=by,belonging to;hangu=scrape strips og flax with a shell to make it softer)、「(麻の繊維をしごくように)腕を振る(放る)・部類に属する(行動。投げる)」(「ナ」のA音と「ハ(ン)グ」のH音が脱落し、NG音がG音に変化して「アグ」となったその語頭のA音が連結して「ナグ」から「ナグッ」となった)

  「ナナ・(ン)ギア・ル」、NANA-NGIA-RU(nana=by,belonging to;ngia=seem,appear to be;ru=shake,agitate,scatter)、「放り出す・ように見える・部類に属する(行動。投げる)」(「ナナ」が「ナン」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化して「ギア」から「ギャ」となった)

  「ナ・クイナ」、NA-KUINA(na=by,belonging to;(Hawaii)kuina=blow,punch)、「(風に吹かれて)飛ぶ・部類に属する(行動。投げる)」(「クイナ」のUI音がI音に変化して「キナ」となり、濁音化して「ギーン」となった)

  「ハウ・ツ」、HAU-TU(hau=property,spoils;tu=stand,settle)、「品物を・放って置く(投げる)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」から「ホー」となった)

の転訛と解します。

155なこうど(仲人)・ナカド・オナゴドサン・ナグド・ゴシナンサマ・ナゴードサマ・バイシャク・カミサン・オナコード・オチューニン・セワニン・チューニン・ナカドサン・ナコードサン・コージニン・ナカオド・ナカウンド・ナカダチニン・ナカダッツァン・キモイリドン・ナカダチドン・ナカダッ・ナカラチ・ナカダティ・テンガサマ・クチキキ・ショワニン

 「なこうど」の方言には、北海道、富山などの「ナカド」、青森の「ナガウド」(「なこうど」と同語源)、岩手の「オナゴドサン」、宮城、茨城の「ナゴード」(「なこうど」と同語源)、秋田の「ナガド」(「ナカド」と同語源)、山形の「ナグド」、福島の「ゴシナンサマ」、栃木の「ナゴードサマ」、群馬、埼玉などの「ナコード」(「なこうど」と同語源)、千葉の「バイシャク」、福井の「カミサン」、山梨の「オナコード」、長野の「オチューニン」、静岡の「セワニン」、愛知の「チューニン」、三重、大阪などの「ナコド」(「なこうど」と同語源)、滋賀の「ナカドサン」、和歌山の「ナコードサン」、島根の「コージニン」、山口、長崎の「ナカウド」(「なこうど」と同語源)、徳島の「ナカオド」、高知の「ナカウンド」、福岡の「ナカダチニン」、佐賀の「ナカダッツァン」、熊本の「キモイリドン」、宮崎の「ナカダチドン」、鹿児島の「ナカダッ」、沖縄那覇の「ナカラチ」、沖縄首里の「ナカダティ」があります。

 上記のほか、宮城の「テンガサマ」、大分の「クチキキ」、「ショワニン」などがあります。

 この「なこうど」、「ナカド」、「オナゴドサン」、「ナグド」、「ゴシナンサマ」、「ナゴードサマ」、「バイシャク」、「カミサン」、「オナコード」、「オチューニン」、「セワニン」、「チューニン」、「ナカドサン」、「ナコードサン」、「コージニン」、「ナカオド」、「ナカウンド」、「ナカダチニン」、「ナカダッツァン」、「キモイリドン」、「ナカダチドン」、「ナカダッ」、「ナカラチ」、「ナカダティ」、「テンガサマ」、「クチキキ」、「ショワニン」は、

  「ナカ・ウ・タウ」、NAKA-U-TAU(naka=denoting position near or connection with the person spoken to;u=be firm,be fixed;tau=come to rest,settle down,be suitable,befit)、「(男女の)仲を・適切に・結びつける(人。仲人)」(「ナカ」の語尾のA音と「ウ」のU音が連結してO音またはOU音に変化して「ナコ」、「ナコウ」、「ナコー」または「ナゴー」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」となった。また「ナカ」が濁音化して「ナガ」となった)

  「ナカ・タウ」、NAKA-TAU(naka=denoting position near or connection with the person spoken to;tau=come to rest,settle down,be suitable,befit)、「(男女の)仲を・適合させる(人。仲人)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」となった。また「ナカ」が「ナガ」となった)

  「オ・ナカ・ウ・タウ・タナ」、O-NAKA-U-TAU-TANA(o=the...of;naka=denoting position near or connection with the person spoken to;u=be firm,be fixed;tau=come to rest,settle down,be suitable,befit;tana=his,her,its)、「例の・(男女の)仲を・適切に・結びつける・人(仲人)」(「ナカ」の語尾のA音と「ウ」のU音が連結してO音に変化して「ナコ」から「ナゴ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」と、「タナ」が「サン」となった)

  「ナ・(ン)グ(ン)グ・タウ」、NA-NGUNGU-TAU(na=by,belonging to;ngungu=glance off,turn aside,lead astray(whakangungu=fend,parry,defend);tau=come to rest,settle down,be suitable,befit)、「(横道にそれる)質問をはぐらかす(相手の真実を伝えないで)・(男女を)適合させる・部類の(人。仲人)」(「(ン)グ(ン)グ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「グ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」となった)

  「(ン)ガウ・チナ・ナ・タマ」、NGAU-TINA-NA-TAMA(ngau=bite,act upon,affect;tina=fixed,firm;na=satisfied,content;tama=son,man)、「働きかけて・(男女の仲を)結びつけて・満足する・方(仲人)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「チナ」が「シナ」と、「ナ」が「ン」と、「タマ」が「サマ」となった)

  「ナカ・ウ・タウ・タマ」、NAKA-U-TAU-TAMA(naka=denoting position near or connection with the person spoken to;u=be firm,be fixed;tau=come to rest,settle down,be suitable,befit;tama=son,man)、「(男女の)仲を・適切に・結びつける・方(仲人)」(「ナカ」の語尾のA音と「ウ」のU音が連結してOU音に変化して「ナコウ」から「ナゴー」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」となった)

  「パイ・チア・ク」、PAI-TIA-KU(pai=good,excellent,suitable;tia=stick in,drive in pegs,etc.;ku,kuku=firm,stiff,thickened)、「適切に・(男女の仲を)堅く・結びつける(人。仲人)」(「パイ」が「バイ」と、「チア」が「シャ」となった)

  「カハ・ミヒ・タナ」、KAHA-MIHI-TANA(kaha=rope,noose;mihi=lament,greet,admire;tana=his,her,its)、「(男女の仲を)縄で結ぶ・尊敬すべき・人(仲人)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「タナ」が「サン」となった)

  「オ・ナカ・ウ・タウ」、O-NAKA-U-TAU(o=the...of;naka=denoting position near or connection with the person spoken to;u=be firm,be fixed;tau=come to rest,settle down,be suitable,befit)、「例の・(男女の)仲を・適切に・結びつける(人。仲人)」(「ナカ」の語尾のA音と「ウ」のU音が連結してOU音に変化して「ナコウ」から「ナコー」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」となった)

  「オ・チウ・ヌイ(ン)ガ」、O-TIU-NUINGA(o=the...of;tiu=soar,wander,swing;nuinga=majority,party,people)、「例の・方々を動き回る・人々(仲人)」(「チウ」が「チュー」と、「ヌイ(ン)ガ」のUI音がI音に、NG音がN音に変化して「ニナ」から「ニン」となった)

  「テワ・ヌイ(ン)ガ」、TEWHA-NUINGA(tewha=garrulous;nuinga=majority,party,people)、「饒舌な・人々(仲人)」(「テワ」が「セワ」と、「ヌイ(ン)ガ」のUI音がI音に、NG音がN音に変化して「ニナ」から「ニン」となった)

  「チウ・ヌイ(ン)ガ」、TIU-NUINGA(tiu=soar,wander,swing;nuinga=majority,party,people)、「方々を動き回る・人々(仲人)」(「チウ」が「チュー」と、「ヌイ(ン)ガ」のUI音がI音に、NG音がN音に変化して「ニナ」から「ニン」となった)

  「ナカ・タウ・タナ」、NAKA-TAU-TANA(o=the...of;naka=denoting position near or connection with the person spoken to;tau=come to rest,settle down,be suitable,befit;tana=his,her,its)、「(男女の)仲を・適合させる・人(仲人)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」と、「タナ」が「サン」となった)

  「ナカ・ウ・タウ・タナ」、NAKA-U-TAU-TANA(naka=denoting position near or connection with the person spoken to;u=be firm,be fixed;tau=come to rest,settle down,be suitable,befit;tana=his,her,its)、「(男女の)仲を・適切に・結びつける・人(仲人)」(「ナカ」の語尾のA音と「ウ」のU音が連結してOU音に変化して「ナコウ」から「ナコー」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」と、「タナ」が「サン」となった)

  「カウ・チヒ・ヌイ(ン)ガ」、KAU-TIHI-NUINGA(kau=swim,wade;tihi=summit,top,lie in a heap;nuinga=majority,party,people)、「最高に・方々を動き回る・人々(仲人)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」から「コー」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「ジ」と、「ヌイ(ン)ガ」のUI音がI音に、NG音がN音に変化して「ニナ」から「ニン」となった)

  「ナカ・オ・タウ」、NAKA-O-TAU(naka=denoting position near or connection with the person spoken to;o=of,belonging to,attaching to;tau=come to rest,settle down,be suitable,befit)、「(男女の)仲を・適切に・結びつける(人。仲人)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」となった)

  「ナカ・ウ(ン)ガ・タウ」、NAKA-UNGA-TAU(naka=denoting position near or connection with the person spoken to;unga=act or circumstance of becoming firm;tau=come to rest,settle down,be suitable,befit)、「(男女の)仲を・適切に・結びつける(人。仲人)」(「ウ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウナ」から「ウン」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」となった)

  「ナカ・タハ・チ・ヌイ(ン)ガ」、NAKA-TAHA-TI-NUINGA(naka=denoting position near or connection with the person spoken to;taha=side,edge;ti=throw,cast;nuinga=majority,party,people)、「(男女の)間の・際(きわ)に・置かれる・人々(仲人)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「ダ」と、「ヌイ(ン)ガ」のUI音がI音に、NG音がN音に変化して「ニナ」から「ニン」となった)

  「ナカ・タハ・ツ・アナ」、NAKA-TAHA-TU-ANA(naka=denoting position near or connection with the person spoken to;taha=side,edge;tu=stand,settle;ana=his,her)、「(男女の)間の・際(きわ)に・居る・人々(仲人)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「ダッ」と、「アナ」が「アン」となった)

  「キモ・イリ・トナ」、KIMO-IRI-TONA(kimo=blink;iri=be elevated on something,rest upon,be published;tona=his,her)、「(目をぱちぱちさせる)欠点を見て見ぬふりをする・高い地位に奉られる・人(仲人)」(「トナ」が「トン」から「ドン」となった)

  「ナカ・タハ・チ・トナ」、NAKA-TAHA-TI-TONA(naka=denoting position near or connection with the person spoken to;taha=side,edge;ti=throw,cast;tona=his,her)、「(男女の)間の・際(きわ)に・置かれる・人(仲人)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「ダ」と、「トナ」が「トン」から「ドン」となった)

  「ナカ・タハ・ツ」、NAKA-TAHA-TU(naka=denoting position near or connection with the person spoken to;taha=side,edge;tu=stand,settle)、「(男女の)間の・際(きわ)に・居る(人。仲人)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「ダッ」となった)

  「ナカ・ラハ・チ」、NAKA-RAHA-TI(naka=denoting position near or connection with the person spoken to;raha=open,extended;ti=throw,cast;nuinga=majority,party,people)、「(男女の)間に・公然と・置かれる(人。仲人)」(「ラハ」のH音が脱落して「ラ」となった)

  「ナカ・タタイ」、NAKA-TATAI(naka=denoting position near or connection with the person spoken to;raha=open,extended;tatai=measure,arrange,set in order)、「(男女の)間を・整理する(人。仲人)」(「タタイ」のAI音がEI音に変化して「タテイ」から「ダティ」となった)

  「テ(ン)ガ・タマ」、TENGA-TAMA(tenga=Adam's apple,distended,strained;tama=son,man)、「(男女の間に立って)緊張している・方(仲人)」(「テ(ン)ガ」が「テンガ」と、「タマ」が「サマ」となった)

  「クチ・キキ」、KUTI-KIKI(kuti=draw tightly together,contract,pinch;kiki=crowded,confined,squeak)、「よく・しゃべる(人。仲人)」()

  「チオ・ワ・ヌイ(ン)ガ」、TIO-WA-NUINGA(tio=cry,call;wa=so and so;nuinga=majority,party,people)、「あれこれと・話をする・人々(仲人)」(「チオ」が「チョ」から「ショ」と、「ヌイ(ン)ガ」のUI音がI音に、NG音がN音に変化して「ニナ」から「ニン」となった)

の転訛と解します。

156ななめ(斜め)・ハス・カダツラ・ハスッパ・ハスッペ・ハスカイ・ナノメ・ハスケァ・ヨドゴッ・シェーガー・ナナミ・ニンベ・カタガットル・カタンチ

 「ななめ」の方言には、青森、群馬などの「ハス」、山形の「カダツラ」、茨城の「ハスッパ」、栃木の「ハスッペ」、石川、福井などの「ハスカイ」、山梨の「ナノメ」、岐阜の「ハスケァ」、佐賀の「ヨドゴッ」、沖縄那覇の「シェーガー」、沖縄首里の「ナナミ」があります。

 上記のほか、北海道の「ニンベ」(高年齢層)、石川の「カタガットル」、沖縄首里の「カタンチ」などがあります。

 この「ななめ」、「ハス」、「カダツラ」、「ハスッパ」、「ハスッペ」、「ハスカイ」、「ナノメ」、「ハスケァ」、「ヨドゴッ」、「シェーガー」、「ナナミ」、「ニンベ」、「カタガットル」、「カタンチ」は、

  「ナナ・アマイ」、NANA-AMAI(nana=by,belonging to;amai=the back part of the head of a Maori axe helve where bound round)、「手斧の柄と刃がつくる・角度のような(斜め)」(「ナナ」の語尾のA音と「アマイ」の語頭のA音が連結し、AI音がE音に変化して「ナナメ」となった)

  「パツ」、PATU(a piece of wood abaft the figurehead of a canoe to which the ends of a rauawa(attached sides of a canoe) were fastened)、「船首像とカヌーの側板が接合する角度(斜め)」(「パツ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハツ」から「ハス」となった)

  「カタ・ツラハ」、KATA-TURAHA(kata=opening of shellfish;nga=satisfied;turaha=keep away,keep clear,open,wide)、「大きく・貝が口を開けているような(開けた貝の口がつくる角度。斜め)」(「カタ」が「カダ」と、「ツラハ」のH音が脱落して「ツラ」となった)

  「パツ・パ」、PATU-PA(patu=a piece of wood abaft the figurehead of a canoe to which the ends of a rauawa(attached sides of a canoe) were fastened;pa=touch,reach,be connected with)、「船首像とカヌーの側板が・接合する角度(斜め)」(「パツ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハツ」から「ハスッ」とはなった)

  「パツ・パエ」、PATU-PAE(patu=a piece of wood abaft the figurehead of a canoe to which the ends of a rauawa(attached sides of a canoe) were fastened;pae=horizen,lie across,lie on one side)、「船首像とカヌーの側板が・接合する角度(斜め)」(「パツ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハツ」から「ハスッ」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」となった)

  「パツ・カイ」、PATU-KAI(patu=a piece of wood abaft the figurehead of a canoe to which the ends of a rauawa(attached sides of a canoe) were fastened;kai=fulfil its proper function,have full play)、「船首像とカヌーの側板が・きちんと接合する角度(斜め)」(「パツ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハツ」から「ハス」となった)

  「ナ・アノ・アマイ」、NA-ANO-AMAI(na=by,belonging to;ano=still,quite,just,indeed;amai=the back part of the head of a Maori axe helve where bound round)、「実に・手斧の柄と刃がつくる・角度のような(斜め)」(「ナ」のA音と「アノ」の語頭のA音が連結して「ナノ」と、「アマイ」の語頭のA音が脱落し、AI音がE音に変化して「メ」となった)

  「バツ・カイ・イア」、PATU-KAI-IA(patu=a piece of wood abaft the figurehead of a canoe to which the ends of a rauawa(attached sides of a canoe) were fastened;kai=fulfil its proper function,have full play;ia=indeed)、「船首像とカヌーの側板が・実に・きちんと接合する角度(斜め)」(「パツ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハツ」から「ハス」と、「カイ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「カイア」となり、AI音がE音に変化して「ケァ」となった)

  「イオ・タウ・(ン)ゴト」、IO-TAU-NGOTO(io=lock of hair;tau=come to rest,settle down,be suitable)、「髷が・頭に・着く角度(斜め)」(「イオ」が「ヨ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」と、「(ン)ゴト」のNG音がG音に変化して「ゴト」から「ゴッ」となった)

  「チアイアカ」、TIAIAKA(fantail)、「孔雀鳩(の扇状の尾がつくる角度。斜め)」(「チアイアカ」のAI音がE音に変化して「チエアカ」から「シェーカー」、「シェーガー」となった)

  「ナナ・アミ」、NANA-AMI(nana=eyebrow;ami=gather,collect)、「眉(根)を・寄せた(ときに眉と眉がつくる角度のような。斜め)」(「ナナ」の語尾のA音と「アミ」の語頭のA音が連結して「ナナミ」となった)

  「ニニ・ペ」、NINI-PE((Hawaii)nini=fence;pe=crushed,soft)、「倒れた・垣根(が地面に対してつくる角度。斜め)」(「ニニ」が「ニン」と、「ペ」が「ベ」となった)

  「カタ・(ン)ガ・トル」、KATA-NGA-TORU(kata=opening of shellfish;nga=satisfied;toru=toro=stretch forth,extend)、「貝が口を開けて・満足して・伸びているような(開けた貝の口がつくる角度。斜め)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」から「ガッ」となった)

  「カタ・(ン)ガ・チ」、KATA-NGA-TI(kata=opening of shellfish;nga=satisfied;ti=throw,cast)、「貝が口を開けて・満足して・放り出されているような(開けた貝の口がつくる角度。斜め)」(「(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ナ」から「ン」となった)

の転訛と解します。

157なまけもの(怠け者)・カラッポヤミ・カラポネヤミ・ズベコタレ・タレカモノ・セヤミコギ・オッジャグモノ・モノグサボーズ・ブショーモン・ノメシ・ナマクラモン・ダワモン・ジクナシ・ズクナシ・ドナマカワ・ナマカワ・ナマクラ・ノークリ・グータラ・ヘッテクライ・ノラ・ンゴクンドー・ズルケモン・フユーモン・ヌラクラモン・スッタクロ・フユッゴロ・フユークラサー・ナマキタムン・セッコギ・セヤミ・クサシ・キドロ・ゴクトレ・ズーソー・ブラボー・ゴクドー

 「なまけもの」の方言には、北海道の「カラッポヤミ」、青森の「カラポネヤミ」、岩手の「ズベコタレ」、宮城、福島の「タレカモノ」、秋田の「セヤミコギ」、山形の「オッジャグモノ」、茨城の「ナマゲモノ」(「なまけもの」と同語源)、栃木の「モノグサボーズ」、群馬、埼玉などの「ナマケモン」(「なまけもの」と同語源)、千葉、大分の「ブショーモン」、新潟の「ノメシ」、石川、和歌山の「ナマクラモン」、福井の「ダワモン」、山梨の「ジクナシ」、長野の「ズクナシ」、岐阜の「ドナマカワ」、愛知の「ナマカワ」、三重、奈良の「ナマクラ」、島根、岡山などの「オーチャクモン」(「オッジャグモノ」と同語源)、広島の「ノークリ」、徳島の「グータラ」、香川の「ヘッテクライ」、愛媛の「ノラ」、高知の「ンゴクンドー」、福岡の「ズルケモン」、佐賀の「フユーモン」、長崎の「ヌラクラモン」、熊本の「スッタクロ」、鹿児島の「フユッゴロ」、沖縄那覇の「フユークラサー」、沖縄首里の「ナマキタムン」があります。

 上記のほか、北海道の「カラッポネヤミ」(稀・高年齢層)(「カラポネヤミ」と同語源)、岩手の「セッコギ」、「セヤミ」、秋田の「カラポヤミ」(「カラッポヤミ」と同語源)、福島の「クサシ」、京都の「キドロ」(古)、香川の「ゴクトレ」、大分の「ズーソー」、「ブラボー」(仕事をしないでぶらぶらする人)、「ゴクドー」(仕事をしないでお金ばかり使う人)などがあります。

 この「なまけもの」、「カラッポヤミ」、「カラポネヤミ」、「ズベコタレ」、「タレカモノ」、「セヤミコギ」、「オッジャグモノ」、「モノグサボーズ」、「ブショーモン」、「ノメシ」、「ナマクラモン」、「ダワモン」、「ジクナシ」、「ズクナシ」、「ドナマカワ」、「ナマカワ」、「ナマクラ」、「ノークリ」、「グータラ」、「ヘッテクライ」、「ノラ」、「ンゴクンドー」、「ズルケモン」、「フユーモン」、「ヌラクラモン」、「スッタクロ」、「フユッゴロ」、「フユークラサー」、「ナマキタムン」、「セッコギ」、「セヤミ」、「クサシ」、「キドロ」、「ゴクトレ」、「ズーソー」、「ブラボー」、「ゴクドー」は、

  「ナ・マケ・モノ」、NA-MAKE-MONO(na=by,belonging to;(Hawaii)make=to die,defeated;mono=disable by means of incantations)、「まるで・人の力を奪う呪術にかかって・打ちのめされた人のような(何もしょうとしない人。怠け者)」(また「マケ」が「マゲ」と、「モノ」が「モン」となった)

  「カラ・パウ・イア・アミ」、KARA-PAU-IA-AMI(kara=old man;pau=consumed,exhausted;ia=indeed;ami=gather,collect)、「実に・元気がない・老人が・集まったような(怠け者)」(「カラ」が「カラッ」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」と、「イア」のA音と「アミ」の語頭のA音が連結して「ヤミ」となった)

  「カラ・パウ・ネイ・イア・アミ」、KARA-PAU-NEI-IA-AMI(kara=old man;pau=consumed,exhausted;nei=to indicate continuance of action;ia=indeed;ami=gather,collect)、「実に・元気が・なくなってしまっている・老人が・集まったような(怠け者)」(「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」と、「ネイ」が「ネ」と、「イア」のA音と「アミ」の語頭のA音が連結して「ヤミ」となった。また「カラ」が「カラッ」となった)

  「ツペ・カウ・タレ」、TUPE-KAU-TARE(tupe=a charm for depriving one's enemies of power and arresting their weapons,affect by the tupe charm;kau=alone,only;tare=hang,gasp for breath,be drawn towards)、「人の力を奪う呪術にかかって・ただただ・呆然としている人のような(何もしょうとしない人。怠け者)」(「ツペ」が「ズベ」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

  「タレ・カ・モノ」、TARE-KA-MONO(tare=hang,gasp for breath,be drawn towards;ka=to denote the commencement pf a new action or condition,suggested course of action with almost an imperative force;mono=disable by means of incantations)、「人の力を奪う呪術に・かかったように・呆然としている人(何もしょうとしない人。怠け者)」

  「テ・イア・アミ・コキ」、TE-IA-AMI-KOKI(te=the;ia=indeed;ami=gather,collect;koki=move ahead as a canoe,limp)、「例の・実に・のろのろと進むことを・繰り返す人(怠け者)」(「テ」が「セ」と、「イア」のA音と「アミ」の語頭のA音が連結して「ヤミ」と、「コキ」が「コギ」となった)

  「オ・チア・ク・モノ」、O-TIA-KU-MONO(o=the...of;tia=stick in,drive in pegs,etc.;ku,kuku=firm,stiff;mono=disable by means of incantations)、「例の・人の力を奪う呪術にかかって・堅く・杭に繋がれたような人(何もしょうとしない人。怠け者)」(「オ」が「オッ」または「オー」と、「チア」が「チャ」から「ジャ」と、「ク」が「グ」となった。また「モノ」が「モン」となった)

  「モノ・クタ・ポウ・ツ」、MONO-KUTA-POU-TU(mono=disable by means of incantations;kuta=encumbrance,clog as old and infirm people on a march;pou=pole,fasten to a stake,a form of address to an aged persons;tu=stand,settle,fight with,energetic)、「人の力を奪う呪術にかかって・他人の足手まといになっている・柱に・ひたすらしがみついている人(何もしょうとしない人。怠け者)」(「クタ」が「グサ」と、「ポウ」が「ボー」と、「ツ」が「ズ」となった)

  「プ・チオフ・モノ」、PU-TIOHU-MONO(pu=loathing,hating;tiohu=stoop;mono=disable by means of incantations)、「人の力を奪う呪術にかかったように・身をかがめて仕事をすることを・忌み嫌う人(何もしょうとしない人。怠け者)」(「プ」が「ブ」と、「チオフ」のH音が脱落して「チオウ」から「ショウ」と、「モノ」が「モン」となった)

  「ナウマイ・チ」、NAUMAI-TI(naumai=haere mai=as a call of welcome to guests;ti=throw,cast)、「(お客に)いらっしゃい・と言う(だけの人。怠け者)」(「ナウマイ」のAU音がO音に、AI音がE音に変化して「ノメ」と、「チ」が「シ」となった)

  「ナ・マクク・ラ・モノ」、NA-MAKUKU-RA-MONO(na=by,belonging to;makuku=indolent,inactive;ra=by way of;mono=disable by means of incantations)、「人の力を奪う呪術に・かかって・怠けている・ような人(何もしょうとしない人。怠け者)」(「マクク」の反復語尾が脱落して「マク」と、「モノ」が「モン」となった)

  「タウア・モノ」、TAUA-MONO(taua,tautaua=inactivity,coward;mono=disable by means of incantations)、「・怠惰な人(何もしょうとしない人。怠け者)」(「タウア」が「ダワ」と、「モノ」が「モン」となった)

  「チ・ク・ナチ」、TI-KU-NATI(ti=a game in which wooden rods were thrown by the players from one to another in time to the words of a song;ku,kuku=firm,stiff;nati=pinch or contract)、「棒を投げ合う遊びに・堅く・執着している人(他に何もしょうとしない人。怠け者)」(「チ」が「ジ」と、「ナチ」が「ナシ」となった)

  「ツク・ナチ」、TUKU-NATI(tuku=let go,present,receive,visiting party;nati=pinch or contract)、「お客を歓待することに・執着している人(他に何もしょうとしない人。怠け者)」(「ツク」が「ズク」と、「ナチ」が「ナシ」となった)

  「タウ・ナ・マカ・ウア」、TAU-NA-MAKA-UA(tau=come to rest,settle down,be suitable;na=by,belonging to;maka=active,vigorous;ua=used in expostulation,don't)、「仕事をするなと・命令された・ように・休息している人(何もしょうとしない人。怠け者)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」と、「ウア」が「ワ」となった)

  「ナ・マカ・ウア」、NA-MAKA-UA(na=by,belonging to;maka=active,vigorous;ua=used in expostulation,don't)、「仕事をするなと・命令された・ような人(何もしょうとしない人。怠け者)」(「ウア」が「ワ」となった)

  「ナ・マクク・ラ」、NA-MAKUKU-RA(na=by,belonging to;makuku=indolent,inactive;ra=there,yonder)、「そこらで・怠けている・ような人(何もしょうとしない人。怠け者)」(「マクク」の反復語尾が脱落して「マク」となった)

  「ナウ・クリ」、NAU-KURI(nau=come,go;kuri=dog)、「犬のように・うろつき回る人(怠け者)」(「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」から「ノー」となった)

  「(ン)グ(ン)グ・タラ」、NGUNGU-TARA(ngungu=glance off,lead astray;tara=disturb,affect by incantation,loosen,separate,brisk)、「呪術をかけられたように・離れて一人でいる人(怠け者)」(「(ン)グ(ン)グ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「グ」から「グー」となった)

  「ヘ・テ・クライ」、HE-TE-KULAI(he=different,strange;te=the;(Hawaii)kulai=to push over,knock down,to brush off as a horse switches flies with its tail)、「例の・馬が尻尾を振って蠅を追うように・変わった行動(団扇で蠅を追うなど)をする人(怠け者)」(「ヘ」が「ヘッ」となった)

  「ノホ・オラ」、NOHO-ORA(noho=sit,settle;ora=alive,well in health,satisfied)、「のうのうと(満足して)・いる人(怠け者)」(「ノホ」のH音が脱落して「ノ」となり、その語尾のO音と「オラ」の語頭のO音が連結して「ノラ」となった)

  「ナ・(ン)ガウ・クネ・タウ」、NA-NGAU-KUNE-TAU(na=by,belonging to;ngau=bite,hurt,act upon,attack;kune=plump,filled out to roundness;tau=come to rest,settle down,be suitable)、「(親や兄弟の金や食物などを)かすめ取り・丸々と太って・悠々と暮らす・部類に属する人(怠け者)」(「ナ」が「ン」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「クネ」が「クン」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ドー」となった)

  「ツ・ルケ・モノ」、TU-RUKE-MONO(tu=fight with,energetic;ruke=throw,pour forth,be cast;mono=disable by means of incantations)、「人の力を奪う呪術にかかったように・懸命に・(精力を)発散した人(抜け殻のように何もしょうとしない人。怠け者)」(「ツ」が「ズ」と、「モノ」が「モン」となった)

  「フイ・ウフ・モノ」、HUI-UHU-MONO(hui=put or add together,congregate;uhu=cramp,benumbed;mono=disable by means of incantations)、「人の力を奪う呪術にかかったように・手足の麻痺が・集まっている人(何もしょうとしない人。怠け者)」(「ウフ」のH音が脱落して「ウ」となり、「フイ・ウ」が「フユー」と、「モノ」が「モン」となった)

  「ヌイ・ラリ・クラリラリ・モノ」、NUI-RARI-KURARI-MONO(nui=large,many;rari=wet;kurarirari=wet,sloppy;mono=disable by means of incantations)、「人の力を奪う呪術にかかったように・たいへん・濡れていて・つかまえどころがない人(または仕事がずさんな人)(怠け者)」(「ヌイ・ラリ」が「ヌラリ」から「ヌラ」と、「クラリラリ」が「クラリ」から「クラ」と、)

  「ツ・タク・ラウ」、TU-TAKU-RAU(tu=fight with,energetic;taku=slow;rau=project,extend)、「懸命に・(仕事を)のろのろと・引き延ばす人(怠け者)」(「ツ」が「ス」から「スッ」と、「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」となった)

  「フイ・ウフ・(ン)ゴロ」、HUI-UHU-NGORO(hui=put or add together,congregate;uhu=cramp,benumbed;ngoro,ngongoro=snore,utter exclamation of surprise or admiration)、「手足の麻痺が・集まっている・何ともあきれ果てる人(何もしょうとしない人。怠け者)」(「ウフ」のH音が脱落して「ウ」となり、「フイ・ウ」が「フユッ」と、「(ン)ゴロ」のNG音がG音に変化して「ゴロ」となった)

  「フイ・ウフ・クラ・タ」、HUI-UHU-KURA-TA(hui=put or add together,congregate;uhu=cramp,benumbed;kura=remove lice from the hair;ta=dash,beat,lay)、「手足の麻痺が・集まっていて・頭の毛虱を・取っている人(何もしょうとしない人。怠け者)」(「ウフ」のH音が脱落して「ウ」となり、「フイ・ウ」が「フユー」と、「タ」が「サー」となった)

  「ナ・マキ・タ・ムナ」、NA-MAKI-TA-MUNA(na=by,belonging to;maki=invalid,sick person;ta=dash,beat,lay;muna=tell or speak of privately,gossip,secret)、「病気を・持っている・ようだと・噂される人(何もしょうとしない人。怠け者)」(「ムナ」が「ムン」となった)

  「テ・コキ」、TE-KOKI(te=the;koki=move ahead as a canoe,limp)、「例の・のろのろと進む人(怠け者)」(「テ」が「セッ」と、「コキ」が「コギ」となった)

  「テ・イア・ミヒ」、TE-IA-MIHI(te=the;ia=indeed;mihi=sigh for,express discomfort)、「例の・実に・気分が悪いと訴える人(怠け者)」(「テ」が「セ」と、「イア」が「ヤ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

  「クタ・チ」、KUTA-TI(kuta=encumbrance,clog as old and infirm people on a march;ti=throw,cast)、「他人の足手まといに・なっている人(何もしょうとしない人。怠け者)」(「クタ」が「クサ」と、「チ」が「シ」となった)

  「キ・トロ」、KI-TORO(ki=full,very:toro=stretch forth,creep,crawl)、「(腹這いで動くように)たいへん・のろのろと動く人(怠け者)」(「トロ」が「ドロ」となった)

  「(ン)ガウ・ク・トレ」、NGAU-KU-TORE(ngau=bite,hurt,act upon,attack;ku=silent;tore=cut,quick)、「(親や兄弟の金や食物などを)黙って・敏速に・かすめ取る人(怠け者)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

  「ツ・タウ」、TU-TAU(tu=stand,settle,fight with,energetic;tau=come to rest,settle down,be suitable)、「熱心に・休息を取っている人(怠け者)」(「ツ」が「ス」から「ズー」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソー」となった)

  「プラ・ポウ」、PURA-POU(pura=any small foreign substance in the eye(purapura=seed);pou=pole,stick in etc.,plunge in,fix)、「目に入ったごみに・こだわる人(怠け者)」または「(気長に植物を)実生から育てることに・執着する人(怠け者)」(「プラ」が「ブラ」と、「ポウ」が「ボー」となった)

  「(ン)ガウ・ク・タウ」、NGAU-KU-TAU(ngau=bite,hurt,act upon,attack;ku=silent;tau=come to rest,settle down,be suitable)、「(親や兄弟の金や食物などを)黙って・かすめ取って・悠々と暮らす人(怠け者)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ドー」となった)

の転訛と解します。

158なまける(怠ける)・カラッポヤム・カラポネヤム・セッコギスル・タレカコガス・セヤム・オッジャグスル・タレカ・アブラウル・ノメシコク・ブラブラスル・ダワル・ズヤル・ズクオヌカス・ナマケー・ノータクレル・サボル・ズルケル・ズルクッ・ズンダレル・ズルクル・サボッ・ユラリーン・ナマキーン・カダム・コク・オーチャクスー・アブローウル・ブショースル

 「なまける」の方言には、北海道の「カラッポヤム」、青森の「カラポネヤム」、岩手の「セッコギスル」、宮城の「タレカコガス」、秋田の「セヤム」、山形の「オッジャグスル」、福島の「タレカ」、茨城の「ナマゲル」(「なまける」と同語源)、栃木、兵庫の「アブラウル」、千葉、山口の「オーチャクスル」(「オッジャグスル」と同語源)、新潟の「ノメシコク」、石川、静岡の「ブラブラスル」、福井の「ダワル」、山梨の「ズヤル」、長野の「ズクオヌカス」、島根の「ナマケー」、岡山の「オーチャクースル」(「オッジャグスル」と同語源)、広島の「ノータクレル」、愛媛、高知の「サボル」、福岡、宮崎の「ズルケル」、佐賀の「ズルクッ」、長崎の「ズンダレル」、熊本の「ズルクル」、鹿児島の「サボッ」、沖縄那覇の「ユラリーン」、沖縄首里の「ナマキーン」があります。

 上記のほか、北海道の「カラッポネヤム」(「カラポネヤム」と同語源)、秋田の「カダム」、新潟の「コク」、島根の「オーチャクスー」、大分の「アブローウル」、「ブショースル」があります。

 この「なまける」、「カラッポヤム」、「カラポネヤム」、「セッコギスル」、「タレカコガス」、「セヤム」、「オッジャグスル」、「タレカ」、「アブラウル」、「ノメシコク」、「ブラブラスル」、「ダワル」、「ズヤル」、「ズクオヌカス」、「ナマケー」、「ノータクレル」、「サボル」、「ズルケル」、「ズルクッ」、「ズンダレル」、「ズルクル」、「サボッ」、「ユラリーン」、「ナマキーン」、「カダム」、「コク」、「オーチャクスー」、「アブローウル」、「ブショースル」は、

  「ナ・マケ・ル」、NA-MAKE-RU(na=by,belonging to;(Hawaii)make=to die,defeated;ru=shake,agitate,scatter)、「打ちのめされて・放り出されている・ような(怠ける)」(また「マケ」が「マゲ」となった)

  「カラ・パウ・イア・ム」、KARA-PAU-IA-MU(kara=old man;pau=consumed,exhausted;ia=indeed;mu=murmur at,show discontent with,silent)、「実に・元気がない・老人が・静かにしている(怠ける)」(「カラ」が「カラッ」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」と、「イア」が「ヤ」となった)

  「カラ・パウ・ネイ・イア・ム」、KARA-PAU-NEI-IA-AMI(kara=old man;pau=consumed,exhausted;nei=to indicate continuance of action;ia=indeed;mu=murmur at,show discontent with,silent)、「実に・元気が・なくなってしまっている・老人が・静かにしている(怠ける)」(「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」と、「ネイ」が「ネ」と、「イア」が「ヤ」となった)

  「テ・コキ・ツル」、TE-KOKI-TURU(te=the;koki=move ahead as a canoe,limp;turu=last a short time(turua=be done for a short time;tuturu=fixed,permanent))、「例の・のろのろと進むことを・する(怠ける)」(「テ」が「セ」から「セッ」と、「コキ」が「コギ」と、「ツル」が「スル」となった)

  「タレ・カ・コカ・ツ」、TARE-KA-KOKA-TU(tare=hang,gasp for breath,be drawn towards;ka=to denote the commencement pf a new action or condition,suggested course of action with almost an imperative force;koka=old dried leaves of flax etc.;tu=stand,settle)、「呆然と・して・枯葉のように・なっている(怠ける)」(「コカ」が「コガ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「テ・イア・ム」、TE-IA-MU(te=the;ia=indeed;mu=murmur at,show discontent with,silent)、「例の・実に・気分が悪いと訴える(怠ける)」(「テ」が「セ」と、「イア」が「ヤ」となった)

  「オ・チア・ク・ツル」、O-TIA-KU-TURU(o=the...of;tia=stick in,drive in pegs,etc.;ku,kuku=firm,stiff;turu=last a short time(turua=be done for a short time;tuturu=fixed,permanent))、「例の・堅く・杭に繋がれたように・行動する(怠ける)」(「オ」が「オッ」または「オー」と、「チア」が「チャ」または「ジャ」と、「ク」が「クー」または「グ」と、「ツル」が「スル」となった)

  「タレ・カ」、TARE-KA(tare=hang,gasp for breath,be drawn towards;ka=to denote the commencement pf a new action or condition,suggested course of action with almost an imperative force)、「呆然と・している(怠ける)」

  「アプ・ラ・ウル」、APU-RA-URU(apu=force one's way into the ground,heap upon;ra=by way of;uru=enter,possess,reach a place)、「(油を売るのに時間をかけて高所から)大地に滴たらせる・方法によって・届かせる(怠ける)」(「アプ」が「アブ」となった)

  「ナウマイ・チ・コクフ」、NAUMAI-TI-KOKUHU(naumai=haere mai=as a call of welcome to guests;ti=throw,cast;kokuhu=insert,introduce,intrude)、「(お客に)いらっしゃい・と言って・最初に挨拶する(怠ける)」(「ナウマイ」のAU音がO音に、AI音がE音に変化して「ノメ」と、「チ」が「シ」と、「コクフ」のH音が脱落して「コク」となった)

  「プラプラ・ツル」、PURAPURA-TURU(purapura=seed(pura=any small foreign substance in the eye);turu=last a short time(turua=be done for a short time;tuturu=fixed,permanent))、「(気長に植物を)実生から育てることを・する(怠ける)」(「プラプラ」が「ブラブラ」と、「ツル」が「スル」となった)

  「タウア・ル」、TAUA-RU(taua,tautaua=inactivity,coward;ru=shake,agitate,scatter)、「怠惰で・(放り出されている)ごろんとしている(怠ける)」(「タウア」が「ダワ」と、「モノ」が「モン」となった)

  「ツ・イア・ル」、TU-IA-RU(tu=stand,settle,fight with,energetic;ia=indeed;ru=shake,agitate,scatter)、「熱心に・実に・(放り出されている)ごろんとしている(怠ける)」(「ツ」が「ス」から「ズ」と、「イア」が「ヤ」となった)

  「ツク・オ・ヌカ・ツ」、TUKU-O-NUKA-TU(tuku=let go,present,receive,visiting party;o=of;nuka=deceive,dupe;tu=stand,settle)、「上っ面の・言葉・で・お客を歓待する(怠ける)」(「ツク」が「ズク」と、「オ」が「ヲ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ナ・マケ」、NA-MAKE(na=by,belonging to;(Hawaii)make=to die,defeated)、「打ちのめされている・ような(怠ける)」(「マケ」が「マケー」となった)

  「ナウ・タク・レイ・ル」、NAU-TAKU-REI-RU(nau=come,go;taku=slow;rei=rush,run;ru=shake,agitate,scatter)、「のろのろと・奮って・走るように・やってくる(怠ける)」(「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」から「ノー」と、「レイ」が「レ」となった)

  「タ・パウ・ル」、TA-PAU-RU(ta=the...of,dash,beat,lay;pau=consumed,exhausted,denoting the complete or exhaustive character of any action;ru=shake agitate,scatter)、「例の・消耗して・体を横たえているような(怠ける)」(「タ」が「サ」と、「パウ」のAUオトがOオトに変化して「ボ」となった)

  「ツ・ルケ・ル」、TU-RUKE-RU(tu=fight with,energetic;ruke=throw,cast forth,pour forth;ru=shake,agitate,scatter)、「懸命に・なげやりな・行動をとる(怠ける)」(「ツ」が「ズ」となった)

  「ツ・ルク」、TU-RUKU(tu=fight with,energetic;ruku=sink,dive,let oneself fall,hurl oneself)、「懸命に・(仕事を放棄して)身を横たえる(怠ける)」(「ツ」が「ズ」と、「ルク」が「ルクッ」となった)

  「ツ(ン)ガ・タレ・ル」、TUNGA-TARE-RU(tunga=circumstance of standing,foundation;tare=hang,gasp for breath,be drawn towards;ru=shake,agitate,scatter)、「(息を呑む)呆然として・立ち・つくす(怠ける)」(「ツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツナ」から「ズン」となった)

  「ツ・ルク・ル」、TU-RUKU-RU(tu=fight with,energetic;ruku=sink,dive,let oneself fall,hurl oneself;ru=shake,agitate,scatter)、「懸命に・(仕事を放棄して)身を横たえる・行動を取る(怠ける)」(「ツ」が「ズ」となった)

  「タ・パウ・ツ」、TA-PAU-TU(ta=the...of,dash,beat,lay;pau=consumed,exhausted,denoting the complete or exhaustive character of any action;tu=stand,settle)、「例の・消耗して・座り込んでいるような(怠ける)」(「タ」が「サ」と、「パウ」のAUオトがOオトに変化して「ボ」と、「ツ」が「ッ」となった)ッ

  「イ・ウラ(ン)ガ・リ(ン)ガ」、I-URANGA-RINGA(i=past tense,from,beside,with,by;uranga=act or circumstance of becoming firm;ringa=hand,arm)、「手が・固まったように・(動かなく)なった(怠ける)」(「ウラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ウラ」となり、「イ・ウラ」が「ユラ」と、「リ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「リナ」から「リーン」となった)

  「ナ・マキ・イナ」、NA-MAKI-INA(naby,belonging to;maki=invalid,sick person;ina=bask,warm oneself)、「病人が・日向ぼっこをしている・ような(怠ける)」(「マキ」の語尾のI音と「イナ」の語頭のI音が連結して「マキナ」から「マキーン」となった)

  「カタ・ム」、KATA-MU(kata=opening of shellfish,laugh;mu=murmur at,show discontent with,silent)、「笑いながら・気分が悪いと訴える(怠ける)」(「カタ」が「カダ」となった)

  「コクフ」、KOKUHU(insert,introduce,intrude)、「(人に仕事を)無理に押しつける(怠ける)」(「コクフ」のH音が脱落して「コク」となった)

  「オ・チア・ク・ツ」、O-TIA-KU-TU(o=the...of;tia=stick in,drive in pegs,etc.;ku,kuku=firm,stiff;tu=stand,settle)、「例の・堅く・杭に繋がれたように・している(怠ける)」(「オ」が「オー」と、「チア」が「チャ」と、「ツ」が「スー」となった)

  「アプ・ロア・ウル」、APU-ROA-URU(apu=force one's way into the ground,heap upon;roa=long,tall;uru=enter,possess,reach a place)、「(油を売るのに時間をかけて高所から)長く・大地に滴たらせて・届かせる(怠ける)」(「アプ」が「アブ」と、「ロア」が「ロー」となった)

  「プ・チオフ・ツル」、PU-TIOHU-TURU(pu=loathing,hating;tiohu=stoop;turu=last a short time(turua=be done for a short time;tuturu=fixed,permanent))、「身をかがめて仕事をすることを・忌み嫌う・行動をする(怠ける)」(「プ」が「ブ」と、「チオフ」のH音が脱落して「チオウ」から「ショウ」と、「ツル」が「スル」となった)

の転訛と解します。

「ニ」

159にんしんする(妊娠する)・ハラム・ハラオキグナル・カガエル・ハラタゲグナル・ハラオッケグナル・ジョーブニナル・オナカガオーキクナル・デキル・ハラデコナル・ミモチンナル・コドモガデキル・コガデキル・ハラボテニナル・コガデキヨル・ハラオーキナル・オメデタンナル・コドモガデキー・ミゴモル・ミモチニナル・サンマエスル・ハランフトーナットイナッ・ドンバランナル・コガデクル・ハラガフチナル・ハラガフトナッ・カサギーン・ハラボッケニナル・ヤヤノデキル・オメデタジャ

 「にんしんする」(漢語由来の言葉と解します)の方言には、北海道、福島などの「ハラム」、青森の「ハラオキグナル」、岩手、宮城などの「カガエル」、秋田の「ハラタゲグナル」、山形の「ハラオッケグナル」、茨城の「ジョーブニナル」、東京の「オナカガオーキクナル」、富山の「デキル」、石川の「ハラデコナル」、福井の「ミモチンナル」、岐阜の「コドモガデキル」、静岡、三重の「コガデキル」、滋賀、山口の「ハラボテニナル」、兵庫の「コガデキヨル」、奈良の「ハラオーキナル」、鳥取の「オメデタンナル」、島根の「コドモガデキー」、徳島の「ミゴモル」、高知の「ミモチニナル」、福岡の「サンマエスル」、佐賀の「ハランフトーナットイナッ」、長崎の「ドンバランナル」、大分の「コガデクル」、宮崎の「ハラガフチナル」、鹿児島の「ハラガフトナッ」、沖縄那覇・首里の「カサギーン」があります。

 上記のほか、北海道の「ハラボッケニナル」(稀)、福岡の「ヤヤノデキル」、大分の「オメデタジャ」などがあります。

 この「ハラム」、「ハラオキグナル」、「カガエル」、「ハラタゲグナル」、「ハラオッケグナル」、「ジョーブニナル」、「オナカガオーキクナル」、「デキル」、「ハラデコナル」、「ミモチンナル」、「コドモガデキル」、「コガデキル」、「ハラボテニナル」、「コガデキヨル」、「ハラオーキナル」、「オメデタンナル」、「コドモガデキー」、「ミゴモル」、「ミモチニナル」、「サンマエスル」、「ハランフトーナットイナッ」、「ドンバランナル」、「コガデクル」、「ハラガフチナル」、「ハラガフトナッ」、「カサギーン」、「ハラボッケニナル」、「ヤヤノデキル」、「オメデタジャ」は、

  「ハラ・ムア」、HARA-MUA(hara=excess above a round number(harahara=abundance);mua=the front,in advance of)、「(豊かな)腹が・前にせり出す(妊娠する)」(「ムア」の語尾のA音が脱落して「ム」となった)

  「ハラ・オホ・キ・(ン)グ・(ン)ガルル」、HARA-OHO-KI-NGU-NGARURU(hara=excess above a round number(harahara=abundance);oho=wake up,arise;ki=full,very;ngu=silent,greedy;ngaruru=abundant,strong in growth)、「(豊かな)腹が・急に目覚めたように・十分・貪るように食べて・力強く成長する(妊娠する)」(「オホ」のH音が脱落して「オ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「カ(ン)ガ・ヱル」、KANGA-WHERU(kanga=verbal noun of ka=place of where fire has burnt,home;wheru=inactive,slow,weary,mope)、「家に籠もって・動きが鈍くなる(妊娠する)」(「カ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「カガ」と、「ヱル」のWH音が脱落して「エル」となった)

  「ハラ・タ(ン)ゲタ(ン)ゲ・(ン)グ・(ン)ガルル」、HARA-TANGETANGE-KU-NGARURU(hara=excess above a round number(harahara=abundance);tangetange=forthwith;ngu=silent,greedy;ngaruru=abundant,strong in growth)、「(豊かな)腹が・前に・静かに・力強く成長する(妊娠する)」(「タ(ン)ゲタ(ン)ゲ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「タゲ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「ハラ・オホ・カイ・(ン)グ・(ン)ガルル」、HARA-OHO-KAI-NGU-NGARURU(hara=excess above a round number(harahara=abundance);oho=wake up,arise;kai=food;ngu=silent,greedy;ngaruru=abundant,strong in growth)、「(豊かな)腹が・急に目覚めたように・食物を・貪るように食べて・力強く成長する(妊娠する)」(「オホ」のH音が脱落して「オ」から「オッ」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「チオホ・プニプニ・(ン)ガルル」、TIOHO-PUNIPUNI-NGARURU(tioho=apprehensive;nunipuni=brood,litter;ngaruru=abundant,strong in growth)、「腹の子が・力強く成長するのを・知覚する(妊娠する)」(「チオホ」のH音が脱落して「チョ」から「ジョー」と、「プニプニ」の反復語尾が脱落して「ブニ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「オ・ナカ・(ン)ガ・オホ・キ・ク・(ン)ガルル」、O-NAKA-NGA-OHO-KI-KU-NGARURU(o=the...of;naka=denoting position near or connection with the person spoken to;nga=satified,breathe;oho=wake up,arise;ki=full,very;ku=silent;ngaruru=abundant,strong in growth)、「例の・呼吸する・(身体の中心の)腹が・急に目覚めたように・十分・静かに・力強く成長する(妊娠する)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「オホ」のH音が脱落して「オー」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「テ・キヒ・ル」、TE-KIHI-RU(te=the;kihi=indistinct(of sound),barely audible;ru=shake,agitate,scatter)、「例の・微かな音(胎児の心音)が・聞こえる(妊娠する)」(「テ」が「デ」と、「キヒ」のH音が脱落して「キ」となった)

  「ハラ・テイ・カウ・(ン)ガルル」、HARA-TEI-KAU-NGARURU(hara=excess above a round number(harahara=abundance);tei=high,tall,top;kau=alone,only;ngaruru=abundant,strong in growth)、「(豊かな)腹が・ただただ・(高く)大きく・力強く成長する(妊娠する)」(「オホ」のH音が脱落して「オ」と、「テイ」が「デ」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「ミヒ・モチ・ナ・(ン)ガルル」、MIHI-MOTI-NA-NGARURU(mihi=greet,admire,show itself;(Hawaii)mihi=to repent,apologize,regret;moti=consumed,surfeited;na=satisfied,content;ngaruru=abundant,strong in growth)、「たらふく・食べるのを・見せつけて(または弁解して)・(腹が)力強く成長する(妊娠する)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「ナ」が「ン」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「コ・タウマウ・(ン)ガ・テ・キヒ・ル」、KO-TAUMAU-NGA-TE-KIHI-RU(ko=addressing to girls and males;taumau=hold,keep in place,bespeak;nga=satisfied,breathe;te=the;kihi=indistinct(of sound),barely audible;ru=shake,agitate,scatter)、「待望していた・呼吸する・子の・例の・微かな音(胎児の心音)が・聞こえる(妊娠する)」(「タウマウ」のAU音がO音に変化して「トモ」から「ドモ」と、「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「テ」が「デ」と、「キヒ」のH音が脱落して「キ」となった)

  「コ・(ン)ガ・テ・キヒ・ル」、KO-NGA-TE-KIHI-RU(ko=addressing to girls and males;nga=satisfied,breathe;te=the;kihi=indistinct(of sound),barely audible;ru=shake,agitate,scatter)、「呼吸する・子の・例の・微かな音(胎児の心音)が・聞こえる(妊娠する)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「テ」が「デ」と、「キヒ」のH音が脱落して「キ」となった)

  「ハラ・ポタエ・ニア・(ン)ガルル」、HARA-POTAE-NIA-NGARURU(hara=excess above a round number(harahara=abundance);potae=cap,encircling,enveloping;(Hawaii)nia=smooth,round,bald,calm;ngaruru=abundant,strong in growth)、「(豊かな)腹の・周囲に・(布を)巻いて・力強く成長する(妊娠する)」(「ポタエ」のAE音がE音に変化して「ボテ」と、「ニア」が「ニ」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「コ・(ン)ガ・テ・キヒ・イオ・ル」、KO-NGA-TE-KIHI-IO-RU(ko=addressing to girls and males;nga=satisfied,breathe;te=the;kihi=indistinct(of sound),barely audible;io=twitch;ru=shake,agitate,scatter)、「呼吸する・子の・例の・微かな・脈を打つ音(胎児の心音)が・聞こえる(妊娠する)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「テ」が「デ」と、「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「イオ」が「ヨ」となった)

  「ハラ・オホ・キ・(ン)ガルル」、HARA-OHO-KI-NGARURU(hara=excess above a round number(harahara=abundance);oho=wake up,arise;ki=full,very;ngaruru=abundant,strong in growth)、「(豊かな)腹が・急に目覚めたように・十分・力強く成長する(妊娠する)」(「オホ」のH音が脱落して「オ」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「オ・マイタイ・タナ・(ン)ガルル」、O-MAITAI-TANA-NGARURU(o=the...of;maitai=good,beautiful,agreeable;tana=his,her,its;ngaruru=abundant,strong in growth)、「全く・彼女にとって・喜ばしいことに・(腹が)力強く成長する(妊娠する)」(「マイタイ」のAI音がE音に変化して「メテ」から「メデ」と、「タナ」が「タン」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「コ・タウマウ・(ン)ガ・テ・キヒ」、KO-TAUMAU-NGA-TE-KIHI(ko=addressing to girls and males;taumau=hold,keep in place,bespeak;nga=satisfied,breathe;te=the;kihi=indistinct(of sound),barely audible)、「待望していた・呼吸する・子の・例の・微かな音(胎児の心音)がする(妊娠する)」(「タウマウ」のAU音がO音に変化して「トモ」から「ドモ」と、「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「テ」が「デ」と、「キヒ」のH音が脱落して「キー」となった)

  「ミヒ・コマウ・ル」、MIHI-KOMAU-RU(mihi=greet,admire,show itself;komau=keep fire alight by covering it with ashes;ru=shake,agitate,scatter)、「神々しく・(胎内に埋め火のような)生命の灯火が・ともる(妊娠する)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「コマウ」のAU音がO音に変化して「コモ」から「ゴモ」となった)

  「ミヒ・モチ・ニア・(ン)ガルル」、MIHI-MOTI-NIA-NGARURU(mihi=greet,admire,show itself;(Hawaii)mihi=to repent,apologize,regret;moti=consumed,surfeited;(Hawaii)nia=smooth,round,bald,calm;ngaruru=abundant,strong in growth)、「どんどん・食べるのを・見せつけて(または弁解して)・(腹が)力強く成長する(妊娠する)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「ニア」が「ニ」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「タ(ン)ガ・マエ・ツル」、TANGA-MAE-TURU(tanga=be assembled;mae=languid,listless,withered;turu=last a short time(turua=be done for a short time;tuturu=fixed,permanent))、「体中がすべて・柔軟に・なる(妊娠する)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」と、「ツル」が「スル」となった)

  「ハラ・ナ・フア・トフ・ナ・タウ・イナ」、HARA-NA-HUA-TOHU-NA-TAU-INA(hara=excess above a round number(harahara=abundance);na=satisfied,content,by,belonging to;hua=fruit,product,abundance;tohu=mark,point out,show;tau=come to rest,settle,be suitable;ina=bask,warm oneself)、「(豊かな)腹が・大きくなったことを・見せつける・ように・休息して・日向ぼっこをする・ように(なっている。妊娠する)」(最初の「ナ」が「ン」と、「フア」が「ア」と、「トフ」のH音が脱落して「トー」と、次の「ナ」が「ナッ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「イナ」が「イナッ」となった)

  「トヌ・パラ(ン)ガ・(ン)ガルル」、TONU-PARANGA-NGARURU(tonu=denoting continuance,continually,quite;paranga=excrement;ngaruru=abundant,strong in growth)、「小さな(男性の排出物)子種が・どんどん・力強く成長する(妊娠する)」(「トヌ」が「ドン」と、「パラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「パラナ」から「バラン」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「コ・(ン)ガ・テ・クフ・ル」、KO-NGA-TE-KUHU-RU(ko=addressing to girls and males;nga=satisfied,breathe;te=the;kuhu=thrust in,insert,cinceal;ru=shake,agitate,scatter)、「呼吸する・子の・例の・(子種が)胎内に入って・元気よく動き出す(妊娠する)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「テ」が「デ」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

  「ハラ・(ン)ガフ・チ・(ン)ガルル」、HARA-NGAHU-TI-NGARURU(hara=excess above a round number(harahara=abundance);ngahu=point,promontory;ti=throw,cast;ngaruru=abundant,strong in growth)、「(豊かな)腹が・小山が・突起するように・力強く成長する(妊娠する)」(「(ン)ガフ」のNG音がG音に変化して「ガフ」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「ハラ・(ン)ガフ・タウ(ン)ガ」、HARA-NGAHU-TAUNGA(hara=excess above a round number(harahara=abundance);ngahu=point,promontory;taunga=become familiarised,become intimate)、「(豊かな)腹が・小山のように突起して・慣れてくる(妊娠する)」(「(ン)ガフ」のNG音がG音に変化して「ガフ」と、「タウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「トナ」から「トナッ」となった)

  「カタ・キニ」、KATA-KINI(kata=opening of shellfish,laugh;kini=nip,pinch(whakakini=blink))、「瞬きして・笑う(妊娠する)」(「カタ」が「カサ」と、「キニ」が「ギーン」となった)

  「ハラ・ポカイ・ニア・(ン)ガルル」、HARA-POKAI-NIA-NGARURU(hara=excess above a round number(harahara=abundance);pokai=ball of string,wind in a ball,roll up;(Hawaii)nia=smooth,round,bald,calm;ngaruru=abundant,strong in growth)、「(豊かな)腹が・丸い・玉のようになって・力強く成長する(妊娠する)」(「ポカイ」のAI音がE音に変化して「ポケ」から「ボッケ」と、「ニア」が「ニ」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「イアイア・ノ・テ・キヒ・ル」、IAIA-NO-TE-KIHI-RU(iaia=sinews,veins;no=of;te=the;kihi=indistinct(of sound),barely audible;ru=shake,agitate,scatter)、「元気の良い(子)・の・例の・微かな音(胎児の心音)が・聞こえる(妊娠する)」(「イアイア」が「ヤヤ」と、「テ」が「デ」と、「キヒ」のH音が脱落して「キ」となった)

  「オ・マイタイ・タ・チア」、O-MAITAI-TA-TIA(o=the...of;maitai=good,beautiful,agreeable;ta=dash,beat,lay;tia=abdomen,stomach,navel,mother)、「全く・喜ばしいことが・(彼女の)お腹に・宿った(妊娠する)」(「マイタイ」のAI音がE音に変化して「メテ」から「メデ」と、「チア」が「チャ」から「ジャ」となった)

の転訛と解します。

「ヌ」

160ぬすむ(盗む)・カッパラウ・ガメル・トル・ノスム・ヌスットスル・イボル・オットル・オットッ・ヌスムン・ギル・パチル・オガス・カスムル・イラブカス

 「ぬすむ」の方言には、北海道、福島などの「カッパラウ」、青森、岩手などの「ガメル」、群馬、神奈川などの「トル」、新潟の「ノスム」、島根の「ヌスン」(「ぬすむ」と同語源)、広島の「ヌスットスル」、香川の「イボル」、佐賀熊本などの「オットル」、鹿児島の「オットッ」、沖縄那覇・首里の「ヌスムン」があります。

 上記のほか、北海道の「ギル」(若年層)、大阪の「パチル」(隠語)、香川の「オガス」、大分の「カスムル」、「イラブカス」などがあります。

 この「ぬすむ」、「カッパラウ」、「ガメル」、「トル」、「ノスム」、「ヌスットスル」、「イボル」、「オットル」、「オットッ」、「ヌスムン」、「ギル」、「パチル」、「オガス」、「カスムル」、「イラブカス」は、

  「ヌヌ・ツ・ムフ」、NUNU-TU-MUHU((Hawaii)nunu=greed,to covet,take property by force;tu=stand,settle;muhu=stupid,incorrect,faulty)、「正しくない・方法によって・力で財物を手に入れる(盗む)」(「ヌヌ」の反復語尾が脱落して「ヌ」と、「ツ」が「ス」と、「ムフ」のH音が脱落して「ム」または「ム」から「ン」となった)

  「カ・パラウ」、KA-PARAU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;parau=false,dissembling,deceit)、「不正な行為を・しでかす(盗む)」(「カ」が「カッ」となった)

  「カメ・ル」、KAME-RU(kame=food,property,goods;ru=shake,agitate,scatter(ruanga=shaking,displacement))、「財産を・脇に移す(盗む)」(「カメ」が「ガメ」となった)

  「トフ・ル」、TOHU-RU(tohu=mark,point out,preserve,lay by;ru=shake,agitate,scatter(ruanga=shaking,displacement))、「目をつけたもの(財物)を・脇に移す(盗む)」(「トフ」のH音が脱落して「ト」となった)

  「ノア・ツ・ムフ」、NOA-TU-MUHU(noa=free from tapu or any other restriction,without restraint;tu=stand,settle;muhu=stupid,incorrect,faulty)、「不正な・方法によって・(財物を他人の)支配下から解放する(盗む)」(「ノア」が「ノ」と、「ツ」が「ス」と、「ムフ」のH音が脱落して「ム」となった)

  「ヌヌ・ツ・ト・ツル」、NUNU-TU-TO-TURU((Hawaii)nunu=greed,to covet,take property by force;tu=stand,settle,fight with,energetic;to=drag,haul;turu=last a short time(turua=be done for a short time;tuturu=fixed,permanent))、「懸命に・引っ張って・力で財物を手に入れる・行動をする(盗む)」(「ヌヌ」の反復語尾が脱落して「ヌ」と、「ツ」が「スッ」と、「ツル」が「スル」となった)

  「イポ・ル」、IPO-RU(ipo=beloved one(whakaipo=court,woo);ru=shake,agitate,scatter(ruanga=shaking,displacement))、「(財産などを)得ようと努力して・脇に移す(盗む)」(「イポ」が「イボ」となった)

  「オ・トフ・ル」、O-TOHU-RU(o=the...of;tohu=mark,point out,preserve,lay by;ru=shake,agitate,scatter(ruanga=shaking,displacement))、「例の・目をつけたもの(財物)を・脇に移す(盗む)」(「オ」が「オッ」と、「トフ」のH音が脱落して「ト」となった)

  「オ・トフ」、O-TOHU(o=the...of;tohu=mark,point out,preserve,lay by)、「例の・(財物を)脇に(移して)置く(盗む)」(「オ」が「オッ」と、「トフ」のH音が脱落して「ト」から「トッ」となった)

  「ヌヌ・ツ・ムナ」、NUNU-TU-MUNA((Hawaii)nunu=greed,to covet,take property by force;tu=stand,settle;muna=tell or speak of privately,gossip,secret)、「力で財物を手に入れたと・噂に・なる(盗む)」(「ヌヌ」の反復語尾が脱落して「ヌ」と、「ツ」が「ス」と、「ムナ」が「ムン」となった)

  「(ン)ギア・ル」、NGIA-RU(ngia=seem,appear to be;ru=shake,agitate,scatter(ruanga=shaking,displacement))、「(財物の)場所を移した・ように見える(盗む)」(「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となった)

  「パチ・ル」、PATI-RU(pati=try to obtain by coaxing,cadge money,etc.;ru=shake,agitate,scatter(ruanga=shaking,displacement))、「(財物や金銭を)ねだるようにして・脇に移す(盗む)」(「トフ」のH音が脱落して「ト」となった)

  「アウ(ン)ガ・ツ」、AUNGA-TU(aunga=not including;tu=stand,settle)、「(財産があったものを)空に・する(無くす。盗む)」(「アウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がG音に変化して「オガ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「カ・ツ・ムフ・ル」、KA-TU-MUHU-RU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;tu=stand,settle;muhu=stupid,incorrect,faulty;ru=shake,agitate,scatter(ruanga=shaking,displacement))、「不正な・方法によって・(財物を)脇に移す・行動をする(盗む)」(「ツ」が「ス」と、「ムフ」のH音が脱落して「ム」となった)

  「イ・ラプ・カハ・ツ」、I-RAPU-KAHA-TU(i=past tense,from,beside,by,with;rapu=squeeze;kaha=strong,persistency;tu=stand,settle)、「強い(脅しを)・かけて・(財物を)取り・上げる(盗む)」(「ラプ」が「ラブ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

「ネ」

161ねんねこ・ネネゴ・ダギヨギ・ネンネコバンテン・オブイバンテン・カメノコバンテン・ドンコ・オンブバンテン・モリドーギ・ドンチ・コオビ・オイネ・オイコ・オイバンテン・コーイギ・オサル・オイノコ・ナカコ・トージン・ネンネコタンジェン・ダンブクロ・ブク・コンゴ・ワタジン・アワイ・ショイコバンテン・コンゴバオイ

 「ねんねこ」の方言には、青森の「ネネゴ」、岩手の「ダギヨギ」、栃木、神奈川などの「ネンネコバンテン」、埼玉、山梨などの「オブイバンテン」、千葉の「カメノコバンテン」、石川の「ドンコ」、福井の「オンブバンテン」、岐阜の「モリドーギ」、愛知の「ドンチ」、三重の「コオビ」、滋賀の「オイネ」、大阪の「オイコ」、兵庫の「オイバンテン」、鳥取の「コーイギ」、島根の「コオイギ」(「コーイギ」と同語源)、広島の「オサル」、徳島の「オイゴ」(「オイコ」と同語源)、香川の「オイノコ」、高知の「ナカコ」、福岡の「トージン」、佐賀の「ネンネコタンジェン」、熊本の「ダンブクロ」、大分の「ブク」、鹿児島の「コンゴ」、沖縄那覇・首里の「ワタジン」があります。

 上記のほか、静岡の「アワイ」、愛知の「ショイコバンテン」、鹿児島の「コンゴバオイ」(広袖のもの)などがあります。

 この「ねんねこ」、「ネネゴ」、「ダギヨギ」、「ネンネコバンテン」、「オブイバンテン」、「カメノコバンテン」、「ドンコ」、「オンブバンテン」、「モリドーギ」、「ドンチ」、「コオビ」、「オイネ」、「オイコ」、「オイバンテン」、「コーイギ」、「オサル」、「オイノコ」、「ナカコ」、「トージン」、「ネンネコタンジェン」、「ダンブクロ」、「ブク」、「コンゴ」、「ワタジン」、「アワイ」、「ショイコバンテン」、「コンゴバオイ」は、

  「(ン)ゲヘ・ネネ・コ」、NGEHE-NENE-KO(ngehe=soft,lazy,peaceful,calm;nene=fat;ko=addressing to goirls and males)、「子供を・優しく(覆ってあやす)・(外観が太って)大きく見せるもの(ねんねこ)」(「(ン)ゲヘ」のNG音がN音に変化し、H音が脱落して「ネ」と、「ネネ」が「ンネ」となった)

  「(ン)ゲヘ(ン)ゲヘ・コ」、NGEHENGEHE-KO(ngehengehe=soft,flabby,weak;ko=addressing to goirls and males)、「子供を・優しく覆う(あやす)もの(ねんねこ)」(「(ン)ゲヘ(ン)ゲヘ」のNG音がN音に変化し、H音が脱落して「ネネ」と、「コ」が「ゴ」となった)

  「タキ・オキ」、TAKI-OKI(taki=track,recite(takitaki=recite a song);(Hawaii)oki=to cut,separate(okioki=rest,pause))、「(子供を覆って)子守唄を唄って・(休ませる)寝かせるもの(ねんねこ)」(「タキ・オキ」が「タキョキ」から「タギヨギ」となった)

  「(ン)ゲヘ・ネネ・コ・パネ・テ(ン)ガ」、NGEHE-NENE-KO-PANE-TENGA(ngehe=soft,lazy,peaceful,calm;nene=fat;ko=addressing to goirls and males;pane=head;tenga=Adam's apple,distended)、「子供を・優しく(覆ってあやす)・(外観が太って)大きく見せるもので・(子供の)頭を・大きく見せるもの(ねんねこ)」(「(ン)ゲヘ」のNG音がN音に変化し、H音が脱落して「ネ」と、「ネネ」が「ンネ」と、「パネ」が「バン」と、「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「テン」となった)

  「オプ・ウイ・パネ・テ(ン)ガ」、OPU-HI-PANE-TENGA(opu=set;(Hawaii)opu=rest;hi=rise,raise;pane=head;tenga=Adam's apple,distended)、「(子供を背中に)高く・負ぶって・(子供の)頭を・大きく見せるもの(ねんねこ)」(「オプ」が「オブ」と、「ヒ」のH音が脱落して「イ」と、「パネ」が「バン」と、「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「テン」となった)

  「カ・マイ(ン)ゴ・コ・パネ・テ(ン)ガ」、KA-MAINGO-KO-PANE-TENGA(ka=take fire,be lighted,burn;maingo=yearning;ko=addressing to goirls and males;pane=head;tenga=Adam's apple,distended)、「火がついたように・泣き叫ぶ・子供(をあやすためのもの)の・(子供の)頭を・大きく見せるもの(ねんねこ)」(「マイ(ン)ゴ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「メノ」と、「パネ」が「バン」と、「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「テン」となった)

  「トノ・コ」、TONO-KO(tono=bid,command,demand;ko=addressing to goirls and males)、「(何かを要求して)泣き叫ぶ・子供(をあやすため)のもの(ねんねこ)」(「トノ」が「ドン」となった)

  「オニ・プ(ン)ガ・パネ・テ(ン)ガ」、ONI-PUNGA-PANE-TENGA(oni=move,wriggle;punga=swelling,joint,fix with an anchor;pane=head;tenga=Adam's apple,distended)、「身をよじって暴れる(子供を)・(背中に固定)負ぶって(あやすためのもので)・(子供の)頭を・大きく見せるもの(ねんねこ)」(「オニ」が「オン」と、「プ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ブ」と、「パネ」が「バン」と、「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「テン」となった)

  「モリ・トキ」、MORI-TOKI(mori=fondle,caress;toki,tokitoki=very calm)、「(子供を)やさしくあやして・静かに眠らせる(ためのもの。ねんねこ)」(「トキ」が「ドーギ」となった)

  「トノ・チ」、TONO-TI(tono=bid,command,demand;ti=throw,cast,overcome)、「(何かを要求して)泣き叫ぶ(子供をあやして)・(圧倒する)静かに眠らせる(ためのもの。ねんねこ)」(「トノ」が「ドン」となった)

  「コ・ホピ」、KO-HOPI(ko=addressing to goirls and males;hopi=be terrified,be faint-hearted)、「(泣き叫ぶ)子供を・(あやして)静かにさせる(ためのもの。ねんねこ)」(「ホピ」のH音が脱落して「オビ」となった)

  「オイ・(ン)ゲヘ」、OI-NGEHE(oi=shudder,move continuously(oioi=shake gently);ngehe=soft,lazy,peaceful,calm)、「やさしく揺り動かして・静かにさせる(ためのもの。ねんねこ)」(「(ン)ゲヘ」のNG音がN音に変化し、H音が脱落して「ネ」となった)

  「オイ・コ」、OI-KO(oi=shudder,move continuously(oioi=shake gently);ko=addressing to goirls and males)、「子供を・やさしく揺り動かす(静かにさせるためのもの。ねんねこ)(また「コ」が「ゴ」となった)

  「オイ・パネ・テ(ン)ガ」、OI-PUNGA-PANE-TENGA(oi=shudder,move continuously(oioi=shake gently);punga=swelling,joint,fix with an anchor;pane=head;tenga=Adam's apple,distended)、「(子供を背中に負ぶって)やさしく揺り動かす(ためのもので)・(子供の)頭を・大きく見せるもの(ねんねこ)」(「パネ」が「バン」と、「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「テン」となった)

  「コ・オイ・キ」、KO-OI-KI(ko=addressing to goirls and males;oi=shudder,move continuously(oioi=shake gently);ki=full.very)、「子供を・何回も・やさしく揺り動かす(静かにさせるためのもの。ねんねこ)」(「コ・オイ」が「コーイ」ト、「キ」が「ギ」となった)

  「オ・タル」、O-TARU(o=the...of;taru=shake,overcome)、「例の・(子供をやさしく)揺り動かす(静かにさせるためのもの。ねんねこ)」(「タル」が「サル」となった)

  「オイ・(ン)ゴ・コ」、OI-NGO-KO(oi=shudder,move continuously,agitate(oioi=shake gently);ngo=cry,gruntko=addressing to goirls and males)、「泣き叫ぶ・子供を・やさしく揺り動かす(静かにさせるためのもの。ねんねこ)(「(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「ノ」となった)

  「ナカ・コ」、NAKA-KO(naka=move in a certain direction;ko=addressing to goirls and males)、「子供を・揺り動かす(静かにさせるためのもの。ねんねこ)

  「トウ・チナ」、TOU-TINA(tou=tonu=denoting continuance,still,quite,just;tina=fixed,firm,satisfied)、「ずっと・(満足して)眠る(ためのもの。ねんねこ)」(「トウ」が「トー」と、「チナ」が「ジン」となった)

  「(ン)ゲヘ・ネネ・コ・タ(ン)ガ・チ・エネ」、NGEHE-NENE-KO-TANGA-TI-ENE(ngehe=soft,lazy,peaceful,calm;nene=fat;ko=addressing to goirls and males;tanga=be assembled;ti=throw,cast;ene=flatter,cajole)、「子供を・優しく(覆ってあやす)・(外観が太って)大きく見せるもので・(子供の)機嫌を・とる(あやす)・(機能が)たくさん具わっているもの(ねんねこ)」(「(ン)ゲヘ」のNG音がN音に変化し、H音が脱落して「ネ」と、「ネネ」が「ンネ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」と、「チ」が「ジ」と、「エネ」が「ェン」となった)

  「タ(ン)ガ・プク・ロ」、TANGA-PUKU-RO(tanga=be assembled;puku=swelling,entrails;ro=roto=inside)、「中味(負ぶう人と子供)が・合わさって・(外観が太って)大きく見せるもの(ねんねこ)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「ダン」と、「プク」が「ブク」となった)

  「プク」、PUKU(swelling,entrails)、「(外観が太って)大きく見せるもの(ねんねこ)」(「プク」が「ブク」となった)

  「コナ・(ン)ゴ」、KONA-NGO(kona=to diffuse,spread about;ngo=cry,grunt)、「(子供が)泣き叫ぶのを・(発散する)止めて静かになる(もの。ねんねこ)」(「コナ」が「コン」と、「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」となった)

  「ワタ・チナ」、WHATA-TINA(whata=elevate,hang,rest;tina=fixed,firm,satisfied)、「(背中という)高いところで・(満足して)眠る(ためのもの。ねんねこ)」(「チナ」が「ジン」となった)

  「ア・ワイ」、A-WAI(a=the...of;wai=memory,simultaneous use or movement(whakawai=practise,amuse,entice,wave))、「例の・(波のように)揺り動かす(もの。ねんねこ)」

  「チオイ・コ・パネ・テ(ン)ガ」、TIOI-KO-PANE-TENGA(tioi=shake,sway from side to side;ko=addressing to goirls and males;pane=head;tenga=Adam's apple,distended)、「子供を・(背中に負ぶって)揺り動かす・頭を・大きく見せるもの(ねんねこ)」(「チオイ」が「チョイ」から「ショイ」と、「パネ」が「バン」と、「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「テン」となった)

  「コナ・(ン)ゴ・パ・オイ」、KONA-NGO-PA-OI(kona=to diffuse,spread about;ngo=cry,grunt;pa=touch,reach,accost;oi=shudder,move continuously,agitate)、「(子供が)泣き叫ぶのを・(発散する)止めて静かにし・話しかけて・揺り動かす(もの。ねんねこ)」(「コナ」が「コン」と、「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「パ」が「バ」となった)

の転訛と解します。

「ノ」

162〜のに・〜ケド・〜バテ・〜ドモ・〜ゲントモ・〜ゲンチョモ・〜キット・〜ダニ・〜ガニ・〜ヤニ・〜ニ・〜ヤケド・〜ケーガ・〜ケンド・〜ジャケンド・〜トイ・〜バッテンガ・〜トニ・〜チカイ・〜チ・〜ドン・〜ムンガ・〜シガ・〜ネ・〜ツニ

 「〜のに」の方言には、北海道、石川などの「〜ケド」、青森の「〜バテ」、岩手、秋田の「〜ドモ」、宮城、山形の「〜ゲントモ」、福島の「〜ゲンチョモ」、栃木の「〜キット」、群馬の「〜ンニ」(「〜のに」と同語源)、埼玉、長野の「〜ダニ」、千葉の「〜ノン」(「〜のに」と同語源)、新潟、富山の「〜ガニ」、福井の「〜ヤニ」、山梨、愛知などの「〜ニ」、岐阜の「〜ヤケド」、静岡の「〜ケーガ」、兵庫、徳島「〜ケンド」、愛媛の「〜ジャケンド」、福岡の「〜トイ」、佐賀の「〜バッテンガ」、長崎の「〜トニ」、熊本の「〜チカイ」、大分の「〜ニー」(「〜ニ」と同語源)、宮崎の「〜チ」、鹿児島の「〜ドン」、沖縄那覇の「〜ムンガ」、沖縄首里の「〜シガ」があります。

 上記のほか、島根の「〜ネ」、熊本の「〜ツニ」などがあります。

 この「〜のに」、「〜ケド」、「〜バテ」、「〜ドモ」、「〜ゲントモ」、「〜ゲンチョモ」、「〜キット」、「〜ダニ」、「〜ガニ」、「〜ヤニ」、「〜ニ」、「〜ヤケド」、「〜ケーガ」、「〜ケンド」、「〜ジャケンド」、「〜トイ」、「〜バッテンガ」、「〜トニ」、「〜チカイ」、「〜チ」、「〜ドン」、「〜ムンガ」、「〜シガ」、「〜ネ」、「〜ツニ」は、

  「ノニ」、NONI(crooked,bent,bend,turn)、「〜を(曲げて)方向を変える(〜のに)」(また「ノニ」が「ンニ」または「ノン」となった)

  「ケ・ト」、KE-TO(ke=different,strange;to=drag,haul)、「〜と異なる・方向へ導く(〜のに)」(「ト」が「ド」となった)

  「パテ」、PATE(false)、「〜が間違っていた(〜のに)」(「パテ」が「バテ」となった)

  「ト・モ」、TO-MO(to=drag,haul;mo=for,against)、「〜に反対の・方向へ導く(〜のに)」(「ト」が「ド」となった)

  「(ン)ガエ(ン)ガエ・ト・モ」、NGAENGAE-TO-MO(ngaengae=fail of breath;to=drag,haul;mo=for,against)、「息を止めて(びっくりして行動を止めて)〜に反対の・方向へ導く(〜のに)」(「(ン)ガエ(ン)ガエ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に、AE音がE音に変化して「ゲネ」から「ゲン」となった)

  「(ン)ガエ(ン)ガエ・チオホ・モ」、NGAENGAE-TIOHO-MO(ngaengae=fail of breath;tioho=apprehensive;mo=for,against)、「息を止めて(びっくりして行動を止めて)〜することが心配になって反対の(方向へ向かう)(〜のに)」(「(ン)ガエ(ン)ガエ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に、AE音がE音に変化して「ゲネ」から「ゲン」と、「チオホ」のH音が脱落して「チオ」から「チョ」となった)

  「キヒ・ト」、KIHI-TO(kihi=cut off,destroy completely,strip of brsnches etc.;to=drag,haul)、「〜を止めて・(別の)方向へ導く(または〜の枝にあたる・方向へ導く)(〜のに)」(「キヒ」のH音が脱落して「キッ」となった)

  「タ・ハニ」、TA-HANI(ta=dash,beat,lay;hani=speak ill of,disparage)、「〜に非難を・加える(〜のに)」(「タ」が「ダ」と、「ハニ」のH音が脱落して「ニ」となった)

  「(ン)ガ(ン)ギ」、NGANGI(cry of distress,noise)、「〜が心配だと嘆く(〜のに)」(「(ン)ガ(ン)ギ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ガニ」となった)

  「イア・ハニ」、IA-HANI(ia=indeed;hani=speak ill of,disparage)、「〜を実に・非難する(〜のに)」(「イア」が「ヤ」と、「ハニ」のH音が脱落して「ニ」となった)

  「ハニ」、HANI(speak ill of,disparage)、「〜を非難する(〜のに)」(「ハニ」のH音が脱落して「ニ」または「ニー」となった)

  「イア・ケ・ト」、IA-KE-TO(ia=indeed;ke=different,strange;to=drag,haul)、「〜と実に・異なる・方向へ導く(〜のに)」(「イア」が「ヤ」と、「ト」が「ド」となった)

  「ケカ」、KEKA(mentally deranged,beside oneself with grief,dirge)、「〜は悲しいことだが(〜のに)」(「ケカ」が「ケーガ」となった)

  「ケ・ナ・ト」、KE-NA-TO(ke=different,strange;na=by,belonging to;to=drag,haul)、「〜と異なる・部類に属する・方向へ導く(〜のに)」(「ナ」が「ン」と、「ト」が「ド」となった)

  「チア・ケ・ナ・ト」、TIA-KE-NA-TO(tia=stick in,drive in pegs,etc.;ke=different,strange;na=by,belonging to;to=drag,haul)、「〜と異なる・部類に属する・方向へ杖を突いて・導く(〜のに)」(「チア」が「チャ」から「ジャ」と、「ナ」が「ン」と、「ト」が「ド」となった)

  「トイ」、TOI(move quickly,incite(whakatoi=annoy,mock,answer perversely))、「〜を悩ませる(〜のに)」

  「パ・テ(ン)ガ」、PA-TENGA(pa=touch,strike;tenga=Adam's apple,goitre)、「〜の喉を・圧迫する(〜を窒息させる)(〜のに)」(「パ」が「バッ」と、「テ(ン)ガ」が「テンガ」となった)

  「ト・ニヒ」、TO-NIHI(to=drag,haul;nihi,ninihi=move stealthly,steal away,surprise)、「〜をそっと・(別の)方向へ導く(〜のに)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

  「チカイ」、TIKAI(insult,domineer over,disrespect)、「〜を侮辱する(否定する)(〜のに)」

  「チ」、TI(throw,cast,overcome)、「〜を捨てる(変える)(〜のに)」

  「ト(ン)ガ」、TONGA(=verbal noun of to=drag,haul)、「〜を(別の)方向へ導く(〜のに)」(「ト(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「トナ」から「ドン」となった)

  「ム(ン)ガム(ン)ガ」、MUNGAMUNGA(=mina=affected by)、「〜は心を悲しませる(〜のに)」(「ム(ン)ガム(ン)ガ」の反復語尾が脱落して「ムンガ」となった)

  「チ・ヒ(ン)ガ」、TI-HIMNGA(ti=throw,cast,overcome;hinga=fall from an erect position,be killed,be outdone in a contest)、「〜はずっこけて・捨てられた(〜のに)」(「チ」が「シ」と、「ヒ(ン)ガ」のH音が脱落し、NG音がG音に変化して「ガ」となった)

  「ネ」、NE(interrogative giving emphasis to a questions or request or proposal)、「〜は違うよね(〜のに)」)

  「ツ・ニヒ」、TU-NIHI(tu=stand,settle;nihi,ninihi=move stealthly,steal away,surprise)、「〜をそっと・(別の)ところに置く(〜のに)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

163のろま・ドンケ・ノロスケ・ノッツォ・ノッペ・ズクスケ・ウスノロ・ユージン・グズ・ショロショシテル・ノッソリ・シンギクサイ・ノロサク・グズマ・ノロ・トロイヤツ・チョレーモン・ヌルサク・トロクソ・ドンクソ・トロイ・ユットライトアッ・ドンジュー・グズロ・ヌリー・トットロー・ダラー・ウスラ・クズ・ドシ・トロコイ・テレンチャン・フータンヌルカ・トリ

 「のろま」の方言には、北海道の「ドンケ」、岩手の「ノロスケ」、宮城の「ノッツォ」、秋田の「ノッペ」、山形の「ズクスケ」、栃木の「ウスノロ」、千葉の「ユージン」、新潟、石川などの「グズ」、静岡の「ショロショシテル」、三重の「ノッソリ」、滋賀の「シンギクサイ」、大阪の「ノロサク」、奈良の「グズマ」、和歌山の「ノロ」、鳥取の「トロイヤツ」、岡山の「チョレーモン」、山口の「ヌルサク」、徳島の「トロクソ」、香川の「ドンクソ」、高知の「トロイ」、佐賀の「ユットライトアッ」、長崎の「ドンジュー」、熊本の「グズロ」、大分の「ヌリー」、宮崎の「ヌリ」(「ヌリー」と同語源)、沖縄那覇の「トットロー」、沖縄首里の「ダラー」があります。

 上記のほか、新潟の「ウスラ」、東京の「クズ」、大阪の「ドシ」、高知の「トロコイ」、福岡の「テレンチャン」、「フータンヌルカ」、大分の「トリ」などがあります。

 この「のろま」、「ドンケ」、「ノロスケ」、「ノッツォ」、「ノッペ」、「ズクスケ」、「ウスノロ」、「ユージン」、「グズ」、「ショロショシテル」、「ノッソリ」、「シンギクサイ」、「ノロサク」、「グズマ」、「ノロ」、「トロイヤツ」、「チョレーモン」、「ヌルサク」、「トロクソ」、「ドンクソ」、「トロイ」、「ユットライトアッ」、「ドンジュー」、「グズロ」、「ヌリー」、「トットロー」、「ダラー」、「ウスラ」、「クズ」、「ドシ」、「トロコイ」、「テレンチャン」、「フータンヌルカ」、「トリ」は、

  「ナウ・ロマ」、NAU-ROMA(nau=come,go;roma=current,stream,channel)、「急流を・越えて来る(のろま)」(「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」となった)
  または「(ン)ガウ・ロア・マ」、NGAU-ROA-MA(ngau=wander,go about;roa=long,delayed;ma=to indicate the inclusion of others whom it is not necessary to specify)、「長い時間・(あてどなく)うろつき・回る(のろま)」(「(ン)ガウ}のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」と、「ロア」のA音が脱落して「ロ」となった)

  「ト(ン)ガケ(ン)ガケ」、TONGAKENGAKE(drawn as in a vortex,fully committed)、「渦潮を乗り切る(またはすべて人任せにする)(のろま)」(「ト(ン)ガケ(ン)ガケ」の反復語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「トナケ」から「ドンケ」となった)

  「ナウ・ロア・ツ・ケ」、NAU-ROA-TU-KE(nau=come,go;roa=long,delayed;tu=stand,settle;ke=different,strange)、「異常が・あるほど・遅れて・やって来る(のろま)」(「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」と、「ロア」のA音が脱落して「ロ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「(ン)ガウ・パエ」、NGAU-PAE(ngau=wander,go about;pae=horizen,region,horizontal ridges of hills)、「野山を・(あてどなく)うろつき回る(のろま)」(「(ン)ガウ}のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」から「ノッ」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」となった)

  「ツク・ツ・ケ」、TUKU-TU-KE(tuku=let go,leave,send,offer;tu=stand,settle;ke=different,strange)、「何をするにも・異常が・ある(のろま)」(「ツク」が「ズク」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ウツ・ナウ・ロア」、UTU-NAU-ROA(utu=return for anything,make response;nau=come,go;roa=long,delayed)、「反応が・遅れて・やって来る(のろま)」(「ウツ」が「ウス」と、「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」と、「ロア」のA音が脱落して「ロ」となった)

  「イ・ウフ・チナ」、I-UHU-TINA(i=past tense,beside,from,by;uhu=cramp,benumbed;tina=fixed,firmsatisfied)、「しびれて・固まって・しまつたような(のろま)」(「ウフ」のH音が脱落して「ウ」となり、「イ・ウ」が「ユー」と、「チナ」が「ジン」となった)

  「(ン)グ・ツ」、NGU-TU(ngu=silent,dumb,speechless;tu=stand,settle)、「ただ黙って・突っ立っている(のろま)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「ツ」が「ズ」となった)

  「チオホ・ロ・チオホ・チ・テイ・ル」、TIOHO-RO-TIOHO-TI-TEI-RU(tioho=apprehensive;ro=roto=insice;ti=throw,cast;tei=high,top;ru=shake,agitate,scatter)、「不安な・内心の・不安を・最高に・外へさらけ出して・いる(のろま)」(「チオホ」のH音が脱落して「チョ」から「ショ」と、「チ」が「シ」と、「テイ」が「テ」となった)

  「(ン)ガウ・トリトリ」、NGAU-TORITORI(ngau=wander,go about;toritori=cut in pieces,strenuous,energetic,busy)、「精力的に・(あてどなく)うろつき回る(のろま)」(「(ン)ガウ}のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」から「ノッ」と、「トリトリ」の反復語尾が脱落して「トリ」から「ソリ」となった)

  「チナ・キ・クタ・イ」、TINA-KI-KUTA-I(tina=fixed,exhausted(whakatina=fasten,oppress,be in severe labour);ki=full.very;kuta=encumbrance,clog;i=past tense,beside,from,by)、「忙しい仕事が・いっぱいで・人の足手まといに・なっている(のろま)」(「チナ」が「シン」と、「キ」が「ギ」と、「クタ」が「クサ」となった)

  「ナウ・ロア・タク」、NAU-ROA-TAKU(nau=come,go;roa=long,delayed;taku=slow)、「遅れて・ゆっくりと・やって来る(のろま)」(「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」と、「ロア」のA音が脱落して「ロ」と、「タク」が「サク」となった)

  「(ン)グ・ツ・マ」、NGU-TU-MA(ngu=silent,dumb,speechless;tu=stand,settle;ma=to indicate the inclusion of others whom it is not necessary to specify)、「ただ・黙って・突っ立っている(のろま)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「ツ」が「ズ」となった)

  「ナウ・ロア」、NAU-ROA(nau=come,go;roa=long,delayed)、「遅れて・やって来る(のろま)」(「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」と、「ロア」のA音が脱落して「ロ」となった)

  「トロ・イ・イア・ツ」、TORO-I-IA-TU(toro=stretch forth,extend,creep;i=past tense,beside,from,by;ia=indeed;tu=stand,settle)、「(仕事が)長引いて・しまうことが・実に(頻繁に)・ある(のろま)」(「イア」が「ヤ」となった)

  「チオホ・レイ・モナ」、TIOHO-REI-MONA(tioho=apprehensive;rei=rush,run;mona=fat,rich,for him,for her)、「(走ること)仕事を敏速に処理することに・不安を・多く持っている(のろま)」(「チオホ」のH音が脱落して「チョ」と、「レイ」が「レー」と、「モナ」が「モン」となった)

  「ヌイ・ル・タク」、NUI-RU-TAKU(nui=large,many,rank,openly;ru=shake,agitate,scatter;taku=slow)、「ゆっくりと・やる気が出て来る(のろま)」(「ヌイ」が「ヌ」と、「タク」が「サク」となった)

  「トロ・クサ・ウ」、TORO-KUTA-U(toro=stretch forth,extend,creep;kuta=encumbrance,clog;u=be firm,be fixed)、「(仕事が)長引いて・人の足手まといに・なっている(のろま)」(「クサ」と「ウ」が連結し、AU音がO音に変化して「クト」から「クソ」となった)

  「トヌ・クサ・ウ」、TONU-KUTA-U(tonu=denoting continuance,quite,just;kuta=encumbrance,clog;u=be firm,be fixed)、「ずっと(全く)・人の足手まといに・なっている(のろま)」(「トヌ」が「トン」から「ドン」と、「クサ」と「ウ」が連結し、AU音がO音に変化して「クト」から「クソ」となった)

  「トロ・イ」、TORO-I(toro=stretch forth,extend,creep;i=past tense,beside,from,by)、「(仕事が)長引いて・しまう(のろま)」

  「イ・ウフ・トラ・イ・トア」、I-UHU-TORA-I-TOA(i=past tense,beside,from,by;uhu=cramp,benumbed;tora=burn,be erect;toa=throw up a stalk,brave,rough)、「しびれて動かずに・直立・したような・棒を投げて立て・たような(のろま)」(「ウフ」のH音が脱落して「ウ」となり、「イ・ウ」が「ユッ」と、「トア」が「トアッ」となった)

  「トヌ・チウ」、TONU-TIU(tonu=denoting continuance,quite,just;tiu=soar,wander,sway to and fro)、「ずっと(全く)・ふらふら動き回っている(のろま)」(「トヌ」が「トン」から「ドン」と、「チウ」と「ジュー」となった)

  「(ン)グ・ツ・ロア」、NGU-TU-ROA(ngu=silent,dumb,speechless;tu=stand,settle;roa=long,delayed)、「ただ黙って・長い時間・突っ立っている(のろま)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「ツ」が「ズ」と、「ロア」が「ロ」となった)

  「ヌイ・リ」、NUI-RI(nui=large,many,rank,openly;ri=screen,protect,shut out with a screen)、「ひどく・身を固くして動かないでいる(のろま)」(「ヌイ」が「ヌ」と、「リ」が「リー」となった)

  「トトロ」、TOTORO(=toro=stretch forth,extend,creep;i=past tense,beside,from,by)、「(仕事が)長引く(のろま)」(「トトロ」が「トットロー」となった)

  「タラ」、TARA(loosen,separate)、「(しまりがない)だらっとしている(のろま)」(「タラ」が「ダラー」となった)

  「ウツ・ラ」、UTU-RA(utu=return for anything,make response;ra,rara=make a continued dull sound)、「反応(返事)が・はっきりしない(のろま)」(「ウツ」が「ウス」となった)

  「ク・ツ」、KU-TU(ku=silent;tu=stand,settle)、「ただ黙って・突っ立っている(のろま)」(「ツ」が「ズ」となった)

  「トチ」、TOTI(limp,halt)、「のろのろとしている(のろま)」(「トチ」が「ドシ」となった)

  「トロ・コイ」、TORO-KOI(toro=stretch forth,extend,creep;koi=move about)、「動き回って・(仕事が)長引く(のろま)」

  「テレ(ン)ガ・チア(ン)ガ」、TERENGA-TIANGA(terenga=place in which to swim or float;tianga=mat to lie on)、「水泳場に座布団(を持ち込んで座っている)(のろま)」(「テレ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テレナ」から「テレン」と、「チア(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「チアナ」から「チャン」となった)

  「プタネタネ・ヌイ・ル・カ」、PUTANETANE-NUI-RU-KA(putanetane=eructate after food,retch from a bad smell;nui=large,many,rank,openly;ru=shake,agitate,scatter;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「大きな・強い・あくびをする・ものだ(のろま)」(「プタネタネ」のP音がF音を経てH音に変化し、反復語尾が脱落して「フタネ」から「フータン」と、「ヌイ」が「ヌ」となった)

  「タウ・リ」、TAU-RI(tau=come to rest,settle down,be suitable;ri=screen,protect,shut out with a screen)、「身を固くして・動かないでいる(のろま)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となった)

の転訛と解します。

「ハ」

164ばか(馬鹿)・ハンカクサイ・ホンジナシ・トボゲ・ホンデナス・バガケ・アンポンタン・バガ・デレ・ウスバガ・ダラ・アホ・ヌケサク・タワケ・アンゴ・ダボ・ダラズ・ダラジ・ホッコ・ポンケ・ニトハッシュ・バカタン・シチリン・フラー・フリムン・マヌケ・タフランケ・ホンツケネ・ボヤスケ・オンツァー・タロー・アヤ・ウツケ・ホッコマイ・フーケモン・トンマ・オタンチン

 「ばか」(漢語由来の言葉と解します。ただし、時代が下ると、下記の「バガ」が清音化したものと解されていた可能性があります)の方言には、北海道の「ハンカクサイ」、青森の「ホンジナシ」、岩手の「トボゲ」、宮城の「ホンデナス」、秋田の「バガケ」、山形、福岡などの「アンポンタン」、福島の「バガ」、茨城の「デレ」、栃木の「ウスバガ」、富山、石川の「ダラ」、福井、京都などの「アホ」、山梨の「ヌケサク」、岐阜の「タワケ」、愛知の「ターケ」(「タワケ」と同語源)、三重の「アンゴ」、滋賀、高知の「アホー」(「アホ」と同語源)、兵庫の「ダボ」、鳥取の「ダラズ」、島根の「ダラジ」、岡山の「アンゴー」(「アンゴ」と同語源)、香川の「ホッコ」、愛媛の「ポンケ」、佐賀の「ニトハッシュ」、大分の「バカタン」、宮崎の「シチリン」、沖縄那覇の「フラー」、沖縄首里の「フリムン」があります。

 上記のほか、北海道の「マヌケ」、青森の「タフランケ」、「ホンツケネ」、岩手の「ボヤスケ」、福島の「オンツァー」、「タロー」、福井の「アヤ」(稀)、愛知の「ウツケ」、香川の「ホッコマイ」、佐賀の「フーケモン」、長崎の「トンマ」、大分の「ヒチリン」(「シチリン」と同語源)、「オタンチン」などがあります。

  この「ばか」、「ハンカクサイ」、「ホンジナシ」、「トボゲ」、「ホンデナス」、「バガケ」、「アンポンタン」、「バガ」、「デレ」、「ウスバガ」、「ダラ」、「アホ」、「ヌケサク」、「タワケ」、「アンゴ」、「ダボ」、「ダラズ」、「ダラジ」、「ホッコ」、「ポンケ」、「ニトハッシュ」、「バカタン」、「シチリン」、「フラー」、「フリムン」、「マヌケ」、「タフランケ」、「ホンツケネ」、「ボヤスケ」、「オンツァー」、「タロー」、「アヤ」、「ウツケ」、「ホッコマイ」、「フーケモン」、「トンマ」、「オタンチン」は、

  「パナ・カ・クタ・イ」、PANA-KA-KUTA-I(pana=thrust or drive away,cause to come or go furth in any way;ka=to denote the commencement of a new action or condition;kuta=encumbrance,clog;i=past tense,beside,from,by)、「行ったり来たり・するのに・足手まといに・なる(馬鹿)」(「パナ」」のP音がF音を経てH音に変化して「ハナ」から「ハン」と、「クタ」が「クサ」となった)

  「ハウ(ン)ガ・チ・ナチ」、HAUNGA-TI-NATI(haunga=odorous;ti=throw,cast;nati=pinch or contract)、「芳香を・発するものを・締め出す(馬鹿)」(「ハウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「ホナ」から「ホン」と、「チ」が「ジ」と、「ナチ」が「ナシ」となった)

  「ト・ポケ」、TO-POKE(to=the...of,drag,be pregnant;poke=appear as a spirit,haunt)、「例の・幽霊を見たという人(馬鹿)」(「ポケ」が「ボゲ」となつた)

  「ハウ(ン)ガ・タイ・ナツ」、HAUNGA-TAI-NATU(haunga=odorous;tai,taitai=dash,strike,knock;natu=scratch,tear out)、「芳香を・発するものを・締め出す(馬鹿)」(「ハウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「ホナ」から「ホン」と、「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「デ」と、「ナツ」が「ナス」となった)

  「パ(ン)ガ・ケ」、PANGA-KE(panga=touch,reach,accost,operate on;ke=different,strange)、「奇妙な・行動をする(馬鹿)」(「パ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「パガ」となった)

  「アナ・ポネ・タナ」、ANA-PONE-TANA(ana=denoting continuance of action or state;pone=in difficulties,troubled;tana=his,her,its)、「人に迷惑をかけ・続ける・奴(馬鹿)」(「アナ」が「アン」と、「ポネ」が「ポン」と、「タナ」が「タン」となった)

  「パ(ン)ガ」、PANGA(touch,reach,accost,operate on)、「不躾なまたは傍若無人な(見ず知らずの人に唐突に話しかけるなどの)行動をする(馬鹿)」(「パ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「パガ」となった)

  「テレ」、TERE(drift,float,swift)、「あてどなくさまよう(馬鹿)」(「テレ」が「デレ」となった)

  「ウツ・パ(ン)ガ」、UTU-PANGA(utu=return,make response;panga=touch,reach,accost,operate on)、「反応が・不躾なまたは傍若無人な(見ず知らずの人に唐突に話しかけるなどの)行動をする(馬鹿)」(「ウツ」が「ウス」と、「パ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「パガ」となった)

  「タラ」、TARA(loosen,separate)、「(しまりがない)だらっとしている(馬鹿)」(「タラ」が「ダラ」となった)

  「ア・ホウ」、A-HOU(a=the...of;hou=dedicate or initiate a person etc.(whakahou=violate tapu))、「例の・タブーを破る(馬鹿)」(「ホウ」が「ホ」となった)

  「ヌイ・ケ・タク」、NUI-KE-TAKU(nui=large,many,rank,openly;ke=different,strange,extraordinary;taku=slow)、「(やることが)ひどく・異常に・遅い(馬鹿)」(「ヌイ」が「ヌ」と、「タク」が「サク」となった)

  「タウア・ケ」、TAUA-KE(taua,tautaua=inactivity,coward;ke=different,strange,extraordinary)、「異常に・怠惰だ(馬鹿)」(「タウア」が「タワ」または「ター」となった)

  「ア(ン)ゴ」、ANGO(gape,be open of things not fitting together,be consumed)、「口を開けっ放している(馬鹿)」(「ア(ン)ゴ」が「アンゴ」または「アンゴー」となった)

  「タポヘ」、TAPOHE(violate tapu in respect of a person or place or food etc.)、「(一定の人、場所、食物などに敬意を表するという社会の)タブーを破る(馬鹿)」(「タポヘ」のH音が脱落して「ダボ」となった)

  「タラ・ツ」、TARA-TU(tara=loosen,separate;tu=stand,settle)、「(しまりがない)だらっと・している(馬鹿)」(「タラ」が「ダラ」と、「ツ」が「ズ」となった)

  「タラ・チ」、TARA-TI(tara=loosen,separate;ti=throw,cast)、「(しまりがない)だらっとしたところを見せている(馬鹿)」(「タラ」が「ダラ」と、「チ」が「シ」となった)

  「ホ・コ」、HO-KO(ho=put out the lips,pout(a mark of derision),droop;ko=addressing to gorls and males)、「活気がない・奴(馬鹿)」または「嘲笑の的になっている・奴(馬鹿)」(「ホ」が「ホッ」となった)

  「ポネ・ケ」、PONE-KE(pone=in difficulties,troubled;ke=different,strange,extraordinary)、「異常に・人に迷惑をかける(馬鹿)」(「ポネ」が「ポン」となった)

  「ヌイ・トハ・チウ」、NUI-TOHA-TIU(nui=large,many,rank,openly;toha=spread out;tiu=soar,wander,swift)、「たいへん・範囲を広げて・うろつき回る(馬鹿)」(「ヌイ」が「ニ」と、「トハ」が「トハッ」と、「チウ」が「シュ」となった)

  「パ(ン)ガ・タナ」、PANGA-TANA(panga=touch,reach,accost,operate on;tana=his,her its)、「不躾なまたは傍若無人な(見ず知らずの人に唐突に話しかけるなどの)行動をする・奴(馬鹿)」(「パ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「パガ」から「バカ」と、「タナ」が「タン」となった)

  「チ・チリ・イナ」、TI-TIRI-INA(ti=throw,cast;tiri=throw or place one by one,scatter;ina=bask,warm oneself)、「ごろんと・身を投げ出して・日向ぼこをする(馬鹿)」(「チ」が「シ」または「ヒ」と、「チリ」の語尾のI音と「イナ」の語頭のI音が連結して「チリナ」から「チリン」となった)

  「フラ」、HURA(remove a covering,begin to flow)、「(流れる)あてどなくうろつく(馬鹿)」(「フラ」が「フラー」となった)

  「フリ・ムナ」、HURI-MUNA(huri=turn round,overturn,overflow;muna=tell or speak of privately,gossip,secret)、「(溢れ流れる)あてどなくうろつく(馬鹿)」(「ムナ」が「ムン」となった)

  「マヌ・ケ」、MANU-KE(manu=float,overflow;ke=different,strange,extraordinary)、「異常に・(漂流する)あてどなくうろつく(馬鹿)」

  「タ・フラ(ン)ギ・ケ」、TA-HURANGI-KE(ta=the...of;hurangi=fly,unsettled;ke=different,strange,extraordinary)、「例の・一カ所に止まることなく・あてどなくうろつく(馬鹿)」(「フラ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「フラニ」から「フラン」となった)

  「ホノ・ツ・ケネ」、HONO-TU-KENE(hono=assembly,company,retinue;tu=stand,settle;kene=mudmire)、「泥まみれに・なって・座っている(馬鹿)」(「ホノ」が「ホン」となった)

  「ポイア・ツ・ケ」、POIA-TU-KE(poia=yawn(hamama popoia=yawn without restraint);tu=stand,settle;ke=different,strange)、「異常が・あるほど・(何のくったくもなく)欠伸をする(のろま)」(「ポイア」が「ボヤ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「アウ(ン)ガ・ツア」、AUNGA-TUA(aunga=not including;tua=mention the name of any one)、「(頭の中が)空っぽと・名付けられた(馬鹿)」(「アウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「オナ」から「オン」と、「ツア」が「ツァ」となった)

  「タ・ロア」、TA-ROA(ta=the...of;roa=long,delayed)、「例の・(仕事が)遅い(馬鹿)」(「ロア」が「ロ」から「ロー」となった)

  「アイア」、AIA(kaitoa=expressing satisfaction or complacency at any event)、「何と幸せな奴(または何という奴)(馬鹿)」(「アイア」が「アヤ」となった)

  「ウツ・ケ」、UTU-KE(utu=return for anything,make response;ke=different,strange,extraordinary)、「おかしな・返答をする(馬鹿)」

  「ホ・コ・マイ」、HO-KO-MAI(ho=put out the lips,pout(a mark of derision),droop;ko=addressing to gorls and males:mai=hither,to indicate direction or motion towards)、「活気がない・この・奴(馬鹿)」または「嘲笑の的になっている・この・奴(馬鹿)」(「ホ」が「ホッ」となった)

  「フケフケ・モナ」、HUKEHUKE-MONA(hukehuke=fool,coward;mona=for him,for her)、「愚かな・奴(馬鹿)」(「フケフケ」の反復語尾が脱落して「フケ」から「フーケ」と、「モナ」が「モン」となった)

  「トヌ・ウマ(ン)ガ」、TONU-UMANGA(tonu=denoting continuance,still,quite;umanga=pursuit,food,accustomed,habituated)、「(仕事の)やりかけが・常態になっている(いつまでも完成しない)(馬鹿)」(「トヌ」の語尾のU音と「ウマ(ン)ガ」の語頭のU音が連結して「トヌマ(ン)ガ」となり、名詞形語尾のNGA音が脱落して「トヌマ」から「トンマ」となった)

  「オ・タネ・チニ」、O-TANE-TINI(o=the...of;tane=eructate after meal;tini=very many,host)、「例の・しょっちゅう・あくびばかりしている(馬鹿)」(「タネ」が「タン」と、「チニ」が「チン」となった)

の転訛と解します。

165はかどる(捗る)・ハガイグ・ハガエグ・ハカエグ・ハカイグ・ハカガイク・ハカイク・ラチンアク・ヨーケヤレル・デケル・ハカイキガツク・ハカドー・ミャーガアガル・サバケル・ハカンドル・ハカノイク・サバクッ・ススム・ッアガチュン・ハバチュン・ダチガエータ

 「はかどる」の方言には、北海道、青森などの「ハガイグ」、宮城、秋田などの「ハガエグ」、茨城、新潟の「ハカエグ」、栃木の「ハカイグ」、群馬、神奈川などの「ハカガイク」、埼玉、富山などの「ハカイク」、静岡の「ラチンアク」、愛知の「ヨーケヤレル」、奈良の「デケル」、鳥取の「ハカイキガツク」、島根の「ハカドー」、岡山の「ミャーガアガル」、徳島の「サバケル」、高知の「ハカンドル」、福岡の「ハカノイク」、佐賀、鹿児島の「サバクッ」、宮崎の「ススム」、沖縄那覇の「ッアガチュン」、沖縄首里の「ハバチュン」があります。

 上記のほか、大分の「ダチガエータ」があります。

 この「はかどる」、「ハガイグ」、「ハガエグ」、「ハカエグ」、「ハカイグ」、「ハカガイク」、「ハカイク」、「ラチンアク」、「ヨーケヤレル」、「デケル」、「ハカイキガツク」、「ハカドー」、「ミャーガアガル」、「サバケル」、「ハカンドル」、「ハカノイク」、「サバクッ」、「ススム」、「ッアガチュン」、「ハバチュン」、「ダチガエータ」は、

  「ハ・アカ・トル」、HA-AKA-TORU(ha=breath,taste;aka=anga=face or move in a certain direction,turn to,doing anything;toru=toro=stretch forth,extend)、「(ハァハァと荒い)息をして・仕事が・進む(捗る)」(「ハ」のA音と「アカ」の語頭のA音が連結して「ハカ」と、「トル」が「ドル」となった)

  「ハ・(ン)ガ・イ・(ン)グ」、HA-NGA-I-NGU(ha=breath,taste;nga=breathe,take breath,satisfied;i=past tense;ngu=silent,greedy,moan)、「(ハァハァと荒い)息を・して・(仕事を飽食)たくさん仕上げ・た(捗る)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「ハ・(ン)ガ・エ・(ン)グ」、HA-NGA-E-NGU(ha=breath,taste;nga=breathe,take breath,satisfied;e=to denote action in progress or temporary condition;ngu=silent,greedy,moan)、「(ハァハァと荒い)息を・して・(仕事を飽食)たくさん仕上げ・つつある(捗る)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「ハ・アカ・エ・(ン)グ」、HA-AKA-E-NGU(ha=breath,taste;aka=anga=face or move in a certain direction,turn to,doing anything;e=to denote action in progress or temporary condition;ngu=silent,greedy,moan)、「(ハァハァと荒い)息をして・仕事を・(飽食)たくさん仕上げ・つつある(捗る)」(「ハ」のA音と「アカ」の語頭のA音が連結して「ハカ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「ハ・アカ・イ・(ン)グ」、HA-AKA-I-NGU(ha=breath,taste;aka=anga=face or move in a certain direction,turn to,doing anything;i=past tense;ngu=silent,greedy,moan)、「(ハァハァと荒い)息をして・仕事を・(飽食)たくさん仕上げた(捗る)」(「ハ」のA音と「アカ」の語頭のA音が連結して「ハカ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「ハ・アカ・(ン)ガ・イ・ク」、HA-AKA-NGA-I-KU(ha=breath,taste;aka=anga=face or move in a certain direction,turn to,doing anything;nga=breathe,take breath,satisfied;i=past tense;ku=silent,wearied,exhausted)、「(ハァハァと荒い)息をして・仕事の進捗に・満足し・疲れ・た(捗る)」(「ハ」のA音と「アカ」の語頭のA音が連結して「ハカ」と、「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」となった)

  「ハ・アカ・イ・ク」、HA-AKA-I-KU(ha=breath,taste;aka=anga=face or move in a certain direction,turn to,doing anything;i=past tense;ku=silent,wearied,exhausted)、「(ハァハァと荒い)息をして・仕事を進めて・疲れ・た(捗る)」(「ハ」のA音と「アカ」の語頭のA音が連結して「ハカ」となった)

  「ラハ・チニ・アク」、RAHA-TINI-AKU(raha=open,extend;tini=very many,host;aku=delay,scrape out,cleanse)、「すごく・先まで・(仕事を)きれいに片付ける(捗る)」(「ラハ」のH音が脱落して「ラ」と、「チニ」が「チン」となった)

  「イオ・ケ・イア・レイ・ル」、IO-KE-IA-REI-RU(io=tough,hard,obstinate;ke=different,strange,extraordinary;ia=indeed;rei=rush,run;ru=shake,agitate,scatter)、「実に・異常に・頑張って・奮い立って・走った(捗る)」(「イオ」が「ヨー」と、「イア」が「ヤ」と、「レイ」が「レ」となった)

  「テ・ケ・ル」、TE-KE-RU(te=the;ke=different,strange,extraordinary;ru=shake,agitate,scatter)、「例の・異常に・奮い立っ(て仕事をし)た(捗る)」(「テ」が「デ」となった)

  「ハ・アカ・イ・キ・(ン)ガ・ツ・ク」、HA-AKA-NGA-I-KU(ha=breath,taste;aka=anga=face or move in a certain direction,turn to,doing anything;i=past tense;ku=silent,wearied,exhausted;ki=full,very;nga=breathe,take breath,satisfied;tu=stand,settle;ku=silent,wearied,exhausted)、「(ハァハァと荒い)息を・吐く・(仕事を)十分・行って・満足して・疲れが・ある(捗る)」(「ハ」のA音と「アカ」の語頭のA音が連結して「ハカ」と、「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」となった)

  「ハ・アカ・トフ」、HA-AKA-TOHU(ha=breath,taste;aka=anga=face or move in a certain direction,turn to,doing anything;tohu=mark,point out,show)、「(ハァハァと荒い)息をして・仕事をするのを・見せつける(捗る)」(「ハ」のA音と「アカ」の語頭のA音が連結して「ハカ」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドー」となった)

  「ミハ・(ン)ガ・ア(ン)ガ・ル」、MIHA-NGA-ANGA-RU(miha=wonder,admire;nga=breathe,take breath,satisfied;anga=a=driving force,thing driven etc.;ru=shake,agitate,scatter)、「驚くほど・(荒い)息をして・奮い立って・(仕事に)精を出した(捗る)」(「ミハ」のH音が脱落して「ミア」から「ミャー」と、「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「ア(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「アガ」となった)

  「タ・パケ・ル」、TA-PAKE-RU(ta=the...of,dash,beat,lay;pake=obstinate(pakepake=persistent);ru=shake,agitate,scatter)、「突貫して・ねばり強く・奮い立っ(て仕事をし)た(捗る)」(「タ」が「サ」と、「パケ」が「バケ」となった)

  「ハ・アカ・(ン)ガ・トル」、HA-AKA-NGA-TORU(ha=breath,taste;aka=anga=face or move in a certain direction,turn to,doing anything;nga=breathe,take breath,satisfied;toru=toro=stretch forth,extend)、「(ハァハァと荒い)息をして・仕事が・満足に・進む(捗る)」(「ハ」のA音と「アカ」の語頭のA音が連結して「ハカ」と、「(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ナ」から「ン」と、「トル」が「ドル」となった)

  「ハ・アカ・(ン)ガウ・イ・ク」、HA-AKA-NGAU-I-KU(ha=breath,taste;aka=anga=face or move in a certain direction,turn to,doing anything;ngau=bite,act upon,attack;i=past tense;ku=silent,wearied,exhausted)、「(ハァハァと荒い)息をして・仕事に・努めて・疲れ・た(捗る)」(「ハ」のA音と「アカ」の語頭のA音が連結して「ハカ」と、「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

  「タ・パクク」、TA-PAKUKU(ta=the...of,dash,beat,lay;pakuku=slip,glide,move)、「突貫して・(仕事が)進んだ(捗る)」(「タ」が「サ」と、「パクク」の反復語尾が脱落して「バク」から「バクッ」となった)

  「ツ・ツム」、TU-TUMU(tu=fight with,energetic;tumu=go against the wind,work to windward)、「懸命に・(風に逆らって)仕事をする(捗る)」(「ツ」が「ス」と、「ツム」が「スム」となった)

  「ツ・ア(ン)ガ・チ・ウ(ン)ガ」、TU-ANGA-TI-UNGA(tu=fight with,energetic;anga=a=driving force,thing driven etc.;ti=throw,cast;unga=send,cause to come forth,expel)、「懸命に・(仕事に)精を出して・前進・させた(捗る)」(「ツ」が「ッ」と、「ア(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「アガ」と、「ウ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウナ」から「ウン」となり、「チ・ウン」が「チュン」となった)

  「ハ・バ・チ・ウ(ン)ガ」、HA-PA-TI-UNGA(ha=breath,taste;pa=touch,strike,operate on;ti=throw,cast;unga=send,cause to come forth,expel)、「(ハァハァと荒い)息をして・(仕事に)努め・精を出して・前進させた(捗る)」(「ツ」が「ッ」と、「ア(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「アガ」と、「ウ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウナ」から「ウン」となり、「チ・ウン」が「チュン」となった)

  「タ・アチ・(ン)ガエ・ヘイ・タ」、TA-ATI-NGAE-HEI-TA(ta=dash,beat,lay;ati=descendant,clan,then,beginning;ngae=wheeze(ngaengae=full of breath);hei=go towards,be requited)、「突進を・始めて・荒い息をして・仕事を前進させ・た(捗る)」(「タ」のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「タチ」から「ダチ」と、「(ン)ガエ」のNG音がG音に変化して「ガエ」と、「ヘイ」のH音が脱落して「エイ」となり、「ガエ・エイ」が「ガエー」となった)

の転訛と解します。

166はしる(走る)・ハセル・ハッケル・サラウ・ハスル・ハネル・カゲル・トブ・カケル・カクッ・ハシッ・ハーエースン

 「はしる」の方言には、北海道、岩手などの「ハセル」、青森の「ハッケル」、秋田の「サラウ」、山形の「ハスル」、福島の「ハネル」、茨城、栃木の「カゲル」、群馬、新潟などの「トブ」、埼玉、神奈川などの「カケル」、佐賀の「カクッ」、鹿児島の「ハシッ」、沖縄那覇・首里の「ハーエースン」があります。

 この「はしる」、「ハセル」、「ハッケル」、「サラウ」、「ハスル」、「ハネル」、「カゲル」、「トブ」、「カケル」、「カクッ」、「ハシッ」、「ハーエースン」は、

  「ハ・チ・ル」、HA-TI-RU(ha=breath,taste;ti=throw,cast;ru=shake,agitate,scatter)、「(荒い)息を吐いて・(身を)投げ出すように・突進する(走る)」(「チ」が「シ」となった)

  「ハ・テ・ル」、HA-TE-RU(ha=breath,taste;te,tete=exert oneself;ru=shake,agitate,scatter)、「(荒い)息を吐いて・(持てる力をすべて)発揮して・突進する(走る)」(「テ」が「セ」となった)

  「ハ・ケ・ル」、HA-KE-RU(ha=breath,taste;ke=different,strange,extraordinary;ru=shake,agitate,scatter)、「(荒い)息を吐いて・(平常と)異なったように(奮起して)・突進する(走る)」(「ハ」が「ハッ」となった)

  「タ・ラウ」、TA-RAU(ta=dash,beat,lay;rau=project,extend)、「噴出するように・突進する(走る)」(「タ」が「サ」となった)

  「ハ・ツ・ル」、HA-TU-RU(ha=breath,taste;tu=fight with,energetic;ru=shake,agitate,scatter)、「(荒い)息を吐いて・懸命に・突進する(走る)」(「ツ」が「ス」となった)

  「ハ・ネイ・ル」、HA-NEI-RU(ha=breath,taste;nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating,bobbing up and down;ru=shake,agitate,scatter)、「(荒い)息を吐いて・跳ぶように・突進する(走る)」(「ネイ」が「ネ」となった)

  「カ・(ン)ガエ・ル」、KA-NGAE-RU(ka=take fire,be lighted,burn;ngae=wheeze(ngaengae=full of breath);ru=shake,agitate,scatter)、「(火が燃えるように)熱くなって・(荒い)息を吐いて・突進する(走る)」(「(ン)ガエ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化して「ゲ」となった)

  「ト・プ」、TO-PU(to=drag,haul;pu=tribe,bunch,heap)、「(身体を)高く・上げる(跳ぶように走る)(走る)」(「プ」が「ブ」となった)

  「カ・ケ・ル」、KA-KE-RU(ka=take fire,be lighted,burn;ke=different,strange,extraordinary;ru=shake,agitate,scatter)、「(火が燃えるように)熱くなって・(平常と)異なったように(奮起して)・突進する(走る)」

  「カ・ク・ツ」、KA-KU-TU(ka=take fire,be lighted,burn;ku=silent;tu=fight with,energetic)、「(火が燃えるように)熱くなって・黙って・懸命に動く(走る)」(「ツ」が「ッ」となった)

  「ハ・チ・ツ」、HA-TI-TU(ha=breath,taste;ti=throw,cast;tu=fight with,energetic)、「(荒い)息を吐いて・懸命に・(身を)投げ出すよう動く(走る)」(「チ」が「シ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「ハ・ヘイ・ツヌ」、HA-HEI-TUNU(ha=breath,taste;hei=go towards,be requited;tunu=roast,inspire with fear)、「(荒い)息を吐いて・奮い立って・前進する(走る)」(「ハ」が「ハー」と、「ヘイ」のH音が脱落して「エイ」から「エー」と、「ツヌ」が「スン」となった)

の転訛と解します。

167はずかしい(恥ずかしい)・メグセ・オショス・オショスエ・ショーシ・ハズガスエ・ハツカシエ・コッパズカシー・オカシー・メンドナ・テーサイガワリー・キマリガワリー・テレクサイ・カッコワルイ・ハチカシ・ミットモナイ・メンドラシー・ハンドゥーカシー・オカシカ・チャーガツカ・ハズカシカ・ウストロカ・ゲンナカ・ハジカサン・ショスガル・キノドクイ・ゲンネ

 「はずかしい」の方言には、北海道、群馬などの「ハズカシー」(「はずかしい」と同語源)、青森の「メグセ」、岩手の「オショス」、宮城の「オショスエ」、秋田、福島の「ショーシ」、山形の「ハズガスエ」、茨城の「ハツカシエ」、栃木、山梨の「コッパズカシー」、千葉の「オカシー」、新潟、長野の「ショーシー」(「ショーシ」と同語源)、石川の「メンドナ」、静岡の「テーサイガワリー」、愛知の「キマリガワリー」、三重、香川の「ハズカシ」(「はずかしい」と同語源)、滋賀、鳥取などの「ハツカシー」(「はずかしい」と同語源)、兵庫の「テレクサイ」、奈良の「カッコワルイ」、島根の「ハチカシ」、山口の「ミットモナイ」、徳島の「メンドラシー」、高知の「ハンドゥーカシー」、福岡の「オカシカ」、佐賀の「チャーガツカ」、長崎の「ハズカシカ」、熊本の「ウストロカ」、宮崎の「オカシ」(「オカシー」と同語源)、鹿児島の「ゲンナカ」、沖縄那覇・首里の「ハジカサン」があります。

 上記のほか、岩手の「ショスガル」、大分の「キノドクイ」、鹿児島の「ゲンネ」などがあります。

 この「はずかしい」、「メグセ」、「オショス」、「オショスエ」、「ショーシ」、「ハズガスエ」、「ハツカシエ」、「コッパズカシー」、「オカシー」、「メンドナ」、「テーサイガワリー」、「キマリガワリー」、「テレクサイ」、「カッコワルイ」、「ハチカシ」、「ミットモナイ」、「メンドラシー」、「ハンドゥーカシー」、「オカシカ」、「チャーガツカ」、「ハズカシカ」、「ウストロカ」、「ゲンナカ」、「ハジカサン」、「ショスガル」、「キノドクイ」、「ゲンネ」は、

  「ハ・ツカハ・チヒ」、HA-TUKAHA-TIHI(ha=breath,taste,hesitate in speaking;tukaha=strenuous,headstrong,hasty,passionate;tihi=summit,top)、「最高に・強く・気おくれがする(恥ずかしい)」(「ツカハ」のH音が脱落して「ツカ」から「ズカ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シ」、「シイ」または「シー」となった)

  「メ・(ン)グ・テア」、ME-NGU-TEA(me=as if,like,as it were;ngu=silent;tea=white,clear(teatea=pale,apprehensive,afraid))、「黙りこみ・顔が蒼白になって(気おくれしている)・ような(恥ずかしい)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「テア」が「テ」から「セ」となった)

  「オ・チオホ・ツ」、O-TIOHO-TU(o=the...of;tioho=apprehensive;tu=stand,settle)、「例の・心配(気おくれ)が・ある(恥ずかしい)」(「チオホ」のH音が脱落して「チョ」から「ショ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「オ・チオホ・ツヘア」、O-TIOHO-TUHEA(o=the...of;tioho=apprehensive;tuhea=overgrown with brushwood etc.,deserted)、「例の・心配(気おくれ)が・膨れ上がっている(恥ずかしい)」(「チオホ」のH音が脱落して「チョ」から「ショ」と、「ツヘア」のH音および語尾のA音が脱落して「スエ」となった)

  「チオホ・チ」、TIOHO-TI(tioho=apprehensive;ti=throw,cast)、「心配(気おくれ)が・のしかかっている(恥ずかしい)」(「チオホ」のH音が脱落して「チョ」から「ショー」と、「チ」が「シ」または「シー」となった)

  「ハ・ツカハ・ツヘア」、HA-TUKAHA-TUHEA(ha=breath,taste,hesitate in speaking;tukaha=strenuous,headstrong,hasty,passionate;tuhea=overgrown with brushwood etc.,deserted)、「強く・膨れ上がった・気おくれがする(恥ずかしい)」(「ツカハ」のH音が脱落して「ツカ」から「ズガ」と、「ツヘア」のH音および語尾のA音が脱落して「スエ」となった)

  「ハ・ツカハ・チエ」、HA-TUKAHA-TIE(ha=breath,taste,hesitate in speaking;tukaha=strenuous,headstrong,hasty,passionate;tie=abundance,plenty)、「強く・満ちあふれる・気おくれがする(恥ずかしい)」(「ツカハ」のH音が脱落して「ツカ」と、「チエ」が「シエ」となった)

  「コパ・ツカハ・チヒ」、KOPA-TUKAHA-TIHI(kopa=numbed,stiff,congealed;tukaha=strenuous,headstrong,hasty,passionate;tihi=summit,top)、「最高に・強く・(痺れたように)気おくれがする(恥ずかしい)」(「コパ」が「コッパ」と、「ツカハ」のH音が脱落して「ツカ」から「ズカ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シー」となった)

  「アウ・カハ・チヒ」、AU-KAHA-TIHI(au=smoke,gall,whirlpool;kaha=strong,strength,persistency;tihi=summit,top)、「最高に・強く・苦々しさがある(気おくれがする)(恥ずかしい)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シ」または「シー」となった)

  「メネ・ト(ン)ガ」、MENE-TONGA(mene=show wrinkles,contort the face;tonga=restrained,suppressed,secret)、「気が沈みこんで・顔を歪める(気おくれする)(恥ずかしい)」(「メネ」が「メン」と、「ト(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「トナ」から「ドナ」となった)

  「テイ・タイ(ン)ガ・ワリ」、TEI-TAINGA-WARI(tei=high,summit;tainga=place for bailing in a canoe;wari=watery(applied to potatoes spoiled by frost))、「高所にある・舟のあか水を抜く場所(乾燥場)が・水浸しである(みっともない)(恥ずかしい)」(「テイ」が「テー」と、「タイ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「タイガ」から「サイガ」と、「ワリ」が「ワリー」となった)

  「キ・マ・リ(ン)ガ・ワリ」、KI-MA-RINGA-WARI(ki=full,very;ma=white,clean;ringa=hand,arm,weapon;wari=watery(applied to potatoes spoiled by frost))、「たくさんの・清らかな・(木製の)武器が・腐っている(みっともない)(恥ずかしい)」(「リ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「リガ」と、「ワリ」が「ワリー」となった)

  「テレ・クタ・イ」、TERE-KUTA-I(tere=drift,float;kuta=encumbrance,clog as old and infirm people on a march;i=past tense,beside,from,with,by)、「ふらふらとうろついて・人の足手まといに・なっている(恥ずかしい)」(「クタ」が「クサ」となった)

  「カカウ・ワ・ルイ」、KAKAU-WA-RUI(kakau=swim as in last example;wa,whakawa=accuse,bring a formal charge against,condemn;rui=shake,shake down,scatter)、「(水泳の)模範演技が・ひどく・非難される(恥ずかしい)」(「カカウ」のAU音がO音に変化して「カコ」から「カッコ」となった)

  「ハ・チ・カハ・チヒ」、HA-TI-KAHA-TIHI(ha=breath,taste,hesitate in speaking;ti=throw,cast;kaha=strong,strength,persistency;tihi=summit,top)、「最高に・強く・気おくれが・する(恥ずかしい)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シ」となった)

  「ミ・トモ・ナイ」、MI-TOMO-NAI(mi=urine,urinate;tomo=be filled;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「そこら・いっぱいで・放尿する(みっともない)(恥ずかしい)」(「ミ」が「ミッ」となった)

  「メネ・トラ・チ」、MENE-TORA-TI(mene=show wrinkles,contort the face;tora=burn,be erect;ti=throw,cast)、「顔を歪める(気おくれする)・(感情が)湧いて・出た(恥ずかしい)」(「メネ」が「メン」と、「トラ」が「ドラ」と、「チ」が「シー」なった)

  「ハ・ナツ・カハ・チヒ」、HA-NATU-KAHA-TIHI(ha=breath,taste,hesitate in speaking;natu=scratch,stir up,mix,tear out;kaha=strong,strength,persistency;tihi=summit,top)、「最高に・強く・気おくれ(の感情)が・湧いて出る(恥ずかしい)」(「ナツ」が「ンツ」から「ンドゥー」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シー」となった)

  「アウ・カハ・チヒ・カ」、AU-KAHA-TIHI-KA(au=smoke,gall,whirlpool;kaha=strong,strength,persistency;tihi=summit,top;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「最高に・強く・苦々しさがある・ね(気おくれがする)(恥ずかしい)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シ」となった)

  「チア・(ン)ガツ・カ」、TIA-NGATU-KA(tia=slave,servant;ngatu=crushed,mashed;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「使用人が・いじめられている・ね(恥ずかしい)」(「チア」が「チャー」と、「(ン)ガツ」のNG音がG音に変化して「ガツ」」となった)

  「ハ・ツカハ・チヒ・カ」、HA-TUKAHA-TIHI-KA(ha=breath,taste,hesitate in speaking;tukaha=strenuous,headstrong,hasty,passionate;tihi=summit,top;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「最高に・強く・気おくれがする・ね(恥ずかしい)」(「ツカハ」のH音が脱落して「ツカ」から「ズカ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シ」となった)

  「ウツ・トロ・カ」、UTU-TORO-KA(utu=return for anything,make response whether by way of payment etc.;toro=stretch forth,expell,creep;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「(何かの施しなどの)お礼に・腹這いになる・とはね(恥ずかしい)」(「ウツ」が「ウス」となった)

  「(ン)ゲ(ン)ゲ・ナ・カ」、NGENGE-NA-KA(ngenge=fail of breath;na=satisfied,content;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「息も絶え絶えになりながら・満足している・とはね(恥ずかしい)」(「(ン)ゲ(ン)ゲ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ゲナ」から「ゲン」となった)

  「ハ・チ・カハ・タナ」、HA-TI-KAHA-TANA(ha=breath,taste,hesitate in speaking;ti=throw,cast;kaha=strong,strength,persistency;tana=his,her,its)、「彼の・強く・気おくれが・する(恥ずかしい)」(「チ」が「ジ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「タナ」が「サン」となった)

  「チオホ・ツ・(ン)ガルル」、TIOHO-TU-NGARURU(tioho=apprehensive;tu=stand,settle;ngaruru=surfeited,dislike,abundant,strong in growth)、「心配(気おくれ)が・たくさん・ある(恥ずかしい)」(「チオホ」のH音が脱落して「チョ」から「ジョ」と、「ツ」が「ス」と、「(ン)ガルル」のNG音がG音に変化し、反復語尾が脱落して「ガル」となった)

  「キノ・ト・クヒ」、KINO-TO-KUHI(kino=evil,bad,badly behaved,ill will,hate;to=drag;kuhi=kuhu=insert,conceal,introdyce oneself into)、「苦々しい(感情)が・(その対象に)向かって・入ってくる(恥ずかしい)」(「ト」が「ド」と、「クヒ」のH音が脱落して「クイ」となった)

  「(ン)ゲ・ネネ」、NGE-NENE(nge,ngenge=fail of breath;nene=fat)、「ひどく・息も絶え絶えになっている(恥ずかしい)」(「(ン)ゲ」のNG音がG音に変化して「ゲ」と、「ネネ」が「ンネ」となった)

の転訛と解します。

168はだし(裸足)・ハンダシ・スアシ・ハンダス・ハダス・ツブアシ・スッパダシ・ツボアシ・ハダシバキ・ハダシバシー・ハダシバラ・カリッサ・カラヒサ・ハラシ

 「はだし」の方言には、青森、高知の「ハンダシ」、岩手、三重などの「スアシ」、宮城の「ハンダス」、山形の「ハダス」、群馬の「ツブアシ」、神奈川の「スッパダシ」、山梨の「ツボアシ」、愛知の「ハダシバキ」、島根の「ハダシバシー」、熊本の「ハダシバラ」、沖縄那覇の「カリッサ」、沖縄首里の「カラヒサ」があります。

 上記のほか、新潟、福岡の「ハラシ」があります。

 この「はだし」、「ハンダシ」、「スアシ」、「ハンダス」、「ハダス」、「ツブアシ」、「スッパダシ」、「ツボアシ」、「ハダシバキ」、「ハダシバシー」、「ハダシバラ」、「カリッサ」、「カラヒサ」、「ハラシ」は、

  「パタ・アチ」、PATA-ATI(pata=drop of water etc.,sucers on the tentaculae of the cuttle fish,advantage;ati=offspring,descendant,clan)、「地面に(吸い付く)接する・(身体の子孫)末端の部分(裸足)」(「パタ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハタ」から「ハダ」となり、その語尾のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「ハダチ」から「ハダシ」となった)

  「パナ・タ・アチ」、PANA-TA-ATI(pana=thrust or drive away,expell,cause to come or go forth inany way;ta=dash,beat,lay;ati=offspring,descendant,clan)、「(身体の)遠くに・置かれた・(身体の子孫)末端の部分(裸足)」(「パナ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハナ」から「ハン」と、「タ」のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「タチ」から「ダシ」となった)

  「ツア・アチ」、TUA-ATI(tua=the farther side;ati=offspring,descendant,clan)、「(身体の)端の・(身体の子孫)末端の部分(裸足)」(「ツア」の語尾のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「ツアチ」から「スアシ」となった)

  「パナ・タ・アツ」、PANA-TA-ATU(pana=thrust or drive away,expell,cause to come or go forth inany way;ta=dash,beat,lay;atu=to indicate a direction or motion onwards or away from the speaker)、「(身体の)遠くに・離れて・置かれた部分(裸足)」(「パナ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハナ」から「ハン」と、「タ」のA音と「アツ」の語頭のA音が連結して「タツ」から「ダス」となった)

  「パタ・アツ」、PATA-ATU(pata=drop of water etc.,sucers on the tentaculae of the cuttle fish,advantage;atu=to indicate a direction or motion onwards or away from the speaker)、「地面に(吸い付く)接する・(身体の)遠くに離れた部分(裸足)」(「パタ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハタ」から「ハダ」となり、その語尾のA音と「アツ」の語頭のA音が連結して「ハダツ」から「ハダス」となった)

  「ツプ・アチ」、TUPU-ATI(tupu=grow,spring,be firmly fixed,shoot;ati=offspring,descendant,clan)、「(若芽のように)伸びた・(身体の子孫)末端の部分(裸足)」(「ツプ」が「ツブ」と、「アチ」が「アシ」となった)

  「ツア・パタ・アチ」、TUA-PATA-ATI(tua=the farther side;pata=drop of water etc.,sucers on the tentaculae of the cuttle fish,advantage;ati=offspring,descendant,clan)、「(身体の)端の・地面に(吸い付く)接する・(身体の子孫)末端の部分(裸足)」(「ツア」が「スッ」と、「パタ」が「パダ」となり、その語尾のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「パダチ」から「パダシ」となった)

  「ツポウ・アチ」、TUPOU-ATI(tupou=bow the head,rush of current;ati=offspring,descendant,clan)、「突進する・(身体の子孫)末端の部分(裸足)」(「ツポウ」が「ツボ」と、「アチ」が「アシ」となった)

  「パタ・アチ・パハキ」、PATA-ATI-PAHAKI(pata=drop of water etc.,sucers on the tentaculae of the cuttle fish,advantage;ati=offspring,descendant,clan;pahaki=denoting small relatives distance)、「地面に(吸い付く)接する・(身体の子孫)末端の部分で・遠くにある小さなもの(裸足)」(「パタ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハタ」から「ハダ」となり、その語尾のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「ハダチ」から「ハダシ」と、「パハキ」のH音が脱落して「バキ」となった)

  「パタ・アチ・パ・アチ」、PATA-ATI-PA-ATI(pata=drop of water etc.,sucers on the tentaculae of the cuttle fish,advantage;ati=offspring,descendant,clan,beginning;pa=touch,strike,operate on)、「地面に(吸い付く)接する・(身体の子孫)末端の部分で・(いろいろな)活動を・始めるもの(裸足)」(「パタ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハタ」から「ハダ」となり、その語尾のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「ハダチ」から「ハダシ」と、「パキ」が「バキ」となった)

  「パタ・アチ・パハラ」、PATA-ATI-PAHARA(pata=drop of water etc.,sucers on the tentaculae of the cuttle fish,advantage;ati=offspring,descendant,clan;pahara=incomplete,deficient,scattered)、「地面に(吸い付く)接する・(身体の子孫)末端の部分で・不完全な(草履を履かないと長距離を歩けないなどの)もの(裸足)」(「パタ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハタ」から「ハダ」となり、その語尾のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「ハダチ」から「ハダシ」と、「パハラ」のH音が脱落して「バラ」となった)

  「カハ・リヒ・タ」、KAHA-RIHI-TA(kaha=rope,edge,ridge of a hill;rihi=flat;ta=dash,beat,lay)、「(身体の)端の・平らになって・ついている部分(裸足)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「リヒ」のH音が脱落して「リッ」と、「タ」が「サ」となった)

  「カハ・ラヒ・タ」、KAHA-RAHI-TA(kaha=rope,edge,ridge of a hill;rahi=great,abundant,other in a curious construction;ta=dash,beat,lay)、「(身体の)端の・大きくなって・ついている部分(裸足)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「タ」が「サ」となった)

  「ハラ・アチ」、HARA-ATI(hara=excess above a round number;ati=offspring,descendant,clan)、「大きくなっている・(身体の子孫)末端の部分(裸足)」(「ハラ」の語尾のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「ハラチ」から「ハラシ」となった)

の転訛と解します。

169はらわた(腸)・ジンバラ・ミノコ・ナカ・ナイ・ワタ・ハラバタ・ゾーモツ・ヒャクヒロ・ハラ・ドブ・ゾーワタ・ゾーフ・ゾーバタ・ジゴ・ワタミームン・クスブクル

 「はらわた」の方言には、北海道、青森などの「ハラワダ」(「はらわた」と同語源)、群馬、埼玉の「ジンバラ」、新潟の「ミノコ」、石川の「ナカ」、福井の「ナイ」、山梨の「ワタ」、静岡の「ハラバタ」、三重の「ゾーモツ」、京都、大阪などの「ヒャクヒロ」、奈良の「ハラ」、広島の「ドブ」、徳島の「ゾーワタ」、香川の「ゾーフ」、福岡の「ゾーバタ」、佐賀、熊本の「ジゴ」、沖縄那覇の「ワタミームン」、沖縄首里の「クスブクル」があります。

 上記のほか、香川の「ゾワタ」(「ゾーワタ」と同語源)があります。

 この「はらわた」、「ジンバラ」、「ミノコ」、「ナカ」、「ナイ」、「ワタ」、「ハラバタ」、「ゾーモツ」、「ヒャクヒロ」、「ハラ」、「ドブ」、「ゾーワタ」、「ゾーフ」、「ゾーバタ」、「ジゴ」、「ワタミームン」、「クスブクル」は、

  「ハラ・ワタ」、HARA-WHATA(hara=excess above a round number;whata=elevate,support,hang,be raid,rest)、「たくさん(の種類と量を)・収容しているもの(腸)」(また「ワタ」が「ワダ」となった)

  「チニ・パラ」、TINI-PARA(tini=very many;para=sediment,refuse,small fragment)、「たくさんの・雑多なかすのようなもの(腸)」(「チニ」が「ジン」と、「パラ」が「バラ」となった)

  「ミ(ン)ゴ・コ」、MINGO-KO(mingo=curled,curly,wrinkled;ko=addressing togirl and males,descend,to give emphasis)、「縮れや皺がある・もの(腸)」(「ミ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「ミノ」となった)

  「ナ・カハ」、NA-KAHA(na=by,belonging to;kaha=rope,noose,boundary line of land etc.)、「まるで・縄のように繋がったもの(腸)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

  「ナイ」、NAI(=nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「長く伸びているもの(腸)」

  「ワタ」、WHATA(elevate,support,hang,be raid,rest)、「(たくさんのものを吊して)収容しているもの(腸)」

  「ハラ・パタ」、HARA-PATA(hara=excess above a round number;pata=prepare food)、「たくさん・食物を処理しているもの(腸)」(「パタ」が「バタ」となった)

  「トウ・モツ」、TOU-MOTU(tou=dip into a liquid,wet.anus,posteriors;motu=piece od flesh,of fat)、「(腹の中の)水に浸かっている・肉や脂(腸)」(「トウ」が「ゾー」となった)

  「ヒ・アク(ン)ガ・ヒラウ」、HI-AKUNGA-HIRAU(hi=raise,rise;akunga=rank and file;hirau=entangled,place the hand open)、「人が手を広げた長さ(尋)が・(人の手指で数えられる数=十の)桁が・高くなった長さ(百尋)のあるもの(腸)」(「アク(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「アク」となり、「ヒ・アク」が「ヒャク」と、「ヒラウ」のAU音がO音に変化して「ヒロ」となった)

  「ハラ」、HARA(excess above a round number)、「たくさん(の種類と量が)あるもの(腸)」

  「トプ」、TOPU(assembled in a body)、「腹の中にまとめられているもの(腸)」(「トプ」が「ドブ」となった)

  「トウ・ワタ」、TOU-WHATA(tou=dip into a liquid,wet.anus,posteriors;whata=elevate,support,hang,be raid,rest)、「(腹の中の)水に浸って・収容されているもの(腸)」(「トウ」が「ゾ」または「ゾー」となった)

  「トウ・プ」、TOU-PU(tou=dip into a liquid,wet.anus,posteriors;pu=tribe,bunch,heap,stack)、「(腹の中の)水に浸って・積み重なっているもの(腸)」(「トウ」が「ゾー」と、「プ」のP音がF音を経てH音に変化して「フ」となった)

  「トウ・パタ」、TOU-PATA(tou=dip into a liquid,wet.anus,posteriors;pata=prepare food)、「(腹の中の)水に浸って・食物を処理しているもの(腸)」(「トウ」が「ゾー」と、「パタ」が「バタ」となった)

  「チ(ン)ゴ(ン)ゴ」、TINGONGO(cause to shrink,shrivel)、「縮れや皺があるもの(腸)」(「チ(ン)ゴ(ン)ゴ」のNG音がG音に変化し、反復語尾が脱落して「チゴ」から「ジゴ」となった)

  「ワタ・ミ・ムナ」、WHATA-MI-MUNA(whata=elevate,support,hang,be raid,rest;mi=urine,stream;muna=tell or speak of privately,gossip,secret)、「水(の中)に・(たくさんのものを吊して)収容している・と噂されているもの(腸)」(「ミ」が「ミー」と、「ムナ」が「ムン」となった)

  「ク・ツ・プク・ル」、KU-TU-PUKU-RU(ku=silent;tu=stand,settle,fight with,energetic;puku=swelling,abdomen,entrails,seat of affections;ru=shake,agitate,scatter)、「静かに・懸命に・膨らんで・うごめくもの(腸)」(「ツ」が「ス」と、「プク」が「ブク」となった)

の転訛と解します。

170ばんめし(晩飯)・ユーハン・バンゲメシ・バンゲノゴハン・バンメス・バンゲノママ・ヨーメシ・オイハン・ヨーハン・ユーメシ・バンゴハン・バンゲ・オヨーハン

 「ばんめし」の方言には、北海道、長野などの「ユーハン」、青森の「バンゲメシ」、岩手の「バンゲノゴハン」、宮城の「バンメス」、山形の「バンゲノママ」、福島、山梨の「ヨーメシ」、茨城、栃木の「オイハン」、群馬、新潟の「ヨーハン」、埼玉、香川の「ヨメシ」(「ヨーメシ」と同語源)、千葉、和歌山などの「ユーメシ」、富山、岐阜などの「バンゴハン」、静岡の「バンゲ」、鹿児島の「ユメシ」(「ユーメシ」と同語源)、沖縄那覇・首里の「ユーバン」(「ユーハン」と同語源)があります。

 上記のほか、香川の「オヨーハン」、大分の「ユーショク」(漢語由来の言葉と解します)などがあります。

 この「ばんめし」、「ユーハン」、「バンゲメシ」、「バンゲノゴハン」、「バンメス」、「バンゲノママ」、「ヨーメシ」、「オイハン」、「ヨーハン」、「ユーメシ」、「バンゴハン」、「バンゲ」、「オヨーハン」は、

  「パ(ン)ゴ・マエ・エチ」、PANGO-MAE-ETI(pango=black,of dark colour;mae=languid,listless,withered;eti=shrink,recoil)、「(暗くなった)晩の・水が(後退して)すっかり無くなって・軟らかくなった(炊きあがった。飯)(晩飯)」(「パ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「パノ」から「バン」と、「マエ」のAE音がE音に変化し、そのE音が「エチ」の語頭のE音と連結して「メチ」から「メシ」となった)(「めし(飯)」については、雑楽篇(その二)の542いね(稲)の項を参照してください。)

  「イ・ウ・フ・ハ(ン)ギ」、I-U-HU-HANGI(i=past tense,beside,from,with,by;u=be firm,be fixed;hu=silent,at rest;hangi=earth oven,contents of the oven)、「休息に・入る・(時間に)なった(時。晩の)・(蒸し焼き竈で調理した)食物(晩飯)」(「イ・ウ」が「ユ」と、「フ」のH音が脱落して「ウ」となり、「ユ・ウ」が「ユー」または「ユ」と、「ハ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「ハニ」から「ハン」または「バン」となった)

  「パ(ン)ゴ・カイ・マエ・エチ」、PANGO-KAI-MAE-ETI(pango=black,of dark colour;kai=eat,food;mae=languid,listless,withered;eti=shrink,recoil)、「(暗くなった)晩の・食物で・水が(後退して)すっかり無くなって・軟らかくなった(炊きあがった。飯)もの(晩飯)」(「パ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「パノ」から「バン」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」から「ゲ」と、「マエ」のAE音がE音に変化し、そのE音が「エチ」の語頭のE音と連結して「メチ」から「メシ」となった)

  「パ(ン)ゴ・カイ・ノ・(ン)ガウ・ハ(ン)ギ」、PANGO-KAI-NO-NGAU-HANGI(pango=black,of dark colour;kai=eat,food;no=of;ngau=bite,hurt,act upon,attack;hangi=earth oven,contents of the oven)、「(暗くなった)晩の・食物・で・蒸し焼き竈で・調理したもの(晩飯)」(「パ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「パノ」から「バン」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」から「ゲ」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「ハ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「ハニ」から「ハン」となった)

  「パ(ン)ゴ・マエ・ツ」、PANGO-MAE-TU(pango=black,of dark colour;mae=languid,listless,withered;tui=stand,settle,remain)、「(暗くなった)晩の・軟らかくなって・そのままになった(炊きあがった。飯)(晩飯)」(「パ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「パノ」から「バン」と、「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「パ(ン)ゴ・カイ・ノ・ママハ」、PANGO-KAI-NO-MAMAHA(pango=black,of dark colour;kai=eat,food;no=of;mamaha=steam)、「(暗くなった)晩の・食物・で・湯気の立っているもの(晩飯)」(「パ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「パノ」から「バン」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」から「ゲ」と、「ママハ」のH音が脱落して「ママとなった)

  「イ・オ・フ・マエ・エチ」、I-O-HU-MAE-ETI(i=past tense,beside,from,with,by;o=find room,be capable of being contained or enclosed;hu=silent,at rest;mae=languid,listless,withered;eti=shrink,recoil)、「休息に・入る・(時間に)なった(時。晩の)・水が(後退して)すっかり無くなって・軟らかくなった(炊きあがった。飯)(晩飯)」(「イ・オ」が「ヨ」と、「フ」のH音が脱落して「ウ」となり、「ヨ・ウ」が「ヨー」または「ヨ」と、「マエ」のAE音がE音に変化し、そのE音が「エチ」の語頭のE音と連結して「メチ」から「メシ」となった)

  「オイ・ハ(ン)ギ」、OI-HANGI(oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration;hangi=earth oven,contents of the oven)、「(一日の仕事が)完成した(時。晩の)・(蒸し焼き竈で調理した)食物(晩飯)」(「ハ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「ハニ」から「ハン」となった)

  「イ・オ・フ・ハ(ン)ギ」、I-O-HU-HANGI(i=past tense,beside,from,with,by;o=find room,be capable of being contained or enclosed;hu=silent,at rest;hangi=earth oven,contents of the oven)、「休息に・入る・(時間に)なった(時。晩の)・(蒸し焼き竈で調理した)食物(晩飯)」(「イ・オ」が「ヨ」と、「フ」のH音が脱落して「ウ」となり、「ヨ・ウ」が「ヨー」と、「ハ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「ハニ」から「ハン」となった)

  「イ・ウ・フ・マエ・エチ」、I-U-HU-MAE-ETI(i=past tense,beside,from,with,by;u=be firm,be fixed;hu=silent,at rest;mae=languid,listless,withered;eti=shrink,recoil)、「休息に・入る・(時間に)なった(時。晩の)・水が(後退して)すっかり無くなって・軟らかくなった(炊きあがった。飯)(晩飯)」(「イ・ウ」が「ユ」と、「フ」のH音が脱落して「ウ」となり、「ユ・ウ」が「ユー」または「ユ」と、「マエ」のAE音がE音に変化し、そのE音が「エチ」の語頭のE音と連結して「メチ」から「メシ」となった)

  「パ(ン)ゴ・(ン)ガウ・ハ(ン)ギ」、PANGO-NGAU-HANGI(pango=black,of dark colour;ngau=bite,hurt,act upon,attack;hangi=earth oven,contents of the oven)、「(暗くなった)晩の・蒸し焼き竈で・調理したもの(晩飯)」(「パ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「パノ」から「バン」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「ハ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「ハニ」から「ハン」となった)

  「パ(ン)ゴ・カイ」、PANGO-KAI(pango=black,of dark colour;kai=eat,food)、「(暗くなった)晩の・食物(晩飯)」(「パ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「パノ」から「バン」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」から「ゲ」となった)

  「オ・イ・オ・フ・ハ(ン)ギ」、O-I-O-HU-HANGI(o=the...of;i=past tense,beside,from,with,by;o=find room,be capable of being contained or enclosed;hu=silent,at rest;hangi=earth oven,contents of the oven)、「例の・休息に・入る・(時間に)なった(時。晩の)・(蒸し焼き竈で調理した)食物(晩飯)」(「イ・オ」が「ヨ」と、「フ」のH音が脱落して「ウ」となり、「ヨ・ウ」が「ヨー」と、「ハ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「ハニ」から「ハン」となった)

の転訛と解します。

「ヒ」

171ひかげ(日陰)・オロ・カゲ・コサ・カゲンダ・オンジ・カゲンボ・カゲビラ・カゲクロ・カーギ・カンゲチ

 「ひかげ」の方言には、山形の「シカゲ」(「ひかげ」と同語源)、栃木の「オロ」、石川、福井などの「カゲ」、山梨の「コサ」、滋賀の「カゲー」(「カゲ」と同語源)、兵庫の「カゲンダ」、奈良、岡山の「オンジ」、島根の「カゲンボ」、高知の「カンゲ」(「カゲ」と同語源)、熊本の「カゲビラ」、宮崎の「カゲクロ」、沖縄那覇・首里の「カーギ」があります。

 上記のほか、高知の「カンゲチ」などがあります。

 この「ひかげ」、「オロ」、「カゲ」、「コサ」、「カゲンダ」、「オンジ」、「カゲンボ」、「カゲビラ」、「カゲクロ」、「カーギ」、「カンゲチ」は、

  「ヒヒ・カ・(ン)ガエ(ン)ガエ」、HIHI-KA-NGAENGAE(hihi=ray of the sun;ka=take fire,be lighted,burn;ngaengae=fail of breath)、「太陽の光が・照らすのが・(息が切れる)弱くなる(場所。日陰)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」または「シ」と、「(ン)ガエ(ン)ガエ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化し、反復語尾が脱落して「ゲ」となった)

  「オロ」、ORO(defame,backbite)、「蔭口をきく(場所。日陰)」

  「カ・(ン)ガエ(ン)ガエ」、KA-NGAENGAE(ka=take fire,be lighted,burn;ngaengae=fail of breath)、「(太陽の光が)照らすのが・(息が切れる)弱くなる(場所。日陰)」(「(ン)ガエ(ン)ガエ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化し、反復語尾が脱落して「ゲ」または「ゲー」となった。また「(ン)ガエ(ン)ガエ」の最初のNG音がN音に、次のNG音がG音に、AE音がE音に変化して「ネゲ」から「ンゲ」となった)

  「カウタ」、KAUTA(cooking shed)、「料理をする小屋(または上屋)(日陰)」(「カウタ」のAU音がO音に変化して「コタ」から「コサ」となった)

  「カ・(ン)ガエ(ン)ガエ・タ」、KA-NGAENGAE-TA(hihi=ray of the sun;ka=take fire,be lighted,burn;ngaengae=fail of breath;ta=dash,beat,lay)、「(太陽の光が)照らすのが・(息が切れる)弱くなる・場所に居る(日陰)」(「(ン)ガエ(ン)ガエ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に、AE音がE音に変化して「ゲネ」から「ゲン」と、「タ」が「ダ」となった)

  「オ(ン)ガ・チ」、ONGA-TI(onga=scarce,rare;ti=throw,cast)、「(太陽の光が)射すのが・極めて少ない(場所。日陰)」(「オ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「オナ」から「オン」と、「チ」が「ジ」となった)

  「カ・(ン)ガエ(ン)ガエ・ポ」、KA-NGAENGAE-PO(hihi=ray of the sun;ka=take fire,be lighted,burn;ngaengae=fail of breath;po=night)、「(太陽の光が)照らすのが・夜のように・(息が切れる)弱くなる(場所。日陰)」(「(ン)ガエ(ン)ガエ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に、AE音がE音に変化して「ゲネ」から「ゲン」と、「ポ」が「ボ」となった)

  「カ・(ン)ガエ(ン)ガエ・ピララ」、KA-NGAENGAE-PIRARA(ka=take fire,be lighted,burn;ngaengae=fail of breath;pirara=separated,scattered,wide apart)、「(太陽の光が)照らすのが・(息が切れる)弱くなった・場所が広がっている(日陰)」(「(ン)ガエ(ン)ガエ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化し、反復語尾が脱落して「ゲ」と、「ピララ」の反復語尾が脱落して「ビラ」となった)

  「カ・(ン)ガエ(ン)ガエ・クロア」、KA-NGAENGAE-KULOA(ka=take fire,be lighted,burn;ngaengae=fail of breath;(Hawaii)kuloa=name of the lengthy ceremonies on the night before graduation day in hula)、「(太陽の光が)照らすのが・夜のように・(息が切れる)弱くなった(場所。日陰)」(「(ン)ガエ(ン)ガエ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化し、反復語尾が脱落して「ゲ」と、「クロア」の語尾のA音が脱落して「クロ」となった)

  「カ・ハ(ン)ギ」、KA-HANGI(ka=take fire,be lighted,burn;hangi=earth oven,contents of the oven)、「(太陽の光が)照らすのが・(蒸し焼き竈のように)封じ込まれた(弱くなった場所。日陰)」(「ハ(ン)ギ」のH音が脱落し、NG音がG音に変化して「アギ」となり、「カ・アギ」が「カーギ」となった)

  「カ・(ン)ガエ(ン)ガエ・チ」、KA-NGAENGAE-TI(ka=take fire,be lighted,burn;ngaengae=fail of breath;ti=throw,cast)、「(太陽の光が)照らすのが・(息が切れる)弱く・なっている(場所。日陰)」(「(ン)ガエ(ン)ガエ」の最初のNG音がN音に、次のNG音がG音に、AE音がE音に変化して「ネゲ」から「ンゲ」となった)

の転訛と解します。

172ひさしぶり(久しぶり)・シサシ・ヒヤシブリ・ヒサスブリ・ヒシャシブリ・ヒシャスブリ・シシャシ・シバラクブリ・シバラクダッタ・シバラク・フサシブル・サシー・ハールカブリ・ヤットカメ・ヒサシカブリ・セカドブリ・サシブリ・ヒサシブー・ヒーサ・エットブリ・メズラシー・オトンドシー・ヒサシブイ・サシカブイ・ナゲーサ・オヒサシノー・ヘダシブリ・ヒサシカナー・ヒサシーノー

 「ひさしぶり」の方言には、北海道の「シサシ」、岩手の「ヒヤシブリ」、宮城の「ヒサスブリ」、秋田の「ヒシャシブリ」、山形の「ヒシャスブリ」、福島の「シシャシ」、栃木、埼玉の「シバラクブリ」、群馬の「シバラクダッタ」、千葉、神奈川の「シバラク」、新潟の「フサシブル」、富山、静岡などの「ヒサシー」(「シサシ」と同語源)、山梨の「サシー」、長野の「ハールカブリ」、岐阜、愛知の「ヤットカメ」、三重、熊本の「ヒサシカブリ」、兵庫の「セカドブリ」、和歌山、宮崎の「サシブリ」、島根の「ヒサシブー」、広島の「ヒーサ」、徳島の「エットブリ」、愛媛の「メズラシー」、高知の「オトンドシー」、佐賀の「ヒサシブイ」、長崎の「ヒッサシブリ」(「ひさしぶり」と同語源)、鹿児島の「サシカブイ」、沖縄那覇・首里の「ナゲーサ」があります。

 上記のほか、福井の「オヒサシノー」、香川の「ヘダシブリ」、福岡の「ヒサシカナー」、大分の「ヒサシーノー」などがあります。

 この「ひさしぶり」、「シサシ」、「ヒヤシブリ」、「ヒサスブリ」、「ヒシャシブリ」、「ヒシャスブリ」、「シシャシ」、「シバラクブリ」、「シバラクダッタ」、「シバラク」、「フサシブル」、「サシー」、「ハールカブリ」、「ヤットカメ」、「ヒサシカブリ」、「セカドブリ」、「サシブリ」、「ヒサシブー」、「ヒーサ」、「エットブリ」、「メズラシー」、「オトンドシー」、「ヒサシブイ」、「サシカブイ」、「ナゲーサ」、「オヒサシノー」、「ヘダシブリ」、「ヒサシカナー」、「ヒサシーノー」は、

  「ヒタ・チ・プリ」、HITA-TI-PURI(hita=move convulsively or spasmodically;ti=throw,cast;puri=hold in the hand,retain possession of,detain,keep in memory)、「突然・記憶が・出現する(ひさしぶり)」(「ヒタ」が「ヒサ」または「ヒッサ」と、「チ」が「シ」と、「プリ」が「ブリ」となった)

  「ヒタ・チ」、HITA-TI(hita=move convulsively or spasmodically;ti=throw,cast)、「突然・(記憶が)出現する(ひさしぶり)」(「ヒタ」が「ヒサ」と、または「ヒタ」のH音がS音に変化して「シサ」と、「チ」が「シ」または「シー」となった)

  「ヒイア・チ・プリ」、HIIA-TI-PURI(hiia=hi=raise,catch with hook and line fish,rise;ti=throw,cast;puri=hold in the hand,retain possession of,detain,keep in memory)、「記憶が・(頭の底から)湧き上がって・(目前に)出現する(ひさしぶり)」(「ヒイア」が「ヒヤ」と、「チ」が「シ」となった)

  「ヒタ・ツ・プリ」、HITA-TU-PURI(hita=move convulsively or spasmodically;tu=stand,settle;puri=hold in the hand,retain possession of,detain,keep in memory)、「突然・記憶が・出現する(ひさしぶり)」(「ヒタ」が「ヒサ」と、「ツ」が「ス」と、「プリ」が「ブリ」となった)

  「ヒ・チ・アチ・プリ」、HI-TI-ATI-PURI(hi=raise,catch with hook and line fish,rise;ti=throw,cast;ati=descendant,clan;puri=hold in the hand,retain possession of,detain,keep in memory)、「(子孫の)古い・記憶が・(頭の底から)湧き上がって・(目前に)出現する(ひさしぶり)」(「チ・アチ」が「シャシ」と、「プリ」が「ブリ」となった)

  「ヒ・チ・アツ・プリ」、HI-TI-ATU-PURI(hi=raise,catch with hook and line fish,rise;ti=throw,cast;atu=to indicate a direction or motion onwards;puri=hold in the hand,retain possession of,detain,keep in memory)、「記憶が・(頭の底から)湧き上がって・目前に・出現する(ひさしぶり)」(「チ・アツ」が「シャス」と、「プリ」が「ブリ」となった)

  「チチ・ア・チ」、TITI-A-TI(titi=go astray;a=drive,urge,compel;ti=throw,cast)、「漂流していたもの(記憶)が・(頭の底から)押し出されて・(目前に)出現する(ひさしぶり)」(「チチ・ア・チ」が「シシャシ」となった)

  「チパ・ラク・プリ」、TIPA-RAKU-PURI(tipa=turn aside,escape;raku=scratch,scrape;puri=hold in the hand,retain possession of,detain,keep in memory)、「記憶が・(頭の底から)掻き出されて・戻ってきた(ひさしぶり)」(「チパ」が「シバ」と、「プリ」が「ブリ」となった)

  「チパ・ラク・タタ」、TIPA-RAKU-TATA(tipa=turn aside,escape;raku=scratch,scrape;tata=near of place or time,suddenly)、「突然・(記憶が頭の底から)掻き出されて・戻ってきた(ひさしぶり)」(「チパ」が「シバ」と、「タタ」が「ダッタ」となった)

  「チパ・ラク」、TIPA-RAKU(tipa=turn aside,escape;raku=scratch,scrape)、「(記憶が頭の底から)掻き出されて・戻ってきた(ひさしぶり)」(「チパ」が「シバ」となった)

  「プタ・チ・プル」、PUTA-TI-PURU(puta=opening,pass on,appear,escape;ti=throw,cast;puru=puri=hold in the hand,retain possession of,detain,keep in memory)、「記憶が・(目前に)放り出されたように・出現する(ひさしぶり)」(「プタ」のP音がF音を経てH音に変化して「フタ」カラ「フサ」と、「チ」が「シ」となった)

  「タ・チ」、TA-TI(ta=dash,beat,lay,near;ti=throw,cast)、「(記憶が突然)目前に・出現する(ひさしぶり)」(「タ」が「サ」と、「チ」が「シー」となった)

  「パル・カ・プリ」、PARU-KA-PURI(paru,whakaparu=trace a line of descent;ka=to denote the commencement of a new action or condition;puri=hold in the hand,retain possession of,detain,keep in memory)、「昔の・記憶を・辿って思い出す(ひさしぶり)」(「パル」のP音がF音を経てH音に変化して「ハル」から「ハール」と、「プリ」が「ブリ」となった)

  「イア・タウカ・メ」、IA-TAUKA-ME(ia=indeed;tauka=stay,eait a while;me=if,as if,as it were)、「実に・ちょっと待ってくれ(思い出すから)・というような(ひさしぶり)」(「イア」が「ヤ」から「ヤッ」と、「タウカ」のAU音がO音に変化して「トカ」となった)

  「ヒタ・チ・カ・プリ」、HITA-TI-KA-PURI(hita=move convulsively or spasmodically;ti=throw,cast;ka=to denote the commencement of a new action or condition;puri=hold in the hand,retain possession of,detain,keep in memory)、「突然・記憶が・目前に・出現する(ひさしぶり)」(「ヒタ」が「ヒサ」と、「チ」が「シ」と、「プリ」が「ブリ」となった)

  「テカ・ト・プリ」、TEKA-TO-PURI(teka=drive forward,urge on;to=drag,haul;puri=hold in the hand,retain possession of,detain,keep in memory)、「記憶が・押し・出される(ひさしぶり)」(「テカ」が「セカ」と、「ト」が「ド」と、「プリ」が「ブリ」となった)

  「タ・チ・プリ」、TA-TI-PURI(ta=dash,beat,lay,near;ti=throw,cast;puri=hold in the hand,retain possession of,detain,keep in memory)、「記憶が・(突然)目前に・出現する(ひさしぶり)」(「タ」が「サ」と、「チ」が「シ」と、「プリ」が「ブリ」となった)

  「ヒタ・チ・プ」、HITA-TI-PU(hita=move convulsively or spasmodically;ti=throw,cast;pu=tribe,bunch,stack)、「突然・一族の者が・出現する(ひさしぶり)」(「ヒタ」が「ヒサ」と、「チ」が「シ」と、「プ」が「ブー」となった)

  「ヒ・タ」、HI-TA(hi=raise,catch with hook and line fish,rise;ta=dash,beat,lay,near)、「(記憶が突然)目前に・湧き上がる(ひさしぶり)」(「ヒ」が「ヒー」と、「タ」が「サ」となった)

  「エ・ト・プリ」、E-TO-PURI(e=to denote action in progress or temporary condition;to=drag,haul;puri=hold in the hand,retain possession of,detain,keep in memory)、「記憶が・引き出され・ようとしている(ひさしぶり)」(「エ」が「エッ」と、「プリ」が「ブリ」となった)

  「マイ・ツラハ・チ」、MAI-TURAHA-TI(mai=to indicate direction or motion towards;turaha=keep away,be separated,startled,frightened;ti=throw,cast)、「驚きが・湧き・上がる(ひさしぶり)」(「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」と、「ツラハ」のH音が脱落して「ヅラ」と、「チ」が「シー」となった)

  「アウト・(ン)ゴト・チ」、AUTO-NGOTO-TI(auto=trailing behind,slow,dilatory;ngoto=head,be deep,bw intense of emotionspenetrate;ti=throw,cast)、「ゆっくりと・深い感慨が・やってくる(ひさしぶり)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」と、「(ン)ゴト」のNG音がN音に変化して「ノト」から「ンド」と、「チ」が「シー」となった)

  「ヒタ・チ・プ・イ」、HITA-TI-PU-I(hita=move convulsively or spasmodically;ti=throw,cast;pu=tribe,bunch,stack;i=beside,from,by.at(of place))、「突然・一族の者が・そこに・出現する(ひさしぶり)」(「ヒタ」が「ヒサ」と、「チ」が「シ」と、「プ」が「ブ」となった)

  「タ・チカ・プ・イ」、TA-TIKA-PU-I(ta=dash,beat,lay,near;tika=straight,direct,just;pu=tribe,bunch,stack;i=beside,from,by.at(of place))、「一族の者が・突然・そこに・出現する(ひさしぶり)」(「タ」が「サ」と、「チカ」が「シカ」と、「プ」が「ブ」となった)

  「ナ・(ン)ゲタ(ン)ゲタ」、NA-NGETANGETA(na=by,belonging to,satisfy,content;ngetangeta=worn-out garment)、「すり切れた古い着物(を取り出して昔の感慨にふけること)・のような(ひさしぶり)」(「(ン)ゲタ(ン)ゲタ」のNG音がG音に変化し、反復語尾が脱落して「ゲタ」から「ゲーサ」となった)

  「オ・ヒタ・チ・(ン)ゴ」、O-HITA-TI-NGO(o=the...of;hita=move convulsively or spasmodically;ti=throw,cast;ngo=cry,grunt)、「ほんとうに・突然・(記憶が)出現する・と叫ぶ(ひさしぶり)」(「ヒタ」が「ヒサ」と、または「ヒタ」が「ヒサ」と、「チ」が「シ」と、「(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「ノー」となった)

  「ハエ・タ・チ・プリ」、HAE-TA-TI-PURI(hae=cherish envy or jealousy or ill feeling,cause pain,appear;ta=dash,beat,lay,near;ti=throw,cast;puri=hold in the hand,retain possession of,detain,keep in memory)、「不愉快な・記憶が・目前に・出現する(ひさしぶり)」(「ハエ」のAE音がE音に変化して「ヘ」と、「タ」が「ダ」と、「チ」が「シ」と、「プリ」が「ブリ」となった)

  「ヒタ・チ・カ・(ン)ゴ」、HITA-TI-KA-NGO(hita=move convulsively or spasmodically;ti=throw,cast;ka=to denote the commencement of a new action or condition;ngo=cry,grunt)、「突然・(記憶が)目前に・出現する・と叫ぶ(ひさしぶり)」(「ヒタ」が「ヒサ」と、「チ」が「シ」と、「(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「ノー」となった)

  「ヒタ・チ・(ン)ゴ」、HITA-TI-NGO(hita=move convulsively or spasmodically;ti=throw,cast;ngo=cry,grunt)、「突然・(記憶が)出現する・と叫ぶ(ひさしぶり)」(「ヒタ」が「ヒサ」と、または「ヒタ」が「ヒサ」と、「チ」が「シー」と、「(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「ノー」となった)

の転訛と解します。

173ひじょうに(非常に)・ナマラ・ナンボ・トッテモ・エギナリ・ント・バガニ・ウント・イラク・マッサカ・イラ・ズイブン・バカ・コッテァ・テンポニ・カスナ・エライ・ドエレァー・ドエラェー・モノスゴ・ホンマニ・ガイニ・ホンネ・ボッケー・エロー・ブチ・ゴッツイ・ギョーサンナ・ショー・タイソー・ホンナコテ・ヒドー・バサロー・ガート・ワッゼ・レージナ・イッペー・ウダデ・スゴク・ガッツリ・ナンダモナグ・メッポー・ナカラ・ホンドリ・マッコト・ショーマッコト・チョーット・ダイギャ・バサレー・タイゲー・ギョーサン

 「ひじょうに」の方言には、北海道の「ナマラ」、青森の「ナンボ」、岩手の「トッテモ」、宮城の「エギナリ」、秋田の「ント」、山形の「バガニ」、福島、茨城などの「ウント」、栃木の「イラク」、群馬の「マッサカ」、埼玉の「イラ」、千葉の「ズイブン」、東京の「トテモ」(「トッテモ」と同語源)、神奈川の「バカ」、新潟の「コッテァ」、富山の「ヒジョーニ」(「ひじょうに」と同語源)、石川の「テンポニ」、福井の「カスナ」、山梨、三重などの「エライ」、岐阜の「ドエレァー」、静岡の「エレー」(「エライ」と同語源)、愛知の「ドエラェー」、滋賀の「モノスゴ」、兵庫、奈良の「ホンマニ」、鳥取、香川の「ガイニ」、島根の「ホンネ」、岡山の「ボッケー」、広島の「エロー」、山口の「ブチ」、徳島の「ゴッツイ」、愛媛の「ギョーサンナ」、高知の「ショー」、福岡の「タイソー」、佐賀の「ホンナコテ」、長崎の「ヒドー」、熊本の「バサロー」、大分の「ガート」、宮崎の「エレ」(「エライ」と同語源)、鹿児島の「ワッゼ」、沖縄那覇の「レージナ」、沖縄首里の「イッペー」があります。

 上記のほか、北海道の「ウダデ」(稀・高年齢層)、「スゴク」(女性)、「ガッツリ」、宮城の「ナンダモナグ」、山形の「メッポー」、群馬の「ナカラ」、香川の「ホンドリ」、高知の「マッコト」、「ショーマッコト」、長崎の「チョーット」、熊本の「ダイギャ」、大分の「バサレー」、「タイゲー」、「マコト」(「マッコト」と同語源)、「ギョーサン」などがあります。

 この「ひじょうに」、「ナマラ」、「ナンボ」、「トッテモ」、「エギナリ」、「ント」、「バガニ」、「ウント」、「イラク」、「マッサカ」、「イラ」、「ズイブン」、「バカ」、「コッテァ」、「テンポニ」、「カスナ」、「エライ」、「ドエレァー」、「ドエラェー」、「モノスゴ」、「ホンマニ」、「ガイニ」、「ホンネ」、「ボッケー」、「エロー」、「ブチ」、「ゴッツイ」、「ギョーサンナ」、「ショー」、「タイソー」、「ホンナコテ」、「ヒドー」、「バサロー」、「ガート」、「ワッゼ」、「レージナ」、「イッペー」、「ウダデ」、「スゴク」、「ガッツリ」、「ナンダモナグ」、「メッポー」、「ナカラ」、「ホンドリ」、「マッコト」、「ショーマッコト」、「チョーット」、「ダイギャ」、「バサレー」、「タイゲー」、「ギョーサン」は、

  「ヒ・チオホ・ヌイ」、HI-TIOHO-NUI(hi=raise,rise,make a hissing noise;tioho=apprehensive;nui=large,many)、「(何かを)ひどく・心配して・叫び声を上げる(ひじょうに)(たいへんだ)」(「チオホ」のH音が脱落して「チオオ」から「ジョウ」または「ジョー」と、「ヌイ」が「ニ」となった)

  「ナ・マラ」、NA-MALA(na=by,belonging to;(Hawaii)mala=aching as after unaccustomed exercise,stiff and sore)、「慣れない運動をした後の身体の痛み・のような(ひじょうに)(たいへんだ)」

  「ナナ・パウ」、NANA-PAU(nana=tend carefully,nurse;pau=consumed,exhausted,denoting the complete or exhaustive character of any action)、「疲れ果てた者を・懇切に介抱する(ひじょうに)(たいへんだ)」(「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボ」となった)

  「タウテ・マウ」、TAUTE-MAU(taute=mature,prepare food for cooking,tend,look for;mau=food)、「(毎日の)食事の・準備をする(ひじょうに)(たいへんだ)」(「タウテ」のAU音がO音に変化して「トテ」から「トッテ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)(この言葉が成立した時期が仮に縄文時代に遡るとしますと、とくに年間を通じてどんぐりを磨り潰し、晒して澱粉を採る工程をはじめとして、野山で採集した多種の食料の調理の前処理に多くの労働を要したことがこの言葉の背景にあったと考えられます。)

  「エ(ン)ギア・(ン)ガリ」、ENGIA-NGARI(engia=expressing assent;ngari=annoyance,disturbance,greatness)、「ほんとうに・迷惑なことだ(ひじょうに)」(「エ(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「エギ」と、「(ン)ガリ」のNG音がN音に変化して「ナリ」となった)

  「(ン)ゴト」、NGOTO(be deep,be intense of emotion,penetrate)、「感情を激しく揺さぶる(ひじょうに)」(「(ン)ゴト」のNG音がN音に変化して「ノト」から「ント」となった)

  「パ(ン)ガ・ヌイ」、PANGA-NUI(panga=throw,lay,aim a blow at,be struck etc.;nui=large,many)、「ひどく・打撃を受けた(ひじょうに)」(「パ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「パガ」から「バガ」と、「ヌイ」が「ニ」となった)

  「ウ・(ン)ゴト」、U-NGOTO(u=be firm,be fixed,reach its limit;ngoto=be deep,be intense of emotion,penetrate)、「とことん・感情を激しく揺さぶる(ひじょうに)」(「(ン)ゴト」のNG音がN音に変化して「ノト」から「ント」となった)

  「イラ・アクアク」、IRA-AKUAKU(ira=freckle,variegated,shine,glitter,calling attention;akuaku=firm,strong)、「強く・ビカピカと光る(注意を要する)(ひじょうに)」(「イラ」の語尾のA音と「アクアク」の反復語尾が脱落した語頭のA音が連結して「イラク」となった)

  「マタカ」、MATAKA(crashing)、「全くの(完璧な)(ひじょうに)」(「マタカ」が「マッサカ」となった)

  「イラ」、IRA(freckle,variegated,shine,glitter,calling attention)、「ビカピカと光る(注意を要する)(ひじょうに)」

  「ツイツイ・プニ(ン)ガ」、TUITUI-PUNINGA(tuitui=lace,fasten up,render inaccessible;puninga=camping place,circumstance etc. of being stopped up,tribe,family)、「家族(または一族)から・締め出された(ひじょうに)(仕打ちがひどい)」(「ツイツイ」の反復語尾が脱落して「ズイ」と、「プニ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「プニ」から「ブン」となった)

  「パカハ」、PAKAHA(violent,severe,firm,bold)、「厳しい(または冷酷な)(ひじょうに)」(「パカハ」のH音が脱落して「バカ」となった)

  「コテア」、KOTEA(pale)、「(恐れおののいて)蒼ざめた(ひじょうに)」(「コテア」が「コッテァ」となった)

  「テ(ン)ガ・ポ(ン)ギア」、TENGA-PONGIA(tenga=goitre,distended,strained;pongia=be overtaken by night,be benighted)、「無知蒙昧・の極み(ひじょうに)」(「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「テン」と、「ポ(ン)ギア」のNG音がN音に変化し、語尾のA音が脱落して「ポニ」となった)

  「カハ・ツ(ン)ガ」、KAHA-TUNGA(kaha=strong,persistency;tunga=circumstance or time etc. of standing,foundation)、「確固とした・基礎(がある)(ひじょうに)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「ツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツナ」から「スナ」となった)

  「エ・ラヒ」、E-RAHI(e=to denote action in progress or temporary condition,calling attention or expressing surprise;rahi=great,plentiful)、「たいへん・巨大な(たくさんな)(ひじょうに)」(「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」となった。また「ライ」のAI音がE音に変化して「レ」または「レー」となった)

  「ト・エ・ラヒ・イア」、TO-E-RAHI-IA(to=the...of;e=to denote action in progress or temporary condition,calling attention or expressing surprise;rahi=great,plentiful;ia=indeed)、「例の・実に・たいへん・巨大な(たくさんな)(ひじょうに)」(「ト」が「ド」と、「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」となり、「ライ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「ライア」となったそのAI音がE音に変化して「レァー」となった)

  「ト・エ・ラエ」、TO-E-RAE(to=the...of;e=to denote action in progress or temporary condition,calling attention or expressing surprise;rae=forehead,promontory)、「例の・たいへん・突出している(目立っている)(ひじょうに)」(「ト」が「ド」と、「ラエ」が「ラェー」となった)

  「モノ・ツ(ン)ゴ(ン)ゴ」、MONO-TUNGONGO(mono=plug,disable by means of incantations;tungongo=cause to shrink)、「呪文を掛けられて・(身体に)力が入らなくなった(ひじょうに)」(「ツ(ン)ゴ(ン)ゴ」のNG音がG音に変化し、反復語尾が脱落して「ツゴ」から「スゴ」となった)

  「ホノ・マニニ」、HONO-MANINI(hono=proceed to do,go on,marry;manini=pleasant,agreeable)、「喜んで・行動する(またはめでたく・結婚する)(ひじょうに)(喜ばしい)」(「ホノ」が「ホン」と、「マニニ」の反復語尾が脱落して「マニ」となった)

  「(ン)ガイ・ニヒ」、NGAI-NIHI(ngai=tribe or clan;nihi=steep)、「(急傾斜の)かけはなれた・部族(部類)の(ひじょうに)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に変化して「ガイ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

  「ホノ・ネ」、HONO-NE(hono=proceed to do,go on,marry;ne=interrogative,giving emphasis to a question or request or proposal)、「ほんとに・行動する?(またはほんとに・結婚する?)(ひじょうに)(疑わしい)」(「ホノ」が「ホン」となった)

  「ポケ」、POKE(appear as a spirit,haunt,beset in numbers)、「人だかりがする(大勢の人が集まる)(ひじょうに)」(「ポケ」が「ボッケー」となった)

  「エ・ラウ」、E-RAU(e=to denote action in progress or temporary condition,calling attention or expressing surprise;rau=hundred,multitude)、「たいへん・豊富な(たくさんな)(ひじょうに)」(「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロー」となった)

  「プチ」、PUTI(dried up,cross-grained or tough of timber)、「強靱な(ひじょうに)」(「プチ」が「ブチ」となった)

  「(ン)ゴツ・ツイ」、NGOTU-TUI(ngotu,ngotungotu=motumotu=firebrand,severed,separated,broken off,cut,clump of trees;tui=thread on a string,lace,sew)、「いかめしい(部分を)・つなぎ合わせた(または焼けぼっくいを・つなぎ合わせたような)(ひじように)(こわい容貌の)」(「(ン)ゴツ」のNG音がG音に変化して「ゴッ」となった)

  「(ン)ギホ(ン)ギホ・タ(ン)ガ・ナ」、NGIHONGIHO-TANGA-NA(ngihongiho=diminutive;tanga=be assembled;na=by,belonging to)、「小さなものが・(たくさん)集まった・ような(ひじょうに)」(「(ン)ギホ(ン)ギホ」のNG音がG音に変化し、H音および反復語尾が脱落して「ギオ」から「ギョー」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

  「チオホ」、TIOHO(apprehensive)、「(たいへん)心配な(ひじょうに)」(「チオホ」のH音が脱落して「チョ」から「ショー」となった)

  「タイ・トウ」、TAI-TOU(tai=tide,wave,anger,rage,violence;tou=tonu=denoting continuance,quite,just)、「荒々しい行動が・続く(ひじょうに)」(「トウ」が「ソー」となった)

  「ホノ・ナ・コテ」、HONO-NA-KOTEA(hono=proceed to do,go on,marry;na=by,belonging to;kotea=pale)、「脅迫・によって・行動する(または脅迫・によって・結婚する)(ひじょうに)(悲しい)」(「ホノ」が「ホン」となった)

  「ヒ・トフ」、HI-TOHU(hi=make a hissing noise;tohu=mark,point out,show)、「シーという声を出して(非難・軽蔑・怒りなどを)表現する(ひじょうに)(ひどい)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドー」となった)

  「パタ・ラウ」、PATA-RAU(pata=prepare food;rau=hunfred,multitude)、「多数の・食事を用意する(ひじょうに)(たいへん)」(「パタ」が「バサ」と、「ラウ」AU音がO音に変化して「ロー」となった)

  「(ン)ガ・アトアト」、NGA-ATOATO(nga=satisfied,content;atoato=marshal,regulate the formation of a corps on the march,recite names)、「司令官が行進の隊列を整えて・満足する(ひじょうに)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「アトアト」の反復語尾が脱落して「アト」となり、「ガ・アト」が「ガート」となった)

  「ワ・テ」、WHA-TE(wha=be disclosed,get abroad;te=crack)、「(溝)人に知られたくないことを・明らかにする(ひじょうに)(ひどい)」(「ワ」が「ワッ」と、「テ」が「ゼ」となった)

  「ラエ・チナ」、RAE-TINA(rae=forehead,temple,promontory;tina=fixed,fast,firm,satisfied,exhausted)、「額に(幸運が)・宿っている(ひじょうに)」(「ラエ」のAE音がE音に変化して「レ」から「レー」と、「チナ」が「ジナ」となった)

  「イ・パイ」、I-PAI(i=past tense,beside,from,with,by;pai=good,excellent,suitable,good looks)、「素晴らしいもの(美貌など)を・具えている(ひじょうに)」(「イ」が「イッ」と、「パイ」のAI音がE音に変化して「ペ」から「ペー」となった)

  「ウ・タタイ」、U-TATAI(u=be firm,be fixed,reach its limit;tatai=measure,arrange,adorn,recite genealogies,omen)、「最高に・着飾っている(ひじょうに)」(「タタイ」のAI音がE音に変化して「タテ」から「ダテ」となった)

  「ツ(ン)ゴ(ン)ゴ・ク」、TUNGONGO-KU(tungongo=cause to shrink;ku=silent,wearied)、「疲れて・(身体に)力が入らなくなった(ひじょうに)」(「ツ(ン)ゴ(ン)ゴ」のNG音がG音に変化し、反復語尾が脱落して「ツゴ」から「スゴ」となった)

  「(ン)ガツ・ツリ」、NGATU-TURI(ngatu=crushed,mashed;turi=knee)、「潰されたように・膝を折る(ひじょうに)(意気消沈して。畏まって)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガッ」となった)

  「ナナ・タモ・ナク」、NANA-TA-MONA-KU(nana=tend carefully,nurse;tamo=be absent;naku=dig,bewitch,piercing cold)、「世話を・することもなく・極めて冷たい(態度で接する)(ひじょうに)」(「ナナ」が「ナン」と、「タモ」が「ダモ」と、「ナク」が「ナグ」となった)

  「メ・パウ」、ME-PAU(me=as if,as it were;pau=consumed,exhausted,denoting the complete or exhaustive character of any action)、「消耗した・ように(ひじょうに)(元気がない)」(「メ」が「メッ」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ポー」となった)

  「ナ・カラ」、NA-KALA(na=by,belonging to;(Hawaii)kala=to loosen,untie,free,to forgive,excuse)、「緊張がほぐれた(緩んだ)・ような(ひじょうに)(のびのびと)」

  「ホノ・タウリ」、HONO-TAURI(hono=proceed to do,go on,marry;tauri=fillet,band,bind)、「紐で・しっかりと結ぴつける(またはきちんと・結婚する)(ひじょうに)(ほんとうに)」(「ホノ」が「ホン」と、「タウリ」のAU音がO音に変化して「トリ」から「ドリ」となった)

  「マ・コト」、MA-KOTO(ma=white,clean,to emphasise;koto=loathing,averse,sob(kotonga=misery))、「全く・惨めなことに(ひじょうに)」(「マ」が「マッ」となった)

  「チオ・マ・コト」、TIO-MA-KOTO(tio=cry,call;ma=white,clean,to emphasise;koto=loathing,averse,sob(kotonga=misery))、「全く・惨めなことを・嘆く(ひじょうに)」(「チオ」が「チョ」から「ショー」と、「マ」が「マッ」となった)

  「チオホ・ツトフ」、TIOHO-TUFTOHU(tioho=apprehensive;tutohu=receive a proposal favourably,give consent to,indicate,sign)、「(たいへん)心配していることを・示している(ひじょうに)」(「チオホ」のH音が脱落して「チョ」から「チョー」と、「ツトフ」のH音が脱落して「ット」となった)

  「タイ・(ン)ギア」、TAI-NGIA(tai=tide,wave,anger,rage,violence;ngia=seem,appear to be)、「荒々しい(行動)・のように見える(ひじょうに)」(「タイ」が「ダイ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化して「ギア」から「ギャ」となった)

  「パタ・レイ」、PATA-REI(pata=prepare food;rei=leap,rush,run)、「食事の準備に・走り回る(ひじょうに)(いそがしい)」(「パタ」が「バサ」と、「シイ」が「レー」となった)

  「タイ・(ン)ガイ」、TAI-NGAI(tai=tide,wave,anger,rage,violence;ngai=tribe or clan)、「荒々しい・部族(ひじょうに)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「ゲ」から「ゲー」となった)

  「(ン)ギホ(ン)ギホ・タ(ン)ガ」、NGIHONGIHO-TANGA(ngihongiho=diminutive;tanga=be assembled)、「小さなものが・(たくさん)集まったような(ひじょうに)」(「(ン)ギホ(ン)ギホ」のNG音がG音に変化し、H音および反復語尾が脱落して「ギオ」から「ギョー」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

の転訛と解します。

174びじん(美人)・キリョーヨシ・オナゴヨシ・オナゴブリイーヒト・キレーナオナゴ・エーオナゴ・キリョーイー・イーオンナ・フリガイーヒト・キレーナヒト・ベッピンサン・オジョーモン・ベッピン・エーニョーバ・ベッピンナヒト・ジョーモンサン・ヨカオナゴ・チュラカーギー・キリョーモノ・カオノニンガイー・エトシゲナオナゴ・オシャン・チュライナグ

 「びじん」(漢語由来の言葉と解します)の方言には、北海道、千葉などの「キリョーヨシ」、青森の「オナゴヨシ」、岩手の「オナゴブリイーヒト」、宮城の「キレーナオナゴ」、山形の「エーオナゴ」、福島の「キリョーイー」、茨城の「イーオンナ」、栃木の「フリガイーヒト」、群馬の「キレーナヒト」、富山、福井などの「ベッピンサン」、山梨の「オジョーモン」、長野、愛知などの「ベッピン」、島根の「エーニョーバ」、愛媛の「ベッピンナヒト」、福岡の「ジョーモンサン」、佐賀、宮崎などの「ヨカオナゴ」、沖縄那覇・首里の「チュラカーギー」があります。

 上記のほか、北海道の「キリョーモノ」、栃木の「カオノニンガイー」、新潟の「エトシゲナオナゴ」、愛知の「オシャン」、沖縄首里の「チュライナグ」(女性語)があります。

 この「キリョーヨシ」、「オナゴヨシ」、「オナゴブリイーヒト」、「キレーナオナゴ」、「エーオナゴ」、「キリョーイー」、「イーオンナ」、「フリガイーヒト」、「キレーナヒト」、「ベッピンサン」、「オジョーモン」、「ベッピン」、「エーニョーバ」、「ベッピンナヒト」、「ジョーモンサン」、「ヨカオナゴ」、「チュラカーギー」、「キリョーモノ」、「カオノニンガイー」、「エトシゲナオナゴ」、「オシャン」、「チュライナグ」は、

  「キリ・アウ・イ・オチ」、KIRI-AU-I-OTI(kiri=skin,person,self;au=firm,sound,intense;i=past tense;oti=finished,gone or come for good)、「皮膚が・きめ細かで・綺麗・だ(美人)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となり、「キリ・オ」が「キリョー」と、「イ・オチ」が「ヨシ」となった)

  「オ・ナコ・イ・オチ」、O-NAKO-I-OTI(o=the...of;nako=fern bird(whakanako=adorn,with fine markings);i=past tense;oti=finished,gone or come for good)、「例の・素敵に着飾った(女性が)・綺麗・だ(美人)」(「ナコ」が「ナゴ」と、「イ・オチ」が「ヨシ」となった)

  「オ・ナコ・プリ・イヒ・ピト」、O-NAKO-PURI-IHI-PITO(o=the...of;nako=fern bird(whakanako=adorn,with fine markings);puri=hold in the hand,keep,detain,keep in memory;ihi=power,authority,rank;pito=end,extremity,at first)、「例の・素敵に着飾った(女性の)・(綺麗だという)記憶が・一番に・残る(美人)」(「ナコ」が「ナゴ」と、「プリ」が「ブリ」と、「イヒ」のH音が脱落して「イー」と、「ピト」のP音がF音を経てH音に変化して「ヒト」となった)

  「キ・レヒア・ナ・オ・ナコ」、KI-REHIA-NA-O-NAKO(ki=full,very;rehia=pleasure,amusement,enjoyment;na=by,belonging to;o=the...of;nako=fern bird(whakanako=adorn,with fine markings))、「たいへん・(人を)喜ばせる・部類の・例の・素敵に着飾った(女性)(美人)」(「レヒア」のH音および語尾のA音が脱落して「レイ」から「レー」と、「ナコ」が「ナゴ」となった)

  「エヘ・オ・ナコ」、EHE-O-NAKO(ehe=expressing surprise;o=the...of;nako=fern bird(whakanako=adorn,with fine markings))、「びっくりするような・例の・素敵に着飾った(女性)(美人)」(「エヘ」のH音が脱落して「エー」と、「ナコ」が「ナゴ」となった)

  「キリ・アウ・イヒ」、KIRI-AU-IHI(kiri=skin,person,self;au=firm,sound,intense;ihi=power,authority,rank)、「皮膚が・きめ細かで・(力がある)優れている(美人)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となり、「キリ・オ」が「キリョー」と、「イヒ」のH音が脱落して「イー」となった)

  「イヒ・オ・ナナ」、IHI-O-NANA(ihi=power,authority,rank;o=the...of;nana=tend carefully,nurse)、「(力がある)優れている・例の・(人を)懇切に世話をする(女性)(美人)」(「イヒ」のH音が脱落して「イー」と、「ナナ」が「ンナ」となった)

  「プリ・(ン)ガ・イヒ・ピト」、PURI-NGA-IHI-PITO(puri=hold in the hand,keep,detain,keep in memory;nga=satisfied,content;ihi=power,authority,rank;pito=end,extremity,at first)、「(綺麗だと)満足した・記憶が・一番に・残る(美人)」(「プリ」が「ブリ」と、「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「イヒ」のH音が脱落して「イー」と、「ピト」のP音がF音を経てH音に変化して「ヒト」となった)

  「キ・レヒア・ナ・ピト」、KI-REHIA-NA-PITO(ki=full,very;rehia=pleasure,amusement,enjoyment;na=by,belonging to;pito=end,extremity,at first)、「たいへん・(人を)喜ばせる・部類の・一番の(女性)(美人)」(「レヒア」のH音および語尾のA音が脱落して「レイ」から「レー」と、「ナコ」が「ナゴ」となった)

  「パエ・ツ・ヒ(ン)ガ・タナ」、PAE-TU-HINGA-TANA(pae=horizen,lie accross,lie on one side;tu=stand,settle;hinga=fall from an erect position,be outdone in a contest;tana=his,her,its)、「競争に勝ち抜いて・(特別の)地位に・置かれた・彼(の女性)(美人)」(「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベ」と、「ヒ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ヒナ」から「ヒン」、「ピン」と、「タナ」が「サン」となった)

  「オ・チオ・モナ」、O-TIO-MONA(o=the...of;tio=cry,call;mona=fat,rich,fertile)、「例の・(綺麗だと)嘆声を上げる・豊満な(女性)(美人)」(「チオ」が「チョ」から「ジョー」と、「モナ」が「モン」となった)

  「パエ・ツ・ヒ(ン)ガ」、PAE-TU-HINGA(pae=horizen,lie accross,lie on one side;tu=stand,settle;hinga=fall from an erect position,be outdone in a contest)、「競争に勝ち抜いて・(特別の)地位に・置かれた(女性)(美人)」(「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベ」と、「ヒ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ヒナ」から「ヒン」、「ピン」となった)

  「エヘ・ニホニホ・パ」、EHE-NIHONIHO-PA(ehe=expressing surprise;nihoniho=young shoots,buds of a plant;pa=fortified place,inhabitants of a fortified place)、「びっくりするような・若い・(柵で囲まれた場所に住む)深窓の(麗人)(美人)」(「エヘ」のH音が脱落して「エー」と、「ニホニホ」の反復語尾およびH音が脱落して「ニオから「ニョー」と、「パ」が「バ」となった)

  「パエ・ツ・ヒ(ン)ガ・ナ・ピト」、PAE-TU-HINGA-NA-PITO(pae=horizen,lie accross,lie on one side;tu=stand,settle;hinga=fall from an erect position,be outdone in a contest;na=by,belonging to;pito=end,extremity,at first)、「競争に勝ち抜いて・(特別の)地位に・置かれた(女性で)・一番に・属する(女性)(美人)」(「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベ」と、「ヒ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ヒナ」から「ヒン」、「ピン」と、「ピト」のP音がF音を経てH音に変化して「ヒト」となった)

  「チオ・モナ・タナ」、TIO-MONA-TANA(tio=cry,call;mona=fat,rich,fertile;tana=his,her,its)、「(綺麗だと)嘆声を上げる・豊満な・彼の女性(美人)」(「チオ」が「チョ」から「ジョー」と、「モナ」が「モン」と、「タナ」が「サン」となった)

  「イ・オカカ・オ・ナコ」、I-OKAKA-O-NAKO(i=past tense;okaka=feel a longong,be eager;o=the...of;nako=fern bird(whakanako=adorn,with fine markings))、「強く・あこがれを感じる・例の・素敵に着飾った(女性)(美人)」(「オカカ」の反復語尾が脱落して「オカ」となり、「イ・オカ」が「ヨカ」と、「ナコ」が「ナゴ」となった)

  「チ・ウラ・カ(ン)ギア」、TI-URA-KANGIA(ti=throw,cast;ura=red,brown,glowing;kangia=verbal noun of ka=take fire,be lighted,burn)、「光を・発し・輝いている(女性)(美人)」(「チ・ウラ」が「チュラ」と、「カ(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「カギ」から「カーギー」となった)

  「キリ・アウ・モノア」、KIRI-AU-MONOA(kiri=skin,person,self;au=firm,sound,intense;monoa=admire,desire)、「皮膚が・きめ細かで・あこがれる(女性)(美人)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となり、「キリ・オ」が「キリョー」と、「モノア」の語尾のA音が脱落して「モノ」となった)

  「カホ・ノ・ニニ・(ン)ガ・イヒ」、KAHO-NO-NINI-NGA-IHI(kaho=anything light-coloured,or perhaps reddish or yellowish;no=of;nini=glowing;nga=satisfied,content;ihi=power,authority,rank)、「(色が白い)顔・の・輝きに・満足すべき・力がある(女性)(美人)」(「カホ」のH音が脱落して「カオ」と、「ニニ」が「ニン」と、「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「イヒ」のH音が脱落して「イー」となった)

  「エ・タウ・チ(ン)ゲイ・ナ・オ・ナコ」、E-TAU-TINGEI-NA-O-NAKO(e=calling attention or expressing surprise;tau=come to rest,settle down,be suitable,be comely;tingei=unsettled,ready to move;na=by,belonging to;o=the...of;nako=fern bird(whakanako=adorn,with fine markings))、「びっくりする・綺麗で・はかなげな・部類に属する・例の・素敵に着飾った(女性)(美人)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「チ(ン)ゲイ」のNG音がG音に変化して「チゲイ」から「シゲ」と、「ナコ」が「ナゴ」となった)

  「オチ・アナ」、OTI-ANA(oti=finished,gone or come for good;ana=yes,his,her)、「綺麗な・彼の女性(美人)」(「オチ・アナ」が「オチャナ」から「オシャン」となった)

  「チ・ウラ・イ・ナク」、TI-URA-I-NAKU(ti=throw,cast;ura=red,brown,glowing;i=past tense,beside;naku=dig,bewitch)、「光を・周囲に・発して・(人を)魅惑する(女性)(美人)」(「チ・ウラ」が「チュラ」と、「ナク」が「ナグ」となった)

の転訛と解します。

175ひたい(額)・ナズギ・ナンズギ・デンビ・ヒテーコンビ・ヒタエ・デビ・オデコ・フテー・フテァ・コペブチ・コベンタマ・ヒテーグチ・ミケン・コベ・デコチン・デボチン・ヒタエグチ・フチャーグチ・デコ・デブチン・フタエ・フタイ・ヒチャーガシラ・メッケン・ムコヅラ・ズッデコ・ヒチェー・フィチャイ・ナデコ・メンテー

 「ひたい」の方言には、北海道、秋田などの「ナズギ」、青森の「ナンズギ」、岩手、山形の「デンビ」、宮城の「ヒテーコンビ」、茨城の「ヒタエ」、栃木の「デビ」、群馬、埼玉などの「オデコ」、千葉の「フテー」、神奈川の「シタイ」(「ひたい」と同語源)、新潟の「フテァ」、石川の「コペブチ」、福井の「コベンタマ」、山梨、大分の「ヒテーグチ」、岐阜の「ミケン」、愛知の「ヒタイグチ」(「ヒテーグチ」と同語源)、滋賀の「コベ」、大阪、奈良などの「デコチン」、兵庫の「デボチン」、島根の「ヒタエグチ」、岡山の「フチャーグチ」、広島、長崎の「デコ」、山口の「デブチン」、徳島の「フタエ」、香川の「フタイ」、福岡の「シタイグチ」(「ヒテーグチ」と同語源)、佐賀の「ヒチャーガシラ」、熊本の「メッケン」、宮崎の「ムコヅラ」、鹿児島の「ズッデコ」、沖縄那覇の「ヒチェー」、沖縄首里の「フィチャイ」があります。

 上記のほか、北海道の「ナデコ」(若年層)、香川の「メンテー」などがあります。

 この「ひたい」、「ナズギ」、「ナンズギ」、「デンビ」、「ヒテーコンビ」、「ヒタエ」、「デビ」、「オデコ」、「フテー」、「フテァ」、「コペブチ」、「コベンタマ」、「ヒテーグチ」、「ミケン」、「コベ」、「デコチン」、「デボチン」、「ヒタエグチ」、「フチャーグチ」、「デコ」、「デブチン」、「フタエ」、「フタイ」、「ヒチャーガシラ」、「メッケン」、「ムコヅラ」、「ズッデコ」、「ヒチェー」、「フィチャイ」、「ナデコ」、「メンテー」は、

  「ヒ・タヒ」、HI-TAHI(hi=raise,rise;tahi=one,together,sweep,smooth)、「高く・平らになっているもの(額)」(「タヒ」のH音が脱落して「タイ」となった。また「ヒ」が「シ」となった)

  「ナツ・(ン)ギア」、NATU-NGIA(natu=scratch,stir up,tear out,show ill-feeling,angry;ngia=seem,appear to be)、「(引っ掻いて条を付ける)皺を寄せて・不快感を表すもの(額)」(「ナツ」が「ナズ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となった)

  「ナ・ナツ・(ン)ギア」、NA-NATU-NGIA(na=by,belonging to;natu=scratch,stir up,tear out,show ill-feeling,angry;ngia=seem,appear to be)、「(引っ掻いて条を付ける)皺を寄せる・ことによって・不快感を表すもの(額)」(「ナツ」が「ンズ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となった)

  「テ・ナピ」、TE-NAPI(te=crack;napi=cling,tightly)、「(割れ目)皺を・しっかりと刻むもの(額)」(「テ」が「デ」と、「ナピ」が「ンビ」となった)

  「ヒ・タヒ・コ・ナピ」、HI-TAHI-KO-NAPI(hi=raise,rise;tahi=one,together,sweep,smooth;ko=dig or plant with a ko;napi=cling,tightly)、「高く・平らになっているもので・掘り棒で・(皺を)しっかりと刻むもの(額)」(「タヒ」のH音が脱落し、AI音がE音に変化して「テー」と、「ナピ」が「ンビ」となった)

  「ヒ・タエ」、HI-TAE(hi=raise,rise;tae=arrive,reach,extend to,be affected)、「高く・伸びているもの(額)」

  「テ・ピ」、TE-PI(te=crack;pi=flow of the tide,source of a stream)、「(割れ目)皺が・(川のように)流れているもの(額)」(「テ」が「デ」と、「ピ」が「ビ」となった)

  「オ・テ・コ」、O-TE-KO(o=the...of;te=crack;ko=dig or plant with a ko)、「例の・掘り棒で・(割れ目)皺が刻まれているもの(額)」(「テ」が「デ」となった)

  「フ・テ」、HU-TE(hu=promontory,hill;te=crack)、「(割れ目)皺が刻まれた・(出っ張った)丘(額)」(「テ」が「テー」となった)

  「フ・テアテア」、HU-TEATEA(hu=promontory,hill;teatea=white,light in colour,pale,apprehensive,afraid)、「(心配が皺となって現れる)皺が刻まれた・(出っ張った)丘(額)」(「テアテア」の反復語尾が脱落して「テァ」となった)

  「コパエ・プチ」、KOPAE-PUTI(kopae=lying sideways,having the entrance at the side;puti=cross-grained or tough of timber)、「(木の節のようなもの)こめかみが・両脇にあるもの(額)」(「コパエ」のAE音がE音に変化して「コペ」から「コベ」と、「プチ」が「ブチ」となった)

  「コパエ・(ン)ガタ・マハ」、KOPAE-NGATA-MAHA(kopae=lying sideways,having the entrance at the side;ngata=appeased,satisfied;maha,mahamaha=liver,seat of affection)、「(人の)感情(が宿る場所)を・癒すもの(こめかみ)が・両脇にあるもの(額)」(「コパエ」のAE音がE音に変化して「コペ」から「コベ」と、「(ン)ガタ」のNG音がN音に変化して「ナタ」から「ンタ」と、「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

  「ヒ・タヒ・クチ」、HI-TAHI-KUTI(hi=raise,rise;tahi=one,together,sweep,smooth;kuti=draw tightly together,contract,pinch)、「高く・平らで・(上下から)挟まれているもの(額)」(「タヒ」のH音が脱落して「タイ」またはさらにAI音がE音に変化して「テー」と、「クチ」が「グチ」となった。また「ヒ」が「シ」となった)

  「ミヒ・カイ(ン)ガ」、MIHI-KAINGA(mihi=sigh for,greet,express discomfort,show itself;kainga=field of operation,scope of work)、「不快な感情が表れる・場所(額)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「ケナ」から「ケン」となった)

  「コパエ」、KOPAE(lying sideways,having the entrance at the side)、「(こめかみが)両脇にあるもの(額)」(「コパエ」のAE音がE音に変化して「コペ」から「コベ」となった)

  「テ・コ・チ(ン)ガ」、TE-KO-TINGA(te=crack;ko=dig or plant with a ko;tinga=likely)、「掘り棒で・(割れ目)皺が刻まれている・ようなもの(額)」(「テ」が「デ」と、「チ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「チナ」から「チン」となった)

  「テ・パウ・チ(ン)ガ」、TE-PAU-TINGA(te=crack;pau=consumed,exhausted,denoting the complete or exhaustive character of any action;tinga=likely)、「(割れ目)皺が刻まれて・しまっている・ようなもの(額)」(「テ」が「デ」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボ」と、「チ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「チナ」から「チン」となった)

  「ヒ・タエ・クチ」、HI-TAE-KUTI(hi=raise,rise;tae=arrive,reach,extend to,be affected;kuti=draw tightly together,contract,pinch)、「高く・伸びて・(上下から)挟まれているもの(額)」(「クチ」が「グチ」となった)

  「フチ・イア・クチ」、HUTI-IA-KUTI(huti=hoist,pull out of the ground;ia=indeed;kuti=draw tightly together,contract,pinch)、「ほんとうに・高く出っ張っているもの(額)」(「フチ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「フチア」から「フチャー」と、「クチ」が「グチ」となった)

  「テ・コ」、TE-KO(te=crack;ko=dig or plant with a ko)、「掘り棒で・(割れ目)皺が刻まれているもの(額)」(「テ」が「デ」となった)

  「テ・プ・チ(ン)ガ」、TE-PU-TINGA(te=crack;pu=tribe,bunch,heap;tinga=likely)、「(割れ目)皺が刻まれている・高み・のようなもの(額)」(「テ」が「デ」と、「プ」が「ブ」と、「チ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「チナ」から「チン」となった)

  「フ・タエ」、HU-TAE(hu=promontory,hill;tae=arrive,reach,extend to,be affected)、「伸びている・丘のような高み(額)」

  「フ・タヒ」、HU-TAHI(hu=promontory,hill;tahi=one,together,sweep,smooth)、「平らな・丘のような高み(額)」(「タヒ」のH音が脱落して「タイ」となった)

  「ヒ・チア・(ン)ガチ・イラ」、HI-TIA-NGATI-IRA(hi=raise,rise;tia=stick in,adorn by sticking in feathers;ngati=ngai ati=tribe or clan;ira=freckle,variegated,shine,glitter)、「高くて・部族の・輝く・羽根飾りをそこに締めるもの(額)」(「チア」が「チャー」と、「(ン)ガチ」のNG音がG音に変化して「ガチ」から「ガシ」となり、その語尾のI音と「イラ」の語頭のI音が連結して「ガシラ」となった)

  「メア・カイ(ン)ガ」、MEA-KAINGA(mea=me aha=what does it signify?;kainga=field of operation,scope of work)、「疑問の感情が表れる・場所(額)」(「メア」の語尾のA音が脱落して「メ」から「メッ」と、「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「ケナ」から「ケン」となった)

  「ム・コ・ツラハ」、MU-KO-TURAHA(mu=silent,murmur at,show discontent with;ko=dig or plant with a ko;turaha=keep away,open,wide,not confined)、「不快な感情を・広く・(溝)皺に刻むもの(額)」(「ツラハ」のH音が脱落して「ヅラ」となった)

  「ツツ・テ・コ」、TUTU-TE-KO(tutu=stand erect,be prominent;te=crack;ko=dig or plant with a ko)、「くっきりと・掘り棒で・(割れ目)皺が刻まれているもの(額)」(「ツツ」が「ズッ」と、「テ」が「デ」となった)

  「ヒ・チア・イ」、HI-TIA-I(hi=raise,rise;tia=stick in,adorn by sticking in feathers;i=past tense,beside)、「高くて・その周囲に・羽根飾りを締めるもの(額)」(「チア・イ」のAI音がE音に変化して「チエ」から「チェー」となった)

  「フイ・チア・イ」、HUI-TIA-I(hui=put or add together,assemble;tia=stick in,adorn by sticking in feathers;i=past tense,beside)、「(その)周囲の・上に・羽根飾りを締めるもの(額)」(「チア・イ」が「チャイ」となった)

  「ナ・テ・コ」、NA-TE-KO(na=by,belonging to;te=crack;ko=dig or plant with a ko)、「掘り棒で・(割れ目)皺が刻まれている・ようなもの(額)」(「テ」が「デ」となった)

  「メネ・テ」、MENE-TE(mene=be assembled,be completely recited;te=crack)、「皺が・集まっているもの(額)」(「メネ」が「メン」と、「テ」が「テー」となった)

の転訛と解します。

176びっくりする・タマゲル・ドデンスル・ソボレル・ビックリシル・ビックラコク・オドケル・オドロク・オベル・オペー・オブケル・オーケル・タマガル・ビックイスッ・ウッタマグッ・タマガッ・ッウルルチュン・ウドゥルチュン

 「びっくりする」の方言には、北海道、岩手などの「タマゲル」、秋田の「ドデンスル」、富山の「ソボレル」、福井の「ビックリシル」、山梨の「ビックラコク」、長野の「オドケル」、和歌山の「オドロク」、鳥取の「オベル」、島根の「オペー」、徳島の「オブケル」、香川の「オーケル」、高知の「タマンゲル」(「タマゲル」と同語源)、福岡、熊本などの「タマガル」、佐賀の「ビックイスッ」、長崎の「ウッタマグッ」、鹿児島の「タマガッ」、沖縄那覇の「ッウルルチュン」、沖縄首里の「ウドゥルチュン」があります。

 上記のほか、北海道の「ドッテンスル」(「ドデンスル」と同語源)などがあります。

 この「びっくりする」、「タマゲル」、「ドデンスル」、「ソボレル」、「ビックリシル」、「ビックラコク」、「オドケル」、「オドロク」、「オベル」、「オペー」、「オブケル」、「オーケル」、「タマガル」、「ビックイスッ」、「ウッタマグッ」、「タマガッ」、「ッウルルチュン」、「ウドゥルチュン」は、

  「ピヒ・クリ・ツル」、PIHI-KURI-TURU(pihi=spring up,begin to grow;kuri,kurikuri=fusty,evil-smelling;turu=last a short time(turua=be done for a short time;tuturu=fixed,permanent))、「悪臭(の来襲)に・(驚いて)飛び上が・る(びっくりする)」(「ピヒ」のH音が脱落して「ピ」から「ビッ」と、「ツル」が「スル」となった)

  「タ・マ(ン)ゲ(ン)ゲ・ル」、TA-MANGENGE-RU(ta=the...of,dash,beat,lay;mangenge=benumbed;ru=shake,agitate,scatter)、「打撃をうけて・(身体がしびれた)動かなく・なる(びっくりする)」(「マ(ン)ゲ(ン)ゲ」のNG音がG音に変化し、反復語尾が脱落して「マゲ」となった。また「マ(ン)ゲ(ン)ゲ」の最初のNG音がN音に、次のNG音がG音に変化して「マネゲ」から「マンゲ」となった)

  「トフ・テネ・ツル」、TOHU-TENE-TURU(tohu=mark,point out,show,lay by;tene=invented,impromptu;turu=last a short time(turua=be done for a short time;tuturu=fixed,permanent))、「即興で・(詩歌を)作って・示す(びっくりする)」(「トフ」のH音が脱落して「ト」から「ド」または「ドッ」と、「テネ」が「テン」または「デン」と、「ツル」が「スル」となった)

  「トフ・ポレ・ル」、TOHU-PORE-RU(tohu=mark,point out,show,lay by;pore=start,desire(popore=wish anxiously for,show favour to);ru=shake,agitate,scatter)、「急に・(何かの)望みを・言い出す(びっくりする)」(「トフ」のH音が脱落して「ト」から「ソ」と、「ポレ」が「ボレ」となった)

  「ピヒ・クリ・チ・ル」、PIHI-KURI-TURU(pihi=spring up,begin to grow;kuri,kurikuri=fusty,evil-smelling;ti=throw,cast;ru=shake,agitate,scatter)、「悪臭(の来襲)に・(驚いて)飛び上が・って・しまう(びっくりする)」(「ピヒ」のH音が脱落して「ピ」から「ビッ」と、「チ」が「シ」となった)

  「ピヒ・クラ・コクフ」、PIHI-KURA-KOKUHU(pihi=spring up,begin to grow;kura=red feathers,ornamented with feathers,treasure;kokuhu=insert,introduce,intrude into a series or company)、「(羽根飾りを付けた)身分の高い人を・紹介されて・(驚いて)飛び上がる(びっくりする)」(「ピヒ」のH音が脱落して「ピ」から「ビッ」と、「コクフ」のH音が脱落して「コク」となった)

  「アウト・カイルア」、AUTO-KAIRUA(auto=trailing behind,slow,protract;kairua=eat one's words)、「人の言うことを・鸚鵡返しにしゃべる(自分の言葉が出てこない)(びっくりする)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」から「オド」と、「カイルア」のAI音がE音に変化し、語尾のA音が脱落して「ケル」となった)

  「アウト・ラウ・ク」、AUTO-RAU-KU(auto=trailing behind,slow,protract;rau=catch as in a net,entangle,embarrassed,confused;ku=silent,wearied,exhausted)、「(意外なことがあって)その後は・困惑して・言葉が出ない(びっくりする)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」から「オド」と、「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」となった)
  または「アウト・ロク」、AUTO-ROKU(auto=trailing behind,slow,protract;roku=bend,grow weak,decline of a person dying,a fire going out etc.)、「(意外なことがあって)その後は・元気が無くなる(びっくりする)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」から「オド」となった)

  「オペ・ル」、OPE-RU(ope=scoop up,scratch the head etc.;ru=shake,agitate,scatter)、「頭を掻く(などの所作を)・する(びっくりする)」(「オペ」が「オベ」となった)

  「オペ」、OPE(scoop up,scratch the head etc.)、「頭を掻く(などの所作をする)(びっくりする)」(「オペ」が「オベー」となった)

  「オプ・カイルア」、OPU-KAIRUA(opu=set;kairua=eat one's words)、「人の言うことを・鸚鵡返しにしゃべる(自分の言葉が出てこない)(びっくりする)」(「オプ」が「オブ」と、「カイルア」のAI音がE音に変化し、語尾のA音が脱落して「ケル」となった)

  「オフ・カイルア」、OHU-KAIRUA(ohu=do by aid of a company of volumteer workers,surround;kairua=eat one's words)、「人の助けを借りて・その人の言う言葉をしゃべる(自分の言葉が出てこない)(びっくりする)」(「オフ」のH音が脱落して「オー」と、「カイルア」のAI音がE音に変化し、語尾のA音が脱落して「ケル」となった)

  「タ・マ(ン)ガマ(ン)ガ・ル」、TA-MANGAMANGA-RU(ta=the...of,dash,beat,lay;mangamanga=unsteady,tottering;ru=shake,agitate,scatter)、「打撃をうけて・(身体が)ふらふら・する(びっくりする)」(「マ(ン)ガマ(ン)ガ」のNG音がG音に変化し、反復語尾が脱落して「マガ」となった)

  「ピヒ・クイ・ツツ」、PIHI-KUI-TUTU(pihi=spring up,begin to grow;kui=short of food,cold,weak,cowardly,stunted;tutu=stand erect,be prominent,violent,vigorous)、「急に・食料が不足して(または寒くなって)・(驚いて)飛び上が・る(びっくりする)」(「ピヒ」のH音が脱落して「ピ」から「ビッ」と、「ツツ」が「スッ」となった)

  「ウ・タ・マ(ン)グ(ン)グ・ツ」、U-TA-MANGUNGU-RU(u=be firm,be fixed,reach its limit;ta=the...of,dash,beat,lay;mangungu=broken,chipped,crushed,uncooked;ru=shake,agitate,scatter)、「極限まで・打撃をうけて・(身体が)くたくたに・なる(びっくりする)」(「ウ」が「ウッ」と、「マ(ン)グ(ン)グ」のNG音がG音に変化し、反復語尾が脱落して「マグ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「タ・マ(ン)ガマ(ン)ガ・ツ」、TA-MANGAMANGA-TU(ta=the...of,dash,beat,lay;mangamanga=unsteady,tottering;tu=stand,settle)、「打撃をうけて・(身体が)ふらふら・する(びっくりする)」(「マ(ン)ガマ(ン)ガ」のNG音がG音に変化し、反復語尾が脱落して「マガ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「ツ・ウルルア・チウ・ナ」、TU-URURU-TIU-NA(tu=stand,settle;ururua=revelling,luxuriating;tiu=soar,wander,unsettled;na=by,belonging to)、「気持ちが・ふらふらと・している・ような(びっくりする)」(「ツ」が「ッ」と、「ウルルア」の語尾のA音が脱落して「ウルル」と、「チウ」が「チュ」と、「ナ」が「ン」となった)

  「ウトウト・ウル・チウ・ナ」、UTOUTO-URU-TIU-NA(utouto=use vindictively;uru=be anxious;tiu=soar,wander,unsettled;na=by,belonging to)、「不安な気持ちが・しつこく・ふらふらとしている・ような(びっくりする)」(「ウトウト」の反復語尾が脱落して「ウト」から「ウド」と、「ウル」が「ゥル」と、「チウ」が「チュ」と、「ナ」が「ン」となった)

の転訛と解します。

177ひなたぼっこ(日向ぼっこ)・ヒアダリサイル・ヌグダマリ・ヒナタバッコ・ヒガタブクリ・ヌクトマリ・ヒナタボッコリ・ヌクタンボリ・ヒナタヌクモリ・ヒナタブクロ・ヌクダマイスッ・ヒナタビックル・ヒナタボックリ・ティーラブーイ・ティーダブック

 「ひなたぼっこ」の方言には、青森の「ヒアダリサイル」、岩手の「ヌグダマリ」、群馬、埼玉の「ヒナタバッコ」、山梨の「ヒガタブクリ」、愛知の「ヌクトマリ」、三重の「ヒナタボッコリ」、大阪の「ヒナタボコリ」(「ヒナタボッコリ」と同語源)、奈良の「ヌクタンボリ」、和歌山の「ヒナタヌクモリ」、福岡の「ヒナタブクロ」、佐賀の「ヌクダマイスッ」、長崎の「ヒナタビックル」、熊本の「ヒナタボックリ」、大分の「ヒナタボコ」(「ひなたぼっこ」と同語源)、沖縄那覇の「ティーラブーイ」、沖縄首里の「ティーダブック」があります。

 この「ひなたぼっこ」、「ヒアダリサイル」、「ヌグダマリ」、「ヒナタバッコ」、「ヒガタブクリ」、「ヌクトマリ」、「ヒナタボッコリ」、「ヌクタンボリ」、「ヒナタヌクモリ」、「ヒナタブクロ」、「ヌクダマイスッ」、「ヒナタビックル」、「ヒナタボックリ」、「ティーラブーイ」、「ティーダブック」は、

  「ヒヒ・(ン)ガタ・ポコ」、HIHI-NGATA-POKO(hihi=ray of the sun;ngata=appeased,satisfied;poko=be extinguished,beaten(popoko=withered,shrivelled))、「太陽の光を浴びて・(身体の力を抜いて)ゆったりとして・満足している(日向ぼっこ)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「(ン)ガタ」のNG音がN音に変化して「ナタ」と、「ポコ」が「ボッコ」となった)

  「ヒヒ・アタ・リ・タ・イ・ル」、HIHI-ATA-RI-TA-I-RU(hihi=ray of the sun;ata=gently,openly,deliverately;ri=screen,protect,bind;ta=dash,beat,lay;i=past tense,beside;ru=shake,agitate,scatter)、「太陽の光を・穏やかに・浴びる・場所に・居・る(日向ぼっこ)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「アタ」が「アダ」と、「タ」が「サ」となった)

  「ヌク・タ・マリリ」、NUKU-TA-MARIRI(nuku=wide extent,distance,move;ta=dash,beat,lay;mariri=tranquillised,allayed,gentle)、「広い場所に・静かに落ち着いて・居る(日向ぼっこ)」(「ヌク」が「ヌグ」と、「タ」が「ダ」と、「マリリ」の反復語尾が脱落して「マリ」となった)

  「ヒヒ・(ン)ガタ・パコア」、HIHI-NGATA-PAKOA(hihi=ray of the sun;ngata=appeased,satisfied;pakoa=that has become shallow or dry)、「太陽の光を浴びて・次第に乾燥して・満足している(日向ぼっこ)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「(ン)ガタ」のNG音がN音に変化して「ナタ」と、「パコア」の語尾のA音が脱落して「バッコ」となった)

  「ヒヒ・(ン)ガタ・プクリリ」、HIHI-NGATA-PUKURIRI(hihi=ray of the sun;ngata=appeased,satisfied;pukuriri=angry,hostility,enmity)、「太陽の光を浴びて・(敵対しているように)ばらばらになって・満足している(日向ぼっこ)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「(ン)ガタ」のNG音がG音に変化して「ガタ」と、「プクリリ」の反復語尾が脱落して「ブクリ」となった)

  「ヌク・タウ・マリリ」、NUKU-TAU-MARIRI(nuku=wide extent,distance,move;tau=come to rest,settle down,be suitable;mariri=tranquillised,allayed,gentle)、「広い場所に・静かに落ち着いて・休んでいる(日向ぼっこ)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「マリリ」の反復語尾が脱落して「マリ」となった)

  「ヒヒ・(ン)ガタ・ポコ・リ」、HIHI-NGATA-POKO-RI(hihi=ray of the sun;ngata=appeased,satisfied;poko=be extinguished,beaten(popoko=withered,shrivelled);ri=screen,protect,bind)、「太陽の光を浴びて・風除けに守られて・(身体の力を抜いて)ゆったりとして・満足している(日向ぼっこ)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「(ン)ガタ」のNG音がN音に変化して「ナタ」と、「ポコ」が「ボッコ」となった)

  「ヌク・タ(ン)ガ・ポリ」、NUKU-TANGA-PORI(nuku=wide extent,distance,move;tanga=be assembled;pori=wrinkle,people,tribe)、「広い場所に・人々が・集まっている(日向ぼっこ)」(「ヌク」が「ヌグ」と、「タ(ン)が」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」と、「ポリ」が「ボリ」となった)ヌクタンポリ

  「ヒヒ・(ン)ガタ・ヌク・モリ」、HIHI-NGATA-NUKU-MORI(hihi=ray of the sun;ngata=appeased,satisfied;nuku=wide extent,distance,move;mori=fondle,caress)、「太陽の光が・優しく射す・広い場所が・(人々を)優しく抱擁する(日向ぼっこ)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「(ン)ガタ」のNG音がN音に変化して「ナタ」となった)

  「ヒヒ・(ン)ガタ・プクラウ」、HIHI-NGATA-PUKURAU(hihi=ray of the sun;ngata=appeased,satisfied;pukurau=a net-like fungus)、「太陽の光が・(人々を)網茸のように包んで・満足している(日向ぼっこ)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「(ン)ガタ」のNG音がG音に変化して「ガタ」と、「プクラウ」のAU音がO音に変化して「ブクロ」となった)

  「ヌク・タ・マイ・ツツ」、NUKU-TA-MAI-TUTU(nuku=wide extent,distance,move;ta=dash,beat,lay;mai=become quiet,indicate direction or motion towards;tutu=stand erect,be prominent,violent,vigorous)、「広い場所に・とりわけ・静かに落ち着いて・居る(日向ぼっこ)」(「ヌク」が「ヌグ」と、「タ」が「ダ」と、「ツツ」が「スッ」となった)

  「ヒヒ・(ン)ガタ・ピヒ・クル」、HIHI-NGATA-PIHI-KURU(hihi=ray of the sun;ngata=appeased,satisfied;pihi=spring up,begin to grow;kuru=weary,weak)、「太陽の光を浴びて・満足して・次第に・だるくなる(日向ぼっこ)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「(ン)ガタ」のNG音がN音に変化して「ナタ」と、「ピヒ」のH音が脱落して「ピ」から「ビッ」となった)

  「ヒヒ・(ン)ガタ・パウク・リ」、HIHI-NGATA-PAUKU-RI(hihi=ray of the sun;ngata=appeased,satisfied;pauku=a thick closely woven cloak of flax;ri=screen,protect,bind)、「太陽の光を浴びて・厚い上着を着たように・守られて・満足している(日向ぼっこ)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「(ン)ガタ」のNG音がN音に変化して「ナタ」と、「パウク」のAU音がO音に変化して「ポク」から「ボック」となった)

  「テ・ヒヒ・ラプ・イ」、TE-HIHI-RAPU-I(te=the...of;hihi=ray of the sun;rapu=seek,look for,squeeze;i=past tense,beside,from,with,at)、「例の・太陽の光を・(身体に)取り込む・行為(日向ぼっこ)」(「ヒヒ」のH音が脱落して「ィー」と、「ラプ」が「ラブー」となった)

  「テ・ヒヒ・タ・プク」、TE-HIHI-TA-PUKU(te=the...of;hihi=ray of the sun;ta=dash,beat,lay;puku=swelling;secretly,without speaking)、「例の・太陽の光を・黙って・(身体に)当てる行為(日向ぼっこ)」(「ヒヒ」のH音が脱落して「ィー」と、「タ」が「ダ」と、「プク」が「ブック」となった)

の転訛と解します。

178ひらたい(平たい)・ペッタラコイ・ヒラテァ・タッピラコエ・ペッタラコエ・ヒッダチー・ヒラベッタイ・テーラ・ヒラペッタエ・ヒラクタイ・ベタコイ・ロック・ナルイ・ヒラベッテャー・ヘラベタイ・ヒラベッタカ・ペチャーッテシトッ・ヒラタカ・ビッタラカ・ヒラテーッテー・フィラー・ヘラタイ

 「ひらたい」の方言には、北海道、福島の「ペッタラコイ」、青森、茨城などの「ヒラテー」(「ひらたい」と同語源)、岩手の「ヒラテァ」、宮城の「タッピラコエ」、秋田の「ベッタラコイ」(「ペッタラコイ」と同語源)、山形の「ペッタラコエ」、栃木の「ヒッダチー」、群馬、東京などの「ヒラベッタイ」、埼玉、千葉の「ヒラベッテー」(「ヒラベッタイ」と同語源)、神奈川の「テーラ」、新潟の「ヒラペッタエ」、山梨、長野の「ヒラッタイ」(「ひらたい」と同語源)、岐阜の「ヒラッペタイ」(「ヒラベッタイ」と同語源)、愛知の「ヒラベッタェー」(「ヒラベッタエ」と同語源)、三重、和歌山などの「ヒラクタイ」、大阪の「ベタコイ」、奈良の「ロック」、鳥取、広島の「ナルイ」、岡山の「ヒラベッテャー」、徳島の「ヘラベタイ」、福岡の「ヒラベッタカ」、佐賀の「ペチャーッテシトッ」、長崎の「ヒラタカ」、熊本の「ビッタラカ」、沖縄那覇の「ヒラテーッテー」、沖縄首里の「フィラー」があります。

 上記のほか、徳島の「ヘラタイ」、鹿児島の「デラ」(平坦地のみ)(「テーラ」と同語源)があります。

 この「ひらたい」、「ペッタラコイ」、「ヒラテァ」、「タッピラコエ」、「ペッタラコエ」、「ヒッダチー」、「ヒラベッタイ」、「テーラ」、「ヒラペッタエ」、「ヒラクタイ」、「ベタコイ」、「ロック」、「ナルイ」、「ヒラベッテャー」、「ヘラベタイ」、「ヒラベッタカ」、「ペチャーッテシトッ」、「ヒラタカ」、「ビッタラカ」、「ヒラテーッテー」、「フィラー」、「ヘラタイ」は、

  「ヒラ・タヒ」、HIRA-TAHI(hira=numerous,great,widespread;tahi=sweep,trim,smooth)、「広く・滑らかな(平たい)」(「タヒ」のH音が脱落して「タイ」となった。また「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「テー」となった。また「ヒラ」が「ヒラッ」となった)

  「ペ・タラ・コイ」、PE-TARA-KOI(pe=crushed,mashed,soft;tara=point,peak of mountain,wane of the moon;koi=sharp,almost,good)、「突起を・完全に・潰した(平たい)」(「ペ」が「ペッ」または「ベッ」となった)

  「ヒラ・タヒ・イア」、HIRA-TAHI-IA(hira=numerous,great,widespread;tahi=sweep,trim,smooth;ia=indeed)、「実に・広く・滑らかな(平たい)」(「タヒ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「タヒア」となり、そのH音が脱落し、AI音がE音に変化して「テア」から「テァ」となった)

  「タ・ヒラ・コアエ」、TA-HIRA-KOAE(ta=dash,beat,lay;hira=numerous,great,widespread;koae=kowae=devide,pick out,set apart)、「広く・打撃を加えて・(突起を)取り去った(平たい)」(「タ」が「タッ」と、「ヒラ」が「ピラ」と、「コアエ」のAE音がE音に変化して「コエ」となった)

  「ペ・タラ・コアエ」、PE-TARA-KOAE(pe=crushed,mashed,soft;tara=point,peak of mountain,wane of the moon;koae=kowae=devide,pick out,set apart)、「突起を・潰して・取り去った(平たい)」(「ペ」が「ベッ」と、「コアエ」のAE音がE音に変化して「コエ」となった)

  「ヒ・ツ・タ・チ」、HI-TU-TA-TI(HI=raise,rise;tu=fight with,energetic;ta=dash,beat,lay;ti=throw,cast,overcome)、「突起を・懸命に・打撃を加えて・(圧倒)平らにした(平たい)」(「ツ」が「ッ」と、「タ」が「ダ」と、「チ」が「チー」となった)

  「ヒラ・ペ・タヒ」、HIRA-PE-TAHI(hira=numerous,great,widespread;pe=crushed,mashed,soft;tahi=sweep,trim,smooth)、「広く・(突起を)潰して・滑らかな(平たい)」(「ペ」が「ベッ」と、「タヒ」のH音が脱落して「タイ」となった。また「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「テー」となった。また「ヒラ」が「ヒラッ」となった)

  「タヒ・ラハ」、TAHI-RAHA(tahi=sweep,trim,smooth;raha=open,extended)、「滑らかに・広がっている(平たい)」(「タヒ」のH音が脱落して「タイ」となり、そのAI音がE音に変化して「テ」から「テー」または「デ」と、「ラハ」のH音が脱落して「ラ」となった)

  「ヒラ・ペ・タエ」、HIRA-PE-TAE(hira=numerous,great,widespread;pe=crushed,mashed,soft;tae=arrive,reach,extend to)、「広く・(突起を)潰して・広がっている(平たい)」(「ペ」が「ベッ」となった。また「タエ」が「タェー」となった)

  「ヒラ・ク・タヒ」、HIRA-KU-TAHI(hira=numerous,great,widespread;ku=silent,wearied,exhausted;tahi=sweep,trim,smooth)、「広く・退屈するほど・滑らかな(平たい)」(「タヒ」のH音が脱落して「タイ」となった)

  「ペ・タ・コイ」、PE-TA-KOI(pe=crushed,mashed,soft;ta=dash,beat,lay;koi=sharp,almost,good)、「突起を・完全に・(打撃を加えた)潰した(平たい)」(「ペ」が「ベ」となった)

  「ロツ・ク」、ROTU-KU(roku=put to sleep by means of a spell,render the sea calm by a spell;ku=silent,wearied,exhausted)、「静かな・ペタ凪の海のような(平たい)」(「ロツ」が「ロッ」となった)

  「ナ・ルヒ」、NA-RUHI(na=by,belonging to;ruhi=weak,languid,exhausted)、「ぐったりとしている・ような(平たい)」(「ルヒ」のH音が脱落して「ルイ」となった)

  「ヒラ・ペ・タエ・イア」、HIRA-PE-TAE-IA(hira=numerous,great,widespread;pe=crushed,mashed,soft;tae=arrive,reach,extend to;ia=indeed)、「実に・広く・(突起を)潰して・広がっている(平たい)」(「ペ」が「ベッ」と、「タエ」のAE音がE音に変化して「テ」と、「イア」が「ャー」なった)

  「ヘア・ラペア・タヒ」、HEA-RAPEA-TAHI(hea=multitude,majority;rapea=indeed;tahi=sweep,trim,smooth)、「殆どが・実に・滑らかな(平たい)」(「ヘア」の語尾のA音が脱落して「ヘ」と、「ラペア」の語尾のA音が脱落して「ラベッ」と、「タヒ」のH音が脱落して「タイ」となった)

  「ヒラ・ペ・タ・カ」、HIRA-PE-TA-KA(hira=numerous,great,widespread;pe=crushed,mashed,soft;ta=dash,beat,lay;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「広く・(突起を)潰して・ある・ね(平たい)」(「ペ」が「ベッ」となった)

  「ペ・チ・アツ・テイ・チ・タウ・ツ」、PE-TI-ATU-TEI-TI-TAU-TU(pe=crushed,mashed,soft;ti=throw,cast;atu=to indicate a direction or motion towards;tei,teitei=high,top;tau=come to rest,be suitable,be comely,befit;tu=stand,settle)、「(突起を)ずーと・潰して・あって・高い所も・ほどほどに・置かれて・ある(平たい)」(「チ・アツ」が「チャーッ」と、「テイ」が「テ」と、「チ」が「シ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「ヒラ・タ・カ」、HIRA-TA-KA(hira=numerous,great,widespread;ta=dash,beat,lay;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「広く・(突起に)打撃を加えてある・ね(平たい)」

  「ピヒ・タラ・カ」、PIHI-TARA-KA(pihi=cut,split;tara=point,peak of mountain,wane of the moon;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「突起を・切り落としてある・ね(平たい)」(「ピヒ」のH音が脱落して「ビッ」となった)

  「ヒラ・タヒ・ツ・タヒ」、HIRA-TAHI-TU-TAHI(hira=numerous,great,widespread;tahi=sweep,trim,smooth;tu=stand,settle)、「広く・滑らかで・ずっと・滑らかな(平たい)」(「タヒ」のH音が脱落し、そのAI音がE音に変化して「テ」から「テー」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「フイ・ラハ」、HUI-RAHA(hui=take as plunder,capture;raha=open,extended)、「広く・(洪水によって争奪された)浸食されている(平たい)」(「ラハ」のH音が脱落して「ラー」となった)

  「ヘア・ラハ・タヒ」、HEA-RAHA-TAHI(hea=multitude,majority;raha=open,extended;tahi=sweep,trim,smooth)、「殆どが・広く・滑らかな(平たい)」(「ヘア」の語尾のA音が脱落して「ヘ」と、「ラハ」のH音が脱落して「ラ」と、「タヒ」のH音が脱落して「タイ」となった)

の転訛と解します。

179ひるめし(昼飯)・チューハン・ヒルメス・オヒル・チーハン・ヒル・ヒルゴハン・ヒルジャ・ヒラガリ・ヒリメシ・ヒンメシ・ッアサバン・アサバン・オイハン

 「ひるめし」の方言には、北海道、青森などの「チューハン」、宮城の「ヒルメス」、山形、栃木などの「オヒル」、福島の「チーハン」、神奈川、奈良などの「ヒル」、富山、三重などの「ヒルゴハン」、静岡の「ヒルジャ」、熊本の「ヒラガリ」、大分の「ヒリメシ」、宮崎の「ヒンメシ」、沖縄那覇の「ッアサバン」、沖縄首里の「アサバン」があります。

 上記のほか、秋田の「オイハン」があります。

 この「ひるめし」、「チューハン」、「ヒルメス」、「オヒル」、「チーハン」、「ヒル」、「ヒルゴハン」、「ヒルジャ」、「ヒラガリ」、「ヒリメシ」、「ヒンメシ」、「ッアサバン」、「アサバン」、「オイハン」は、

  「ヒヒ・ル・マエ・エチ」、HIHI-RU-MAE-ETI(hihi=ray of the sun;ru=shake,agitate,scatter;mae=languid,listless,withered;eti=shrink,recoil)、「太陽の光が・強い時間(昼)の・水が(後退して)すっかり無くなって・軟らかくなった(炊きあがった。飯)(昼飯)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「マエ」のAE音がE音に変化し、そのE音が「エチ」の語頭のE音と連結して「メチ」から「メシ」となった)

  「チウ・ハ(ン)ギ」、TIU=HANGI(tiu=soar,wander,swing;hangi=earth oven,contents of the oven)、「まちまちの(時間に摂る)・(蒸し焼き竈で調理した)食物(昼飯)」(「チウ」が「チュー」と、「ハ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「ハニ」から「ハン」となった)

  「ヒヒ・ル・マエ・ツ」、HIHI-RU-MAE-TU(hihi=ray of the sun;ru=shake,agitate,scatter;mae=languid,listless,withered;tu=stand,settle)、「太陽の光が・強い時間(昼)の・軟らかく・なった(炊きあがった。飯)(昼飯)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「オ・ヒヒ・ル」、O-HIHI-RU(o=the...of;hihi=ray of the sun;ru=shake,agitate,scatter)、「太陽の光が・強い時間(昼)に・摂る例のもの(飯)(昼飯)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」となった)

  「チヒ・ハ(ン)ギ」、TIHI-HANGI(tihi=summit,top,lie in a heap;hangi=earth oven,contents of the oven)、「(太陽が)高い(時間の)・(蒸し焼き竈で調理した)食物(昼飯)」(「チヒ」のH音が脱落して「チー」と、「ハ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「ハニ」から「ハン」となった)

  「ヒヒ・ル」、HIHI-RU(hihi=ray of the sun;ru=shake,agitate,scatter)、「太陽の光が・強い時間(の昼に摂る飯)(昼飯)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」となった)

  「ヒヒ・ル・(ン)ゴ・ハ(ン)ギ」、HIHI-RU-NGO-HANGI(hihi=ray of the sun;ru=shake,agitate,scatter;ngo=cry,grunt;hangi=earth oven,contents of the oven)、「太陽の光が・強い時間(の昼に摂る)・ご(尊敬の嘆声を上げる)・(蒸し焼き竈で調理した)食物(昼飯)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「ハ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「ハニ」から「ハン」となった)

  「ヒヒ・ル・チア」、HIHI-RU-TIA(hihi=ray of the sun;ru=shake,agitate,scatter;tia=stck in pegs etc.)、「太陽の光が・強い時間(の昼)に・(棒を使う)箸を使う食事(昼飯)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「チア」が「チャ」から「ジャ」となった)

  「ヒヒ・ラ(ン)ガ・リ」、HIHI-RANGA-RI(hihi=ray of the sun;ranga=raise,pull up;ri=screen,protect,bind)、「太陽の光が・高く昇るのに・結びついているもの(昼に摂る飯)(昼飯)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「ラ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ラガ」となった)

  「ヒヒ・リ・マエ・エチ」、HIHI-RI-MAE-ETI(hihi=ray of the sun;ri=screen,protect,bind;mae=languid,listless,withered;eti=shrink,recoil)、「太陽の光(が高く昇るの)に・結びついている・水が(後退して)すっかり無くなって・軟らかくなった(炊きあがった。飯)(昼飯)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「マエ」のAE音がE音に変化し、そのE音が「エチ」の語頭のE音と連結して「メチ」から「メシ」となった)

  「ヒヒ・ナ・マエ・エチ」、HIHI-NA-MAE-ETI(hihi=ray of the sun;na=by,belonging to;mae=languid,listless,withered;eti=shrink,recoil)、「太陽の光(が高く昇るの)に・伴って供される・水が(後退して)すっかり無くなって・軟らかくなった(炊きあがった。飯)(昼飯)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「ナ」が「ン」と、「マエ」のAE音がE音に変化し、そのE音が「エチ」の語頭のE音と連結して「メチ」から「メシ」となった)

  「ツア・タ・パ(ン)ゴ」、TUA-TA-PANGO(tua=back,the time past,the future;ta=dash,beat,lay;pango=black,of dark colour)、「(暗くなる)晩(飯)の・前に・供される(飯)(昼飯)」(「タ」が「サ」と、「パ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「パノ」から「バン」となった)

  「アタ・パ(ン)ゴ」、ATA-PANGO(ata=early morning as opposed to evening(ata po=before dawn);pango=black,of dark colour)、「(暗くなる)晩の・夕方の前(に供される飯)(昼飯)」(「タ」が「サ」と、「パ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「パノ」から「バン」となった)

  「オイ・ハ(ン)ギ」、OI-HANGI(oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration;hangi=earth oven,contents of the oven)、「(一日の仕事が)完成した(時。昼の)・(蒸し焼き竈で調理した)食物(昼飯)」(「ハ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「ハニ」から「ハン」となった)

の転訛と解します。

「フ」

180ふくろう(梟)・フグロ・オッホ・モホ・ホーホードリ・ホロスケ・トースクボー・フクロコ・ボーズッコ・ブロチョ・フルツク・ヨズク・フルトゥク・コーゾ・コーズドコ・コーズドリ・コズ・トッコ・マヤージグク・ミミズク・ノロスケ

 「ふくろう」の方言には、北海道、山形の「フグロ」、青森、東京などの「フクロー」(「ふくろう」と同語源)、岩手の「オッホ」、宮城、福島の「フグロー」(「フグロ」と同語源)、秋田の「モホ」、茨城、長崎の「ホーホードリ」、栃木の「ホロスケ」、群馬の「トースクボー」、埼玉、千葉などの「フクロ」(「ふくろう」と同語源)、福井の「フクロコ」、山梨の「ボーズッコ」、静岡の「ブロチョ」、奈良、和歌山などの「フルツク」、島根の「ヨズク」、高知の「フルトゥク」、福岡の「コーゾ」、佐賀の「コーズドコ」、熊本の「コーズドリ」、宮崎の「コズ」、鹿児島の「トッコ」、沖縄那覇の「マヤージグク」、沖縄首里の「マヤーヂクク」(「マヤージグク」と同語源)があります。

 上記のほか、青森の「ミミズク」、秋田の「ノロスケ」などがあります。

 この「ふくろう」、「フグロ」、「オッホ」、「モホ」、「ホーホードリ」、「ホロスケ」、「トースクボー」、「フクロコ」、「ボーズッコ」、「ブロチョ」、「フルツク」、「ヨズク」、「フルトゥク」、「コーゾ」、「コーズドコ」、「コーズドリ」、「コズ」、「トッコ」、「マヤージグク」、「ミミズク」、「ノロスケ」は、

  「フ・ク・ロウ」、HU-KU-ROU(hu=silent,at rest;ku=silent,wearied,exhausted;rou=club-footed)、「(昼間は)疲れたように・休んでいる・曲がった爪の(鳥)(梟)」(また「ロウ」が「ロ」または「ロー」となった)

  「フ・(ン)グ・ロ」、HU-NGU-RO(hu=silent,at rest;ngu=silent,greedy;ro=argosachus horridus and other stick-insects,praying mantis)、「(昼間は)休んでいる・(ナナフシやカマキリなどの)昆虫類を・貪欲に食べる(鳥)(梟)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「ロ」が「ロー」となった)

  「オホ」、OHO(start from fear or surprise etc.,spring up,wake up)、「(夜になると)急に起きて飛び回る(鳥)(梟)」(「オホ」が「オッホ」となった)

  「モホ」、MOHO(a large and flightless bird closely related to the pukeko)、「大きな(昼は)飛ばない(鳥)(梟)」

  「ホウホウ・ト・オリ」、HOUHOU-TO-ORI(houhou=dig up,peck holes in drill,chop in pieces,cold,disagreeable,unpleasant;to=drag,open or shut a door or a window;ori=cause to wave to and fro,sway,move about)、「(獲物を)引き裂いて食べる(または気持ちの悪い)・あちこち・飛び回る(鳥)(梟)」(「ホウホウ」が「ホーホー」と、「ト」のO音と「オリ」の語頭のO音が連結して「トリ」から「ドリ」となった)

  「ホロ・ツケ」、HORO-TUKE(horo=run,flee,quick;tuke=elbow,nudge,rough)、「俊敏で・勇猛な(鳥)(梟)」(「ツケ」が「スケ」となった)

  「トフ・ツク・ポウ」、TOHU-TUKU-POU(tohu=mark,point out,show,lay by;tuku=let go,allow,settle down;pou=pole,stick in,fix,render immovable by occult means)、「(木に)止まって・(呪文にかけられたように)金縛りになっている・ような姿を見せる(鳥)(梟)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「トー」と、「ツク」が「スク」と、「ポウ」が「ボー」となった)

  「フ・ク・ロウ・コ」、HU-KU-ROU-KO(hu=silent,at rest;ku=silent,wearied,exhausted;rou=club-footed;ko=addressing to girl and males)、「(昼間は)疲れたように・休んでいる・曲がった爪を持つ・奴(鳥)(梟)」(「ロウ」が「ロ」となった)

  「ポウ・ツツ・コ」、POU-TUTU-KO(pou=pole,stick in,fix,render immovable by occult means;tutu=tutu=stand erect,be prominent;ko=addressing to girl and males)、「(呪文にかけられたように)金縛りになって・立っている・奴(鳥)(梟)」(「ポウ」が「ボー」と、「ツツ」が「ズッ」となった)

  「プ・ロ・チオ」、PU-RO-TIO(pu=tribe;ro=argosachus horridus and other stick-insects,praying mantis;tio=cry,call)、「(ナナフシやカマキリなどの)昆虫類が・悲鳴を上げる・種類の(鳥)(梟)」(「プ」が「ブ」と、「チオ」が「チョ」となった)

  「フル・ツク」、HURU-TUKU(huru=contract,an incantation recited over weapon before fighting;tuku=let go,allow,settle down)、「(狩猟に出掛ける前の)豊猟を祈願する呪文を唱えているように・動かないでいる(鳥)(梟)」

  「イオ・ツク」、IO-TUKU(io=muscle,tough,hard,obstinate;tuku=let go,allow,settle down)、「じっと・動かないでいる(鳥)(梟)」(「イオ」が「ヨ」と、「ツク」が「ズク」となった)

  「フル・トフ・ク」、HURU-TOHU-KU(huru=contract,an incantation recited over weapon before fighting;tohu=mark,point out,show,lay by;ku=silent,wearied,exhausted)、「(狩猟に出掛ける前の)豊猟を祈願する呪文を唱えているように・静かな・姿を見せている(鳥)(梟)」(「トフ」のH音が脱落して「トゥ」となった)

  「カウ・タウ」、KAU-TAU(kau=alone,only;tau=come to rest,settle down)、「(昼間は)ただ・休んでいる(鳥)(梟)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」から「コー」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ゾ」となった)

  「カウ・ツ・トコ」、KAU-TU-TOKO(kau=alone,only;tu=stand,settle;toko=pole,rod)、「(昼間は)ただ・木の枝に・止まっている(鳥)(梟)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」から「コー」と、「ツ」が「ズ」と、「トコ」が「ドコ」となった)

  「カウ・ツ・ト・オリ」、KAU-TU-TO-ORI(kau=alone,only;tu=stand,settle;to=drag,open or shut a door or a window;ori=cause to wave to and fro,sway,move about)、「(昼間は)ただ・(木の枝に)止まっている・あちこち・飛び回る(鳥)(梟)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」から「コー」と、「ツ」が「ズ」と、「ト」のO音と「オリ」の語頭のO音が連結して「トリ」から「ドリ」となった)

  「カウ・ツ」、KAU-TU(kau=alone,only;tu=stand,settle)、「(昼間は)ただ・(木の枝に)止まっている(鳥)(梟)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「ツ」が「ズ」となった)

  「トコ」、TOKO(pole,rod)、「(木の枝に)棒のように不動の姿勢でいる(鳥)(ふくろう)」(「トコ」が「トッコ」となった)

  「マイア・チ・クク」、MAIA-TI-KUKU(maia=brave,bold,capable,bravery;ti=throw,cast;kuku=nip,draw together,hold the breath,fear)、「(相手を)恐怖・させるほどの・勇猛な(鳥)(梟)」(「マイア」が「マヤー」と、「チ」が「ジ」と、「クク」が「グク」となった)

  「ミミヒ・ツク」、MIMIHI-TUKU(mimihi=frequentive of mihi=sigh for,lament,greet;tuku=let go,allow,settle down)、「悲嘆に暮れているように・動かないでいる(鳥)(梟)」(「ミミヒ」のH音が脱落して「ミミ」と、「ツク」が「ズク」となった)

  「ナウ・ロア・ツケ」、NAU-ROA-TUKE(nau=come,go;roa=long,delayed;tuke=elbow,nudge,rough)、「遅れて(夜になって)・動き出す・勇猛な(鳥)(梟)」(「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」と、「ロア」のA音が脱落して「ロ」と、「ツケ」が「スケ」となった)

の転訛と解します。

181ふざける(巫山戯る)・オダツ・ジョサケル・ジャバゲル・オンダズ・フジャケル・オドゲル・ギスル・ジャジケル・ハシャグ・カスゲル・キザエル・ワニワニスル・チャケル・チョースク・チョケル・イチビル・ホタエル・ヒョーゲル・チバケル・ツバエル・アラビル・ダダケル・ソバエル・トゴユッ・ヒョーグル・トゴユル・ドークル・メアガル・ガンマリスン・ワチャクスン・ホゴル・オドケル・アバサケル・オチョケル・サイアガル・ジャレル・フザクル

 「ふざける」の方言には、北海道の「オダツ」、青森の「ジョサケル」、岩手の「ジャバゲル」、宮城の「オンダズ」、秋田の「フジャケル」、山形の「オドゲル」、福島の「ギスル」、群馬の「ジャジケル」、新潟の「ハシャグ」、石川の「カスゲル」、福井の「キザエル」、山梨の「ワニワニスル」、岐阜の「チャケル」、愛知の「チョースク」、三重、兵庫の「チョケル」、滋賀、大阪などの「イチビル」、京都の「チョーケル」(「チヨケル」と同語源)、和歌山の「ホタエル」、島根、香川などの「ヒョーゲル」、岡山の「チバケル」、広島の「ツバエル」、山口の「アラビル」、徳島の「ダダケル」、高知の「ソバエル」、佐賀の「トゴユッ」、長崎の「ヒョーグル」、熊本の「トゴユル」、大分の「ドークル」、宮崎の「メアガル」、沖縄那覇の「ガンマリスン」、沖縄首里の「ワチャクスン」があります。

 上記のほか、秋田の「ホゴル」、新潟の「オドケル」、福井の「アバサケル」、和歌山の「オチョケル」、香川の「サイアガル」、愛媛の「ジャレル」、福岡の「フザクル」、大分の「オゴル」(「ホゴル」と同語源)があのます。

 この「ふざける」、「オダツ」、「ジョサケル」、「ジャバゲル」、「オンダズ」、「フジャケル」、「オドゲル」、「ギスル」、「ジャジケル」、「ハシャグ」、「カスゲル」、「キザエル」、「ワニワニスル」、「チャケル」、「チョースク」、「チョケル」、「イチビル」、「ホタエル」、「ヒョーゲル」、「チバケル」、「ツバエル」、「アラビル」、「ダダケル」、「ソバエル」、「トゴユッ」、「ヒョーグル」、「トゴユル」、「ドークル」、「メアガル」、「ガンマリスン」、「ワチャクスン」、「ホゴル」、「オドケル」、「アバサケル」、「オチョケル」、「サイアガル」、「ジャレル」、「フザクル」は、

  「フ・タカイ・ル」、HU-TAKAI-RU(hu=mud,swamp;takai=wrap up,wrap round,covering;ru=shake,agitate,scatter)、「泥を・(人の顔などに)塗りたく・る(巫山戯る)」(「タカイ」のAI音がE音に変化して「タケ」から「ザケ」となった)

  「オタ・ツ」、OTA-TU(ota=unripe,uncooked;tu=fight with,energetic)、「子供じみたことを・懸命に行う(巫山戯る)」(「オタ」が「オダ」となった)

  「チオ・フ・タカイ・ル」、TIO-HU-TAKAI-RU(tio=cry,call;hu=mud,swamp;takai=wrap up,wrap round,covering;ru=shake,agitate,scatter)、「歓声を上げて・泥を・(人の顔などに)塗りたく・る(巫山戯る)」(「チオ・フ」のH音が脱落して「チオウ」から「チョ」、「ジョ」と、「タカイ」のAI音がE音に変化して「タケ」から「ザケ」となった)

  「チア・パ(ン)ゲ・ル」、TIA-PANGE-RU(tia=stick in,adorn by sticking in feathers;pange=tinder,touchwood;ru=shake,agitate,scatter)、「火口(ほくち)を・羽根飾りにして(入れて)・火をつける(巫山戯る)」(「チア」が「チャ」から「ジャ」と、「パ(ン)ゲ」のNG音がG音に変化して「パゲ」から「バゲ」となった)

  「アウ(ン)ガ・タツ」、AUNGA-TATU(aunga=not including;tatu=reach the bottom,be at ease,consent)、「(中が空っぽの)落とし穴に・落とす(巫山戯る)」(「アウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「オナ」から「オン」と、「タツ」が「ダズ」となった)

  「フチ・アケ・ル」、HUTI-AKE-RU(huti=hoist,pull out of the ground;ake=indicating immediate continuation in time,forthwith,from below,upwards;ru=shake,agitate,scatter)、「(人を)上に・持ち上げ・る(巫山戯る)」(「フチ・アケ」が「フチャケ」から「フジャケ」となった)

  「アウト・(ン)ゲル(ン)ゲル」、AUTO-NGERUNGERU(auto=trailng behind,slow,drag out,protract;ngerungeru=smooth,soft,sleek)、「調子のよい(話を)・長々と続ける(巫山戯る)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」から「オド」と、「(ン)ゲル(ン)ゲル」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ゲル」となった)

  「(ン)ギア・ツル」、NGIA-TURU(ngia=seem,appear to be;turu=fly a kite)、「凧が泳ぐ・ように(取り止めなく)行動する(巫山戯る)」(「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音がだつらくして「ギ」と、「ツル」が「スル」となった)

  「チア・チカイ・ル」、TIA-TIKAI-RU(tia=stick in,adorn by sticking in feathers;tikai=insult,domineer over;ru=shake,agitate,scatter)、「羽根飾りを着けて・威張って見せ・る(巫山戯る)」(「チア」が「チャ」から「ジャ」と、「チカイ」のAI音がE音に変化して「チケ」から「ジケ」となった)

  「ハ・チア・(ン)グ」、HA-TIA-NGU(ha=breath,sound,hesitate in speaking,what!;tia=stick in,adorn by sticking in feathers;ngu=moan,groan,silent)、「羽根飾りを着けて・ためらいながら・嘆く(巫山戯る)」(「チア」が「チャ」から「シャ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「カツア・(ン)ゲル(ン)ゲル」、KATUA-NGERUNGERU(katua=full-grown,adult;ngerungeru=smooth,soft,sleek)、「大人の・調子のよい(話をする)(巫山戯る)」(「カツア」の語尾のA音が脱落て「カツ」から「カス」と、「(ン)ゲル(ン)ゲル」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ゲル」となった)

  「キタ・ヱル」、KITA-WHERU(kita=chitp,sing,stridulate as the cicada;wheru=inactive,slow,ill at ease,mope)、「(ことさらに)元気なく・歌を歌う(巫山戯る)」(「キタ」が「キサ」から「キザ」と、「ヱル」のWH音が脱落して「エル」となった)

  「ワニワニ・ツル」、WANIWANI-TURU(waniwani=gliding,spiteful(wani=scrape,skim over,defame);turu=fly a kite)、「凧が泳ぐように・滑る(取り止めなく行動する)(巫山戯る)」(「ツル」が「スル」となった)

  「チア・ケ・ル」、TIA-KE-RU(tia=stick in,adorn by sticking in feathers;ke=different,strange,in a different character or appearance;ru=shake,agitate,scatter)、「羽根飾りを着けて・変わった格好をして見せ・る(巫山戯る)」(「チア」が「チャ」となった)

  「チオ・ツク」、TIO-TUKU(tio=cry,call;tuku=let go,leave,evade a blow etc.,present)、「(質問や追求を)はぐらかすために・大声を上げる(巫山戯る)」(「チオ」が「チョー」と、「ツク」が「スク」となった)

  「チオ・ケ・ル」、TIO-KE-RU(tio=cry,call;ke=different,strange,in a different character or appearance;ru=shake,agitate,scatter)、「変わった・叫び声を上げ・る(巫山戯る)」(「チオ」が「チョ」または「チョー」となった)

  「イ・チピ・ル」、I-TIPI-RU(i=past tense,beside,from,with,by,at;tipi=glide,affect by incantations,go quickly or smoothly;ru=shake,agitate,scatter)、「魔法にかかった・ように・行動する(巫山戯る)」(「チピ」が「チビ」となった)

  「ホタ・ヱル」、HOTA-WHERU(hota=press on;wheru=inactive,slow,ill at ease,mope)、「(ことさらに)強制されたように・ゆっくりと行動する(巫山戯る)」(「ヱル」のWH音が脱落して「エル」となった)

  「ヒオイ・(ン)ゲル(ン)ゲル」、HIOI-NGERUNGERU(hioi=thin,lean;ngerungeru=smooth,soft,sleek)、「調子のよい(話を)・簡潔に話す(巫山戯る)」(「ヒオイ」の語尾のI音が脱落して「ヒオ」から「ヒョー」と、「(ン)ゲル(ン)ゲル」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ゲル」となった)

  「チパ・ケ・ル」、TIPA-KE-RU(tipa=turn aside,escape,ambush(titipa=false);ke=different,strange,in a different character or appearance;ru=shake,agitate,scatter)、「とんでもない・口から出任せの話を・する(巫山戯る)」(「チパ」が「チバ」となった)

  「ツパ・ヱル」、TUPA-WHERU(tupa=dried up,rough,barren,flat;wheru=inactive,slow,ill at ease,mope)、「ぞんざいに・ゆっくりと行動する(巫山戯る)」(「ツパ」が「ツバ」と、「ヱル」のWH音が脱落して「エル」となった)

  「アラ・ピヒ・ル」、ARA-PIHI-RU(ara=way,path;pihi=spring up,begin to grow;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・道を・(跳ねる)駆けまわる(巫山戯る)」(「ピヒ」のH音が脱落して「ピ」となった)

  「タタ・ケ・ル」、TATA-KE-RU(tata=near,suddenly;ke=different,strange,in a different character or appearance;ru=shake,agitate,scatter)、「突然・変わった格好をして見せ・る(巫山戯る)」(「タタ」が「ダダ」となった)

  「トパ・ヱル」、TOPA-WHERU(tOpa=fly,soar,swoop;wheru=inactive,slow,ill at ease,mope)、「ゆっくりと・飛ぶ真似をする(巫山戯る)」(「トパ」が「ソバ」と、「ヱル」のWH音が脱落して「エル」となった)

  「ト・(ン)ゴイ・ウ」、TO-NGOI-U(to=the...of,drag,haul;ngoi=creep,crawl;u=be firm,be fixed,reach its limit)、「例の・腹這いで・歩き通す(巫山戯る)」(「(ン)ゴイ」のNG音がG音に変化して「ゴイ」となり、「ゴイ・ウ」が「ゴユッ」となった)

  「ヒオイ・(ン)グル」、HIOI-NGURU(hioi=thin,lean;nguru=utter a suppressed groan,sigh,grunt,murmur,rumble)、「低い重々しい声で・簡潔に話す(巫山戯る)」(「ヒオイ」の語尾のI音が脱落して「ヒオ」から「ヒョー」と、「(ン)グル」のNG音がG音に変化して「グル」となった)

  「ト・(ン)ゴイ・ウ・ル」、TO-NGOI-U-RU(to=the...of,drag,haul;ngoi=creep,crawl;u=be firm,be fixed,reach its limit;ru=shake,agitate,scatter)、「例の・腹這いで・歩き通す・格好をする(巫山戯る)」(「(ン)ゴイ」のNG音がG音に変化して「ゴイ」となり、「ゴイ・ウ」が「ゴユ」となった)

  「トフ・クル」、TOHU-KURU(tohu=mark,point out,show,lay by;kuru=strike with the fist,weary)、「拳骨で殴る・(見せる)真似をする(巫山戯る)」または「疲れて動けない・(見せる)真似をする(巫山戯る)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドー」となった)

  「メ・ア(ン)ガ・ル」、ME-ANGA-RU(me=as if,as it were;anga=driving force,thing driven,etc.;ru=shake,agitate,scatter)、「追いかけ回す・ような・恰好をする(巫山戯る)」(「ア(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「アガ」となった)

  「(ン)ガ(ン)ガ・マリ・ツヌ」、NGANGA-MARI-TUNU(nganga=breath heavily or with difficulty;mari=fortunate,lucky,of good omen;tunu=inspire with fear)、「しゃがれ声で・幸運が訪れると・霊感のお告げがあったと告げる(巫山戯る)」(「(ン)ガ(ン)ガ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ガナ」から「ガン」と、「ツヌ」が「スン」となった)

  「ワチ・アク・ツヌ」、WHATI-AKU-TUNU(whati=be broken off short,turn and go away;aku=delay,scrape out,cleanse;tunu=inspire with fear)、「とぎれとぎれの声で・ゆっくりと・霊感のお告げがあったと告げる(巫山戯る)」(「ワチ・アク」が「ワチャク」と、「ツヌ」が「スン」となった)

  「ホ(ン)ゴイ・ル」、HONGOI-RU(hongoi=crouch,remain inactive in;ru=shake,agitate,scatter)、「ぺこぺこ・する(巫山戯る)」(「ホ(ン)ゴイ」のNG音がG音に変化し、語尾のI音が脱落して「ホゴ」となった。また「ホゴ」のH音が脱落して「オゴ」となった)

  「アウト・ケ・ル」、AUTO-KE-RU(auto=trailng behind,slow,drag out,protract;ke=different,strange,in a different character or appearance;ru=shake,agitate,scatter)、「長々と・変わった・恰好をする(巫山戯る)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」から「オド」となった)

  「アパ・タカイ・ル」、APA-TAKAI-RU(apa=spirit of one dead visiting or inspiring a medium;takai=wrap up,wrap round,covering;ru=shake,agitate,scatter)、「死者の霊が・降臨したように・振る舞う(巫山戯る)」(「アパ」が「アバ」と、「タカイ」のAI音がE音に変化して「タケ」から「サケ」となった)

  「オ・チオ・ケ・ル」、O-TIO-KE-RU(o=the...of;tio=cry,call;ke=different,strange,in a different character or appearance;ru=shake,agitate,scatter)、「例の・変わった・叫び声を上げ・る(巫山戯る)」(「チオ」が「チョ」となった)

  「タイ・ア(ン)ガ・ル」、TAI-ANGA-RU(tai=wave,anger,rage,violent;anga=driving force,thing driven,etc.;ru=shake,agitate,scatter)、「荒々しく・追いかけ回す・恰好をする(巫山戯る)」(「タイ」が「サイ」と、「ア(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「アガ」となった)

  「チア・レイ・ル」、TIA-REI-RU(tia=stick in,adorn by sticking in feathers;rei=leap,rush,run;ru=shake,agitate,scatter)、「・羽根飾りを着けて・走り回・る(巫山戯る)」(「チア」が「チャ」から「ジャ」と、「レイ」が「レ」となった)

  「フ・タ・クル」、HU-TA-KURU(hu=mud,swamp;ta=dash,beat,lay;kuru=strike with the fist,weary)、「泥を・ぶつけられて・動けない(真似をする)(巫山戯る)」(「タ」が「ザ」となった)

の転訛と解します。

182ぶしょう(無精)・カラポネヤミ・セッコギ・カンバネヤミ・ブショタガレ・スンピタレ・クサシ・ブショッタガリ・モノグサ・ブショッタカリ・ノメシ・ナマクラ・ショータレ・メメッチガリ・ズクナシ・ナマカワ・オーチャク・シミタレ・ブショータレ・ブショモン・ズボラ・ドーラクナ・ヒキタレ・ノラ・フユーモン・ヒューナシ・フユージ・ヨダゴロ・フユッゴロ・フユー・ナマキタムン・カラッポヤミ・オーチャクモン・ヘッテクライ

 「ぶしょう」の方言には、北海道、茨城などの「ブショー」(「ぶしょう」と同語源)、青森の「カラポネヤミ」、岩手の「セッコギ」、宮城の「カンバネヤミ」、秋田の「ブショタガレ」、山形の「スンピタレ」(庄内方言では「ビショタレ」といいます。国語篇(その二)の48ビショナシの項を参照してください。)、福島の「クサシ」、栃木の「ブショッタガリ」、群馬の「モノグサ」、千葉の「ブショッタカリ」、新潟の「ノメシ」、富山の「ナマクラ」、福井の「ショータレ」、山梨の「メメッチガリ」、長野の「ズクナシ」、岐阜の「ナマカワ」、静岡、鳥取などの「オーチャク」、愛知の「シミタレ」、三重の「ブショータレ」、滋賀の「ブショモン」、大阪の「ズボラ」、兵庫の「ブショーッタレ」(「ブショータレ」と同語源)、奈良の「ドーラクナ」、岡山の「ヒキタレ」、広島の「ブショーモン」(「ブショモン」と同語源)、愛媛の「ノラ」、佐賀の「フユーモン」、長崎の「ヒューナシ」、熊本の「フユージ」、宮崎の「ヨダゴロ」、鹿児島の「フユッゴロ」、沖縄那覇の「フユー」、沖縄首里の「ナマキタムン」があります。

 上記のほか、秋田の「カラッポヤミ」、鳥取の「オーチャクモン」、香川の「ヘッテクライ」などがあります。

 この「ぶしょう」、「カラポネヤミ」、「セッコギ」、「カンバネヤミ」、「ブショタガレ」、「スンピタレ」、「クサシ」、「ブショッタガリ」、「モノグサ」、「ブショッタカリ」、「ノメシ」、「ナマクラ」、「ショータレ」、「メメッチガリ」、「ズクナシ」、「ナマカワ」、「オーチャク」、「シミタレ」、「ブショータレ」、「ブショモン」、「ズボラ」、「ドーラクナ」、「ヒキタレ」、「ノラ」、「フユーモン」、「ヒューナシ」、「フユージ」、「ヨダゴロ」、「フユッゴロ」、「フユー」、「ナマキタムン」、「カラッポヤミ」、「オーチャクモン」、「ヘッテクライ」は、

  「プ・チオチオ」、PU-TIOTIO(pu=tribe,bunch,heap,stack;tiotio=having sharp projections,barnacle)、「(いつも乗る舟に)フジツボの類を・うず高く付着したままにしている(無精)」(「プ」が「ブ」と、「チオチオ」の反復語尾が脱落して「チオ」から「ショ」、「ショウ」、「ショー」となった)

  「カラハ・ポネ・イア・ミヒ」、KARAHA-PONE-IA-MIHI(karaha=wide and shallow(of a vessl);pone=in difficulties,troubled;ia=indeed;mihi=sigh for,express discomfort,be expressed of affection etc.)、「実に・困りものの・厄介な(フジツボの類が付着している)・川舟(の持ち主)(無精)」(「カラハ」のH音が脱落して「カラ」と、「イア」が「ヤ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

  「テコ・(ン)ギア」、TEKO-NGIA(teko=rock;ngia=seem,appear to be)、「岩・のように見える(フジツボの類で覆われた舟。その持ち主)(無精)」(「テコ」が「セッコ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となった)

  「カヌ・パネ・イア・ミヒ」、KANU-PANE-IA-MIHI(kanu=ragged,torndistracted;pane=head;ia=indeed;mihi=sigh for,express discomfort,be expressed of affection etc.)、「実に・困りものの・ぼうほうの(手入れをしない)・頭(の人)(無精)」(「カヌ」が「カン」と、「パネ」が「バネ」と、「イア」が「ヤ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

  「プ・チオチオ・タ・(ン)ガレ」、PU-TIOTIO-TA-NGARE(pu=tribe,,bunch,heap,stack;tiotio=having sharp projections,barnacle;ta=dash,beat,lay;ngare=family)、「(いつも乗る舟に)フジツボの類を・うず高く・付着したままにしている・家族(に属する人々)(無精)」(「プ」が「ブ」と、「チオチオ」の反復語尾が脱落して「チオ」から「ショ」と、「(ン)ガレ」のNG音がG音に変化して「ガレ」となった)

  「ツ(ン)ガ・ピ・タレ」、TUNGA-PI-TARE(tunga=circumstance or time etc. of standing;pi==slight,take no notice of;tare=hang,be drawn towards(taretare=ragged,tattered))、「ぼろを(着ていても)・気にしない・さま(無精)」(「ツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツナ」から「スン」と、「ピ」が「ビ」となった)

  「クタイタイ・チ」、KUTAITAI-TI(kutaitai=of a disagrrable taste;ti=throw,cast)、「(身体が不潔で)臭いにおいを・放っている(無精)」(「クタイタイ」の反復語尾が脱落し、さらに語尾のI音が脱落して「クタ」から「クサ」と、「チ」が「シ」となった)

  「プ・チオチオ・タ・(ン)ガリ」、PU-TIOTIO-TA-NGARI(pu=tribe,,bunch,heap,stack;tiotio=having sharp projections,barnacle;ta=dash,beat,lay;ngari=annoyance,disturbance,power)、「(いつも乗る舟に)フジツボの類を・うず高く付着したままにして・迷惑を・かけている(無精)」(「プ」が「ブ」と、「チオチオ」の反復語尾が脱落して「チオ」から「ショッ」と、「(ン)ガリ」のNG音がG音に変化して「ガリ」となった)

  「モノ・クタイタイ」、MONO-KUTAITAI(mono=plug,caulk,disable by means of incantations(monomono=odorous);kutaitai=of a disagrrable taste)、「鼻をつまむほど・(身体が不潔で)臭いにおいがする(無精)」(「クタイタイ」の反復語尾が脱落し、さらに語尾のI音が脱落して「クタ」から「グサ」となった)

  「プ・チオチオ・タカリリ」、PU-TIOTIO-TAKARIRI(pu=tribe,,bunch,heap,stack;tiotio=having sharp projections,barnacle;takariri,whakatakariri=rousing indignation,vexatious,angry)、「(いつも乗る舟に)フジツボの類を・うず高く付着したままにして・迷惑をかける(無精)」(「プ」が「ブ」と、「チオチオ」の反復語尾が脱落して「チオ」から「ショッ」と、「タカリリ」の反復語尾が脱落して「タカリ」となった)

  「ナウ・マエ・チ」、NAU-MAE-TI(nau=come,go;mae=languid,withered,struck with astonishment,paralysed with fear etc.;ti=throw,cast,overcome)、「(人を)吃驚させて・打ちのめすほどのもの(悪臭)が・やってくる(無精)」(「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」と、「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」と、「チ」が「シ」となった)

  「ナムアムア・ク・ラ」、NAMUAMUA-KU-RA(namuamua=flavour imparted to food by something with which it has been in contact;ku=silent,wearied,exhausted;ra=there,yonder)、「圧倒される・移り香(悪臭)が・広がる(無精)」(「ナムアムア」の反復語尾が脱落して「ナムア」から「ナマ」となった)

  「チオチオ・タ・レア」、TIOTIO-TA-REA(tiotio=having sharp projections,barnacle;ta=dash,beat,lay;rea=grow,numerous)、「(いつも乗る舟に)フジツボの類を・たくさん・付着させている(無精)」(「チオチオ」の反復語尾が脱落して「チオ」から「ショー」と、「レア」の語尾のA音が脱落して「レ」となった)

  「メメ・チ・(ン)ガリ」、MEME-TI-NGARI(meme=muttering,murmuring;ti=throw,casy;ngari=annoyance,disturbance,power)、「迷惑だと・ぶつぶつ・文句を言う(無精)」(「メメ」が「メメッ」と、「(ン)ガリ」のNG音がG音に変化して「ガリ」となった)

  「ツ・ク・ナチ」、TU-KU-NATI(tu=stand,settle;ku=silent,wearied,exhausted;nati=pinch or contract)、「静かに・座っていることに・執着している人(無精)」(「ツ」が「ズ」と、「ナチ」が「ナシ」となった)

  「ナ・マカ・ウア」、NA-MAKA-UA(na=by,belonging to;maka=active,vigorous;ua=used in expostulation,don't)、「仕事をするなと・命令された・ような人(無精)」(「ウア」が「ワ」となった)

  「オ・チア・ク」、O-TIA-KU(o=the...of;tia=stick in,drive in pegs,etc.;ku,kuku=firm,stiff)、「例の・堅く・杭に繋がれたような人(無精)」(「オ」が「オッ」または「オー」と、「チア」が「チャ」となった)

  「チ・ミヒ・タレ」、TI-MIHI-TARE(ti=throw,casy;mihi=sigh for,express discomfort,be expressed of affection etc.;tare=hang,be drawn towards(taretare=ragged,tattered))、「ぼろを着ていて・(人に)不快感を・与える(無精)」(「チ」が「シ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」から「ミッ」となった)

  「プ・チオチオ・タレ」、PU-TIOTIO-TARE(pu=tribe,bunch,heap,stack;tiotio=having sharp projections,barnacle;tare=hang,be drawn towards(taretare=ragged,tattered))、「(いつも乗る舟に)フジツボの類を・うず高く付着させた・ままにしている(無精)」(「プ」が「ブ」と、「チオチオ」の反復語尾が脱落して「チオ」から「ショ」、「ショー」または「ショーッ」となった)

  「プ・チオチオ・モナ」、PU-TIOTIO-MONA(pu=tribe,bunch,heap,stack;tiotio=having sharp projections,barnacle;mona=for his,forher)、「(いつも乗る舟に)フジツボの類を・うず高く付着させている・彼(の男女)(無精)」(「プ」が「ブ」と、「チオチオ」の反復語尾が脱落して「チオ」から「ショ」、「ショー」と、「モナ」が「モン」となった)

  「ツ・ポラ」、TU-POLA(tu=stand,settle;(Hawaii)pola=platform of high seat between the canoes of a double canoe)、「ダブルカヌーの特等席に・乗っているような(無精)」(「ツ」が「ズ」と、「ポラ」が「ボラ」となった)

  「トウ・ラク・ナ」、TOU-RAKU-NA(tou=thy,eliptically;raku=scratch,scrape;na=by,belonging to,satisfied)、「ごく簡略に・さっと撫でる程度で・満足する(無精)」(「トウ」が「ドー」となった)

  「ヒキ・タレ」、HIKI-TARE(hiki=raise,convey,move;tare=hang,be drawn towards(taretare=ragged,tattered))、「ぼろを着て・動く(無精)」

  「ノホ・オラ」、NOHO-ORA(noho=sit,settle;ora=alive,well in health,satisfied)、「のうのうと(満足して)・安住している(無精)」(「ノホ」のH音が脱落して「ノ」となり、その語尾のO音と「オラ」の語頭のO音が連結して「ノラ」となった)

  「フ・イ・ウ・モナ」、HU-I-U-MONA(hu=silent,quiet,at rest;i=past tense,beside;u=be firm,be fixed,reach its limit;mona=for his,for her)、「ずっと・休息を・取っている・彼の(男女)(無精)」(「イ・ウ」が「ユ」から「ユー」と、「モナ」が「モン」となった)

  「ヒ・ウ・ナチ」、HI-U-NATI(hi=expressing contempt;u=be firm,be fixed,reach its limit;nati=pinch or contract)、「ずっと・軽蔑されて・(その評判が)離れない(無精)」(「ヒ・ウ」が「ヒュウ」から「ヒュー」と、「ナチ」が「ナシ」となった)

  「フ・イ・ウチ」、HU-I-UTI(hu=silent,quiet,at rest;i=past tense,beside;uti=annoy,worry)、「休息が・(人の)迷惑に・なっている(無精)」(「イ・ウチ」が「ユチ」から「ユージ」となった)

  「イオ・タ・(ン)ゴロ」、IO-TA-NGORO(io=tough,hard,obstinate;ta=dash,beat,lay;ngoro,ngongoro=snore,utter exclamation of surprise or admiration)、「(しつこく)ずっと・軽蔑・されている(無精)」(「イオ」が「ヨ」と、「タ」が「ダ」と、「(ン)ゴロ」のNG音がG音に変化して「ゴロ」となった)

  「フ・イ・ウ・(ン)ゴロ」、HU-I-U-NGORO(hu=silent,quiet,at rest;i=past tense,beside;u=be firm,be fixed,reach its limit;ngoro,ngongoro=snore,utter exclamation of surprise or admiration)、「(仕事をせずに)休んで・ばかりで・軽蔑(の評価)が・定まった(無精)」(「イ・ウ」が「ユ」から「ユッ」と、「(ン)ゴロ」のNG音がG音に変化して「ゴロ」となった)

  「フ・イ・ウ」、HU-I-U(hu=silent,quiet,at rest;i=past tense,beside;u=be firm,be fixed,reach its limit)、「(仕事をせずに)休んで・ばかりいる(無精)」(「イ・ウ」が「ユ」から「ユー」となった)

  「ナ・マキ・タ・ムナ」、NA-MAKI-TA-MUNA(na=by,belonging to;maki=invalid,sick person;ta=dash,beat,lay;muna=tell or speak of privately,gossip,secret)、「まるで・病人のようだと・噂を・される(無精)」(「ムナ」が「ムン」となった)

  「カラ・パウ・イア・ミヒ」、KARA-PAU-IA-MIHI(kara=old man;pau=consumed,exhausted;ia=indeed;mihi=sigh for,express discomfort,be expressed of affection etc.)、「実に・困りものの・消耗した・老人(無精)」(「カラ」が「カラッ」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」と、「イア」が「ヤ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

  「オ・チア・ク・モナ」、O-TIA-KU-MONA(o=the...of;tia=stick in,drive in pegs,etc.;ku,kuku=firm,stiff;mona=for his,for her)、「例の・堅く・杭に繋がれたような・彼の(男女)(無精)」(「オ」が「オッ」または「オー」と、「チア」が「チャ」と、「モナ」が「モン」となった)

  「ヘ・テ・クライ」、HE-TE-KULAI(he=different,strange;te=the;(Hawaii)kulai=to push over,knock down,to brush off as a horse switches flies with its tail)、「例の・馬が尻尾を振って蠅を追うように・変わった行動(団扇で蠅を追うなど)をする人(無精)」(「ヘ」が「ヘッ」となった)

の転訛と解します。

183ふすま(襖)・カラカミ・フシマ

 「ふすま」(これについては雑楽篇(その二)の1029襖(ふすま)の項を参照してください。)の方言には、北海道、栃木などの「カラカミ」、青森、山形の「カラガミ」(「カラカミ」と同語源)、沖縄那覇・首里の「フシマ」があります。

 この「ふすま」、「カラカミ」、「フシマ」は、

  「プツ・ウマ(ン)ガ」、PUTU-UMANGA(putu=lie in a heap,lie one upon another,swell,increase(putuputu=close together,closely woven etc.);umanga=pursuit,custom,habituated)、「(両側から)合わせて閉める・ことを通常の用法とするもの(建具。襖)」(「プツ」のP音がF音を経てH音に変化して「フツ」から「フス」となり、その語尾のU音と「ウマ(ン)ガ」の語頭のU音が連結し、語尾のNGA音が脱落して「フスマ」となつた)

  「カラハ・カハ・ミヒ」、KARAHA-KAHA-MIHI(karaha=wide and shallow(of a vessel);kaha=rope,boundary line or land etc.;mihi=sigh for,show itself,be expressed of affection etc.)、「幅広で薄く・(室の内外の)境を・隔てるもの(襖)」(「カラハ」のH音が脱落して「カラ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」または「ガ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

  「プチヒ・マ」、PUTIHI-MA(putihi=break wind;ma=by way of,by means of,to emphasis)、「風を遮る・もの(襖)」(「プチヒ」のP音がF音を経てH音に変化し、語尾のH音が脱落して「フチ」から「フシ」となった)

の転訛と解します。

184ぶつかる・ブチアタル・ゴッチンスル・ブッツク・ガッツク・カチンコスル・イカタル・イキャタル・コズム・アタル・カッチャウ・トゥキアタル・ウチアタル・ツッガタッ・ブチカイン・ブチタタュン・チッツクル・ツキアタル

 「ぶつかる」の方言には、福島の「ブッツガル」(「ぶつかる」と同語源)、茨城、埼玉などの「ブッツカル」(「ぶつかる」と同語源)、栃木、兵庫などの「ブチアタル」、群馬の「ゴッチンスル」、神奈川の「ブッツク」、石川の「ガッツク」、福井の「カチンコスル」、滋賀の「イカタル」、京都の「イキャタル」、奈良の「イッキャタル」(「イキャタル」と同語源)、島根の「コズム」、広島、山口の「アタル」、香川の「カッチャウ」、高知の「トゥキアタル」、福岡、佐賀などの「ウチアタル」、長崎の「カチアウ」(「カッチャウ」と同語源)、鹿児島の「ツッガタッ」、沖縄那覇の「ブチカイン」、沖縄首里の「ブチタタュン」があります。

 上記のほか、大分の「チッツクル」、「ツキアタル」があります。

 この「ぶつかる」、「ブチアタル」、「ゴッチンスル」、「ブッツク」、「ガッツク」、「カチンコスル」、「イカタル」、「イキャタル」、「コズム」、「アタル」、「カッチャウ」、「トゥキアタル」、「ウチアタル」、「ツッガタッ」、「ブチカイン」、「ブチタタュン」、「チッツクル」、「ツキアタル」は、

  「プ・ツカハ・ル」、PU-TUKAHA-RU(pu=blow gently;tukaha=strenuous,vigorous,headstrong,passionate;ru=shake,agitate,scatter)、「勢い良く・衝突・する(ぶつかる)」(「プ」が「ブ」または「ブッ」と、「ツカハ」のH音が脱落して「ツカ」となった)

  「プ・チ・ア・タ・ル」、PU-TI-A-TA-RU(pu=blow gently;ti=throw,cast;a=drive,urge,compel;ta=dash,beat,lay;ru=shake,agitate,scatter)、「(身体を)投げ・出して・押されたように・衝突・する(ぶつかる)」(「プ」が「ブ」となった)

  「(ン)ガウ・チ(ン)ゴ(ン)ゴ・ツル」、NGAU-TINGONGO-TURU(ngau=bite,hurt,act upon,attack;tingongo=cause to shrink,shrivel;turu=last a shrt time)、「(身体を)すくませて・一瞬のうちに・衝突する(ぶつかる)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」から「ゴッ」と、「チ(ン)ゴ(ン)ゴ」の反復語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「チノ」から「チン」と、「ツル」が「スル」となった)

  「プ・ツ・ツク」、PU-TU-TUKU(pu=blow gently;tu=fight with,energetic;tuku=let go,send,blow from any quarter as wind)、「勢いよく・衝突し・突き飛ばす(ぶつかる)」(「プ」が「ブ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「(ン)ガ・ツ・ツク」、NGA-TU-TUKU(nga=breathe,satisfied;tu=fight with,energetic;tuku=let go,send,blow from any quarter as wind)、「(懸命に・息をする)アッと・言って・突き飛ばす(ぶつかる)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化し「ガ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「(ン)ガ・チ(ン)ゴ(ン)ゴ・コ・ツル」、NGA-TINGONGO-KO-TURU(nga=breathe,satisfied;tingongo=cause to shrink,shrivel;ko=dig or plant with a wooden implement for digging,to give emphasis;turu=last a shrt time)、「(息をする)アッと(言って)・(身体を)すくませて・一瞬のうちに・(掘り棒が大地に刺さるように)衝突する(ぶつかる)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「チ(ン)ゴ(ン)ゴ」の反復語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「チノ」から「チン」と、「ツル」が「スル」となった)

  「イヒ・カハ・ア・タ・ル」、IHI-KAHA-A-TA-RU(ihi=fear,dread,shudder;kaha=strong;a=drive,urge,compel;ta=dash,beat,lay;ru=shake,agitate,scatter)、「(ぶつかるのを)恐れながら・強く・押されたように・衝突・する(ぶつかる)」(「イヒ」のH音が脱落して「イ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」となり、「カ」のA音と「ア」のA音が連結して「カ」となった)

  「イヒ・キ・ア・タ・ル」、IHI-KI-A-TA-RU(ihi=fear,dread,shudder;kaha=strong;a=drive,urge,compel;ta=dash,beat,lay;ru=shake,agitate,scatter)、「(ぶつかるのを)たいへん・恐れながら・押されたように・衝突・する(ぶつかる)」(「イヒ」のH音が脱落して「イ」または「イッ」と、「キ・ア」が「キャ」となった)

  「コ・ツ・ム」、KO-TU-MU(ko=dig or plant with a wooden implement for digging,to give emphasis;tu=stand,settle;mu=murmur at,show discontent with,silent)、「嫌だと・思いながら・(掘り棒が大地に刺さるように)衝突する(ぶつかる)」(「ツ」が「ズ」となつた)

  「ア・タ・ル」、A-TA-RU(pu=blow gently;ti=throw,cast;a=drive,urge,compel;ta=dash,beat,lay;ru=shake,agitate,scatter)、「押されたように・衝突・する(ぶつかる)」

  「カハ・チ・ア・ウ」、KAHA-TI-A-U(kaha=strong;ti=throw,cast;a=drive,urge,compel;lay;u=be,firm,be fixed,reach its limit)、「強く・押されたように・(身体を)投げ出して・衝突する(ぶつかる)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」または「カッ」と、また「チ・ア」が「チャ」となった)

  「トフ・キ・ア・タ・ル」、TOHU-KI-A-TA-RU(tohu=mark,point out,show,look towards;ki=full,very;pu=blow gently;ti=throw,cast;a=drive,urge,compel;ta=dash,beat,lay;ru=shake,agitate,scatter)、「十分に・先が見えているのに・押されたように・衝突・する(ぶつかる)」(トフ」のH音が脱落して「トゥ」となった)

  「ウチ・ア・タ・ル」、UTI-A-TA-RU(uti=annoy,worry;pu=blow gently;ti=throw,cast;a=drive,urge,compel;ta=dash,beat,lay;ru=shake,agitate,scatter)、「心配しながら・押されたように・衝突・する(ぶつかる)」

  「ツツ・(ン)ガ・タツ」、TUTU-NGA-TATU(tutu=violent,vigorous;nga=breathe,satisfied;tatu=reach the bottm,strike one foot against the other)、「忙しく・息をして・(先方の足を踏む)衝突する(ぶつかる)」(「ツツ」が「ツッ」と、「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「タツ」が「タッ」となった)

  「プ・チ・カハ・アイ(ン)ガ」、PU-TI-KAHA-AINGA(pu=blow gently;ti=throw,cast;kaha=strong;ainga=violence,driving force)、「強い・力で押されるように・(身体を)投げ・出す(衝突する)(ぶつかる)」(「プ」が「ブ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「アイ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「アイナ」から「アイン」となり、「カ」のA音と「アイン」の語頭のA音が連結して「カイン」となった)

  「プ・チ・タタイ・ウ(ン)ガ」、PU-TI-TATAI-UNGA(pu=blow gently;ti=throw,cast;tatai=measure,arrange,set in order,omen;unga=act or circumstance etc. of becoming firm)、「予感した・通りに・(身体を)投げ・出す(衝突する)(ぶつかる)」(「プ」が「ブ」と、「ウ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウナ」から「ウン」となり、「タタイ・ウン」が「タタュン」となった)

  「チ・ツツ・クル」、TI-TUTU-KURU(ti=throw,cast;tutu=violent,vigorous;kuru=strike with the fist,tump,pound,throw)、「(身体を)投げ出して・荒々しく・ぶつかる(衝突する)(ぶつかる)」(「ツツ」が「ッツ」となった)

  「ツキ・ア・タ・ル」、TUKI-A-TA-RU(tuki=pound,beat,attack;a=drive,urge,compel;ta=dash,beat,lay;ru=shake,agitate,scatter)、「打撃を受けて・押されたように・衝突・する(ぶつかる)」

の転訛と解します。

185ふとい(太い)・フテ・フテァ・フットエ・ブットイ・フトカ・フチー・マギサン・クェートーン

 「ふとい」の方言には、北海道、三重の「フットイ」(「ふとい」と同語源)、青森、鹿児島の「フテ」、岩手、秋田の「フテァ」、宮城の「フッテー」(「フテ」と同語源)、山形、新潟の「フットエ」、福島、兵庫の「ブットイ」、茨城の「フトエ」(「フットエ」と同語源)、埼玉、千葉などの「フテー」(「フテ」と同語源)、愛知の「フットェー」(「フットエ」と同語源)、奈良の「ブトイ」(「ブットイ」と同語源)、福岡、佐賀などの「フトカ」、大分の「フチー」、宮崎の「フチ」(「フチー」と同語源)、沖縄那覇・首里の「マギサン」があります。

 上記のほか、北海道の「フッテ」(「フテ」と同語源)、沖縄首里の「クェートーン」があります。

 この「ふとい」、「フテ」、「フテァ」、「フットエ」、「ブットイ」、「フトカ」、「フチー」、「マギサン」、「クェートーン」は、

  「フ・トヒ」、HU-TOHI((Hawaii)hu=to rise or swell;tohi=pile up)、「膨らんで・大きくなった(太い)」(「フ」が「フッ」と、「トヒ」のH音が脱落して「トイ」となった)

  「フ・テ」、HU-TE((Hawaii)hu=to rise or swell;te=to make an emphatic statement)、「実に・膨らんでいる(太い)」(「フ」が「フッ」と、「テ」が「テー」となった)

  「フ・テア」、HU-TEA((Hawaii)hu=to rise or swell;tea=white,clear)、「清らかに・膨らんでいる(太い)」

  「フ・トエ」、HU-TOE((Hawaii)hu=to rise or swell;toe=be left,as a remnant)、「膨らんだ・名残りのような(太い)」(「フ」が「フッ」と、「トエ」が「トェー」となった)

  「プツ・トヒ」、PUTU-TOHI(putu=lie in a heap,swell,increase;tohi=pile up)、「膨らんで・積み上がった(太い)」(「プツ」が「ブ」または「ブッ」と、「トヒ」のH音が脱落して「トイ」となった)

  「フ・トカ」、HU-TOKA((Hawaii)hu=to rise or swell;toka=overflow)、「膨らんで・溢れている(太い)」

  「フ・チヒ」、HU-TIHI((Hawaii)hu=to rise or swell;tihi=summit,top)、「最高に・膨らんでいる(太い)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」または「チー」となった)

  「マハ・(ン)ギア・タナ」、MAHA-NGIA-TANA(maha=many,abundant,gratified,satisfied;ngia=seem,appear to be;tana=his,her,its)、「満足している・ように見える・彼の(男女)(太い)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」と、「タナ」が「サン」となった)

  「クアイ・トナ」、KUAI-TONA(kuai=kuwai=wet,watery;tona=his,her,its)、「(水膨れ)太っている・彼の(男女)(太い)」(「クアイ」のAI音がE音に変化して「クエ」から「クェー」と、「トナ」が「トーン」となった)

の転訛と解します。

186ふとる(太る)・コエル・デコナル・フトー・コユッ・フユッ・クェーイン・クェーユン・デブル

 「ふとる」の方言には、北海道、岩手などの「コエル」、石川の「デコナル」、島根の「フトー」、佐賀の「コユッ」、鹿児島の「フユッ」、沖縄那覇の「クェーイン」、沖縄首里の「クェーユン」があります。

 上記のほか、北海道の「デブル」があります。

 この「ふとる」、「コエル」、「デコナル」、「フトー」、「コユッ」、「フユッ」、「クェーイン」、「クェーユン」、「デブル」は、

  「フ・トル」、HU-TORU((Hawaii)hu=to rise or swell;toru=toro=stretch forth,extend)、「膨らんで・大きくなる(太る)」

  「コ・ヱル」、KO-WHERU(ko=dig or plant with a wooden implement for digging,to give emphasis;wheru=inactive,slow,weary)、「(太ったせいで)鍬を使う作業が・のろくなった(太る)」(「ヱル」のWH音が脱落して「エル」となつた)

  「テコ・(ン)ガルル」、TEKO-NGARURU(teko=rock,isolated,standing out;ngaruru=abundant,strong in growth)、「目立つほど・大きく成長した(太る)」(「テコ」が「デコ」と、「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナル」となった)

  「フ・トフ」、HU-TOHU((Hawaii)hu=to rise or swell;tohu=mark,point out,show,look towards)、「膨らんだことを・見せている(太る)」(「トフ」のH音が脱落して「トー」となった)

  「コイ・ウツ」、KOI-UTU(koi=move about;utu=return for anything,satisfaction,make response)、「満足して(悠々と)・歩いている(太る)」(「コイ・ウツ」が「コユッ」となった)

  「フ・イ・ウツ」、HU-I-UTU((Hawaii)hu=to rise or swell;i=past tense;utu=return for anything,satisfaction,make response)、「太って・満足している(太る)」(「イ・ウツ」が「ユッ」となった)

  「クアイ・イナ」、KUAI-INA(kuai=kuwai=wet,watery;ina=bask,warm oneself)、「(水膨れ)太って・日向ぼっこをしている(太い)」(「クアイ」のAI音がE音に変化して「クエ」から「クェー」と、「イナ」が「イン」となった)

  「クアイ・イ・ウ(ン)ガ」、KUAI-I-UNGA(kuai=kuwai=wet,watery;i=past tense;unga=be firm,be fixed,reach its limit)、「(水膨れ)太り加減が・頂点に・達している(太い)」(「クアイ」のAI音がE音に変化して「クエ」から「クェー」と、「ウ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウナ」となり、「イ・ウナ」が「ユン」となった)

  「タイプ・ウル」、TAIPU-URU(taipu=heap,heaped up;uru=enter,possess,arrive)、「(膨れる)太って・しまう(太る)」(「タイプ」のAI音がE音に変化して「テプ」から「デブ」となり、その語尾のU音と「ウル」の語頭のU音が連結して「デブル」となった)

の転訛と解します。

「ヘ」

187へそくり・ホマチ・ホタコ・ホマツコ・ホマズ・ホマチコ・ホンマズ・シンガエ・シンガイジェン・ナイショガネ・マツボリ・キャーフゼン・ヘソクイ・ワタクシ・ホンマチ・ホマチガネ・ホリタ

 「へそくり」(これについては、国語篇(その三)の第2の2の中の「へそくり」の項を参照してください。)の方言には、北海道、福島などの「ホマチ」(雑楽篇(その一)の236ほまち雨の項を参照してください。)、青森の「ホタコ」、岩手の「ホマツコ」、宮城の「ホマズ」、秋田の「ホマチコ」、山形の「ホンマズ」、茨城、栃木の「ホマジ」(「ホマチ」と同語源)、新潟の「シンガエ」、石川の「シンガイジェン」、福井、兵庫などの「ナイショガネ」、鳥取、岡山などの「マツボリ」、福岡の「マスボリ」(「マツボリ」と同語源)、佐賀の「キャーフゼン」、鹿児島の「ヘソクイ」、沖縄那覇・首里の「ワタクシ」があります。

 上記のほか、北海道の「ホンマチ」、「ホマチガネ」、広島の「ホリタ」(安芸地方)などがあります。

 この「へそくり」、「ホマチ」、「ホタコ」、「ホマツコ」、「ホマズ」、「ホマチコ」、「ホンマズ」、「シンガエ」、「シンガイジェン」、「ナイショガネ」、「マツボリ」、「キャーフゼン」、「ヘソクイ」、「ワタクシ」、「ホンマチ」、「ホマチガネ」、「ホリタ」は、

  「ハエ・ト・クフ・ウリ」、HAE-TO-KUHU-URI(hae=slit,tear,cause pain;to=drag,open or shut a door or a window;kuhu=thrust in,insert,conceal;uri=dark,deep in colour)、「(臍のように)取られると・痛いもの(秘密の貯金)で・暗いところに・入れて(隠して)おくもの。へそくり)」(「ハエ」のAE音がE音に変化して「ヘ」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」となり、その語尾のU音と「ウリ」の語頭のU音が連結して「クリ」となった)

  「ハウ・マチ」、HAU-MATI(hau=return present by way of acknowledgement for a present received;mati=surfeited)、「(客人が)十分に飽食した・お礼(に主人に対して)の贈り物(本来予期していなかった、当てにしていなかった収入)(へそくり)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」となった。また「マチ」が「マジ」となった)

  「ハウ・タコ」、HAU-TAKO(hau=return present by way of acknowledgement for a present received;tako=loosened,peel off,palate)、「(客人が)料理を堪能した・お礼(に主人に対して)の贈り物(本来予期していなかった、当てにしていなかった収入)(へそくり)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」となった)

  「ハウ・マツ・コ」、HAU-MATU-KO(hau=return present by way of acknowledgement for a present received;matu=fat,richness of food;ko=to give emphasis)、「(客人が)豪華な料理を・堪能した・お礼(に主人に対して)の贈り物(本来予期していなかった、当てにしていなかった収入)(へそくり)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」となった)

  「ハウ・マツ」、HAU-MATU(hau=return present by way of acknowledgement for a present received;matu=fat,richness of food)、「(客人が)豪華な料理の・お礼(に主人に対して)の贈り物(本来予期していなかった、当てにしていなかった収入)(へそくり)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」と、「マツ」が「マズ」となった)

  「ハウ・マチ・コ」、HAU-MATI-KO(hau=return present by way of acknowledgement for a present received;mati=surfeited;ko=to give emphasis)、「(客人が)全く・十分に飽食した・お礼(に主人に対して)の贈り物(本来予期していなかった、当てにしていなかった収入)(へそくり)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」となった)

  「ハウ・ナ・マツ」、HAU-NA-MATU(hau=return present by way of acknowledgement for a present received;na=by,belonging to;matu=fat,richness of food)、「(客人が)豪華な料理の・部類に属する料理の・お礼(に主人に対して)の贈り物(本来予期していなかった、当てにしていなかった収入)(へそくり)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」と、「ナ」が「ン」と、「マツ」が「マズ」となった)

  「チ(ン)ガ・エ」、TINGA-E(tinga=likely;e=calling attention or expressing surprise)、「びっくりする・ようなもの(へそくり)」(「チ(ン)ガ」が「シンガ」となった)

  「チ(ン)ガ・イチ・エネ」、TINGA-ITI-ENE(tinga=likely;iti=small;ene=flatter,cajole)、「小さな・慰め・のようなもの(へそくり)」(「チ(ン)ガ」が「シンガ」と、「イチ」が「イジ」と、「エネ」が「ェン」なった)

  「ナ・イチ・オ・カネヘ」、NA-ITI-O-KANEHE(na=by,belonging to;iti=small;o=find room,be capable of being contained or enclosed,get in;kanehe=trifle,anything small,desire,yerning)、「ほんの・小さな・欲しくてたまらない・収入(へそくり)」(「イチ・オ」が「イショ」と、「カネヘ」のH音が脱落して「カネ」から「ガネ」となった)

  「マツ・ポウリ」、MATU-POURI(matu=ma atu=go,come;pouri=dark,sorrowful,sad,distressed)、「(行き来する)人の・(粗末な)寸志(へそくり)」(「ポウリ」が「ボリ」となった。また「マツ」が「マス」となった)

  「キ・アフ・テナ」、KI-AHU-TENA(ki=full,very;ahu=heap,heap up;tena=encourage,urge forward)、「たくさん・(積み上げた)貯め込んだ・(人を)元気づけるもの(へそくり)」(「キ・アフ」が「キャーフ」と、「テナ」が「ゼン」となった)

  「ハエ・ト・クヒ」、HAE-TO-KUHI(hae=slit,tear,cause pain;to=drag,open or shut a door or a window;kuhi=insert)、「(臍のように)取られると・痛いもの(秘密の貯金)で・(どこかに)入れて(隠して)おくもの)(へそくり)」(「ハエ」のAE音がE音に変化して「ヘ」と、「クヒ」のH音が脱落して「クイ」となった)

  「ワタ・クチ」、WHATA-KUTI(whata=elevated stage for storing food and for other purposes;kuti=draw tightly together,contract,pinch)、「高床の倉庫に・しまってあるもの(へそくり)」(「クチ」が「クシ」となつた)

  「ハウ・ナ・マチ」、HAU-NA-MATI(hau=return present by way of acknowledgement for a present received;na=by,belonging to;mati=surfeited)、「(客人が)十分に・飽食した・お礼(に主人に対して)の贈り物(本来予期していなかった、当てにしていなかった収入)(へそくり)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」と、「ナ」が「ン」となった)

  「ハウ・マチ・カネヘ」、HAU-MATI-KANEHE(hau=return present by way of acknowledgement for a present received;mati=surfeited;kanehe=trifle,anything small,desire,yerning)、「(客人が)十分に飽食した・欲しくてたまらない・お礼(主人に対して)の贈り物(本来予期していなかった、当てにしていなかった収入)(へそくり)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」と、「カネヘ」のH音が脱落して「カネ」から「ガネ」となった)

  「ハウ・リタ」、HAU-RITA(hau=return present by way of acknowledgement for a present received;rita=an evil spirit)、「(客人の)邪心がある・お礼(に主人に対して)の贈り物(本来予期していなかった、当てにしていなかった収入)(へそくり)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」となった)

の転訛と解します。

188へた(下手)・ヘタクソ・テズナシ・ヘダカス・ヘタッペ・ドン・ヘタカ・ブチホ・ヒタ・ジョージェーアラン

 「へた」の方言には、北海道、新潟などの「ヘタクソ」、青森の「テズナシ」、岩手、山形の「ヘダクソ」(「ヘタクソ」と同語源)、宮城、福島の「ヘダカス」、秋田の「ヘダ」(「へた」と同語源)、茨城の「ヘダッカス」(「ヘダカス」と同語源)、栃木の「ヘダグソ」(「ヘタクソ」と同語源)、群馬の「ヘタッカス」(「ヘダカス」と同語源)、埼玉の「ヘタッペ」、山梨、長野の「ヘタックソ」(「ヘタクソ」と同語源)、奈良の「ドン」、佐賀、長崎の「ヘタカ」、鹿児島の「ブチホ」、沖縄那覇の「ヒタ」、沖縄首里の「ジョージェーアラン」があります。

 この「へた」、「ヘタクソ」、「テズナシ」、「ヘダカス」、「ヘタッペ」、「ドン」、「ヘタカ」、「ブチホ」、「ヒタ」、「ジョージェーアラン」は、

  「ヘ・タ」、HE-TA(he=wrong,mistaken,in trouble or difficulty;ta=dash,beat,lay)、「(いつも)失敗・してしまう(下手)」
  なお、「下手」の反対語「上手(じょうず)」は、「チオホ・ツ」、TIOHO-TU(tioho=apprehensive;tu=stand,settle,fight with,energetic)、「懸命に・(失敗しないように)心配しながら(注意を怠らずに)行動する(上手)」(「チオホ」のH音が脱落して「チオオ」から「ジョウ」、「ジョー」と、「ツ」が「ズ」となつた)の転訛と解します。

  「ヘ・タ・ク・ト」、HE-TA-KU-TO(he=wrong,mistaken,in trouble or difficulty;ta=dash,beat,lay;ku=silent,wearied,exhausted;to=drag,haul)、「(いつも)へとへとになる(まで努力して)・(かえって)失敗を・招いて・しまう(下手)」(「ト」が「ソ」となった。また「タ」が「ダ」または「タッ」と、「ク」が「グ」となった)

  「タイツ・ナチ」、TAITU-NATI(taitu=be hindered,be intermitted,slow;nati=pinch or contract)、「(仕事が)遅くて邪魔されることに・いつもつきまとう(下手)」(「タイツ」のAI音がE音に変化して「テツ」から「テズ」と、「ナチ」が「ナシ」となった)

  「ヘ・タ・カ・ツ」、HE-TA-KA-TU(he=wrong,mistaken,in trouble or difficulty;ta=dash,beat,lay;ka=take fire,be lighted,burn;tu=fight with,energetic)、「(いつも)懸命に・(火が燃えるように)努力するが・失敗・してしまう(下手)」(「タ」が「タッ」、「ダ」または「ダッ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ヘ・タパエ」、HE-TAPAE(he=wrong,mistaken,in trouble or difficulty;tapae=lay one on another,stack,present)、「(いつも)失敗を・積み重ねる(下手)」(「タパエ」のAE音がE音に変化して「タペ」から「タッペ」となった)

  「トヌ」、TONU(denoting continuance,still,continually)、「まだまだ(修行途中だ)(下手)」(゜トヌ」が「ドン」となった)

  「ヘ・タカ」、HE-TAKA(he=wrong,mistaken,in trouble or difficulty;taka=fall off,fall away,fail of fulfilment)、「(いつも)失敗を・やらかす(下手)」

  「プ・チ・ホ」、PU-TI-HO(pu=tribe,bunch,heap;ti=throw,cast;ho=put out the lips,pour,a mark of derision)、「(いつも)嘲笑・される・部類の人間(下手)」(「プ」が「ブ」となった)

  「ヒヒ・タ」、HIHI-TA(hihi=puihi=afraid,shy;ta=dash,beat,lay)、「(失敗を恐れて)おどおどしている(下手)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」となった)

  「チオホ・チエ・アラ(ン)ガ」、TIOHO-TIE-ARANGA(tioho=apprehensive;tie=abundance,plenty;aranga=ara=rise,awake,raise)、「(失敗しないかと)心配が・たくさん・起きる(下手)」(「チオホ」のH音が脱落して「チオオ」から「ジョー」と、「チエ」が「ジェー」と、「アラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「アラナ」から「アラン」となった)

の転訛と解します。

189へび(蛇)・ナガナワ・ヘンビ・クチナワ・クツナ・クチナオ・クチナゴ・ヘツ・ハブ・ミーサン・ミーサマ・ヒラクチ・ナガタロー

 「へび」(これについては、雑楽篇(その二)の611へび(蛇)の項から622はぶの項までを参照してください。)の方言には、青森の「ナガナワ」、宮城、秋田などの「ヘンビ」、埼玉、山梨などの「ヘービ」(「へび」と同語源)、新潟の「ヘッピ」(「へび」と同語源)、三重、滋賀などの「クチナワ」、兵庫の「クチナ」(「クチナワ」と同語源)、奈良の「クツナ」、岡山の「クチナオ」、徳島の「グチナ」(「クチナワ」と同語源)、香川の「クチナゴ」、鹿児島の「ヘツ」、沖縄那覇・首里の「ハブ」があります。

 上記のほか、大阪の「ミーサン」、香川の「ヘビー」(「へび」と同語源)、福岡の「ミーサマ」、佐賀の「ヒラクチ」(まむし)、大分の「ナガタロー」などがあります。

 この「へび」、「ナガナワ」、「ヘンビ」、「クチナワ」、「クツナ」、「クチナオ」、「クチナゴ」、「ヘツ」、「ハブ」、「ミーサン」、「ミーサマ」、「ヒラクチ」、「ナガタロー」は、

  「ヘヘ・ピヒ」、HEHE-PIHI(hehe=gone astray,wrong,not fulfilling requirement;pihi=cut,split,begin to grow)、「あちこちさまよう・(定期的に)脱皮する(動物。蛇)」(「ヘヘ」の反復語尾が脱落して「ヘ」、「ヘッ」または「ヘー」と、「ピヒ」のH音が脱落して「ピ」または「ビー」となつた)

  「(ン)ガナ・ナハ」、NGANA-NAHA(ngana=persist,obstinate,strong;naha=noose for snaring ducks)、「しつこく(獲物を狙う性質がある)・(輪)縄のような(動物。蛇)」(「(ン)ガナ」のNG音がG音に変化して「ガナ」が「ナガ」と、「ナハ」が「ナワ」となった)

  「ヘヘ・ナ・ピヒ」、HEHE-NA-PIHI(hehe=gone astray,wrong,not fulfilling requirement;na=by,belonging to;pihi=cut,split,begin to grow)、「あちこちさまよう・(定期的に)脱皮する・部類に属する(動物。蛇)」(「ヘヘ」の反復語尾が脱落して「ヘ」と、「ナ」が「ン」と、「ピヒ」のH音が脱落して「ピ」となつた)

  「クチ・ナハ」、KUTI-NAHA(kuti=pinch,contract;naha=noose for snaring ducks)、「絡みつく(獲物を締め付ける)・(輪)縄のような(動物。蛇)」(「ナハ」が「ナワ」となった。また「クチ」が「グチ」と、「ナハ」のH音が脱落して「ナ」となった)

  「ク・ツナ」、KU-TUNA(ku=silent;tuna=fresh-water eels)、「静かに動き回る・ウナギのような(動物。蛇)」
  または「ク・ツ・ナハ」、KU-TU-NAHA(ku=silent;tu=stand,settle,fight with,energetic;naha=noose for snaring ducks)、「静かに・精力的に動き回る・(輪)縄のような(動物。蛇)」(「ナハ」のH音が脱落して「ナ」となった)

  「クチ・ナホ」、KUTI-NAHO(kuti=pinch,contract;naho=hasty,quick in speech or action)、「絡みつく(獲物を締め付ける)・(輪)縄のような(動物。蛇)」(「ナホ」のH音が脱落して「ナオ」となった)

  「クチ・ナ・(ン)ガウ」、KUTI-NA-NGAU(kuti=pinch,contract;na=by,belonging to;ngau=bite,hurt,attack)、「絡みついて(獲物を締め付けて)・(獲物を)襲う・部類に属する(動物。蛇)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化してが「ゴ」となった)

  「ヘヘ・ツ」、HEHE-TU(hehe=gone astray,wrong,not fulfilling requirement;tu=stand,settle,fight with,energetic)、「あちこちさまよう・精力的に動き回る(動物。蛇)」(「ヘヘ」の反復語尾が脱落して「ヘ」となつた)

  「ハ・プ」、HA-PU(ha=what!;pu=loathing,hating)、「最も・憎むべきもの(毒蛇)」(「プ」が「ブ」となった)

  「ミヒ・タナ」、MIHI-TANA(mihi=sigh for,greet,admire,rxpress discomfort;tana=his,her,its)、「畏敬すべき・彼の(雌雄)(蛇)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミー」と、「タナ」が「サン」となった)

  「ミヒ・タマ」、MIHI-TAMA(mihi=sigh for,greet,admire,rxpress discomfort;tama=son,man,emotion,strong feeling)、「畏敬すべき・(霊力をもつ存在)様(蛇)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミー」と、「タマ」が「サマ」となった)

  「ヒラ・クチ」、HIRA-KUTI(hira=abundant,important of consequence;kuti=pinch,contract)、「(噛まれると)重大な結果(生死にかかわる)をもたらす・(頭が)平べったい(蛇。まむし)」

  「(ン)ガナ・タロア」、NGANA-TAROA(ngana=persist,obstinate,strong;taroa=long,enduring)、「しつこく(獲物を狙う性質がある)・長い(縄のような動物。蛇)」(「(ン)ガナ」のNG音がG音に変化して「ガナ」が「ナガ」と、「タロア」の語尾のA音が脱落して「タロー」となった)

の転訛と解します。

「ホ」

190ほお(頬)・ホッペタ・ホッタンブ・ホッタブ・ホータン・ホーダマ・ホーゲタ・ホータ・ホーカンバチ・ホータンボ・ホーベンタ・ベップ・フーベタ・ビンタ・フータン・フ・フータイ・ホッペ・ホッカイ・ボータブ

 「ほお」の方言には、北海道、栃木などの「ホッペタ」、青森、石川などの「ホペタ」(「ホッペタ」と同語源)、岩手、福島などの「ホッペダ」(「ホッペタ」と同語源)、宮城の「ホッタンブ」、秋田の「ホペダ」(「ホッペタ」と同語源)、山形の「ホッタブ」、福井の「ホーベッタ」(「ホッペタ」と同語源)、静岡の「ホータン」、大阪、広島などの「ホーベタ」(「ホッペタ」と同語源)、鳥取の「ホーダマ」、島根の「ホーゲタ」、岡山の「ホータ」、香川の「ホーカンバチ」、高知の「ホータンボ」、福岡の「ホーベンタ」、佐賀の「ベップ」、長崎の「フーベタ」、熊本の「ビンタ」、大分の「フータン」、宮崎の「フタン」(「フータン」と同語源)、鹿児島の「フ」、沖縄那覇の「フータイ」、沖縄首里の「フー」(「フ」と同語源)があります。

 上記のほか、北海道の「ホッペ」、青森の「ホッカイ」(古)、秋田の「ホタ」(「ホータ」と同語源)、福島の「ボータブ」、香川の「ホゲタ」(「ホーゲタ」と同語源)、沖縄首里の「フージラ」などがあります。

 この「ほお」、「ホッペタ」、「ホッタンブ」、「ホッタブ」、「ホータン」、「ホーダマ」、「ホーゲタ」、「ホータ」、「ホーカンバチ」、「ホータンボ」、「ホーベンタ」、「ベップ」、「フーベタ」、「ビンタ」、「フータン」、「フ」、「フータイ」、「ホッペ」、「ホッカイ」、「ボータブ」、「フージラ」は、

  「ホ・アウ」、HO-AU(ho=put out the lips,pout,droop,shout;au=firm,intense)、「唇を突き出して・しまる(収縮する)もの(頬)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となった)

  「ホ・パエ・タ」、HO-PAE-TA(ho=put out the lips,pout,droop,shout;pae=horizen,lie across,lie ready for use,demolished;ta=dash,beat,lay)、「唇を突き出して・変形・するもの(頬)」(「ホ」が「ホッ」または「ホー」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」または「ベッ」と、「タ」が「ダ」となった)

  「ホ・タ(ン)ギ・プ」、HO-TANGI-PU(ho=put out the lips,pout,droop,shout;tangi=sound,cry,weep;pu=blow gently,flute)、「唇を突き出して・息を吐いて・音を出すもの(頬)」(「ホ」が「ホッ」と、「タ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「タニ」から「タン」と、「プ」が「ブ」となった)

  「ホ・タ・プ」、HO-TA-PU(ho=put out the lips,pout,droop,shout;ta=dash,beat,lay;pu=blow gently,flute)、「唇を突き出して・息を吐くために・動かすもの(頬)」(「ホ」が「ホー」と「プ」が「ブ」となった)

  「ホ・タ(ン)ギ」、HO-TANGI(ho=put out the lips,pout,droop,shout;tangi=sound,cry,weep)、「唇を突き出して・音を出すもの(頬)」(「ホ」が「ホー」と、「タ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「タニ」から「タン」となった)

  「ホ・タ・アマ」、HO-TA-AMA(ho=put out the lips,pout,droop,shout;ta=dash,beat,lay;(Hawaii)ama=talkative,prattling,tattling)、「唇を突き出して・しゃべるために・動かすもの(頬)」(「ホ」が「ホー」と、「タ」のA音が「アマ」の語頭のA音と連結して「タマ」から「ダマ」となった)

  「ホ・(ン)ゲ・タ」、HO-NGE-TA(ho=put out the lips,pout,droop,shout;nge=noise,screech;ta=dash,beat,lay)、「唇を突き出して・叫び声を出すために・動かすもの(頬)」(「ホ」が「ホー」と、「(ン)ゲ」のNG音がG音に変化して「ゲ」となった)

  「ホ・タ」、HO-TA(ho=put out the lips,pout,droop,shout;ta=dash,beat,lay)、「唇を突き出して・動かすもの(頬)」(「ホ」が「ホー」となった)

  「ホ・カネ・パチ」、HO-KANE-PATI(ho=put out the lips,pout,droop,shout;kane=choke;pati=ooze,spurt,splash)、「唇を突き出して・息を止めて・(一気に)吐き出すもの(頬)」(「ホ」が「ホー」と、「カネ」が「カン」と、「「パチ」が「バチ」となった)

  「ホ・タ(ン)ギ・ポ」、HO-TANGI-PO(ho=put out the lips,pout,droop,shout;tangi=sound,cry,weep;po,popo=sooth,hush,lullaby)、「唇を突き出して・静かに・音を出す(または静かに子守唄を・唄う)もの(頬)」(「ホ」が「ホー」と、「タ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「タニ」から「タン」と、「ポ」が「ボ」となった)

  「ホ・パエ(ン)ガ・タ」、HO-PAENGA-TA(ho=put out the lips,pout,droop,shout;paenga=place where anything is laid on one side or across,boundary,place where things are heaped up;ta=dash,beat,lay)、「唇を突き出して・膨らます場所に・あるもの(頬)」(「ホ」が「ホッ」または「ホー」と、「パエ」のAE音がE音に、NG音がN音に変化して「ペナ」から「ベン」となった)

  「パエ・プ」、PAE-PU(pae=horizen,lie across,lie ready for use,demolished;pu=blow gently,flute)、「息を吐き出すために・変形させるもの(頬)」(「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベッ」となった)

  「フ・パエ・タ」、HU-PAE-TA(hu=resound,hiss,noise;pae=horizen,lie across,lie ready for use,demolished;ta=dash,beat,lay)、「音を出すために・変形・するもの(頬)」(「フ」が「フー」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」となった)

  「ピネ・タ」、PINE-TA(pine=close together;ta=dash,beat,lay)、「(口と)一緒に閉じて・しまうもの(頬)」(「ピネ」が「ビン」となった)

  「フ・タ(ン)ギ」、HU-TANGI(hu=resound,hiss,noise;tangi=sound,cry,weep)、「音を・響かせるもの(頬)」(「フ」が「フー」と、「タ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「タニ」から「タン」となった)

  「フ」、HU(resound,hiss,noise)、「音を出すもの(頬)」(「フ」が「フー」となった)

  「フ・タイ」、HU-TAI(hu=resound,hiss,noise;tai,taitai=dash,strike,knock)、「音を・出すもの(頬)」(「フ」が「フー」となった)

  「ホ・パエ」、HO-PAE(ho=put out the lips,pout,droop,shout;pae=horizen,lie across,lie ready for use,demolished)、「唇を突き出して・変形させるもの(頬)」(「ホ」が「ホッ」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」となった)

  「ホ・カイ」、HO-KAI(ho=put out the lips,pout,droop,shout;kai=fulfil its proper function,have full play)、「唇を突き出して・いろいろの動作をするもの(頬)」(「ホ」が「ホッ」となった)

  「ポ・タ・プ」、PO-TA-PU(po,popo=sooth,hush,lullaby;ta=dash,beat,lay;pu=blow gently,flute)、「静かに音を出す(または静かに子守唄を唄う)のに・息を吐くために・動かすもの(頬)」(「ポ」が「ボー」と「プ」が「ブ」となった)

  「フ・チラハ」、HU-TIRAHA(hu=resound,hiss,noise;tiraha=bundle,slow,face upwards)、「ゆっくりと・音を出すもの(頬)」(「フ」が「フー」と、「チラハ」のH音が脱落して「ジラ」となった)

の転訛と解します。

191ほそい(細い)・ホソコイ・ホセ・ホソッコエ・ホソエ・ホソッケー・コマカ・ホソカ・ホシー・コンメ・コマンカ・グマサン・クマサン

 「ほそい」の方言には、北海道、福島の「ホソコイ」、岩手、島根の「ホセ」、宮城の「ホソッコエ」、秋田、山形の「ホソコエ」(「ホソッコエ」と同語源)、茨城の「ホソエ」、栃木の「ホソッケー」、埼玉、千葉などの「ホセー」(「ホセ」と同語源)、新潟の「ホーソエ」(「ホソエ」と同語源)、静岡、愛知の「ホソェー」(「ホソエ」と同語源)、三重、奈良の「ホッソイ」(「ほそい」と同語源)、福岡の「コマカ」、佐賀、長崎などの「ホソカ」、大分の「ホシー」、宮崎の「コンメ」、鹿児島の「コマンカ」、沖縄那覇の「グマサン」、沖縄首里の「クマサン」があります。

 この「ほそい」、「ホソコイ」、「ホセ」、「ホソッコエ」、「ホソエ」、「ホソッケー」、「コマカ」、「ホソカ」、「ホシー」、「コンメ」、「コマンカ」、「グマサン」、「クマサン」は、

  「ハウ・トヒヒ」、HAU-TOHIHI(hau=project,exceed,excess;tohihi=slender,thread-like)、「著しく・細い(細い)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」または「ホッ」と、「トヒヒ」の反復語尾が脱落し、H音が脱落して「トイ」から「ソイ」となった)

  「ハウ・ト・コイ」、HAU-TO-KOI(hau=project,exceed,excess;to=drag,haul;koi=sharp,promontory)、「著しく・引き延ばされて・鋭くなっている(細い)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」と、「ト」が「ソ」となった)

  「ハウ・タイ」、HAU-TAI(hau=project,exceed,excess;tai,taitai=dash,strike,knock)、「著しく・(打撃を加える)引き延ばされている(細い)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」と、「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「セ」または「セー」となった)

  「ハウ・ト・コアエ」、HAU-TO-KOE(hau=project,exceed,excess;to=drag,haul;koae=kowae=divide,part,pick out,set apart)、「著しく・引き裂いて・引き延ばした(細い)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」と、「ト」が「ソ」または「ソッ」と、「コアエ」」のAE音がE音に変化して「コエ」となった)

  「ハウ・トエ」、HAU-TOE(hau=project,exceed,excess;toe=split,divide)、「著しく・引き裂かれている(細い)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」または「ホー」と、「トエ」が「ソエ」または「ソェー」となった)

  「ハウ・タウケ」、HAU-TAUKE(hau=project,exceed,excess;tauke=apart,separate)、「著しく・引き裂かれている(細い)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」と、「タウケ」のAU音がO音に変化して「トケ」から「ソッケー」となった)

  「コ・マ・アカ」、KO-MA-AKA(ko=to give emphasis;ma,mama=light,not heavy;aka=long and thin roots of trees or plants)、「実に・軽くて・長く細い根のような(細い)」(「マ」の語尾のA音と「アカ」の語頭のA音が連結して「マカ」となった)

  「ハウ・ト・カ」、HAU-TO-KAI(hau=project,exceed,excess;to=drag,haul;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「著しく・引き延ばされている・ね(細い)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」と、「ト」が「ソ」となった)

  「ハウ・チ・ヒヒ」、HAU-TI-HIHI(hau=project,exceed,excess;ti=throw,cast,overcome;hihi=ray of the sun,any long slender appendages)、「著しく・細いものが・放り出されている(細い)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」と、「チ」が「シ」と、「ヒヒ」の反復語尾が脱落し、H音が脱落して「イ」となり、「シ・イ」が「シー」となった)

  「コ・ナ・マエ」、KO-NA-MAE(ko=to give emphasis;na=by,belonging to;mae=languid,listless,withered)、「実に・縮んでいる・部類に属する(細い)」(「ナ」が「ン」と、「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」となった)

  「コ・マ・ナ・アカ」、KO-MA-AKA(ko=to give emphasis;ma,mama=light,not heavy;aka=long and thin roots of trees or plants)、「実に・軽くて・長く細い根の・部類に属する(細い)」(「ナ」の語尾のA音と「アカ」の語頭のA音が連結して「ナカ」から「ンカ」となった)

  「(ン)グ(ン)グ・マタナ」、NGUNGU-MATANA(ngungu=eat greedily;matana=desire,food set apart for a god)、「神へのご供物を・貪食したような(少しだけ残された)(細い)」(「(ン)グ(ン)グ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「グ」と、「マタナ」が「マサン」となった)

  「クク・マタナ」、KUKU-MATANA(kuku=nip,draw together;matana=desire,food set apart for a god)、「神へのご供物を・食い千切ったような(少しだけ残された)(細い)」(「クク」の反復語尾が脱落して「ク」と、「マタナ」が「マサン」となった)

の転訛と解します。

192ぼたもち(牡丹餅)・オハギ・ボダモズ・ハンゴロシ・カイモチ・アンモー・アンコロモチ・フチャギ・アンムチ・アンカケ・アンコロモツ

 「ぼたもち」の方言には、青森、秋田などの「ボダモジ」(「ぼたもち」と同語源)、岩手、東京などの「オハギ」、宮城、山形の「ボダモズ」、群馬の「ハンゴロシ」、石川の「カイモチ」、静岡の「アンモー」、奈良、和歌山の「アンコロモチ」、高知の「オハンギ」(「オハギ」と同語源)、鹿児島の「ボタモッ」(「ボダモズ」と同語源)、沖縄那覇の「フチャギ」、沖縄首里の「アンムチ」があります。

 上記のほか、鹿児島の「アンカケ」、「アンコロモツ」があります。

 この「ぼたもち」、「オハギ」、「ボダモズ」、「ハンゴロシ」、「カイモチ」、「アンモー」、「アンコロモチ」、「フチャギ」、「アンムチ」、「アンカケ」、「アンコロモツ」は、

  「ポタエ・マウ・チ」、POTAE-MAU-TI(potae=covering for the head,put on to the head so as to cover or envelop it;mau=food product,fixed,continuing,confined,constrained;ti=throw,cast,overcome)、「(餡で)包んだ・(圧倒して)搗いて・(餅に)なったもの(牡丹餅)」(「ポタエ」の語尾のE音が脱落して「ボタ」または「ボダ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「チ」が「ジ」となった)

  「オ・ワ・(ン)ギア」、O-WHA-NGIA(o=the...of,wha=leaf;ngia=seem,appear to be)、「例の・(草木の)葉(で包んだ食物)・のように見えるもの(牡丹餅)」(「ワ」のWH音がH音に変化して「ハ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となった。また「(ン)ギア」の語尾のA音が脱落して「ンギ」となった)

  「ポタエ・マウ・ツ」、POTAE-MAU-TU(potae=covering for the head,put on to the head so as to cover or envelop it;mau=food product,fixed,continuing,confined,constrained;tu=fight with,energetic)、「(餡で)覆った・(懸命に)搗いて・(餅に)なったもの(牡丹餅)」(「ポタエ」の語尾のE音が脱落して「ボタ」または「ボダ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「ツ」が「ッ」または「ズ」となった)

  「ハ・アナ・カウ・ラウ・チ」、HA-ANA-KAU-RAU-TI(ha=breath,taste,what!;ana=denoting continuance of action or state;kau=multitude,company;rau=leaf,feather;ti=throw,cast)、「美味な・(練られた)あんの・塊で・(葉のように)包み・込んだもの(牡丹餅)」(「ハ」のA音と「アナ」の語頭のA音が連結して「ハン」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」から「ゴ」と、「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」と、「チ」が「シ」となった)

  「カイ・マウ・チ」、KAI-MAU-TI(kai=eat,food,quantity,anything produced in profusion;mau=food product,fixed,continuing,confined,constrained;ti=throw,cast,overcome)、「大量に作られた食品で・(圧倒して)搗いて・(餅に)なったもの(牡丹餅)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

  「アナ・マウ」、ANA-MAU(ana=denoting continuance of action or state;mau=food product,fixed,continuing,confined,constrained)、「(練られた)あんで包んだ・(餅に)なったもの(牡丹餅)」(「アナ」が「アン」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」から「モー」となった)

  「アナ・カウ・ラウ・マウ・チ」、HA-ANA-KAU-RAU-MAU-TI(ha=breath,taste,what!;ana=denoting continuance of action or state;kau=multitude,company;rau=leaf,feather;mau=food product,fixed,continuing,confined,constrained;ti=throw,cast,overcome;ti=throw,cast)、「(練られた)あんの・塊で・(葉のように)包んだ・(圧倒して)搗いて・(餅に)なったもの(牡丹餅)」(「アナ」が「アン」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」から「ゴ」と、「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

  「フ・チア・(ン)ギア」、HU-TIA-NGIA(hu=promontory,hill;tia=stick in,adorn by sticking in feathers;ngia=seem,appear to be)、「(羽根飾りで)飾られた・(丘)高く盛った食物・のように見えるもの(牡丹餅)」(「チア」が「チャ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となった)

  「アナ・ムイ・チ」、ANA-MUI-TI(ana=denoting continuance of action or state;mui=swarm round,infest;ti=throw,cast)、「(練られた)あんが・(餅の)周りにくっついて・いるもの(牡丹餅)」(「アナ」が「アン」と、「ムイ」の語尾のI音が脱落して「ム」となった)

  「アナ・カケ」、ANA-KAKE(ana=denoting continuance of action or state;kake=asend,climb upon or over)、「(練られた)あんが・(餅の上に登って垂れる)周りにくっついているもの(牡丹餅)」(「アナ」が「アン」となった)

  「アナ・カウ・ラウ・マウ・ツ」、ANA-KAU-RAU-MAU-TU(ana=denoting continuance of action or state;kau=multitude,company;rau=leaf,feather;mau=food product,fixed,continuing,confined,constrained;ti=throw,cast,overcome;tu=fight woth,energetic)、「(練られた)あんの・塊で・(葉のように)包んだ・(懸命に)搗いて・(餅に)なったもの(牡丹餅)」(「アナ」が「アン」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」から「ゴ」と、「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

の転訛と解します。

193ぼち(墓地)・ハガショ・オハガ・ランバ・ラントバ・ハガバ・ハカ・ハカバ・ナント・オハカ・ハカショ・サンメァー・サンマイ・ハカワラ・シンジュ・ハカジー

 「ぼち」(漢語由来の言葉と解しますが、縄文語でこのように呼ばれていた可能性もあります)の方言には、北海道、青森などの「ハガショ」、岩手、宮城などの「オハガ」、福島の「ランバ」、茨城の「ラントバ」、栃木の「ハガバ」、群馬、山梨などの「ハカ」、埼玉、新潟などの「ハカバ」、千葉の「ナント」、東京、神奈川などの「オハカ」、石川、和歌山などの「ハカショ」、岐阜の「サンメァー」、三重、滋賀などの「サンマイ」、岡山、熊本の「ハカワラ」、沖縄首里の「シンジュ」があります。

 上記のほか、沖縄首里の「ハカジー」などがあります。

 この「ぼち」、「ハガショ」、「オハガ」、「ランバ」、「ラントバ」、「ハガバ」、「ハカ」、「ハカバ」、「ナント」、「オハカ」、「ハカショ」、「サンメァー」、「サンマイ」、「ハカワラ」、「シンジュ」、「ハカジー」は、

  「パウ・チ」、PAU-TI(pau=consumed,denoting the vomplete or exhaustive character of any action;ti=throw,cast)、「(葬式を)完了して・(遺体を)埋める場所(墓地)」(「パウ」のAU音がO音に変化して「ボ」となった)

  「ハ(ン)ガ・チオ」、HANGA-TIO(hanga=make,work,thing,people;tio=cry,call)、「葬式を行って・(人々が)悲嘆に暮れる(場所)(墓地)」(「ハ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ハガ」と、「チオ」が「チョ」から「ショ」となった)

  「オ・ハ(ン)ガ」、O-HANGA(o=the...of;hanga=make,work,thing,people)、「例の・葬式を行う(場所)(墓地)」(「ハ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ハガ」となった)

  「ラ(ン)ガ・パ」、RANGA-PA(ranga=raise,rising ground in a plain;pa=prevent,stockade,fortified place)、「土を盛り上げて・周りを柵で囲った場所(墓地)」(「ラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ラナ」から「ラン」と、「パ」が「バ」となった)

  「ラ(ン)ガ・タウ・パ」、RANGA-TAU-PA(ranga=raise,rising ground in a plain;tau=come to rest,settle down;pa=prevent,stockade,fortified place)、「土を盛り上げて・そこで(死者が)休息する・周りを柵で囲った場所(墓地)」(「ラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ラナ」から「ラン」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「パ」が「バ」となった)

  「ハ(ン)ガ・パ」、HANGA-PA(hanga=make,work,thing,people;pa=prevent,stockade,fortified place)、「葬式を行う・周りを柵で囲った場所(墓地)」(「ハ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ハガ」と、「パ」が「バ」となった)

  「ハカ」、HAKA(deformed)、「(遺体が土に)変化する場所(墓地)」

  「ハカ・パ」、HAKA-PA(haka=deformed:pa=prevent,stockade,fortified place)、「(遺体が土に)変化する・周りを柵で囲った場所(墓地)」(「パ」が「バ」となった)

  「ナナ・タウ」、NANA-TAU(nana=tend carefully,nurse;tau=come to rest,settle down)、「丁寧に(扱う)葬られて・休息する場所(墓地)」(「ナナ」が「ナン」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となった)

  「オ・ハカ」、O-HAKA(o=the...of;haka=deformed)、「例の・(遺体が土に)変化する場所(墓地)」

  「ハカ・チオ」、HAKA-TIO(haka=deformed;tio=cry,call)、「(遺体が土に)変化する・(人々が)悲嘆に暮れる場所(墓地)」

  「タ(ン)ガ・マイ・イア」、TANGA-MAI-IA(tanga=be assembled;mai,maimai=affection(maimai aroha=token or expression of affection,song of affection for the dead);ia=indeed)、「実に・(故人への)哀悼の気持ちが・集まっている場所(墓地)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」、「サン」と、「マイ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「マイア」となり、そのAI音がE音にへんかして「メア」となった)

  「タ(ン)ガ・マイ」、TANGA-MAI(tanga=be assembled;mai,maimai=affection(maimai aroha=token or expression of affection,song of affection for the dead))、「(故人への)哀悼の気持ちが・集まっている場所(墓地)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」、「サン」となった)

  「ハカ・ワラ」、HAKA-WHARA(haka=deformed;whara=burial cave)、「(遺体が土に)変化する・(遺体を)埋葬する(洞穴、横穴などの)穴(墓地)」

  「チナ・チウ」、TINA-TIU(tina=fixed,firm,satisfied;tiu=soar,wander,swift)、「浮遊する(霊魂を)・閉じこめる場所(墓地)」(「チナ」が「チン」から「シン」と、「チウ」が「チュ」から「ジュ」となった)

  「ハカ・チヒ」、HAKA-TIHI(haka=deformed;tihi=summit,raised fortification or citadel within a stockade)、「(遺体が土に)変化する・集落の内部にある柵で囲った高い場所(墓地)」(「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「ジー」となった)

の転訛と解します。

「マ」

194また(股)・マッカンダ・ヨロタ・マタグラ・モモッケタ・ウチモモ・モモタン・マタバイ

 「また」の方言には、北海道、岩手などの「マッタ」(「また」と同語源)、青森の「マッカンダ」、秋田の「ヨロタ」、福島、茨城の「マダ」(「また」と同語源)、栃木、新潟などの「マタグラ」、千葉の「モモッケタ」、神奈川の「ウチモモ」、山口の「マタックラ」(「マタグラ」と同語源)、高知、熊本などの「マタクラ」(「マタグラ」と同語源)、大分の「モモタン」、鹿児島の「マタバイ」があります。

 この「また」、「マッカンダ」、「ヨロタ」、「マタグラ」、「モモッケタ」、「ウチモモ」、「モモタン」、「マタバイ」は、

  「マタ」、MATA(heap,layer,edge,headland)、「(足の)高い所の部分(股)」(「マタ」が「マッタ」、「マダ」となった)

  「マカ・(ン)ガタタ」、MAKA-NGATATA(maka=throw,cast,put,place;ngatata=split,chapped,open)、「(胴体から)二つに分かれて・伸びている部分(股)」(「マカ」が「マッカ」と、「(ン)ガタタ」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「ナタ」から「ンダ」となった)

  「イホ・ラウ・タ」、IHO-RAU-TA(iho=up above,from above,downwards;rau=project,extend;ta=dash,beat,lay)、「(胴体から)下へ・伸びて・いる部分(股)」(「イホ」のH音が脱落して「イオ」から「ヨ」と、「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」となった)

  「マタ・ク・ラ」、MATA-KU-RA(mata=heap,layer,edge,headland;ku=silent;ra,rara=twig,small branch)、「(足の)高い所の・(静かに)ただ・枝分かれしている部分(股)」(「マタ」が「マタッ」と、「ク」が「グ」となった)

  「モモケ・タ」、MOMOKE-TA(momoke=moke=solitary,solitary person;ta=dash,beat,lay)、「(衣服の蔭に隠れて)孤独に・している部分(股)」(「モモケ」が「モモッケ」となった)

  「フチ・モモ」、HUTI-MOMO(huti=hoist,haul up;momo=in good condition,well proportioned)、「良い均衡を保って・上へ伸びている(足の)部分(股)」(「フチ」のH音が脱落して「ウチ」となった)

  「モモ・タ(ン)ガ」、MOMO-TANGA(momo=in good condition,well proportioned;tanga=be assembled)、「良い均衡を保って・組み合わされている(足の)部分(股)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」となった)

  「マタ・パヒ」、MATA-PAHI(mata=heap,layer,edge,headland;ku=silent;pahi=large sea-going canoe(double canoe),company of travellers)、「(足の)高い所の・(ダブル・カヌーのように)対になっている部分(股)」(「パヒ」のH音が脱落して「バイ」となった)

の転訛と解します。

195まっすぐ・マッチグ・マッスー・スグイ・チョク・マッスグイ・マッスグカ・マットーバ

 「まっすぐ」の方言には、北海道、岩手などの「マッツグ」(「まっすぐ」と同語源)、秋田の「マッチグ」、長野の「マッスー」、兵庫の「スグイ」、奈良の「マスグ」(「まっすぐ」と同語源)、鳥取の「チョク」、島根の「マッシグ」(「マッチグ」と同語源)、岡山の「スギー」(「スグイ」と同語源)、山口の「マッスグイ」、高知の「マッスングイ」(「マッスグイ」と同語源)、福岡、佐賀の「マッスグカ」、熊本の「マッスンカ」(「マッスグカ」と同語源)、宮崎の「マッスギ」(「マッスグイ」と同語源)、鹿児島の「マッスッ」(「マッスー」と同語源)、沖縄那覇・首里の「マットーバ」があります。

 上記のほか、高知の「スングイ」(「スグイ」と同語源)があります。

 この「まっすぐ」、「マッチグ」、「マッスー」、「スグイ」、「チョク」、「マッスグイ」、「マッスグカ」、「マットーバ」は、

  「マ・アツ・(ン)グ(ン)グ」、MA-ATU-NGUNGU(ma=for,by means of,by way of,to emphasis(ma atu=go,come);atu=to indicate a direction or motion onwards;ngungu=lead astray,turn aside)、「方向を・示して・(道に迷った人を)案内する(まっすぐ)」(「マ・アツ」が「マッツ」から「マッス」または「マス」と、「(ン)グ(ン)グ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「グ」となった)

  「マチ・(ン)グ(ン)グ」、MATI-NGUNGU(mati,matimati=toe,and probably finger;ngungu=lead astray,turn aside)、「指差して・(道に迷った人を)案内する(まっすぐ)」(「マチ」が「マッチ」から「マッシ」と、「(ン)グ(ン)グ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「グ」となった)

  「マ・アツ」、MA-ATU(ma=for,by means of,by way of,to emphasis(ma atu=go,come);atu=to indicate a direction or motion onwards)、「方向を・示す(まっすぐ)」(「マ・アツ」が「マッツ」から「マッスー」または「マッスッ」となった)

  「ツ(ン)グ・ウイ」、TUNGU-I(tungu=kindle;ui=disentangle,unravel,ask)、「灯りを灯して・(道に迷った人の)困惑を解決する(まっすぐ)」(「ツ(ン)グ」語尾のU音と「ウイ」の語頭のU音が連結して「ツ(ン)グイ」となり、NG音がG音に変化して「ツグイ」から「スグイ」、「スギ」または「スギー」となった)

  「チホイ・オクオク」、TIHOI-OKUOKU(tihoi=diverge,turn aside,wander,unsettled;okuoku=few)、「殆ど・迷うことはない(道を示す)(まっすぐ)」(「チホイ」のH音および語尾のI音が脱落して「チオ」と、「オクオク」の反復語尾が脱落しテ「オク」なり、「チオ・オク」が「チョク」となった)

  「マ・ツ(ン)グ・ウイ」、MA-TUNGU-I(ma=for,by means of,by way of,to emphasis;tungu=kindle;ui=disentangle,unravel,ask)、「灯りを灯す・ことによって・(道に迷った人の)困惑を解決する(まっすぐ)」(「マ」が「マッ」と、「ツ(ン)グ」語尾のU音と「ウイ」の語頭のU音が連結して「ツ(ン)グイ」となり、NG音がG音に変化して「ツグイ」から「スグイ」または「スギ」となった。また「ツ(ン)グイ」が「スングイ」となった)

  「マ・アツ・(ン)グ(ン)グ・カ」、MA-ATU-NGUNGU-KA(ma=for,by means of,by way of,to emphasis(ma atu=go,come);atu=to indicate a direction or motion onwards;ngungu=lead astray,turn aside;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「方向を・示して・(道に迷った人を)案内する・ね(まっすぐ)」(「マ・アツ」が「マッツ」から「マッス」と、「(ン)グ(ン)グ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「グ」となった。また「(ン)グ(ン)グ」の反復語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「ヌ」から「ン」となった)

  「マ・アツ・トパ」、MA-ATU-TOPA(ma=for,by means of,by way of,to emphasis(ma atu=go,come);atu=to indicate a direction or motion onwards;topa=fly,soar,swoop)、「方向を・示して・(道に迷った人をs鳥が真っ直ぐ獲物を襲うように)案内する(まっすぐ)」(「マ」のA音と「アツ」の語頭のA音が連結して「マッ」と、「トパ」が「トーバ」となった)

の転訛と解します。

196まないた(俎・俎板)・サイバン・キリバン・セァバン・マナエダ・キーバン・マルチャ・マナチャ

 「まないた」の方言には、青森の「サイバン」、岩手、茨城の「セーバン」(「サイバン」と同語源)、宮城、福島などの「キリバン」、秋田の「セァバン」、山形、栃木の「マナエダ」、埼玉、長野の「マネータ」(「マナエダ」と同語源)、佐賀の「キーバン」、鹿児島の「マネタ」(「マナエダ」と同語源)、沖縄那覇の「マルチャ」、沖縄首里の「マナチャ」があります。

 この「まないた」、「サイバン」、「キリバン」、「セァバン」、「マナエダ」、「キーバン」、「マルチャ」、「マナチャ」は、

  「マナハ・イ・タ」、MANAHA-I-TA(manaha=open country,i.e.,clear trees,etc.;i=beside,for,with,by,at;ta=dash,beat,lay)、「清浄な盤面で・その上で・(食物を)切り刻むもの(俎板)」(「マナハ」のH音が脱落して「マナ」となった)

  「タイ・パ(ン)ガ」、TAI-PANA(tai,taitai=dash,strike,knock,brush;panga=throw,lay,place,aim a blow at)、「(その上で包丁を)使う際に・(下に)置くもの(俎板)」(「タイ」が「サイ」またはAI音がE音に変化して「テ」から「セー」と、「パ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「パナ」から「バン」となった)

  「キヒ・リ・パ(ン)ガ」、KIHI-RI-PANA(kihi=cut off,destroy completely;ri=screen.protect,bind;panga=throw,lay,place,aim a blow at)、「(その上で包丁で)切る際に・(食物以外を)保護するために・(下に)置くもの(俎板)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「パ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「パナ」から「バン」となった)

  「タイア・パ(ン)ガ」、TAIA-PANA(taia=neap of the tide,outer palisade of a stockade;panga=throw,lay,place,aim a blow at)、「(調理する食物の外側)下側に・置くもの(俎板)」(「タイア」のAI音がE音に変化して「テア」から「セア」と、「パ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「パナ」から「バン」となった)

  「マナハ・エ・タ」、MANAHA-E-TA(manaha=open country,i.e.,clear trees,etc.;e=to denote action in progress or temporary condition;ta=dash,beat,lay)、「清浄な盤面で・(その上で食物を)切り・刻むもの(俎板)」(「マナハ」のH音が脱落して「マナ」と、「タ」が「ダ」となった。また「マナ・エ」のAE音がE音に変化して「マネ」または「マネー」となった)

  「キヒ・パ(ン)ガ」、KIHI-PANA(kihi=cut off,destroy completely;panga=throw,lay,place,aim a blow at)、「(その上で包丁で)切る際に・(下に)置くもの(俎板)」(「キヒ」のH音が脱落して「キー」と、「パ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「パナ」から「バン」となった)

  「マル・チ・イア」、MARU-TI-IA(maru=shadow,shelter,shield,safeguard,a soft slaty stone;ti=throw,cast,overcome;ia=indeed)、「実に・(下に)置く・(食物以外を)保護するもの(俎板)」(「チ・イア」が「チャ」となった)

  「マナハ・チ・イア」、MANAHA-TI-IA(manaha=open country,i.e.,clear trees,etc.;ti=throw,cast,overcome;ia=indeed)、「実に・(下に)置く・清浄な盤面(俎板)」(「マナハ」のH音が脱落して「マナ」と、「チ・イア」が「チャ」となった)

の転訛と解します。

197まねく(招く)・ヨブ・ヨンバル・ヨバウ・ヨバル・キテモラウ・サソウ・ヒトオヨーッ・ッウンチケースン・ユブン・ヨバワル

 「まねく」の方言には、北海道、栃木などの「ヨブ」、青森、宮城の「ヨンバル」、岩手の「ヨバウ」、秋田、山形などの「ヨバル」、茨城の「マネグ」(「まねく」と同語源)、富山の「キテモラウ」、和歌山の「サソウ」、鹿児島の「ヒトオヨーッ」、沖縄那覇の「ッウンチケースン」、沖縄首里の「ユブン」があります。

 上記のほか、愛知の「ヨバワル」があります。

 この「まねく」、「ヨブ」、「ヨンバル」、「ヨバウ」、「ヨバル」、「キテモラウ」、「サソウ」、「ヒトオヨーッ」、「ッウンチケースン」、「ユブン」、「ヨバワル」は、

  「マネネ・ク」、MANENE-KU(maneneimportunate,begging,asking again and again;ku=silent,wearied,exhausted)、「疲れ果てるほど・(執拗に)人を招く(招く)」(「マネネ」の反復語尾が脱落して「マネ」となった。また「ク」が「グ」となった)

  「イオ・プ」、IO-PU(io=tough,hard,obstinate;pu=tribe,bunch,lie in a heap((Hawaii)pua=flock,herd))、「執拗に・仲間になろうと勧誘する(招く)」(「イオ」が「ヨ」と、「プ」が「ブ」となつた)

  「イオ・ナ・パ・ル」、IO-NA-PA-RU(io=tough,hard,obstinate;na=by,belonging to;pa=touch,reach,hold personal communication with,accost;ru=shake,agitate,scatter)、「執拗に・個人的な話し合い・めいたことを・したいと申し出る(招く)」(「イオ」が「ヨ」と、「ナ」が「ン」と、「パ」が「バ」となった)

  「イオ・パ・ウ」、IO-PA-U(io=tough,hard,obstinate;pa=touch,reach,hold personal communication with,accost;u=be firm,be fixed,reach its limit)、「執拗に・個人的な話し合いを・とことん求める(招く)」(「イオ」が「ヨ」と、「パ」が「バ」となった)

  「イオ・パ・ル」、IO-PA-RU(io=tough,hard,obstinate;pa=touch,reach,hold personal communication with,accost;ru=shake,agitate,scatter)、「執拗に・個人的な話し合いを・したいと申し出る(招く)」(「イオ」が「ヨ」と、「パ」が「バ」となった)

  「キテ・モ・ラウ」、KITE-MAU-RAU(kite=see,find,recognise;mo=for,for the benefit of,for the use of;rau,whakarau=take captive,laed away,confuse)、「(まず)逢えば・魅力の虜(とりこ)に・なる(招く)」

  「タタウ」、TATAU(draw or push a sliding board,squeeze,express)、「(家の)扉を開ける(招く)」(「タタウ」のAU音がOU音に変化して「タトウ」から「サソウ」となった)

  「ピト・ワウ・イオ・ツ」、PITO-WAU-IO-TU(pito=end,extremity,navel;wau=I,me;io=tough,hard,obstinate;tu=fight with,energetic)、「(四肢をもつ)人を・私は・執拗に・懸命に努力する(勧誘する)(招く)」(「ピト」のP音がF音を経てH音に変化して「ヒト」と、「ワウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「イオ」が「ヨー」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「ツ・ウネネ・チケ・ツ(ン)ガ」、TU-UNENE-TIKE-TUNGA(tu=fight with,energetic;unene=beg importunately;tike=lofty,high,important,exalted;tunga=send(tungatunga=beckon,make sign))、「懸命に・高い・敬意を払って・懇願する(招く)」(「ツ」が「ッ」と、「ウネネ」の反復語尾が脱落して「ウネ」から「ウン」と、「チケ」が「チケー」と、「ツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツナ」から「スン」となった)

  「イ・ウ・プ・ナ」、I-U-PU-NA(i=past tense,beside,for,with,by,at;u=be firm,be fixed,reach its limit;pu=tribe,bunch,lie in a heap((Hawaii)pua=flock,herd);na=by,belonging to)、「実に・とことん・仲間になろうと勧誘する・ような(招く)」(「イ・ウ」が「ユ」と、「プ」が「ブ」と、「ナ」が「ン」となつた)

  「イオ・パ・ワ・ル」、IO-PA-WA-RU(io=tough,hard,obstinate;pa=touch,reach,hold personal communication with,accost;wa=so and so(wawa=make a loud rumbling,roaring);ru=shake,agitate,scatter)、「執拗に・大きな声で・個人的な話し合いを・したいと申し出る(招く)」(「イオ」が「ヨ」と、「パ」が「バ」となった)

の転訛と解します。

198まぶしい(眩しい)・マッコイ・マンツコイ・マッペ・マツポエ・マチポイ・マジラッポエ・マジッペー・ヒデップシー・カガッポエ・マバヤシー・マブイ・ヒドロイ・ヒドロッコイ・カガハエー・ヒドロシー・ヒドロェー・マバイー・ヒズラシー・ババイー・マバユイ・マバイカ・マバユカ・メハリー・ミーヒチャラサン・ミーフィチャラサン

 「まぶしい」の方言には、北海道の「マッコイ」、青森の「マンツコイ」、岩手、秋田の「マッペ」、宮城の「マツポエ」、山形の「マズポエ」(「マツポエ」と同語源)、福島の「マチポイ」、茨城の「マジラッポエ」、栃木、群馬の「マジッペー」、埼玉、東京などの「マブシー」(「まぶしい」と同語源)、千葉の「ヒデップシー」、新潟の「カガッポエ」、富山の「マバヤシー」、福井、滋賀などの「マブイ」、山梨の「ヒドロイ」、長野の「ヒドロッコイ」、岐阜の「カガハエー」、静岡の「ヒドロシー」、愛知の「ヒドロェー」、三重、大阪などの「マバイー」、奈良、香川などの「マバイ」(「マバイー」と同語源)、岡山の「ヒズラシー」、広島の「ババイー」、山口の「マバユイ」、徳島の「ババイ」(「ババイー」と同語源)、福岡、熊本の「マバイカ」、佐賀、長崎の「マバユカ」、鹿児島の「メハリー」、沖縄那覇の「ミーヒチャラサン」、沖縄首里の「ミーフィチャラサン」があります。

 この「まぶしい」、「マッコイ」、「マンツコイ」、「マッペ」、「マツポエ」、「マチポイ」、「マジラッポエ」、「マジッペー」、「ヒデップシー」、「カガッポエ」、「マバヤシー」、「マブイ」、「ヒドロイ」、「ヒドロッコイ」、「カガハエー」、「ヒドロシー」、「ヒドロェー」、「マバイー」、「ヒズラシー」、「ババイー」、「マバユイ」、「マバイカ」、「マバユカ」、「メハリー」、「ミーヒチャラサン」、「ミーフィチャラサン」は、

  「マプ・チヒ」、MAPU-TIHI(mapu=whiz,sob,pant,shout,flow freely;tihi=summit,top)、「(太陽(の光)が)最高に・(まぶしいと)右往左往する(眩しい)」(「マプ」が「マブ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シイ」、「シー」となった)

  「マツ・コイ」、MATU-KOI(matu=ma atu=go,come;koi=move about)、「(太陽(の光)がまぶしいと)うろうろと・右往左往する(眩しい)」(「マツ」が「マッ」となった)

  「マ・ナツ・コイ」、MA-NATU-KOI(ma=to emphasis,for,by means of;natu=scratch,stir up,mix;koi=move about)、「(太陽(の光)がまぶしいと)ふらふらと・右往左往する(眩しい)」(「ナツ」が「ンツ」となった)

  「マツ・ペ」、MATU-PE(matu=ma atu=go,come;pe=crushed,soft)、「(太陽(の光)がまぶしいと)ふらふらになって・右往左往する(眩しい)」(「マツ」が「マッ」となった)

  「マツ・ポヘ」、MATU-POHE(matu=ma atu=go,come;pohe=withered,blind,stupid,dead)、「(太陽(の光)がまぶしいと)盲人のように・右往左往する(眩しい)」(「ポヘ」のH音が脱落して「ポエ」となった。また「マツ」が「マズ」となった)

  「マチ・ポイ」、MATI-POI(mati=surfeited;poi=swing,twirl,toss up and down)、「(太陽(の光)がまぶしいと)やたらに・はね回る(眩しい)」

  「マチラ・ポヘ」、MATIRA-POHE(matira=tilt up,point upwards;pohe=withered,blind,stupid,dead)、「(太陽の光がまぶしいと)盲人のように・上を指さす(眩しい)」(「マチラ」が「マジラッ」と、「ポヘ」のH音が脱落して「ポエ」となった)

  「マチ・ペ」、MATI-PE(mati=surfeited;pe=crushed,soft)、「(太陽(の光)がまぶしいと)ふらふらになって・へたり込む(眩しい)」(「マチ」が「マジッ」と、「ペ」が「ペー」となった)

  「ヒヒ・タイツ・プ・チヒ」、HIHI-TAITU-PU-TIHI(hihi=rays of the sun;taitu=take up,lift;pu=heap,stack;tihi=summit,top)、「太陽(の光)が・最高の・高さに・昇った(眩しい)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「タイツ」のAI音がE音に変化して「テツ」から「デッ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シー」となった)

  「カ(ン)ガ・ポヘ」、KANGA-POHE(kanga=verbal noun of ka=take fire,be lighted,burn;pohe=withered,blind,stupid,dead)、「燃える火が・(まぶしくて)目が見えなくなる(眩しい)」(「カ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「カガッ」と、「ポヘ」のH音が脱落して「ポエ」となった)

  「マハ・パイア・チヒ」、MAHA-PAIA-TIHI(maha=many,abundant;paia=pa=block up,obstruct,prevent,assault;tihi=summit,top)、「(太陽(の光)が)とてつもなく・最高に・襲ってくる(眩しい)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」と、「パイア」が「バヤ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シー」となった)

  「マプ・ウイ」、MAPU-UI(mapu=whiz,sob,pant,shout,flow freely;ui=disentangle,disengage,relax or loosen a noose,ask)、「(太陽(の光)がまぶしいと)解き放たれたように・右往左往する(眩しい)」(「マプ」の語尾のI音と「ウイ」の語頭のI音が連結して「マブイ」から「マブイ」となった)

  「ヒヒ・トロ・オイ」、HIHI-TORO-OI(hihi=rays of the sun;toro=burn,blaze;oi=shudder,move continuously,agitate)、「太陽(の光)が・躍起になって・照りつける(眩しい)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「トロ」の語尾のO音と「オイ」の語頭のO音が連結して「トロイ」から「ドロイ」となった)

  「ヒヒ・トロ・コイ」、HIHI-TORO-KOI(hihi=rays of the sun;toro=burn,blaze;koi=sharp,prickly,move about)、「太陽(の光)が・刺すように・照りつける(眩しい)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「トロ」が「ドロッ」となった)

  「カ(ン)ガ・ハエ」、KANGA-HAE(kanga=verbal noun of ka=take fire,be lighted,burn;hae=slit,ill feeling,cause pain)、「燃える火が・(まぶしくて)目が痛くなる(眩しい)」(「カ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「カガ」と、「ハエ」が「ハエー」となった)

  「ヒヒ・トロ・チヒ」、HIHI-TORO-TIHI(hihi=rays of the sun;toro=burn,blaze;tihi=summit,top)、「太陽(の光)が・最高に・照りつける(眩しい)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「トロ」が「ドロ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シー」となった)

  「ヒヒ・トロ・エ」、HIHI-TORO-E(hihi=rays of the sun;toro=burn,blaze;e=to give emphasis)、「太陽(の光)が・じりじりと・照りつける(眩しい)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「トロ」が「ドロ」と、「エ」が「ェー」となった)

  「マハ・パ・イヒ」、MAHA-PA-IHI(maha=many,abundant;pa=block up,obstruct,prevent,assault;ihi=shudder,quiver)、「(太陽(の光)が)とてつもなく・奮い立って・襲ってくる(眩しい)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」と、「パ」が「バ」と、「イヒ」のH音が脱落して「イ」または「イー」となった)

  「ヒヒ・ツラ・チヒ」、HIHI-TURA-TIHI(hihi=rays of the sun;tura,turatura=molest,spiteful;tihi=summit,top)、「太陽(の光)が・最高に・悩ませる(眩しい)」(「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「ツラ」が「ズラ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シー」となった)

  「パパ・イヒ」、PAPA-IHI(papa=be overcome,burst;ihi=shudder,quiver)、「(太陽(の光)に)奮い立って(襲われて)・圧倒される(眩しい)」(「パパ」が「グバ」と、「イヒ」のH音が脱落して「イ」または「イー」となった)

  「マハ・パ・イヒ・ウイ」、MAHA-PA-IHI-UI(maha=many,abundant;pa=block up,obstruct,prevent,assault;ihi=shudder,quiver;ui=disentangle,disengage,relax or loosen a noose,ask)、「(太陽(の光)が)とてつもなく・奮い立って・解き放たれたように・襲ってくる(眩しい)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」と、「パ」が「バ」と、「イヒ」のH音が脱落して「イ」となり、「イ・ウイ」が「ユイ」となった)

  「マハ・パ・イヒ・カ」、MAHA-PA-IHI-KA(maha=many,abundant;pa=block up,obstruct,prevent,assault;ihi=shudder,quiver;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「(太陽(の光)が)とてつもなく・奮い立って・襲ってくる・ね(眩しい)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」と、「パ」が「バ」と、「イヒ」のH音が脱落して「イ」となった)

  「マハ・パ・イヒ・ウカ」、MAHA-PA-IHI-UKA(maha=many,abundant;pa=block up,obstruct,prevent,assault;ihi=shudder,quiver;uka=hard,firm,be fixed)、「(太陽(の光)が)とてつもなく・奮い立って・激しく・襲ってくる(眩しい)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」と、「パ」が「バ」と、「イヒ」のH音が脱落して「イ」となり、「イ・ウカ」が「ユカ」となった)

  「メ・パリ」、ME-PARI(me=as if,as it were;pari=flowing,flow over)、「(太陽(の光)が)溢れかえっている・ようだ(眩しい)」(「パリ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハリー」となった)

  「ミヒ・ヒヒ・チ・アラ・タ(ン)ガ」、MIHI-HIHI-TI-ARA-TANGA(mihi=sigh for,greet,express discomfort;hihi=rays of the sun;ti=throw,cast:ara=rise,raise;tanga=be assembled)、「太陽(の光)が・怒って・高く昇り・かつ・(光を)放つ(眩しい)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミー」と、「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「チ・アラ」が「チャラ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

  「ミヒ・フイ・チ・アラ・タ(ン)ガ」、MIHI-HUI-TI-ARA-TANGA(mihi=sigh for,greet,express discomfort;hui=put or add together,come together,double up;ti=throw,cast:ara=rise,raise;tanga=be assembled)、「(太陽(の光)が)怒り・とともに・高く昇り・かつ・(光を)放つ(眩しい)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミー」と、「ヒヒ」の反復語尾が脱落して「ヒ」と、「チ・アラ」が「チャラ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

の転訛と解します。

199まめ・ヘゴマ・マデ・ネッズエ・マメナ・コズクガアル・コマメ・マメッタイ・リチギ・キジョーナ・キチョーメンナ・シンブズヨカ・マメカ・キチョーメン・マクトゥー・チグマ・ショーラシー・ヨジー

 「まめ」(労をいとわないできちょうめんに物事をするさま)の方言には、青森の「ヘゴマ」、岩手の「マデ」、宮城、秋田などの「マデー」(「マデ」と同語源)、山形の「ネッズエ」、石川、山口の「マメナ」、山梨の「マテ」(「マデ」と同語源)、長野の「コズクガアル」、岐阜、島根などの「コマメ」、静岡の「マメッタイ」、愛知の「リチギ」、岡山の「キジョーナ」、愛媛の「キチョーメンナ」、佐賀の「シンブズヨカ」、長崎、熊本の「マメカ」、大分の「キチョーメン」、沖縄那覇の「マクトゥー」、沖縄首里の「チグマ」があります。

 上記のほか、香川の「ショーラシー」、大分の「ヨジー」があります。

 この「まめ」、「ヘゴマ」、「マデ」、「ネッズエ」、「マメナ」、「コズクガアル」、「コマメ」、「マメッタイ」、「リチギ」、「キジョーナ」、「キチョーメンナ」、「シンブズヨカ」、「マメカ」、「キチョーメン」、「マクトゥー」、「チグマ」、「ショーラシー」、「ヨジー」は、

  「マハ・メ」、MAHA-ME(maha=many,abundance;me=with,denoting concomittance or concurrence in time)、「何回も・その都度同意を与える(まめ)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

  「ヘ(ン)ゴ・オマ」、HENGO-OMA(hengo=break wind;oma=move quickly,run,escape)、「敏捷に走って・風を避ける(まめ)」(「ヘ(ン)ゴ」の語尾のO音と「オマ」の語頭のO音が連結し、NG音がG音に変化して「ヘゴマ」となった)

  「マテ」、MATE(dead,extinguished,moving slowly,slack)、「ゆっくりと行動する(まめ)」)(「マテ」が「マデ」または「マデー」となった)

  「ネイ・ツイ・エ」、NEI-TUI-E(nei=stretched forward,reaching out;tui=pierce,lace,sew;e=to denote action in progress or temporary condition,callijng attention or expressing surprise)、「丹念に・縫う・ね(丁寧)」(「ネイ」の語尾のI音が脱落して「ネ」から「ネッ」と、「ツイ」の語尾のI音が脱落して「ツ」から「ズ」となった)

  「マハ・メ・ナ」、MAHA-ME-NA(maha=many,abundance;me=with,denoting concomittance or concurrence in time;na=by,belonging to)、「何回も・その都度同意を与える・というような行動をとる(まめ)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

  「カウ・ツク(ン)ガ・アル」、KAU-TUKUNGA-ARU(kau=alone,only;tukunga=place into which one may be received,person to receive guests;aru=follow,pursue)、「ただただ・お客として迎えてくれる人を・追いかける(まめ)」(「カウ」のAU音がOU音に変化して「コ」と、「ツク(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ズクガ」となった)

  「カウ・マハ・メ」、KAU-MAHA-ME(kau=alone,only;maha=many,abundance;me=with,denoting concomittance or concurrence in time)、「ただただ・何回も・その都度同意を与える(まめ)」(「カウ」のAU音がOU音に変化して「コ」と、「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

  「マハ・メ・タイ」、MAHA-ME-TAI(maha=many,abundance;me=with,denoting concomittance or concurrence in time;tai,taitai=dash,strike,knock,brush)、「何回も・きちんと・その都度同意を与える(まめ)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」と、「メ」が「メッ」となった)

  「リ・チ(ン)ギア」、RI-TINGI(ri=screen,protect,bind;tingia=ti=throw,cast)、「いちいち検閲を・する(まめ)」(「チ(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「チギ」となった)

  「キ・チオ・ナ」、KI-TIO-NA(ki=full,very;tio=cry,call;na=by,belonging to)、「しょっちゅう・大声を上げている・ような(まめ)」(「チオ」が「チョ」から「ジョー」となった)

  「キ・チオホ・メネ・ナ」、KI-TIOHO-MENE-NA(ki=full,very;tioho=apprehensive;mene=show wrinkles,contort the face;na=by,belonging to)、「しょっちゅう・心配して・顔を顰めている・ような(まめ)」(「チオホ」のH音が脱落して「チオオ」から「チョー」と、「メネ」が「メン」となった)

  「チノ・プ・ツ・イオ・カ」、TINO-PU-TU-IO-KA(tino=essenciality,self,reality;pu=origin,source,foot,base;tu=fight with,energetic;io=tough,hard,obstinate;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「本質的な・性格が・懸命に・執拗に努力する・のだね(まめ)」(「チノ」が「シン」と、「プ」が「ブ」と、「ツ」が「ズ」と、「イオ」が「ヨ」となった)

  「マハ・メ・カ」、MAHA-ME-KA(maha=many,abundance;me=with,denoting concomittance or concurrence in time;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「何回も・その都度同意を与える・(まめ)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

  「キ・チオホ・メネ」、KI-TIOHO-MENE(ki=full,very;tioho=apprehensive;mene=show wrinkles,contort the face)、「しょっちゅう・心配して・顔を顰めている(まめ)」(「チオホ」のH音が脱落して「チオオ」から「チョー」と、「メネ」が「メン」となった)

  「マク・トフ」、MAKU-TOHU(maku,mamaku=dress timber in a particular way with the adze;tohu=mark,point out,show)、「こつこつと材木を削る・ように働くことを示す(まめ)」(「トフ」のH音が脱落して「トゥー」となった)

  「チ・(ン)グ・ウマ(ン)ガ」、TI-NGU-UMANGA(ti=throw,cast,overcome;ngu=silent,greedy;umanga=pursuit,occupation,business)、「黙って・仕事を・やってのける(まめ)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となり、そのU音と「ウマ(ン)ガ」の語頭のU音が連結し、NG音がG音に変化し、語尾のNGA音が脱落して「グマ」となった)

  「チオホ・オラ・チヒ」、TIOHO-ORA-TIHI(tioho=apprehensive;mene=show wrinkles,contort the face;ora=alive,well in health,escape;tihi=summit,top)、「最高に・元気で・心配する(気配りする)(まめ)」(「チオホ」の語尾のO音と「オラ」の語頭のO音が連結し、H音が脱落して「チオオラ」から「ショーラ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シー」となった)

  「イオ・チヒ」、IO-TIHI(io=tough,hard,obstinate;tihi=summit,top)、「最高に・執拗に努力する(まめ)」(「イオ」が「ヨ」と、「チヒ」のH音が脱落して「ジー」なった)

の転訛と解します。

「ミ」

200みせびらかす(見せびらかす)・ミセブラガス・ミシェビラガス・ミシェズラガス・ミセビラガル・コーマンスル・セキラカス・ヘケラカス・ヒケラカス・セブカス・ケナリガス・セビラカス・ヘケラス・ミシェブラカス・ウラヤマシガラス・ミセタクッ・ミシーン・チュンカイミシーン・ヘケル

 「みせびらかす」の方言には、青森、宮城などの「ミセビラガス」(「みせびらかす」と同語源)、岩手の「ミセブラガス」、秋田の「ミシェビラガス」、山形の「ミシェズラガス」、神奈川の「ミセビラガル」、福井、滋賀などの「ミシェビラカス」(「ミシェビラガス」と同語源)、静岡の「コーマンスル」、愛知の「セキラカス」、大阪の「ヘケラカス」、奈良の「ヒケラカス」、鳥取の「セブカス」、岡山の「ケナリガス」、広島の「セビラカス」、香川の「ヘケラス」、福岡、大分の「ミセブラカス」(「ミセブラガス」と同語源)、佐賀の「ミシェブラカス」、長崎の「ウラヤマシガラス」、鹿児島の「ミセタクッ」、沖縄那覇の「ミシーン」、沖縄首里の「チュンカイミシーン」があります。

 上記のほか、香川の「ヘケル」があります。

 この「みせびらかす」、「ミセブラガス」、「ミシェビラガス」、「ミシェズラガス」、「ミセビラガル」、「コーマンスル」、「セキラカス」、「ヘケラカス」、「ヒケラカス」、「セブカス」、「ケナリガス」、「セビラカス」、「ヘケラス」、「ミシェブラカス」、「ウラヤマシガラス」、「ミセタクッ」、「ミシーン」、「チュンカイミシーン」、「ヘケル」は、

  「ミヒ・テ・ピ・ラカ・ツ」、MIHI-TE-PI-RAKA-TU(mihi=sigh for,greet,show itself;te=to make an emphatic statement;pi=young of birds etc.;raka=agile,adept,go,spread abroad;tu=fight with,energetic)、「とても・若さが・活発に・動き回ることを・見せつける(見せびらかす)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「テ」が「セ」と、「ピ」が「ビ」と、「ラカ」が「ラガ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ミヒ・テ・プ・ラカ・ツ」、MIHI-TE-PU-RAKA-TU(mihi=sigh for,greet,show itself;te=to make an emphatic statement;pu=origin,precise,exceedingly;raka=agile,adept,go,spread abroad;tu=fight with,energetic)、「とても・たいへん・活発に・動き回ることを・見せつける(見せびらかす)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「テ」が「セ」と、「プ」が「ブ」と、「ラカ」が「ラガ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ミヒ・チエ・ピ・ラカ・ツ」、MIHI-TIE-PI-RAKA-TU(mihi=sigh for,greet,show itself;tie=abundant,plenty;pi=young of birds etc.;raka=agile,adept,go,spread abroad;tu=fight with,energetic)、「十分に・若さが・活発に・動き回ることを・見せつける(見せびらかす)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「チエ」が「シェ」と、「ピ」が「ビ」と、「ラカ」が「ラガ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ミヒ・チエ・ツ・ラカ・ツ」、MIHI-TIE-PI-RAKA-TU(mihi=sigh for,greet,show itself;tie=abundant,plenty;tu=fight with,energetic;raka=agile,adept,go,spread abroad)、「十分に・懸命に努力し・活発に・動き回ることを・見せつける(見せびらかす)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「チエ」が「シェ」と、「ツ」が「ズ」と、「ラカ」が「ラガ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ミヒ・テ・ピ・ラカ・ル」、MIHI-TE-PI-RAKA-RU(mihi=sigh for,greet,show itself;te=to make an emphatic statement;pi=young of birds etc.;raka=agile,adept,go,spread abroad;ru=shake,agitate,scatter)、「とても・若さが・活発に・奮い立つことを・見せつける(見せびらかす)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「テ」が「セ」と、「ピ」が「ビ」と、「ラカ」が「ラガ」となった)

  「コウ・マニヒ・ツル」、KOU-MANIHI-TURU(kou=knob,dress the hair in a knot on the top of the head;manihi=make steep,smooth,narrow;turu=post,upright,build an eel pot(tuturu=fixed,permanent))、「頭の上に髷を・高く・結い上げる(みせびらかす)」(「コウ」が「コー」と、「マニヒ」のH音が脱落して「マニ」から「マン」と、「ツル」が「スル」となった)
  または「カウ・マヌ・ツ・ル」、KAU-MANU-TU-RU(kau=swim,wade;manu=person held in high esteem,kite for flying;tu=fight with,energetic;ru=shake,agitate,scatter)、「凧を・懸命に・上げて・泳がせる(みせびらかす)」または「高貴な人が・懸命に・泳ぎ・回る(みせびらかす)」(「カウ」のAU音がOU音に変化して「コー」と、「マヌ」が「マン」と、「ツ」が「ス」となった)

  「テ・キ・ラカ・ツ」、TE-KI-RAKA-TU(te=to make an emphatic statement;ki=full,very;raka=agile,adept,go,spread abroad;tu=fight with,energetic)、「とても・たいへん・活発に・動き回る(見せびらかす)」(「テ」が「セ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ヘケ・ラカ・ツ」、HEKE-RAKA-TU(heke=practise surf riding;raka=agile,adept,go,spread abroad;tu=fight with,energetic)、「波に乗って・活発に・動き回る(見せびらかす)」(「ツ」が「ス」となった)

  「ヒケイ・ラカ・ツ」、HIKEI-RAKA-TU(hikei=hop;raka=agile,adept,go,spread abroad;tu=fight with,energetic)、「ピョンピョン跳ねて・活発に・動き回る(見せびらかす)」(「ヒケイ」が「ヒケ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「テ・プ・カ・ツ」、TE-PU-KA-TU(te=to make an emphatic statement;pu=origin,precise,exceedingly;ka=take fire,be lighted,burn;tu=fight with,energetic)、「とても・たいへん・燃えるように熱くなって・動き回る(見せびらかす)」(「テ」が「セ」と、「プ」が「ブ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ケ・(ン)ガリ・カ・ツ」、KE-NGARI-KA-TU(ke=different,strange;ngari=annoyance,disturbance,greatness,power;ka=take fire,be lighted,burn;tu=fight with,energetic)、「変わった・すごい・燃えるように熱くなって・動き回る(見せびらかす)」(「(ン)ガリ」のNG音がN音に変化して「ナリ」と、「カ」が「ガ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「テ・ピ・ラカ・ツ」、TE-PI-RAKA-TU(te=to make an emphatic statement;pi=young of birds etc.;raka=agile,adept,go,spread abroad;tu=fight with,energetic)、「若さが・とても・活発に・動き回る(見せびらかす)」(「テ」が「セ」と、「ピ」が「ビ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ヘケ・ラハ・ツ」、HEKE-RAHA-TU(heke=practise surf riding;raha=open,extended;tu=fight with,energetic)、「波に乗って・ずっと・懸命に動き回る(見せびらかす)」(「ラハ」のH音が脱落して「ラ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ミヒ・チエ・プ・ラカ・ツ」、MIHI-TIE-PU-RAKA-TU(mihi=sigh for,greet,show itself;tie=abundant,plenty;pu=origin,precise,exceedingly;raka=agile,adept,go,spread abroad;tu=fight with,energetic)、「とても・たいへん・活発に・動き回ることを・見せつける(見せびらかす)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「チエ」が「シェ」と、「プ」が「ブ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ウラ・イア・マチ・(ン)ガラ・ツ」、URA-IA-MATI-NGARA-TU(ura=red,glow;ia=indeed;mati=surfeited;ngara=snarl;tu=stand,settle.fight with,energetic)、「実に・輝きに・満ちている・(ことに嫉妬して)唸り声を・上げる(みせびらかす)」(「イア」が「ヤ」と、「マチ」が「マシ」と、「(ン)ガラ」のNG音がG音に変化して「ガラ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ミヒ・テ・タク・ツ」、MIHI-TE-TAKU-TU(mihi=sigh for,greet,show itself;te=to make an emphatic statement;taku=slow;tu=fight with,energetic)、「懸命に・ゆっくりと・十分に・見せつける(見せびらかす)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「テ」が「セ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「ミヒ・チニ」、MIHI-TINI(mihi=sigh for,greet,show itself;tini=very,many)、「十分に・見せつける(見せびらかす)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「チニ」が「シーン」となった)

  「チ・ウ(ン)ガ・カイ」、TI-UNGA-KAI-MIHI-TINO(ti=throw,cast;unga=act or circumstance etc. of becoming firm,place etc. of arrival;kai=fulfil its proper function,have full play;mihi=sigh for,greet,show itself;tini=very,many)、「できる限りの・動作を・して・十分に・見せつける(見せびらかす)」(「ウ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウナ」から「ウン」となり、「チ・ウン」が「チュン」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「チニ」が「シーン」となった)

  「ヘケ・ル」、HEKE-RU(heke=practise surf riding;ru=shake,agitate,scatter)、「奮起して・波乗りをする(見せびらかす)」

の転訛と解します。

「ム」

201むく(剥く)・ヒンムグ・ミク・ムクジル・ハグ・ムーッ・ンーチュン・ミーッ

 「むく」の方言には、北海道、青森などの「ムグ」(「むく」と同語源)、栃木の「ヒンムグ」、新潟、長崎の「ミク」、山梨の「ムクジル」、島根の「ハグ」、高知の「ハング」(「ハグ」と同語源)、鹿児島の「ムーッ」、沖縄那覇・首里の「ンーチュン」があります。

 上記のほか、鹿児島の「ミーッ」(手で剥く。「ムーッ」は包丁で剥く)があります。

 この「むく」、「ヒンムグ」、「ミク」、「ムクジル」、「ハグ」、「ムーッ」、「ンーチュン」、「ミーッ」は、

  「ム・クイヒ」、MU-KUIHI(mu=silent;kuihi=peel off as bark)、「静かに・(皮を)剥く(剥く)」(「クイヒ」のH音が脱落して「クイ」となり、さらにその語尾のI音が脱落して「ク」から「グ」となった)

  「ヒ(ン)ガ・ム・クイヒ」、HINGA-MU-KUIHI(hinga=fall from an erect posiyion,lean;mu=silent;kuihi=peel off as bark)、「静かに・引きずり下ろすように・(皮を)剥く(剥く)」(「ヒ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ヒナ」から「ヒン」と、「クイヒ」のH音が脱落して「クイ」となり、さらにその語尾のI音が脱落して「ク」から「グ」となった)

  「ミミ・クイヒ」、MIMI-KUIHI(mimi=stream,urine,to void urine;kuihi=peel off as bark)、「川の流れが・(皮を)剥く(剥く)」(「ミミ」の反復語尾が脱落して「ミ」と、「クイヒ」のH音が脱落して「クイ」となり、さらにその語尾のI音が脱落して「ク」となった)

  「ム・クイヒ・チ・ル」、MU-KUIHI(mu=silent;kuihi=peel off as bark;ti=throw,cast;ru=shake,agitate,scatter)、「静かに・(奮起して)力を・入れて・(皮を)剥く(剥く)」(「クイヒ」のH音が脱落して「クイ」となり、さらにその語尾のI音が脱落して「ク」から「グ」と、「チ」が「ジ」となった)

  「ハ(ン)グ」、HANGU(scrape strips of flax with a shell to make it softer more pliable)、「(麻などの皮から軟らかくしなやかな繊維を取るために貝殻で)剥ぐ(剥く)」(「ハ(ン)グ」が「ハング」と、またはそのNG音がG音に変化して「ハグ」となった)

  「ムツ」、MUTU(brought to an end,cropped,having the end cut off(mutumutu=crop off appendages,truncate))、「(穀物などの殻を)剥ぐ(剥く)」(「ムツ」が「ムーッ」となった)

  「(ン)ガチ・ウヌ」、NGATI-UNU(ngati=tribal prefix;unu=pull off,put off)、「引きはがす・部類に属する(行為)(剥く)」(「(ン)ガチ」のNG音がN音に変化して「ナチ」から「ンーチ」と、「ウヌ」が「ュン」となった)

  「ミイ・イツ」、MII-ITU((Hawaii)mii=(short for umii)clasp;itu=side(whakaitu=aside,away))、「(穀物の殻などを)掴んで・(引き離す)剥ぐ(剥く)」(「ミイ・イツ」が「ミーッ」となった)

の転訛と解します。

202むす(蒸す)・フカス・オムス・ウムス・オモス・モシ・ッンブスン・ンブスン・モス

 「むす」の方言には、北海道、岩手などの「フカス」、山形の「オムス」、山梨、岡山などの「ウムス」、島根、福岡の「オモス」、鹿児島の「モシ」、沖縄那覇の「ッンブスン」、沖縄首里の「ンブスン」があります。

 上記のほか、福岡の「モス」があります。

 この「むす」、「フカス」、「オムス」、「ウムス」、「オモス」、「モシ」、「ッンブスン」、「ンブスン」、「モス」は、

  「ム・フ・ツ」、MU-HU-TU(mu=silent;hu=resound,bubble up;tu=fight with,energetic)、「(水が熱されて)静かに・懸命に・(泡を立てて)沸騰する(蒸す)」(「フ」のH音が脱落して「ウ」となり、「ム・ウ」が「ム」と、「ツ」が「ス」となった)

  「フ・カ・ツ」、HU-KA-TU(hu=resound,bubble up;ka=take fire,be lighted,burn;tu=fight with,energetic)、「火が燃やされて・(水が)懸命に・(泡を立てて)沸騰する(蒸す)」(「ツ」が「ス」となった)

  「オ・ム・フ・ツ」、O-MU-HU-TU(o=the...of;mu=silent;hu=resound,bubble up;tu=fight with,energetic)、「例の・(水が熱されて)静かに・懸命に・(泡を立てて)沸騰する(蒸す)」(「フ」のH音が脱落して「ウ」となり、「ム・ウ」が「ム」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ウム・ツ」、UMU-TU(umu=earth oven;tu=fight with,energetic)、「大地の蒸し焼き竈(の中の食物)が・懸命に(加熱調理される)蒸し焼きされる(蒸す)」(「ツ」が「ス」となった)

  「オ・マウ・フ・ツ」、O-MAU-HU-TU(o=the...of;mau=food product;hu=resound,bubble up;tu=fight with,energetic)、「例の・食物を(調理するのに)・(水を熱して)懸命に・(泡を立てて)沸騰させる(蒸す)」(「フ」のH音が脱落して「ウ」となつたそのU音と「マウ」の語尾のU音が連結して「マウ」となり、そのAU音がO音に変化して「モ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「モチ」、MOTI(consumed,scarce,surfeited)、「(食物が蒸気を当てられて消耗する)蒸される(蒸す)」(「モチ」が「モシ」となった)

  「ツ・ナ・ププ・ツヌ」、TU-NA-PUPU-TUNU(tu=fight with,energetic;na=by,belonging to,by way of;pupu=bubble up,boil,rise as fog;tunu=roast,broil)、「懸命に(水を熱して)・(泡を立てて)沸騰させる・方法で・加熱する(蒸す)」(「ツ」が「ッ」と、「ナ」が「ン」と、「ププ」の反復語尾が脱落して「ブ」と、「ツヌ」が「スン」となった)

  「ナ・ププ・ツヌ」、NA-PUPU-TUNU(na=by,belonging to,by way of;pupu=bubble up,boil,rise as fog;tunu=roast,broil)、「(水を熱して泡を立てて)沸騰させる・方法で・加熱する(蒸す)」(「ナ」が「ン」と、「ププ」の反復語尾が脱落して「ブ」と、「ツヌ」が「スン」となった)

  「マウ・フ・ツ」、MAU-HU-TU(mau=food product;hu=resound,bubble up;tu=fight with,energetic)、「食物を(調理するのに)・(水を熱して)懸命に・(泡を立てて)沸騰させる(蒸す)」(「フ」のH音が脱落して「ウ」となつたそのU音と「マウ」の語尾のU音が連結して「マウ」となり、そのAU音がO音に変化して「モ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

203むずかる・ダハンコグ・ムンズガル・ムンツケル・ズゴネル・ムジケル・ダダコネル・ズグネル・グズル・ナンカンユー・ジャミル・ヤンチャマク・ドジル・ヤカラキル・グズグズユー・ダラケル・グンタハル・ヤゴイー・ネダレル・ホグレル・ヤカラユー・ダダオコネル・グゼル・アセガル・ゴネル・ヤカラオユーッ・フンレースン・アカングワヌウティチカン・ゴンボホル・イジレル・タダケル・ヤゴガデー・クジュークル・ネジカリュー

 「むずかる」の方言には、北海道の「ダハンコグ」、青森の「ムンズガル」、岩手の「ムンツケル」、宮城、山形の「ズゴネル」、秋田の「ムジケル」、福島、富山の「ダダコネル」、茨城、大阪の「ムツカル」(「むずかる」と同語源)、栃木の「ズグネル」、群馬、千葉などの「グズル」、埼玉の「ナンカンユー」、新潟の「ジャミル」、石川の「ヤンチャマク」、山梨の「ドジル」、三重の「ヤカラキル」、滋賀の「グズグズユー」、奈良の「ダラケル」、和歌山の「グンタハル」、島根の「ヤゴイー」、岡山の「ネダレル」、山口の「ホグレル」、徳島の「ヤカラユー」、愛媛の「ダダオコネル」、高知の「ングズル」(「グズル」と同語源)、福岡、熊本の「グゼル」、佐賀の「アセガル」、長崎の「ゴネル」、鹿児島の「ヤカラオユーッ」、沖縄那覇の「フンレースン」、沖縄首里の「アカングワヌウティチカン」があります。

 上記のほか、青森の「ゴンボホル」、長野の「イジレル」(程度が大)、京都の「タダケル」、島根の「ヤゴガデー」、広島の「クジュークル」(古)、徳島の「ネジカリュー」(なかなか眠れずぐずぐず言う)などがあります。

 この「むずかる」、「ダハンコグ」、「ムンズガル」、「ムンツケル」、「ズゴネル」、「ムジケル」、「ダダコネル」、「ズグネル」、「グズル」、「ナンカンユー」、「ジャミル」、「ヤンチャマク」、「ドジル」、「ヤカラキル」、「グズグズユー」、「ダラケル」、「グンタハル」、「ヤゴイー」、「ネダレル」、「ホグレル」、「ヤカラユー」、「ダダオコネル」、「グゼル」、「アセガル」、「ゴネル」、「ヤカラオユーッ」、「フンレースン」、「アカングワヌウティチカン」、「ゴンボホル」、「イジレル」、「タダケル」、「ヤゴガデー」、「クジュークル」、「ネジカリュー」は、

  「ムム・ツ・カ・ル」、MUMU-TU-KA-RU(mumu=baffling,boisterous wind,valiant warrior;tu=fight with,energetic;ka=take fire,be lighted,burn;ru=shake,agitate,scatter)、「荒々しく・懸命に・火が付いたように・身を震わせる(むずかる)」(「ムム」の反復語尾が脱落して「ム」と、「ツ」が「ズ」となった)

  「タハ・ナ・カウ・(ン)グ」、TAHA-NA-KAU-NGU(taha=side,spasmodic twitching of the muscles;na=by,belonging to;kau=alone,only;ngu=greedy,moan,groan)、「痙攣を起こした・ように・ひたすら・うめき声を上げる(むずかる)」(「タハ」が「ダハ」と、「ナ」が「ン」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「ムム・ナ・ツ・カ・ル」、MUMU-NA-TU-KA-RU(mumu=baffling,boisterous wind,valiant warrior;na=by,belonging to;tu=fight with,energetic;ka=take fire,be lighted,burn;ru=shake,agitate,scatter)、「暴風・のように・懸命に・火が付いたように・身を震わせる(むずかる)」(「ムム」の反復語尾が脱落して「ム」と、「ナ」が「ン」と、「ツ」が「ズ」と、「カ」が「ガ」となった)

  「ムム・ナ・ツ・ケ・ル」、MUMU-NA-TU-KE-RU(mumu=baffling,boisterous wind,valiant warrior;na=by,belonging to;tu=fight with,energetic;ke=different,strange,extraordinary;ru=shake,agitate,scatter)、「暴風・のように・懸命に・並外れて・身を震わせる(むずかる)」(「ムム」の反復語尾が脱落して「ム」と、「ナ」が「ン」と、「ツ」が「ズ」となった)

  「ツ・(ン)ゴ・ネイ・ル」、TU-NGO-NEI-RU(tu=fight with,energetic;ngo=cry,grunt;nei,neinei=stretch forward,wagging,bobbing up and down;ru=shake,agitate,scatter)、「懸命に・うめき・手足をバタバタさせ・身を震わせる(むずかる)」(「ツ」が「ズ」と、「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「ネイ」が「ネ」となった)

  「ムム・チ・ケ・ル」、MUMU-TI-KE-RU(mumu=baffling,boisterous wind,valiant warrior;ti=throw,cast;ke=different,strange,extraordinary;ru=shake,agitate,scatter)、「暴風を・吹かすように・並外れて・身を震わせる(むずかる)」(「ムム」の反復語尾が脱落して「ム」と、「チ」が「ジ」となった)

  「タタ・カウ・ネイ・ル」、TATA-KAU-NEI-RU(tata=dash down,beat down,strike repeatedly,suddenly;kau=alone,only;nei,neinei=stretch forward,wagging,bobbing up and down;ru=shake,agitate,scatter)、「暴れ出して・ひたすら・手足をバタバタさせ・身を震わせる(むずかる)」(「タタ」が「ダダ」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「ネイ」が「ネ」となった)

  「ツ・(ン)グ・ネイ・ル」、TU-NGU-NEI-RU(tu=fight with,energetic;ngu=greedy,moan,groan;nei,neinei=stretch forward,wagging,bobbing up and down;ru=shake,agitate,scatter)、「懸命に・うめき声を上げ・手足をバタバタさせ・身を震わせる(むずかる)」(「ツ」が「ズ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「ネイ」が「ネ」となった)

  「(ン)グ・ツ・ル」、NGU-TU-RU(ngu=greedy,moan,groan;tu=fight with,energetic;ru=shake,agitate,scatter)、「うめき声を上げ・懸命に・身を震わせる(むずかる)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「ツ」が「ズ」となった。また「(ン)グ」が「ング」となった)

  「ナナ・カヌ・イ・ウ」、NANA-KANU-I-U(nana=eyebrow,look!,behold!,raging in passion;kanu=ragged,torn,distracted;(Hawaii)i=to say,speak;u=be firm,be fixed,reach its limit)、「(見てとか)なんだ・(叱るとか)かんだと・(荒々しいことを)とことん・言う(むずかる)」(「ナナ」が「ナン」と、「カヌ」が「カン」と、「イ・ウ」が「ユー」となった)

  「チア・ミヒ・ル」、TIA-MIHI-RU(tia=stick in,take a vigorous stroke in paddling;mihi=sigh for,express discomfort;ru=shake,agitate,scatter)、「(櫂で漕ぐように)手足をバタバタさせ・不快感を露わにして・身を震わせる(むずかる)」(「チア」が「ジャ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

  「イア・ナ・チア・マク」、IA-NA-TIA-MAKU(ia=indeed;na=by,belonging to;tia=stick in,take a vigorous stroke in paddling;maku=wet,moist,dress timber in a particular way with the adze)、「実に・(櫂で漕ぐように)手足をバタバタさせ・斧で材木を削る・ような動きをする(むずかる)」(「イア」が「ヤ」と、「ナ」が「ン」と、「チア」が「チャ」となった)

  「ト・チ・ル」、TO-TI-RU(to=drag,open or shut a door or window;ti=throw,cast;ru=shake,agitate,scatter)、「(戸を開閉するように手を)前後に動かしたり・(身体を)投げ出して・身を震わせる(むずかる)」(「ト」が「ド」と、「チ」が「ジ」となった)

  「イア・カ・ラハキ・ル」、IA-KA-RAHAKI-RU(ia=indeed;ka=take fire,be lighted,burn;rahaki=one side,situation out of the way;ru=shake,agitate,scatter)、「実に・火が付いたように(泣いて)・道の脇で・身体をバタバタさせる(むずかる)」(「イア」が「ヤ」と、「ラハキ」のH音が脱落して「ラキ」となった)

  「(ン)グ・ツ・(ン)グ・ツ・イ・ウ」、NGU-TU-NGU-TU-I-U(ngu=greedy,moan,groan;tu=fight with,energetic;(Hawaii)i=to say,speak;u=be firm,be fixed,reach its limit)、「懸命に・うめき声を上げ・懸命に・うめき声を・とことん・言う(むずかる)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「ツ」が「ズ」と、「イ・ウ」が「ユー」となった)

  「タラ・ケ・ル」、TARA-KE-RU(tara=make a buzzing or rattling or other inarticulate sound,stridulate,gossip;ke=different,strange,extraordinary;ru=shake,agitate,scatter)、「とんでもない声を出し・並外れて・身を震わせる(むずかる)」(「タラ」が「ダラ」となった)

  「(ン)グ(ン)グ・タハ・ル」、NGUNGU-TAHA-RU(ngungu=ngu=greedy,moan,groan;taha=side,spasmodic twitching of the muscles;ru=shake,agitate,scatter)、「うめき声を上げ・痙攣を起こしたように・身を震わせる(むずかる)」(「(ン)グ(ン)グ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「グヌ」から「グン」となった)

  「イア・(ン)ゴ・イヒ」、IA-NGO-IHI(ia=indeed;ngo=cry,grunt;ihi=shudder,quiver)、「実に・うめき声を上げ・身を震わせる(むずかる)」(「イア」が「ヤ」と、「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「イヒ」のH音が脱落して「イー」となった)

  「ネイ・タレ・ル」、NEI-TARE-RU(nei,neinei=stretch forward,wagging,bobbing up and down;tare=hang,gasp for breath,be drawn towards;ru=shake,agitate,scatter)、「手足をバタバタさせ・あえぎながら・身を震わせる(むずかる)」(「ネイ」が「ネ」と、「タレ」が「ダレ」となった)

  「ホ・(ン)グレ・ル」、HO-NGURE-RU(ho=pout,shout;ngure,ngurengure=an insect pest that attcks sweet-potato;ru=shake,agitate,scatter)、「息も絶え絶えに・叫び声を上げながら・身を震わせる(むずかる)」(「(ン)グレ」のNG音がG音に変化して「グレ」となった)

  「イア・カ・ラハ・イ・ウ」、IA-KA-RAHA-I-U(ia=indeed;ka=take fire,be lighted,burn;raha=open,extended;(Hawaii)i=to say,speak;u=be firm,be fixed,reach its limit)、「実に・火が付いたように・(声を)延ばして・とことん・しゃべる(むずかる)」(「イア」が「ヤ」と、「ラハ」のH音が脱落して「ラ」と、「イ・ウ」が「ユー」となった)

  「タタ・ワウ・カウ・ネイ・ル」、TATA-WAU-KAU-NEI-RU(tata=dash down,beat down,strike repeatedly,suddenly;wau=quarrel,make a noise,discuss;kau=alone,only;nei,neinei=stretch forward,wagging,bobbing up and down;ru=shake,agitate,scatter)、「暴れて・大きな声を出し・ひたすら・手足をバタバタさせ・身を震わせる(むずかる)」(「タタ」が「ダダ」と、「ワウ」のAU音がO音に変化して「ヲ」から「オ」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「ネイ」が「ネ」となった)

  「(ン)グ・テ・ル」、NGU-TE-RU(ngu=greedy,moan,groan;te=to make an empharic statement;ru=shake,agitate,scatter)、「実に・うめき声を上げ・身を震わせる(むずかる)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「テ」が「ゼ」となった)

  「アテ・(ン)ガル」、ATE-NGARU(ate=liver,heart,spirit;ngaru=wave of the sea,corrugation)、「心が・海の波のように揺れている(むずかる)」(「アテ」が「アセ」と、「(ン)ガル」のNG音がG音に変化して「ガル」となった)

  「(ン)ゴ・ネイ・ル」、NGO-NEI-RU(ngo=cry,grunt;nei,neinei=stretch forward,wagging,bobbing up and down;ru=shake,agitate,scatter)、「うめき・手足をバタバタさせ・身を震わせる(むずかる)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「ネイ」が「ネ」となった)

  「イア・カ・ラハ・ワウ・イ・ウ」、IA-KA-RAHA-WAU-I-U(ia=indeed;ka=take fire,be lighted,burn;raha=open,extended;wau=quarrel,make a noise,discuss;(Hawaii)i=to say,speak;u=be firm,be fixed,reach its limit)、「実に・火が付いたように・(声を)延ばして・大きな声を出し・とことん・しゃべる(むずかる)」(「イア」が「ヤ」と、「ラハ」のH音が脱落して「ラ」と、「ワウ」のAU音がO音に変化して「ヲ」から「オ」と、「イ・ウ」が「ユー」となった)

  「フ(ン)ガレイ・ツ(ン)ガ」、HUNGAREI-TUNGA(hungarei=father-in-law,mother-in-law;tunga=circumstance of being wound)、「義理の父母を・傷つける(仕業。実の父母であればかえって可愛さが増す仕業)(むずかる)」(「フ(ン)ガレイ」のNG音がN音に変化して「フナレイ」から「フンレー」と、「ツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツナ」から「スン」となった)

  「アカ・(ン)グ(ン)グ・ウア・ヌイ・ウ・テイ・チカ(ン)ガ」、AKA-NGUNGU-UA-NUI-U-TEI-TIKANGA(aka=yearning,affection;ngu,ngungu=greedy,moan,groan;ua=backbone;nui=large,many;u=be firm,be fixed,reach its limit;tei=high,tall,top;tikanga=rule,method,custom,reason)、「全力を振り絞って・泣きわめく・背骨を・一杯に・高く(硬直させて)・いつものように(むずかる)」(「(ン)グ(ン)グ」の最初のNG音がN音に、次のNG音がG音に変化して「ング」と、「ウア」が「ワ」と、「ヌイ」が「ヌ」と、「テイ」が「ティ」と、「チカ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「チカナ」から「チカン」となった)

  「(ン)ゴ(ン)ガ・パウ・ホ・ル」、NGONGA-PAU-HO-RU(ngonga=beaten,crushed;pau=consumed.exhausted;ho=pout,shout;ru=shake,agitate,scatter)、「(最後に)疲れて・ぐったりするまで・叫び声を上げながら・身を震わせる(むずかる)」(「(ン)ゴ(ン)ガ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ゴナ」から「ゴン」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ボ」となった)

  「イチ・レア・ル」、ITI-REA-RU(iti=small;rea=spring up,multiply,numerous;ru=shake,agitate,scatter)、「小さな子が・数え切れないほど・身を震わせる(むずかる)」(「イチ」が「イジ」と、「レア」が「レ」となった)

  「タタ・ケ・ル」、TATA-KE-RU(tata=dash down,beat down,strike repeatedly,suddenly;ke=different,strange,extraordinary;ru=shake,agitate,scatter)、「異常に・暴れて・身を震わせる(むずかる)」(「タタ」が「タダ」となった)

  「イア・(ン)ゴ・(ン)ガ・テイ」、IA-NGO-NGA-TEI(ia=indeed;ngo=cry,grunt;nga=satisfied,content;tei=high,tall,top)、「実に・最高に・満足するまで・泣きわめく(むずかる)」(「イア」が「ヤ」と、「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「テイ」が「デー」となった)

  「クチ・ウ・クル」、KUTI-U-KURU(kuti=draw tightly together,contract(kutikuti=open and shut alternately);u=be firm,be fixed,reach its limit;kuru=strike with the fist,pound)、「手足を・とことんバタつかせ・(周りを)叩く(むずかる)」(「クチ・ウ」が「クジュー」となった)

  「ネイ・チカ・リウ」、NE-TIKA-RIU(nei,neinei=stretch forward,reaching out,wagging,bobbing up and down;tika=shrill;riu=pass by,disappear)、「手足をバタバタさせ・金切り声を上げ・(やがて)泣き止んで静かになる(むずかる)」(「ネイ」が「ネ」と、「チカ」が「ジカ」と、「リウ」が「リュー」となった)

の転訛と解します。

「メ」

204めだか(目高)・メザッコ・メンダガッコ・アソビザッコ・メダガ・ペンペンダコ・ウルメ・トロメンコ・ミトバヨ・メメジャコ・ネンパゴ・チリンビヤ・カンコロ・タイコンボー・ベベン・ビビン・メンダカ・ゾーナメ・ビビンチョ・タカマメ・タカマーミ・ウルメコ・オキンタ・オキンチャ・オキンチャボ・コメンジャコ・チリンゴ・ビビンジャコ・メメンジャコ

 「めだか」の方言には、岩手、栃木の「メザッコ」、宮城の「メンダガッコ」、秋田の「アソビザッコ」、山形の「メダガ」、茨城の「ペンペンダコ」、新潟の「ウルメ」、静岡の「トロメンコ」、三重の「ミトバヨ」、大阪の「メメジャコ」、和歌山の「メッタン」(「メダガ」と同語源)、島根の「ネンパゴ」、岡山の「チリンビヤ」、広島の「カンコロ」、山口の「タイコンボー」、徳島の「ベベン」、香川の「ビビン」、高知の「メンダカ」、熊本の「ゾーナメ」、宮崎の「ビビンチョ」、鹿児島の「タカマメ」、沖縄首里の「タカマーミ」があります。

 上記のほか、秋田の「ウルメコ」、京都の「オキンタ」(古)、「オキンチャ」(古)、「オキンチャボ」(古)、「コメンジャコ」(古)、岡山の「チリンゴ」、香川の「ビビンジャコ」、「メメンジャコ」などがあります。

 この「めだか」、「メザッコ」、「メンダガッコ」、「アソビザッコ」、「メダガ」、「ペンペンダコ」、「ウルメ」、「トロメンコ」、「ミトバヨ」、「メメジャコ」、「ネンパゴ」、「チリンビヤ」、「カンコロ」、「タイコンボー」、「ベベン」、「ビビン」、「メンダカ」、「ゾーナメ」、「ビビンチョ」、「タカマメ」、「タカマーミ」、「ウルメコ」、「オキンタ」、「オキンチャ」、「オキンチャボ」、「コメンジャコ」、「チリンゴ」、「ビビンジャコ」、「メメンジャコ」は、

  「メ・タカ」、ME-TAKA(me=abbreviation of mei(according to,judging by)-me(thing);taka=heap,lie in a heap,heap up)、「(体の割に大きな)目(を持つ魚)で・(水面近くを)群れをなして泳ぐもの(目高)」(「タカ」が「ダカ」となった)

  「メ・タ・アカウ」、ME-TA-AKAU(me=abbreviation of mei(according to,judging by)-me(thing);ta=dash,beat,lay;akau=shore,coast,bank of a stream)、「(体の割に大きな)目(を持つ魚)で・岸近くに・居るもの(目高)」(「タ」のA音と「アカウ」の語頭のA音が連結して「タカウ」となり、AU音がO音に変化して「タコ」から「ザッコ」となった)

  「メ・ナ・タ(ン)ガ・アカウ」、ME-NA-TANGA-AKAU(me=abbreviation of mei(according to,judging by)-me(thing);na=by,belonging to;tanga=be assembled;akau=shore,coast,bank of a stream)、「(体の割に大きな)目(を持つ)・部類に属する魚で・岸近くに・いつも(離れずに)居るもの(目高)」(「ナ」が「ン」と、「タ(ン)ガ」の語尾のA音と「アカウ」の語頭のA音が連結して「タ(ン)ガカウ」となり、NG音がG音に、AU音がO音に変化して「タガコ」から「ダガッコ」となった)

  「ア・タウ・ピ・タ・アカウ」、A-TAU-PI-TA-AKAU(a=the ...of;tau=come to rest,float,be steeping in water;pi=young of birds etc.;ta=dash,beat,lay;akau=shore,coast,bank of a stream)、「例の・(水の中を)遊弋する・小さな魚で・岸近くに・居るもの(目高)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「ピ」が「ビ」と、「タ」のA音と「アカウ」の語頭のA音が連結して「タカウ」となり、AU音がO音に変化して「タコ」から「ザッコ」となった)

  「メ・タ(ン)ガ」、ME-TANGA(me=abbreviation of mei(according to,judging by)-me(thing);tanga=be assembled)、「(体の割に大きな)目(を持つ魚)で・群れをなしているもの(目高)」(「タ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「タガ」から「ダガ」となった。また「メ」が「メッ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」となった)

  「ペナペナ・タ・アカウ」、PENEPENE-TA-AKAU(penapena=take care of,tend;ta=dash,beat,lay;akau=shore,coast,bank of a stream)、「(子供が)飼養する魚で・岸近くに・居るもの(目高)」(「ペナペナ」が「ペンペン」と、「タ」のA音と「アカウ」の語頭のA音が連結して「タカウ」となり、AU音がO音に変化して「タコ」から「ダコ」となった)

  「ウル・メ」、URU-ME(uru=head,top,upper end,appear above the horizen;me=abbreviation of mei(according to,judging by)-me(thing))、「(体の割に大きな)目が・頭にある魚(目高)」

  「トロ・メ・ナコ」、TORO-ME-NAKO(toro=stretch forth,survey,explore;me=abbreviation of mei(according to,judging by)-me(thing);nako=fern-bird(nakonako=adorn,ornament))、「(周囲を)見渡す・(体の割に大きな)目で・(体を)飾っている魚(目高)」(「ナコ」が「ンコ」となった)

  「ミト・パ・イオ」、MITO-PA-IO(mito,whakamito=pout;pa=touch,reach,prevent,assault;io=tough,hard,obstinate)、「口を尖らせて・しつこく・(水草などを)つつく魚(目高)」(「パ」が「バ」と、「イオ」が「ヨ」となった)

  「メイ・メ・チア・コ」、MEI-ME-TIA-KO(mei=according to,judging by;me=thing;tia=stick in,adorn by sticking in feathers;ko=addressing to girl or males)、「見ることによって・物を認識するもの(=目。大きな目を持つ魚)で・(体を赤い羽根で)飾っている・奴(魚)(目高)」(「メイ」の語尾のI音が脱落して「メ」と、「チア」が「チャ」から「ジャ」となった)

  「ネネ・パ・コ」、NENE-PA-KO(nene=fat,jest,be saucy;pa=touch,reach,prevent,assault;ko=addressing to girl or males)、「活発に・(水草などを)つつく・奴(魚)(目高)」(「ネネ」が「ネン」と、「パ」が「バ」となった)

  「チ・リノ・ピ・イア」、TI-RINO-PI-TA(ti=throw,cast;rino=swirl,eddy,twist,circle;pi=young of birds etc.;ia=indeed)、「(水の中を)円を描いて・遊弋する・実に・小さな魚(目高)」(「リノ」が「リン」と、「ピ」が「ビ」と、「イア」が「ヤ」となった)

  「カナ・コロ」、KANA-KORO(kana=stare wildly,bewitch;koro=desire,intend,a term of address to an adult male)、「(大きな目で)魔法を掛け・ようとしている魚(目高)」(「カナ」が「カン」となった)

  「タイ・コネ・ポウ」、TAI-KONE-POU(tai=the coast,dash,knock;kone,konekone=shy,bashful;pou=pole,appoint,pour out)、「口を尖らせて・おずおずと・(水草などを)つつく魚(目高)」(「コネ」が「コン」と、「ポウ」が「ボー」となった)

  「ペペヌ」、PEPENU(smeared,painted)、「(色が)塗られた(魚)(目高)」(「ペペヌ」が「ペペン」となった)

  「ピピネ」、PIPINE(close together)、「(体が締まっている)小さい(魚)(目高)」(「ピピネ」が「ビビン」となった)

  「メ・ナ・タカ」、ME-NA-TAKA(me=abbreviation of mei(according to,judging by)-me(thing);na=by,belonging to;taka=heap,lie in a heap,heap up)、「(体の割に大きな)目(を持つ魚)の・部類に属する・(水面近くを)群れをなして泳ぐもの(目高)」(「ナ」が「ン」と、「タカ」が「ダカ」となった)

  「トフ・ナ・アマイ」、TOHU-NA-AMAI(tohu=mark,point out,show;na=by,belonging to;amai=giddy,dizzy)、「きらきらした・部類に属する・外観を見せている(魚)(目高)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ゾー」と、「ナ」のA音と「アマイ」の語頭のA音が連結して「ナマイ」となり、AI音がE音に変化して「ナメ」となった)

  「ピピネ・チオホ」、PIPINE-TIOHO(pipine=close together;tioho=apprehensive)、「(体が締まっている)小さくて・(心配している)神経質な(魚)(目高)」(「ピピネ」が「ビビン」と、「チオホ」のH音が脱落して「チオ」から「チョ」となった)

  「タカ・マハ・メ」、TAKA-MAHA-ME(taka=heap,lie in a heap,heap up;maha=many,abundance,majority;me=abbreviation of mei(according to,judging by)-me(thing))、「(水面近くを)群れをなして泳ぐ・(体の割に)巨大な・目(を持つ魚)(目高)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

  「タカ・マミ(ン)ガ」、TAKA-MAMINGA(taka=heap,lie in a heap,heap up;maminga=impose upon,practis stratagem,beguile)、「義務を課されたように・(水面近くを)群れをなして泳ぐ(魚)(目高)」(「マミ(ン)ガ」の語尾のNGA音が脱落して「マーミ」となった)

  「ウル・メ・コ」、URU-ME-KO(uru=head,top,upper end,appear above the horizen;me=abbreviation of mei(according to,judging by)-me(thing);ko=addressing to girl or males)、「(体の割に大きな)目が・頭にある・奴(魚)(目高)」

  「オ・キニ・イタ」、O-KINI-ITA(o=the...of;kini=pinch(whakakini=blink);ita=tight,fast)、「例の・(びっくりしたように)目を見開く・(体の締まった)小さい(魚)(目高)」(「キニ」の語尾のI音と「イタ」の語頭のI音が連結して「キニタ」から「キンタ」となった)

  「オ・キニ・チア」、O-KINI-TIA(o=the...of;kini=pinch(whakakini=blink);tia=stick in,adorn by sticking in feathers)、「例の・(びっくりしたように)目を見開いた・(体を赤い羽根で)飾っている(魚)(目高)」(「キニ」が「キン」と、「チア」が「チャ」となった)

  「オ・キニ・チア・ポ」、O-KINI-TIA-PO(o=the...of;kini=pinch(whakakini=blink);tia=stick in,adorn by sticking in feathers;po.popo=pat with the hand,sooth.lullaby)、「例の・(びっくりしたように)目を見開いた・(体を赤い羽根で)飾って・人を和ませる(魚)(目高)」(「キニ」が「キン」と、「チア」が「チャ」となった)

  「コメメ・チア・コ」、KOMEME-TIA-KO(komeme=thin and yielding,contracted by cold,withered ;tia=stick in,adorn by sticking in feathers;ko=addressing to girl or males)、「(体が)薄く小さい・(赤い羽根で)飾っている・奴(魚)(目高)」(「コメメ」が「コメン」と、「チア」が「チャ」から「ジャ」となった)

  「チ・リノ・コ」、TI-RINO-KO(ti=throw,cast;rino=swirl,eddy,twist,circle;ko=addressing to girl or males)、「(水の中を)円を描いて・遊弋する・奴(魚)(目高)」(「リノ」が「リン」と、「コ」が「ゴ」となった)

  「ピピネ・チア・コ」、PIPINE-TIA-KO(pipine=close together;tia=stick in,adorn by sticking in feathers;ko=addressing to girl or males)、「(体が締まっている)小さくて・(赤い羽根で)飾っている・奴(魚)(目高)」(「ピピネ」が「ビビン」と、「チア」が「チャ」から「ジャ」となった)

  「メイ・メ・ナ・チア・コ」、MEI-ME-NA-TIA-KO(mei=according to,judging by;me=thing;na=by,belonging to;tia=stick in,adorn by sticking in feathers;ko=addressing to girl or males)、「見ることによって・物を認識するもの(=目。大きな目を持つ魚)に・属するもので・(体を赤い羽根で)飾っている・奴(魚)(目高)」(「メイ」の語尾のI音が脱落して「メ」と、「ナ」が「ン」と、「チア」が「チャ」から「ジャ」となった)

の転訛と解します。

205めっきり・ズンブ・ナンボ・ズッタリ・ガダガダト・ガラット・グエラ・ズイブン・キューニ・テンポニ・メッポー・メッタ・エロー・アタダニ・アンギャーニ・ヒドー・ドヒョーシ・ニワカニ・ヨイヨ・ドンド・ヒョロット・ゴロット・アタデー・ヒジュー・メッキー・ッアッタニ・アッタニ・タイブン・ポクット

 「めっきり」の方言には、北海道の「ズンブ」、青森の「ナンボ」、岩手の「ズッタリ」、宮城の「ガダガダト」、秋田の「ガラット」、山形の「グエラ」、群馬の「ズイブン」、新潟、富山などの「キューニ」、石川の「テンポニ」、福井の「メッポー」、長野の「メッタ」、兵庫の「エロー」、島根の「アタダニ」、岡山の「アンギャーニ」、広島、長崎の「ヒドー」、山口の「ドヒョーシ」、徳島の「ニワカニ」、香川の「ヨイヨ」、福岡の「ドンド」、佐賀の「ヒョロット」、熊本の「ゴロット」、大分の「アタデー」、宮崎の「ヒジュー」、鹿児島の「メッキー」、沖縄那覇の「ッアッタニ」、沖縄首里の「アッタニ」があります。

 上記のほか、福岡の「タイブン」、大分の「ポクット」があります。

 この「めっきり」、「ズンブ」、「ナンボ」、「ズッタリ」、「ガダガダト」、「ガラット」、「グエラ」、「ズイブン」、「キューニ」、「テンポニ」、「メッポー」、「メッタ」、「エロー」、「アタダニ」、「アンギャーニ」、「ヒドー」、「ドヒョーシ」、「ニワカニ」、「ヨイヨ」、「ドンド」、「ヒョロット」、「ゴロット」、「アタデー」、「ヒジュー」、「メッキー」、「ッアッタニ」、「アッタニ」、「タイブン」、「ポクット」は、

  「マエ・ツキ・イリ」、MAE-TUKI-IRI(mae=languid,struck with astonishment,paralysed with fear etc.;tuki=pound,beat,knock,attack;iri=be elevated on something,hang,be published)、「(何らかの事情の変化が)起って・(人に)打撃を与えたことに・驚愕する(めっきり)」(「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」と、「ツキ」の語尾のI音と「イリ」の語頭のI音が連結して「ツキリ」から「ッキリ」となった)

  「ツヌ・プ」、TUNU-PU(tunu=roast,inspire with fear;pu=tribe,bunch,heap)、「(事情の変化が)積み重なって・(人に)恐れを抱かせる(めっきり)」(「ツヌ」が「ズン」と、「プ」が「ブ」となった)

  「ナナ・パウ」、NANA-PAU(nana=eyebrow,look!,behold!,raging in passion;pau=consumed.exhausted,denoting the complete or exhaustive character of any action)、「(注視すべきことに)なんと・(事情が)終わって(変わって)しまった(めっきり)」(「ナナ」が「ナン」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボ」となった)

  「ツツ・タリ」、TUTU-TARI(tutu=stand erect,be prominent,move with vigour,be raised as disturbsnce etc.;tari,tatari=wait,expect)、「故障が起きて・待ったが掛かった(めっきり)」(「ツツ」が「ズッ」となった)

  「(ン)ガタ・(ン)ガタ・ト」、NGATA-NGATA-TO(ngata=appease,satisfy:to=drag)、「(人を)宥めに・宥める・に至る(事情の変化にともなう不安や・恐れの出現)(めっきり)」(「(ン)ガタ」のNG音がG音に変化して「ガタ」から「ガダ」となった)

  「(ン)ガラ・ト」、NGARA-TO(ngara=snarl;to=drag)、「(人が)怒鳴り声を上げる・に至る(事情の変化にともなう不安や・恐れの出現)(めっきり)」(「(ン)ガラ」のNG音がG音に変化して「ガラ」から「ガラッ」となった)

  「(ン)グエ・ラ」、NGUE-RA(ngue,nguengue=quiet,silent,reserved;ra=intensive particle,sometimes to be translated then or but)、「(しかし)それまでと一転して・黙りこくる(事情の変化にともなう不安や・恐れの出現)(めっきり)」(「(ン)グエ」のNG音がG音に変化して「グエ」となった)
  または「(ン)グ・エラ(ン)ギ」、NGU-ERANGI(ngu=silent,moan,groan;erangi=engari=it is better,but,on the contrary)、「(反対に)一転して・嘆きの声を上げる(事情の変化にともなう不安や・恐れの出現)(めっきり)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「エラ(ン)ギ」の語尾のNGI音が脱落して「エラ」となった)

  「ツヒ・プニ」、TUHI-PUNI(tuhi=conjure,invoke with proper ceremonies;puni=stopped up,filled up)、「魔法に掛けられていた(ように事が順調に進んでいた)のが・魔法が解かれた(事が急に進まなくなったことに伴う不安や恐れの出現)(めっきり)」(「ツヒ」のH音が脱落して「ツイ」から「ズイ」と、「プニ」が「ブン」となった)

  「キ・ウ・ニヒ」、KI-U-NIHI(ki=full,very;u=be firm,be fixed,reach its limit;nihi=move stealthly,come stealthly upon,surprise)、「実に・(そっと)いつの間にか・(事柄が)決まる(驚く)(めっきり)」(「キ・ウ」が「キュー」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

  「テネ・ポニニ」、TENE-PONINI(tene=invented,impromptu;ponini=muzzle a dog)、「即興(の詩や語り物など)が・(口輪を嵌められる)口封じをされる(めっきり)」(「テネ」が「テン」と、「ポニニ」の反復語尾が脱落して「ポニ」となった)

  「マエ・ツ・ポウ」、MAE-TU-POU(mae=languid,withered,struck with astonishment,paralysed with fear etc.;tu=stand,settle,fight with,energetic;pou=pau=consumed)、「激しく・消耗した(痩せた、衰弱した)ことに・驚愕する(めっきり)」(「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」と、「ツ」が「ッ」と、「ポウ」が「ポー」となった)

  「マエ・ツ・タ」、MAE-TU-TA(mae=languid,withered,struck with astonishment,paralysed with fear etc.;tu=stand,settle,fight with,energetic;ta=dash,beat,lay)、「激しく・打撃を受けたことに・驚愕する(めっきり)」(「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「エロ」、ERO(putrid,thin,emaciateddecrease)、「(ひどく)やつれる(衰弱する)(めっきり)」(「エロ」が「エロー」となつた)

  「アタ・タ(ン)ギ」、ATA-TANGI(ata=gently,slowly,openly,deliberayely,quite;tangi=sound,cry,weep,mourn)、「しめやかに・泣き崩れる(めっきり)」(「タ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「タニ」から「ダニ」となった)

  「ア(ン)ギ・イア・ニヒ」、ANGI-IA-NIHI(angi=free,move freely,something connected with the descent to the subterranean spirit world;ia=indeed;nihi=move stealthly,come stealthly upon,surprise)、「実に・地下のあの世の霊魂の仲間が・そっとやって来るような(驚く)(めっきり)」(「ア(ン)ギ」が「アンギ」と、「イア」が「ャー」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

  「ヒ・トフ」、HI-TOHU(hi=make a hissing noise;tohu=mark,point out,show)、「シーという声を出して・(非難・軽蔑・怒りなどを)表現する(めっきり)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドー」となった)

  「トヒ・オチ」、TOHI-OTI(tohi=divide,separate,perform certain ceremonies before or after a battle for the purpose of making the subject successful;oti=finished,gone or come for good)、「(戦いの)成功を祈願する儀式が・功を奏した(願いが実現したように)(めっきり)」(「トヒ・オチ」が「ドヒョーシ」となつた)

  「ニヒ・ワカ・ヌイ」、NIHi-MHAKA-NUI(nihi=move stealthly,come stealthly upon,surprise;whaka=make an immediate return for anything,reply to;nui=many,large)、「たくさんの・迅速な応答が・そっと(いつの間にか)やって来る(めっきり)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「ヌイ」のUI音がI音に変化して「ニ」となった)

  「イ・オイ・イオ」、I-OI-IO(i=past tense,from,beside,by,at;oi=shout,shudder,move continuously,agitate;io=tough,hard,obstinate)、「精力的に・動き続け・た(着実に事態が変化した)(めっきり)」(「イ・オイ」が「ヨイ」と、「イオ」が「ヨ」となった)

  「トヌ・ト」、TONU-TO(tonu=denoting continuance,still,continually;to=drag,haul)、「(事態が)続いて・進行する(めっきり)」(「トヌ」が「ドン」と、「ト」が「ド」となった)

  「ヒ・イオ・ロツ・ト」、HI-IO-ROTU-TO(hi=make a hissing noise;io=tough,hard,obstinate;rotu=put to sleep by means of a spell,render the sea calm by a spell;to=drag,haul)、「(非難・軽蔑・怒りなどを表わす)シーという声を・強く・(呪文をかけられたように内に秘めて)抑え・込んだ(めっきり)」(「イオ」が「ョ」と、「ロツ」が「ロッ」となった)

  「(ン)ゴ・ロツ・ト」、NGO-ROTU-TO(ngo=cry,grunt;rotu=put to sleep by means of a spell,render the sea calm by a spell;to=drag,haul)、「(非難・軽蔑・怒りなどの)うめき声を・(呪文をかけられたように内に秘めて)抑え・込んだ(めっきり)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「ロツ」が「ロッ」となった)

  「アタ・テア」、ATA-TEA(ata=gently,slowly,openly,deliberayely,quite;tea=white,clear(teatea=pale,apprehensive,afraid))、「あからさまに・(顔を蒼白にして)心配した(めっきり)」(「テア」が「デー」となった)

  「ヒ・チウ」、HI-TIU(hi=make a hissing noise;tiu=soar,wander,swing)、「(非難・軽蔑・怒りなどを表わす)シーという声を出して・彷徨った(めっきり)」(「チウ」が「チュウ」から「ジュー」となった)

  「マエ・ツキ・イヒ」、MAE-TUKI-IHI(mae=languid,struck with astonishment,paralysed with fear etc.;tuki=pound,beat,knock,attack;ihi=power,spell)、「(呪文にかけられたように何かの)力が働いて・(人に)打撃を与えたことに・驚愕する(めっきり)」(「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」と、「ツキ」が「ッキ」と、「イヒ」のH音が脱落して「イー」と、「ッキ・イー」が「ッキー」となった)

  「ツ・アツ・タ(ン)ギ」、TU-ATU-TANGI(tu=stand,settle;atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action;tangi=sound,cry,weep,mourn)、「(事態の変化に驚愕しての)嘆きの声が・続いて・上がる(めっきり)」(「ツ」が「ッ」と、「アツ」が「アッ」と、「タ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「タニ」となった)

  「アツ・タ(ン)ギ」、ATU-TANGI(atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action;tangi=sound,cry,weep,mourn)、「(事態の変化に驚愕しての)嘆きの声が・続く(めっきり)」(「アツ」が「アッ」と、「タ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「タニ」となった)

  「タイ・プニ」、TAI-PUNI(tai=tide,wave,anger,violence;puni=stopped up,filled up)、「(事態の)進行が・止まった(ことに伴う不安や恐れの出現)(めっきり)」(「プニ」が「ブン」となった)

  「ポク・ト」、POKU-TO((Hawaii)poku=to cry out in the night,as to create disturbance;to=drag)、「(人が)夜中に泣きわめく・に至る(事情の変化にともなう不安や・恐れの出現)(めっきり)」(「ポク」が「ポクッ」となった)

の転訛と解します。

206めんどう(面倒)・メンドクサイ・メンドイ・メンドクセァ・スズメンドクセー・メンドクシェ・スズメンドクサエ・メンドクサエ・ダヤイ・メンドーナ・ジャマクサイ・ゴッチョ・オトロシー・メンダー・メンダナ・メンドークシャー・ヤネコイ・センナイ・オトマシ・セカラシカ・ヤグラシカ・メンドクサカ・ヤヤコシー・メンデクセ・ミンロー・ミンドー・シェカラシカ」・ヒチメンドクセー

 「めんどう」の方言には、北海道、長野などの「メンドクサイ」、青森、大阪などの「メンドイ」、岩手の「メンドクセァ」、宮城の「スズメンドクセー」、秋田の「メンドクシェ」、山形の「スズメンドクサエ」、福島、栃木などの「メンドクセー」(「メンドクサイ」と同語源)、茨城の「メンドクサエ」、埼玉、東京などの「メンドー」(「めんどう」と同語源)、新潟の「メンドークッセァ」(「メンドクセァ」と同語源)、富山の「ダヤイ」、石川の「メンドーナ」、福井の「ジャマクサイ」、山梨の「ゴッチョ」、奈良の「オトロシー」、鳥取の「メンダー」、島根の「メンダナ」、岡山の「メンドークシャー」、広島の「ヤネコイ」、山口の「センナイ」、香川の「オトマシ」、福岡、熊本の「セカラシカ」、佐賀の「ヤグラシカ」、長崎の「メンドクサカ」、大分の「ヤヤコシー」、鹿児島の「メンデクセ」、沖縄那覇の「ミンロー」、沖縄首里の「ミンドー」があります。

 上記のほか、佐賀の「シェカラシカ」、大分の「ヒチメンドクセー」などがあります。

 この「めんどう」、「メンドクサイ」、「メンドイ」、「メンドクセァ」、「スズメンドクセー」、「メンドクシェ」、「スズメンドクサエ」、「メンドクサエ」、「ダヤイ」、「メンドーナ」、「ジャマクサイ」、「ゴッチョ」、「オトロシー」、「メンダー」、「メンダナ」、「メンドークシャー」、「ヤネコイ」、「センナイ」、「オトマシ」、「セカラシカ」、「ヤグラシカ」、「メンドクサカ」、「ヤヤコシー」、「メンデクセ」、「ミンロー」、「ミンドー」、「シェカラシカ」、「ヒチメンドクセー」は、

  「メネ・トフ」、MENE-TOHU(mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show)、「顔を顰めて・みせるもの(面倒)」(「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドウ」または「ドー」となった)

  「メネ・トフ・クタイタイ」、MENE-TOHU-KUTAITAI(mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kutaitai=of a disagreeable taste)、「顔を顰めて・不快な感情を・みせるもの(面倒)」(「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」と、「クタイタイ」の反復語尾が脱落して「クサイ」となった。また「クサイ」のAI音がE音に変化して「クセー」となった)

  「メネ・トイ」、MENE-TOI(mene=show wrinkles,comtort the face;toi=tingle,be galled,be irritated)、「いらいらして・顔を顰めるもの(面倒)」(「メネ」が「メン」と、「トイ」が「ドイ」となった)

  「メネ・トフ・クタイタイ・イア」、MENE-TOHU-KUTAITAI-IA(mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kutaitai=of a disagreeable taste;ia=indeed)、「顔を顰めて・実に・不快な感情を・みせるもの(面倒)」(「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」または「ドー」と、「クタイタイ」の反復語尾が脱落して「クサイ」と、「サイ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「クサイア」となり、そのAI音がE音に変化して「クセァ」または「クッセァ」となった)

  「ツツ・メネ・トフ・クタイタイ」、TUTU-MENE-TOHU-KUTAITAI(tutu=stand erect,be prominent;mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kutaitai=of a disagreeable taste)、「顕著に・顔を顰めて・不快な感情を・みせるもの(面倒)」(「ツツ」が「スズ」と、「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」と、「クタイタイ」の反復語尾が脱落し、AI音がE音に変化して「クセー」となった)

  「メネ・トフ・クチ・エ」、MENE-TOHU-KUTI-E(mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kuti=draw tightly together,contract,pinch;e=calling attention or expressing surprise)、「顔を顰め・実に・口を結んで・(不快な感情)みせるもの(面倒)」(「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」と、「クチ」が「クシ」と、「エ」が「ェ」となった)

  「ツツ・メネ・トフ・クタ・エ」、TUTU-MENE-TOHU-KUTA-E(tutu=stand erect,be prominent;mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kuta=encumbrance,clog as old and infirm people on a march;e=calling attention or expressing surprise)、「顕著に・顔を顰め・実に・足手まといのような・(不快な感情を)みせるもの(面倒)」(「ツツ」が「スズ」と、「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」と、「クタ」が「クサ」となった)

  「メネ・トフ・クタ・エ」、MENE-TOHU-KUTA-E(mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kuta=encumbrance,clog as old and infirm people on a march;e=calling attention or expressing surprise)、「顔を顰め・実に・足手まといのような・(不快な感情を)みせるもの(面倒)」(「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」と、「クタ」が「クサ」となった)

  「タイ・アイ」、TAI-AI(tai=tide,wave,anger,violence;ai=procreate,beget)、「(それに対する)怒りが・生じるもの(面倒)」(「タイ・アイ」が「タヤイ」から「ダヤイ」となった)

  「メネ・トフ・ナ」、MENE-TOHU-NA(mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;na=to indicate position near or connection with the person addressed,by,belonging to)、「顔を顰めて・みせる・部類に属するもの(面倒)」(「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドー」となった)

  「チ・アマ・クタイタイ」、TI-AMA-KUTAITAI(ti=throw,cast,overcome;ama=outrigger on the windward side of a canoe;kutaitai=of a disagreeable taste)、「カヌーのアウトリガー(舷側の浮子)を・不快な感情を抱いて・投げ捨てるような(面倒)」(「チ・アマ」が「チャマ」から「ジャマ」と、「クタイタイ」の反復語尾が脱落して「クサイ」となった)

  「(ン)ゴ・チオホ」、NGO-TIOHO(ngo=cry,grunt;tioho=apprehensive)、「心配して・うめき声を上げる(面倒)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」から「ゴッ」と、「チオホ」のH音が脱落して「チオ」から「チョ」となった)

  「アウト・ロ・チヒ」、AUTO-RO-TIHI(auto=trailing behind,slow,drag out,protract;ro=go;tihi=summit,lie in a heap,sough,moan of the wind)、「(動作や返事の)動きが・最高に・遅くなる(面倒)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」と、「チヒ」のH音が脱落して「シイ」から「シー」となつた)

  「メネ・タハ」、MENE-TAHA(mene=show wrinkles,comtort the face;taha=side,edge,spasmodic twitching of the muscles)、「顔を顰めて・片側を引きつらせるもの(面倒)」(「メネ」が「メン」と、「タハ」のH音が脱落して「タア」から「ダー」となった)

  「メネ・タ(ン)ガ」、MENE-TANGA(mene=show wrinkles,comtort the face;tanga,tatanga=alert,ready to hand,complaint)、「顔を顰めて・不平を言うもの(面倒)」(「メネ」が「メン」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「ダナ」となった)

  「メネ・トフ・クチ・イア」、MENE-TOHU-KUTI-IA(mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kuti=draw tightly together,contract,pinch;ia=indeed)、「顔を顰め・実に・口を結んで・(不快な感情)みせるもの(面倒)」(「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドー」と、「クチ」が「クシ」と、「イア」が「ヤ」から「ャー」となった)

  「イア・ネイ・コイ」、IA-NEI-KOI(ia=indeed;nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,bobbing up and down;koi=move about)、「(不満から)実に・手足をバタバタさせて・転げ回る(面倒)」(「イア」が「ヤ」と、「ネイ」が「ネ」となった)

  「テネ・ナイ」、TENE-NAI(tene=be importunate;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,bobbing up and down)、「(不満から)しつこく・手足をバタバタさせる(面倒)」(「テネ」が「セン」となった)

  「アウト・マチ」、AUTO-MATI(auto=trailing behind,slow,drag out,protract;mati=surfeited)、「(動作や返事が)目立って・遅くなる(面倒)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」と、「マチ」が「マシ」となった)

  「テ・カラ・チカ」、TE-KARA-TIKA(te=the;kara=secret plan,a request for assistance in war;tika=straight,keeping a direct course,fair,correct)、「正に・正義を選んで・戦いの援助を申し出る(面倒)」(「テ」が「セ」と、「チカ」が「シカ」となった)

  「イア・(ン)グ・ラ・チカ」、IA-NGU-RA-TIKA(ia=indeed;ngu=silent,greedy,moan,groan;ra=then,but;tika=straight,keeping a direct course,fair,correct)、「正しい(妥当に進行する)・ものではあるが・実に・悲痛な嘆き声を上げるもの(面倒)」(「イア」が「ヤ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「チカ」が「シカ」となった)

  「メネ・トフ・クタ・カ」、MENE-TOHU-KUTA-KA(mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kuta=encumbrance,clog as old and infirm people on a march;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「顔を顰め・足手まといのような・(不快な感情を)みせるもの・だね(面倒)」(「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」と、「クタ」が「クサ」となった)

  「イアイア・コチ」、IAIA-KOTI(iaia=sinews,veins;koti=koti=spurt out,flow,cut in two,interrupt)、「元気が・溢れ出す(面倒)」または「元気の・腰を折る(面倒)」(「イアイア」が「ヤヤ」と、「コチ」が「コシー」となった)

  「メネ・テア・クタイタイ」、MENE-TEA-KUTAITAI(mene=show wrinkles,comtort the face;tea=white,clear(teatea=pale,apprehensive,afraid);kutaitai=of a disagreeable taste)、「顔を顰めて・不快な感情で・蒼白となった(面倒)」(「メネ」が「メン」と、「テア」が「デ」と、「クタイタイ」の反復語尾が脱落し、AI音がE音に変化して「クセ」となった)

  「ミナ・ロウ」、MINA-ROU((Hawaii)mina=to regret,be sorry,grieve,sorrow;rou=reach or procure,stretch out)、「悲嘆に・暮れる(面倒)」(「ミナ」が「ミン」と、「ロウ」が「ロー」となった)

  「ミナ・トフ」、MINA-TOHU((Hawaii)mina=to regret,be sorry,grieve,sorrow;tohu=mark,point out,show)、「悲嘆する・(さまを)見せる(面倒)」(「ミナ」が「ミン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドー」となった)

  「チエ・カラ・チカ」、TIE-KARA-TIKA(tie=abundance,plentu;kara=secret plan,a request for assistance in war;tika=straight,keeping a direct course,fair,correct)、「正義を選んで・膨大な・戦いの援助を申し出る(面倒)」(「チエ」が「シェ」と、「チカ」が「シカ」となった)

  「ヒ・チ・メネ・トフ・クタイタイ」、HI-TI-MENE-TOHU-KUTAITAI(hi=make a hissing noise;ti=throw,cast;mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kutaitai=of a disagreeable taste)、「(不快・怒りなどを表す)シーという声を・上げ・顔を顰めて・不快な感情を・みせるもの(面倒)」(「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」と、「クタイタイ」の反復語尾が脱落し、AI音がE音に変化して「クセー」となった)

の転訛と解します。

「モ」

207もったいない・イダマシー・イダワシ・エダマスネァ・エダマスエ・エダマシ・アッタラモン・モッタナイ・モッタネー・オトマシー・モッタェナェー・ホシー・モッテャーニャー・モッタイナー・モッタイナカ・モッチャニャ・アタレー・アッタラシカ・ッイチャサン・アタラサン・ツーエナ・オシナギー

 「もったいない」の方言には、北海道、福島の「イダマシー」、青森の「イダワシ」、岩手の「エダマスネァ」、宮城、山形の「エダマスエ」、秋田の「エダマシ」、茨城、栃木などの「アッタラモン」、群馬、神奈川などの「モッタナイ」、埼玉、千葉の「モッタネー」、石川、福井の「オトマシー」、山梨、大分の「モッタイネー」(「もったいない」と同語源)、長野の「モッテネー」(「もったいない」と同語源)、岐阜の「モッテーネー」(「もったいない」と同語源)、愛知の「モッタェナェー」、鳥取の「ホシー」、島根の「モッタイネ」(「もったいない」と同語源)、岡山の「モッテャーニャー」、広島の「モッタイナー」、愛媛の「オシー」(「ホシー」と同語源)、福岡、佐賀などの「モッタイナカ」、熊本の「モッチャニャ」、宮崎の「アタレー」、鹿児島の「アッタラシカ」、沖縄那覇の「ッイチャサン」、沖縄首里の「アタラサン」があります。

 上記のほか、佐賀の「ツーエナ」(古)、大分の「オシナギー」などがあります。

 この「もったいない」、「イダマシー」、「イダワシ」、「エダマスネァ」、「エダマスエ」、「エダマシ」、「アッタラモン」、「モッタナイ」、「モッタネー」、「オトマシー」、「モッタェナェー」、「ホシー」、「モッテャーニャー」、「モッタイナー」、「モッタイナカ」、「モッチャニャ」、「アタレー」、「アッタラシカ」、「ッイチャサン」、「アタラサン」、「ツーエナ」、「オシナギー」は、

  「モツ・タイナ・アイ」、MOTU-TAINA-AI(motu=piece of flesh,or fat,titbit;taina=singe;ai=procreate,beget)、「肉片を・焦がして・生じたもの(肉片を捨てざるを得なくなって生じた惜しいという感じ)(勿体ない)」(「モツ」が「モッ」と、「タイナ」の語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「タイナイ」となった。また「タイナイ」の後のAI音がE音に変化して「タイネ」または「タイネー」と、前と後のAI音が共にE音に変化して「テネー」または「テーネー」となった)

  「イ・タハ・マチ」、I-TAHA-MATI(i=past tense,from,beside,by,at:taha=side,edge,pass on one side;mati=surfeited)、「(本来食べるべき人の)脇に・居る人が・飽食する(もったいない)」(「タハ」のH音が脱落して「ダ」と、「マチ」が「マシー」となった)

  「イ・タハ・ワチ」、I-TAHA-WHATI(i=past tense,from,beside,by,at:taha=side,edge,pass on one side;whati=be broken off short,turn and go away,run)、「(本来入手すべき人の)脇を・通って・逃げ出す(もったいない)」(「タハ」のH音が脱落して「ダ」と、「ワチ」が「ワシ」となった)

  「エ・タハ・マ・アツ・ネイ・イア」、E-TAHA-MA-ATU-NEI-IA(e=to denote action in progress or temporary condition:taha=side,edge,pass on one side;ma atu=go,come;nei,neinei=stretched forward,reaching out;ia=indeed)、「(本来入手すべき人の)脇を・すり・抜けて・実に・遠くへ行ってしまう(もったいない)」(「タハ」のH音が脱落して「ダ」と、「マ」のA音と「アツ」の語頭のA音が連結して「マツ」から「マス」と、「ネイ」のI音と「イア」のI音が連結して「ネァ」となった)

  「エ・タハ・マ・アツ・エ」、E-TAHA-MA-ATU-E(e=to denote action in progress or temporary condition:taha=side,edge,pass on one side;ma atu=go,come;e=calling attention or expressing surprise)、「(本来入手すべき人の)脇を・すり・抜けて・行って・しまう(もったいない)」(「タハ」のH音が脱落して「ダ」と、「マ」のA音と「アツ」の語頭のA音が連結して「マツ」から「マス」となった)

  「エ・タハ・マチ」、E-TAHA-MATI(e=to denote action in progress or temporary condition:taha=side,edge,pass on one side;mati=surfeited)、「(本来食べるべき人の)脇(に居る人)が・飽食して・しまう(もったいない)」(「タハ」のH音が脱落して「ダ」と、「マチ」が「マシ」となった)

  「ア・タラ・マウ(ン)ガ」、A-TARA-MAUNGA(a=the ...of,drive urge,compel;tara=union broken by death or etc.(moenga tara=marriage union broken by death);maunga=mau=fixed,continuing,established,caught)、「例の・(病や死などによって)解消される関係を・定着させたような(もったいない)」(「ア」が「アッ」と、「マウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「モナ」から「モン」となった)

  「モツ・タハ・ナイ」、MOTU-TAHA-NAI(motu=piece of flesh,or fat,titbit;taha=side,edge,pass on one side;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「肉片が・脇を(すり抜けて)・行ってしまった(捨てられてしまった)(もったいない)」(「モツ」が「モッ」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」となつた)

  「モツ・タハ・ネイ」、MOTU-TAHA-NEI(motu=piece of flesh,or fat,titbit;taha=side,edge,pass on one side;nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「肉片が・脇を(すり抜けて)・行ってしまった(捨てられてしまった)(もったいない)」(「モツ」が「モッ」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」と、「ネイ」が「ネー」となつた)

  「アウト・マチ」、AUTO-MATI(auto=trailing behind,slow,drag out,protract;mati=surfeited)、「(飽食した人が)更に続けて・飽食する(もったいない)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」と、「マチ」が「マシー」となった)

  「モツ・タエ・ナエ」、MOTU-TAE-NAE(motu=piece of flesh,or fat,titbit;tae=filth,excrement;nae,naenae=failing of breath)、「肉片を・ゴミにする(捨ててしまう)ことに・絶句する(もったいない)」(「モツ」が「モッ」と、「タエ」が「タェ」と、「ナエ」が「ナェー」となった)

  「ハウ・チヒ」、HAU-TIHI(hau=eager,brisk,seek;tihi=summit,top,lie in a heap)、「(最高に)とても・欲しかった(もったいない)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シー」となった。また「ハウ」のH音が脱落し、AU音がO音に変化して「オ」となった)

  「モツ・テイ・イア・ニアニア」、MOTU-TEI-IA-NIANIA(motu=piece of flesh,or fat,titbit;tei=high,tall,summit:ia=indeed;niania=anything small)、「肉片は・小さな切れ端も・実に・高い価値がある(もったいない)」(「モツ」が「モッ」と、「テイ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「テイア」から「テャー」と、「ニアニア」の反復語尾が脱落して「ニア」から「ニャー」となった)

  「モツ・タイナ」、MOTU-TAINA(motu=piece of flesh,or fat,titbit;taina=singe)、「肉片を・焦がした(捨てることとなつた)(もったいない)」(「モツ」が「モッ」と、「タイナ」が「タイナー」となった)

  「モツ・タイナ・カ」、MOTU-TAINA-KA(motu=piece of flesh,or fat,titbit;taina=singe;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「肉片を・焦がして・しまったね(捨てることとなつた)(もったいない)」(「モツ」が「モッ」となった)

  「モツ・チア・ニアニア」、MOTU-TIA-NIANIA(motu=piece of flesh,or fat,titbit;tia=stick in,adorn by sticking in feathers;niania=anything small)、「肉片は・小さな切れ端も・(羽根飾りで飾ったように)高い価値がある(もったいない)」(「モツ」が「モッ」と、「チア」が「チャ」と、「ニアニア」の反復語尾が脱落して「ニア」から「ニャ」となった)

  「アタ・レイ」、ATA-REI(ata=gently,clearly,deliverately,quite,true(only used as a form of assent);rei=tusk,,anything made of ivory,jewel)、「全く・(海獣の)牙のような(価値が高いもの)(もったいない)」(「レイ」が「レー」となった)

  「アツ・タラチ・カ」、ATU-TARATI-KA(atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action;tarati=spurt,splash;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「(財貨を)湯水のように・ばらまいて・いるね(無駄に費消する)(もったいない)」(「アツ」が「アッ」と、「タラチ」が「タラシ」となった)

  「ツイ・チア・タ(ン)ガ」、TUI-TIA-TANGA(tui=parson bird;tia=stick in,adorn by sticking in feathers;tanga=be assembled)、「(スズメ目ミツスイ科の)黒い鳥に・羽根飾りを・着けたような(もったいない)」(「ツイ」が「ッイ」と、「チア」が「チャ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

  「ア・タラ・タ(ン)ガ」、A-TARA-TANGA(a=the ...of,drive urge,compel;tara=union broken by death or etc.(moenga tara=marriage union broken by death);tanga=be assembled)、「例の・(病や死などによって)解消される関係を・結んだような(もったいない)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

  「ツ・エナ(ン)ガ」、TU-ENANGA(tu=stand,settle;enanga=like,having the form or appearance)、「(価値の高いものと)形や外観だけが似て・いるもの(もったいない)」(「ツ」が「ツー」と、「エナ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「エナ」となった)

  「オ・チナ・(ン)ギア」、O-TINA-NGIA(o=the...of;tina=fixed,firm,satisfied;ngia=seem,appear to be)、「例の・(固まっていないのに)外観だけは・固まっているように見えるもの(もったいない)」(「チナ」が「シナ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギー」となった)

の転訛と解します。

208もどる(戻る)・モンドル・モドリゲル・カエル・ヒッカエス・ヒッケール・カイル・トッテケース・イッテモンデクル・イヌ・モドー・キャーモドル・モドッ・ムルイン・ムドゥイン・カェァール・イヌル・モンテクル

 「もどる」の方言には、青森、宮城などの「モンドル」、岩手の「モドリゲル」、山形、茨城などの「カエル」、栃木の「ヒッカエス」、埼玉の「ヒッケール」、千葉の「ヒッケス」(「ヒッカエス」と同語源)、福井の「カイル」、山梨の「トッテケース」、滋賀の「イッテモンデクル」、兵庫の「イヌ」、島根の「モドー」、熊本の「キャーモドル」、鹿児島の「モドッ」、沖縄那覇の「ムルイン」、沖縄首里の「ムドゥイン」があります。

 上記のほか、愛知の「カェァール」、鳥取の「イヌル」、香川の「モンテクル」があります。

 この「もどる」、「モンドル」、「モドリゲル」、「カエル」、「ヒッカエス」、「ヒッケール」、「カイル」、「トッテケース」、「イッテモンデクル」、「イヌ」、「モドー」、「キャーモドル」、「モドッ」、「ムルイン」、「ムドゥイン」、「カェァール」、「イヌル」、「モンテクル」は、

  「マウ・トル」、MAU-TORU(mau=fixed,confined,constrained;toru=toro=stretch forth,survey,explore)、「前進するのを・阻まれる(戻る)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「トル」が「ドル」となった)

  「マウ(ン)ガ・トル」、MAUNGA-TORU(maunga=mau=fixed,confined,constrained;toru=toro=stretch forth,survey,explore)、「前進するのを・阻まれる(戻る)」(「マウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「モナ」から「モン」と、「トル」が「ドル」となった) の

  「マウ・トリ・(ン)ゲル」、MAU-TORI-NGERU(mau=fixed,confined,constrained;tori=cut;ngeru,ngerungeru=smooth,soft,sleek)、「捕らわれた・(縄を)切って・支障を除いた(戻る)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「トリ」が「ドリ」と、「(ン)ゲル」のNG音がG音に変化して「ゲル」となった)

  「カ・ヱル」、KA-WHERU(ka=take fire,be lighted,burn;wheru=inactive,weary,mope)、「意気消沈して・(家に帰って)火を灯す(戻る)」(「エル」のWH音が脱落して「エル」となった)

  「ヒカ・アイツア」、HIKA-AITUA(hika=rub violently,kindle fire by friction;aitua=unlucky,unfortunate,in trouble)、「(不幸にも)支障のために(家に戻って)・火を灯す(戻る)」(「ヒカ」が「ヒッカ」と、「アイツア」のAI音がE音に変化し、語尾のA音が脱落して「エツ」から「エス」となった。「ヒッカ」の語尾のA音と「アイツア」の語頭のA音が連結して「ヒッカイツア」となり、AI音がE音に変化し、語尾のA音が脱落して「ヒッケツ」から「ヒッケス」となった)

  「ヒカ・ヱル」、HIKA-WHERU(hika=rub violently,kindle fire by friction;wheru=inactive,weary,mope)、「意気消沈して・(家に帰って)火を灯す(戻る)」(「ヒカ」の語尾のA音と「ヱル」のWH音が脱落して「エル」となったその語頭のE音が連結したAE音がE音に変化して「ヒケル」から「ヒッケール」となった)

  「カ・アイ・ル」、KA-AI-RU(ka=take fire,be lighted,burn;ai=expressing the reason for which anything is done,marking the time or place of an action or event;ru=shake,agitate,scatter)、「(家に)倒れ・込んで・火を灯す(戻る)」(「カ」のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「カイ」となった)

  「タウテ・カ・アイツア」、TAUTE-KA-AITUA(taute=prepare food for cooking;ka=take fire,be lighted,burn;aitua=unlucky,unfortunate,in trouble)、「(不幸にも)支障のために(家に戻って)・食事の支度のために・火を燃やす(戻る)」(「タウテ」のAU音がO音に変化して「トテ」から「トッテ」と、「カ」のA音と「アイツア」の語頭のA音が連結して「カイツア」となり、AI音がE音に変化し、語尾のA音が脱落して「ケツ」から「ケース」となった)

  「イ・ツテ・マウ(ン)ガ・タイ・ク・ル」、I-TUTE-MAUNGA-TAI-KU-RU(i=past tense,beside,from,by,ay;tute=shove,push,nudge;maunga=mau=fixed,confined,constrained;tai,taitai=dash,strike,knock;ku=silent;ru=shake,agitate,scatter)、「(背中を)押され・て・(前進を)阻まれて・突進して(逃げて)・黙って・(家に)倒れ込んだ(戻る)」(「ツテ」が「ッテ」と、「マウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「モナ」から「モン」と、「タイ」の、AI音がE音に変化して「テ」から「デ」となった)

  「イ・(ン)グ(ン)グ」、I-NGUNGU(i=past tense,beside,from,by,ay;ngungu=glance off,turn aside,lead astray)、「引き返し・た(戻る)」(「(ン)グ(ン)グ」の反復語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「ヌ」となった)

  「マウ・ト」、MAU-TO(mau=fixed,confined,constrained;to=drag,haul)、「阻まれて・引っ張る(戻る)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「ト」が「ドー」となった)

  「キア・マウ・トル」、KIA-MAU-TORU(kia=to introduce a proposition,to denote wish or purpose etc.,;mau=fixed,confined,constrained;toru=toro=stretch forth,survey,explore)、「前進するのを・阻まれた・結果の提案(戻る)」(「キア」が「キャー」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「トル」が「ドル」となった)

  「マウ・ト・ツ」、MAU-TO-TU(mau=fixed,confined,constrained;to=drag,haul;tu=fight with,energetic)、「阻まれて・懸命に・引っ張る(戻る)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「ト」が「ド」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「ムル・イ・(ン)グ(ン)グ」、MURU-I-NGUNGU(muru=wipe,rub off,pluck up;i=past tense,beside,from,by,ay;ngungu=glance off,turn aside,lead astray)、「力を入れて引っ張って・引き返し・た(戻る)」(「(ン)グ(ン)グ」の反復語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「ヌ」から「ン」となった)

  「ム・トウ・イ・(ン)グ(ン)グ」、MU-TOU-I-NGUNGU(mu=silent;tou=tonu=denote continuance,still,continually,quite,immediately;i=past tense,beside,from,by,ay;ngungu=glance off,turn aside,lead astray)、「黙って・そっと・引き返し・た(戻る)」(「トウ」が「ドゥ」と、「(ン)グ(ン)グ」の反復語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「ヌ」から「ン」となった)

  「カ・アイア・ル」、KA-AIA-RU(ka=take fire,be lighted,burn;aia=kaitoa=expressing satisfaction or complacency at any event,it is good;ru=shake,agitate,scatter)、「(家に)安心して・倒れ込んで・火を灯す(戻る)」(「アイア」のAI音がE音に変化して「エア」から「ェァー」となった)

  「イ・(ン)グ(ン)グ・ル」、I-NGUNGU-RU(i=past tense,beside,from,by,ay;ngungu=glance off,turn aside,lead astray;ru=shake,agitate,scatter)、「引き返し・て・(家に)倒れ込む(戻る)」(「(ン)グ(ン)グ」の反復語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「ヌ」となった)

  「マウ(ン)ガ・タイ・ク・ル」、MAUNGA-TAI-KU-RU(maunga=mau=fixed,confined,constrained;tai,taitai=dash,strike,knock;ku=silent;ru=shake,agitate,scatter)、「(前進を)阻まれて・突進して(逃げて)・黙って・(家に)倒れ込んだ(戻る)」(「マウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「モナ」から「モン」と、「タイ」の、AI音がE音に変化して「テ」となった)

の転訛と解します。

209ものもらい(麦粒腫)・メッパ・ヨノメ・ノミ・バガ・ホイト・ノメ・モノモラエ・メカゴ・メッパツ・メモライ・メコジキ・メンボ・メーボ・メバチコ・デバツク・ホイタ・メボイト・メボ・メイボ・オヒメサン・ナイマズ・モライ・インノクソ・インモレ・ミーンデー・ミンベー

 「ものもらい」の方言には、北海道の「メッパ」、青森の「ヨノメ」、岩手の「ノミ」、宮城、山形の「バガ」、秋田の「ホイト」、福島、山梨の「ノメ」、茨城、栃木の「モノモラエ」、群馬の「メカゴ」、埼玉、千葉の「モノモレー」(「ものもらい」と同語源)、新潟の「メッパツ」、富山、石川などの「メモライ」、長野の「メコジキ」、岐阜、愛知などの「メンボ」、滋賀、京都の「メーボ」、大阪、兵庫などの「メバチコ」、和歌山の「デバツク」、鳥取の「ホイタ」、島根、岡山の「メボイト」、広島、山口などの「メボ」、徳島、大分などの「メイボ」、高知の「メボー」(「メボ」と同語源)、福岡の「オヒメサン」、佐賀の「ナイマズ」、長崎の「モライ」、熊本の「インノクソ」、鹿児島の「インモレ」、沖縄那覇の「ミーンデー」、沖縄首里の「ミンベー」があります。

 この「ものもらい」、「メッパ」、「ヨノメ」、「ノミ」、「バガ」、「ホイト」、「ノメ」、「モノモラエ」、「メカゴ」、「メッパツ」、「メモライ」、「メコジキ」、「メンボ」、「メーボ」、「メバチコ」、「デバツク」、「ホイタ」、「メボイト」、「メボ」、「メイボ」、「オヒメサン」、「ナイマズ」、「モライ」、「インノクソ」、「インモレ」、「ミーンデー」、「ミンベー」は、

  「モノ・マウ・ラヒ」、MONO-MAU-RAHI(mono=disable by means of incantations;mau=carry,bring;rahi=great,numerous)、「呪文を掛けられたように・(腫れ物が)多数・できるもの(麦粒腫)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」となった。また「ライ」のAI音がE音に変化して「レー」となった)

  「メ・ツ・パ」、ME-TU-PA(me=mei(according to,judging by) me(thing);tu=stand,settle;pa=block up,obstruct,prevent)、「(見ることによって判断するもの)目に・できた・(見ることを)妨げるもの(麦粒腫)」(「ツ」が「ッ」となった)

  「イオ・(ン)ガウ・メ」、IO-NGAU-ME(io=spur,ridge;ngau=bite,huet,act upon,attack;me=mei(according to,judging by) me(thing))、「(見ることによって判断するもの)目を・害する・(小山のような)腫れ物(麦粒腫)」(「イオ」が「ヨ」と、「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

  「(ン)ガウ・ミイ」、NGAU-MII(ngau=bite,huet,act upon,attack;(Hawaii)mii=clasp)、「(目を)害する・付着したもの(腫れ物)(麦粒腫)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」と、「ミイ」が「ミ」となった)

  「パ(ン)ガ」、PANGA(=pa=block up,obstruct,prevent)、「(見ることを)妨げるもの(麦粒腫)」(「パ(ン)ガ」が「バガ」となった)

  「ハウ・イト」、HAU-ITO(hau=project,overhang,exceed;ito=object of revenge,enemy)、「(誰かの復讐)思いがかけられた・(瞼を腫らせて)垂れ下がるもの(麦粒腫)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」となった)

  「(ン)ガウ・メ」、NGAU-ME(ngau=bite,huet,act upon,attack;me=mei(according to,judging by) me(thing))、「(見ることによって判断するもの)目を・害するもの(腫れ物)(麦粒腫)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

  「モノ・マウ・ラエ」、MONO-MAU-RAE(mono=disable by means of incantations;mau=carry,bring;rae=forehead,temple,promontory)、「呪文を掛けられたように・(盛り上がる)瞼に・できるもの(麦粒腫)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

  「メ・カ・(ン)ガウ」、ME-KA-NGAU(me=mei(according to,judging by) me(thing);ka=take fire,be lighted,burn;ngau=bite,huet,act upon,attack)、「(見ることによって判断するもの)目が・(火が燃えるように)赤くなって・害をする(腫れ上がる)もの(麦粒腫)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

  「メ・ツ・パツ」、ME-TU-PATU(me=mei(according to,judging by) me(thing);tu=stand,settle;patu=screen,wall,edge)、「(見ることによって判断するもの)目に・できた・(見ることを妨げる)壁(麦粒腫)」(「ツ」が「ッ」となった)

  「メ・マウ・ラヒ」、ME-MAU-RAHI(me=mei(according to,judging by) me(thing);mau=carry,bring;rahi=great,numerous)、「(見ることによって判断するもの)目に・(腫れ物が)多数・できるもの(麦粒腫)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」となった)

  「メ・カウ・チキ」、ME-KAU-TIKI(me=mei(according to,judging by) me(thing);kau=alone,only,swim,wade;tiki=fetch,proceed to do anything)、「(見ることによって判断するもの)目が・(遊弋して)どこかで・獲得してきたもの(腫れ物)(麦粒腫)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「チキ」が「ジキ」となった)

  「メ・ナ・ポ」、ME-NA-PO(me=mei(according to,judging by) me(thing);na=by,belonging to;po,popo=crowd round,throng,smoulder)、「(見ることによって判断するもの)目の・中に火種があるもの(熱を持つ腫れ物)・のようなもの(麦粒腫)」(「ナ」が「ン」と、「ポ」が「ボ」となった)

  「メ・ポ」、ME-PO(me=mei(according to,judging by) me(thing);po,popo=crowd round,throng,smoulder)、「(見ることによって判断するもの)目の・中に火種があるもの(熱を持つ腫れ物)(麦粒腫)」(「メ」が「メー」と、「ポ」が「ボ」となった)

  「メ・パ・チコ」、ME-PA-TIKO(me=mei(according to,judging by) me(thing);pa=block up,obstruct,prevent;tiko=settled upon as by frost)、「(見ることによって判断するもの)目に・(瞼に)付着した・(見ることを)妨げるもの(麦粒腫)」(「パ」が「バ」となった)

  「テ・パ・ツク」、TE-PA-TUKU(te=the...of,crack;pa=block up,obstruct,prevent;tuku=let go,allow,send)、「(割れた箇所)目に・贈られた・(見ることを)妨げるもの(麦粒腫)」(「テ」が「デ」と、「パ」が「バ」となった)

  「ハウ・イタ」、HAU-ITA(hau=project,overhang,exceed;ita=tight,fast)、「(瞼を腫らせて)垂れ下がる・小さな(締まった)もの(麦粒腫)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」となった)

  「メ・ポ・イト」、ME-PO-ITO(me=mei(according to,judging by) me(thing);po,popo=crowd round,throng,smoulder;ito=object of revenge,enemy)、「(見ることによって判断するもの)目に・(誰かの復讐)思いがかけられた・中に火種があるもの(熱を持つ腫れ物)(麦粒腫)」(「ポ」から「ボ」となった)

  「メ・ポ」、ME-PO(me=mei(according to,judging by) me(thing);po,popo=crowd round,throng,smoulder)、「(見ることによって判断するもの)目の・中に火種があるもの(熱を持つ腫れ物)(麦粒腫)」(「ポ」から「ボ」または「ボー」となった)

  「オヒ・メ・タ(ン)ガ」、OHI-ME-TANGA(ohi=grow,be vigorous(applied chiefly to childhood);me=mei(according to,judging by) me(thing);tanga=be assembled)、「育ち盛りの子供の・目が・よくかかる(付き物の腫れ物)(麦粒腫)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

  「ナイ・マツ」、NAI-MATU(nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out;matu=fat,kernel of a matter)、「(すぐに)極限まで・腫れ上がるもの(麦粒腫)」(「マツ」が「マズ」となった)

  「マウ・ラヒ」、MAU-RAHI(mau=carry,bring;rahi=great,numerous)、「(腫れ物が)多数・できるもの(麦粒腫)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」となった)

  「イ・(ン)グ(ン)グ・クフ・ト」、I-NGUNGU-KUHU-TO(i=past tense,beside,from,by,ay;ngungu=glance off,turn aside,lead astray;kuhu=thrust in,insert;to=drag,haul)、「外を・さまよった(ために)・(目の中に)入り・込んだもの(麦粒腫)」(「(ン)グ(ン)グ」のNG音がN音に変化して「ヌヌ」から「ンノ」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「ト」が「ソ」となった)

  「イ・(ン)グ(ン)グ・マウ・ラヒ」、I-NGUNGU-MAU-RAHI(i=past tense,beside,from,by,ay;ngungu=glance off,turn aside,lead astray;mau=carry,bring;rahi=great,numerous)、「外を・さまよった(ために)・(腫れ物が)多数・できるもの(麦粒腫)」(「(ン)グ(ン)グ」の反復語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「ヌ」から「ン」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「ラヒ」のH音が脱落し、AI音がE音に変化して「レ」となった)

  「ミナ・テア」、MINA-TEA(mina=desire,feel inclination for;tea=white,clear)、「(早く治癒して)綺麗になる・ことを願うもの(麦粒腫)」(「ミナ」が「ミン」から「ミーン」と、「テア」が「デー」となった)

  「ミナ・ペ」、MINA-PE(mina=desire,feel inclination for;pe=crushed,mashed,soft,suppurating as a boil)、「(早く化膿が進んで)膿が出てしまう(治癒する)・ことを願うもの(麦粒腫)」(「ミナ」が「ミン」と、「ペ」が「ベー」となった)

の転訛と解します。

「ユ」

210ゆいのう(結納)・ユエノー・ユーノ・サダメ・ヘンジ・クチガダメ・タルイレ・イーノー・シルシ・オユイノー・キメザケ・タノミイレ・ノシイレ・タノメ・イーイレ・オチャ・カタメ・ユイ・モジギ・ホンザケ・ニービチジン

 「ゆいのう」の方言には、北海道、青森などの「ユイノー」(「ゆいのう」と同語源)、岩手、三重などの「ユイノ」(「ゆいのう」と同語源)、宮城、新潟の「ユエノー」、秋田の「ユーノ」、山形の「サダメ」、福島の「ヘンジ」、茨城の「クチガダメ」、栃木の「クチガタメ」(「クチガダメ」と同語源)、群馬の「タルイレ」、埼玉、長野などの「イーノー」、福井の「シルシ」、山梨の「オユイノー」、静岡の「キメザケ」、滋賀の「イーノ」(「イーノー」と同語源)、和歌山の「タノミイレ」、鳥取の「ユーノー」(「ユーノ」と同語源)、岡山の「ノシイレ」、香川の「タノメ」、愛媛の「イーイレ」、福岡の「オチャ」、佐賀の「カタメ」、沖縄首里の「ユイ」があります。

 上記のほか、秋田の「モジギ」、石川の「ホンザケ」、沖縄首里の「ニービチジン」があります。

 この「ゆいのう」、「ユエノー」、「ユーノ」、「サダメ」、「ヘンジ」、「クチガダメ」、「タルイレ」、「イーノー」、「シルシ」、「オユイノー」、「キメザケ」、「タノミイレ」、「ノシイレ」、「タノメ」、「イーイレ」、「オチャ」、「カタメ」、「ユイ」、「モジギ」、「ホンザケ」、「ニービチジン」は、

  「イ・ウイ・ノホ」、I-UI-NOHO(i=by,by reason of,for want of,with;ui=disentangle,ask;noho=sit,settle,marry)、「結婚の・申込に・伴うもの(結納)」(「イ・ウイ」が「ユイ」と、「ノホ」のH音が脱落して「ノオ」から「ノウ」、「ノ」または「ノー」となつた)

  「イ・ウエ・ノホ」、I-UE-NOHO(i=by,by reason of,for want of,with;ue=push,,shove,shake;noho=sit,settle,marry)、「結婚を・推し進めるのに・伴うもの(結納)」(「イ・ウイ」が「ユエ」と、「ノホ」のH音が脱落して「ノオ」から「ノー」となつた)

  「イ・ウ・ノホ」、I-U-NOHO(i=by,by reason of,for want of,with;u=be firm,be fixed,reach its limit;noho=sit,settle,marry)、「結婚を・確実にすることに・伴うもの(結納)」(「イ・ウ」が「ユー」と、「ノホ」のH音が脱落して「ノ」または「ノー」となつた)

  「タ・タメ」、TA-TAME(ta=the...of;tame=food,eat)、「例の(結婚の約束を確認するために取り交わす)・食料(または会食)(結納)」(「タ」が「サ」と、「タメ」が「ダメ」となった)
  または「タタ・メア」、TATA-MEA(tata=wag,nod;mea=thing,reason,cause,fact)、「(結婚の約束に)同意した・ことに伴う贈り物(結納)」(「タタ」が「サダ」と、「メア」の語尾のA音が脱落して「メ」となった)

  「ヘイ・ナチ」、HEI-NATI(hei=go towards,be rwquited(whakahei=welcome,brings to pass,satisfy an obligation,grant a request);nati=pinch or contract,restrain)、「(結婚の申込に対する)同意を・確固としたものにするもの(結納)」(「ヘイ」の語尾のI音が脱落して「ヘ」と、「ナチ」が「ンジ」となった)

  「クチ・(ン)ガタ・メア」、KUTI-NGATA-MEA(kuti=draw tightly together,pinch,contract;ngata=appeased,satisfied;mea=thing,reason,cause,fact)、「(結婚の約束を)確固としたものとし・(相手を)満足させる・物(結納)」(「(ン)ガタ」のNG音がG音に変化して「ガタ」から「ガダ」と、「メア」の語尾のA音が脱落して「メ」となった)

  「タル・イ・レ」、TARU-I-RE(taru=thing;i=past tense;re=see!)、「(結婚の約束を確認するために取り交わした贈り物で、一般の)観覧に・供した・品物(結納)」

  「イ・ヰ・ノホ」、I-WHI-NOHO(i=by,by reason of,for want of,with;whi=can,be able;noho=sit,settle,marry)、「結婚を・可能とすることに・伴うもの(結納)」(「ヰ」のWH音が脱落して「イ」となり、「イ・イ」が「イー」と、「ノホ」のH音が脱落して「ノオ」から「ノ」または「ノー」となつた)

  「チ・ル・チヒ」、TI-RU-TIHI(ti=throw,cast;ru=shake,agitate,scatter;tihi=summit,top(whakatihi=basket of fern root,feast))、「(結婚の約束を確認するために)奮発して・食料(または饗宴)を・提供する(結納)」(「チ」が「シ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シ」となった)

  「オ・イ・ウイ・ノホ」、O-I-UI-NOHO(o=the...of;i=by,by reason of,for want of,with;ui=disentangle,ask;noho=sit,settle,marry)、「例の・結婚の・申込に・伴うもの(結納)」(「イ・ウイ」が「ユイ」と、「ノホ」のH音が脱落して「ノオ」から「ノー」となつた)

  「キア・メア・タ・ケ」、KIA-MEA-TA-KE(kia=to introduce a proposition,to denote wish or purpose or effect;mea=thing,reason,cause,fact;ta=dash,beat,lay;ke=different,strange)、「結婚の約束を確認するために取り交わす・贈り物で・(それを飲むと)奇妙な(気分に)・襲われるもの(酒)(結納)」(「キア」の語尾のA音が脱落して「キ」と、「メア」の語尾のA音が脱落して「メ」と、「タ」が「ザ」となった)

  「タ(ン)ゴ・ミヒ・イ・レ」、TANGO-MIHI-I-RE(tango=take up,take in hand,take away,remove;mihi=greet,admire;i=past tense;re=see!)、「(結婚の約束を確認するために)謹んで・取り交わす・(一般の)観覧に・供するもの(結納)」(「タ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「タノ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

  「ノチ・イ・レ」、NOTI-I-RE(noti=pinch or contract as with a band or ligature;i=past tense;re=see!)、「(鰒を紐状に圧縮したもの)熨斗を付けた(贈り物で結婚の約束を確認するために取り交わす)もので・(一般の)観覧に・供するもの(結納)」(「ノチ」が「ノシ」となった)

  「タ(ン)ゴ・メア」、TANGO-MEA(tango=take up,take in hand,take away,remove;mea=thing,reason,cause,fact)、「(結婚の約束を確認するために)取り交わす・食料(または会食)(結納)」(「タ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「タノ」と、「メア」の語尾のA音が脱落して「メ」となった)

  「イ・ヰ・イ・レ」、I-WHI-I-RE(i=by,by reason of,for want of,with;whi=can,be able;i=past tense;re=see!)、「結婚の約束を・可能にする(ために取り交わす贈り物で)・(一般の)観覧に・供するもの(結納)」(「ヰ」のWH音が脱落して「イ」となり、「イ・イ」が「イー」となった)

  「オ・チア」、O-TIA(o=the...of;tia=stick in,adorn by sticking feathers)、「例の(結婚の約束を確認するために取り交わす贈り物で)・美しい羽根で飾ったもの(結納)」(「チア」が「チャ」となった)

  「カハ・タメ」、KAHA-TAME(kaha=strong,able,persistency;tame=food,eat)、「(結婚を)を可能にする(ために取り交わす)・食料(または会食)(結納)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

  「イ・ウイ」、I-UI(i=by,by reason of,for want of,with;ui=disentangle,ask)、「(結婚の)申込に・伴うもの(結納)」(「イ・ウイ」が「ユイ」となつた)

  「マウ・チキ」、MAU-TIKI(mau=food products;tiki=tie up,keep in confinement)、「加工食品で・(結婚の当事者を)緊密に縛り上げるもの(結納)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「チキ」が「ジギ」となった)

  「ホノ・タ・ケ」、HONO-TA-KE(hono=join,add,marry,proceed to do;ta=dash,beat,lay;ke=different,strange)、「結婚に向かって進むために(取り交わす贈り物で)・(それを飲むと)奇妙な(気分に)・襲われるもの(酒)(結納)」(「ホノ」が「ホン」と、「タ」が「ザ」となった)

  「ニヒ・ピチ・チナ」、NIHI-PITI-TINA(nihi=move stealthly,come stealthly,surprise;piti=put side by side,add;tina=fixed,fast,firm,satisfied)、「(結婚の約束を)確固としたものにするために・次から次と積み上げて・びっくりするもの(結納)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニー」と、「ビチ」が「ビチ」と、「チナ」が「ジン」となった)

の転訛と解します。

211ゆうだち(夕立)・ニワカアメ・オレサマアメ・ラエサマアメ・オシグレ・ヨダチ・ニワカ・サダチ・ソバイ・サンダチ・イッカケアメ・サダッ・カタブイ・カンダチアメ・ライサマアメ・ヨラチ・ソバエ・ユーズ・タカヌシーバイ

 「ゆうだち」の方言には、北海道、千葉などの「ニワカアメ」、青森、秋田の「ユーダジ」(「ゆうだち」と同語源)、宮城の「オレサマアメ」、山形の「ラエサマアメ」、福島の「ニワガアメ」(「ニワカアメ」と同語源)、茨城、群馬などの「ユーダチ」(「ゆうだち」と同語源)、栃木の「オシグレ」、三重の「ユダチ」(「ゆうだち」と同語源)、奈良、和歌山の「ヨダチ」、山口の「ニワカ」、徳島の「サダチ」、香川の「ソバイ」、高知の「サンダチ」、熊本の「イッカケアメ」、鹿児島の「サダッ」、沖縄那覇・首里の「カタブイ」があります。

 上記のほか、岩手の「カンダチアメ」(古)、福島の「ライサマアメ」、和歌山の「ヨラチ」、広島の「ソバエ」(古)、大分の「ユーズ」(古)、沖縄首里の「タカヌシーバイ」があります。

 この「ゆうだち」、「ニワカアメ」、「オレサマアメ」、「ラエサマアメ」、「オシグレ」、「ヨダチ」、「ニワカ」、「サダチ」、「ソバイ」、「サンダチ」、「イッカケアメ」、「サダッ」、「カタブイ」、「カンダチアメ」、「ライサマアメ」、「ヨラチ」、「ソバエ」、「ユーズ」、「タカヌシーバイ」は、

  「ヰウ・タハ・アチ」、WHIU-TAHA-ATI(whiu=throw,place,be gathered together;taha=side,pass on one side,go by;ati=descendant,clan)、「叩き付けるような・通り過ぎて行く・部類に属する(雨。夕立)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」、「ユウ」または「ユー」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」となり、そのA音が「アチ」の語頭のA音と連結して「タチ」から「ダチ」または「ダジ」となった)

  「ニヒ・ワカ・アワ・マエ」、NIHI-WHAKA-AWHA-MAE(nihi=move stealthly,come stealthly,surprise;whaka=make an immediate return for anything,reply to;awha=storm,rain;mae=languid,listless,withered)、「そっとやってきて・即座に降らす・元気のない・雨(夕立)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「アワ」のWH音が脱落して「ア」と、「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」となった。また「ワカ」が「ワガ」となった)

  「オ・レ・タ・マ・アワ・マエ」、O-LE-TA-MA-AWHA-MAE(o=the...of;(Hawaii)le=to go about aimlessly;ta=dash,beat,lay;ma=white,clean;awha=storm,rain;mae=languid,listless,withered)、「例の・(当てもなくさまよう)どこに落ちるか分からない・清らかに・座す神(雷)とともにやってくる・元気のない・雨(夕立)」(「タ」が「サ」と、「アワ」のWH音が脱落して「ア」と、「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」となった)

  「ラエ・タ・マ・アワ・マエ」、LAE-TA-MA-AWHA-MAE((Hawaii)lae=forehead(laelae=bright,shiny);ta=dash,beat,lay;ma=white,clean;awha=storm,rain;mae=languid,listless,withered)、「(雷)光を・清らかに・座す神(雷)とともにやってくる・元気のない・雨(夕立)」(「タ」が「サ」と、「アワ」のWH音が脱落して「ア」と、「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」となった)

  「オ・チヒ・(ン)グ・レイ」、O-TIHI-NGU-REI(o=the...of;tihi=sough or moan of the wind(tihitihi=make a gentle rustling sound,trifling,idling;ngu=silent,greedy,moan;rei=leap,rush,run)、「例の・静かに・(急に)降り出す・しとしとと降る(雨。夕立)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「シ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「イオ・タハ・アチ」、IO-TAHA-ATI(io=tough,hard,obstinate;taha=side,pass on one side,go by;ati=descendant,clan)、「激しい・通り過ぎて行く・部類に属する(雨。夕立)」(「イオ」が「ヨ」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」となり、そのA音が「アチ」の語頭のA音と連結して「タチ」から「ダチ」となった)

  「ニヒ・ワカ」、NIHI-WHAKA(nihi=move stealthly,come stealthly,surprise;whaka=make an immediate return for anything,reply to)、「そっとやってきて・即座に降る(雨。夕立)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

  「タ・タハ・アチ」、TA-TAHA-ATI(ta=dash,beat,lay;taha=side,pass on one side,go by;ati=descendant,clan)、「叩き付ける・通り過ぎて行く・部類に属する(雨。夕立)」(「タ」が「サ」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」となり、そのA音が「アチ」の語頭のA音と連結して「タチ」から「ダチ」となった)

  「ト・パイ」、TO-PAI(to=drag,haul;pai=good,excellent,suitable)、「丁度いい頃合いに(降り過ぎることなく)・引いて行く(降り止む)(雨。夕立)」(「ト」が「ソ」と、「パイ」が「バイ」となった)

  「タネ・タハ・アチ」、TANE-TAHA-ATI(tane=man,showing manly qualities;taha=side,pass on one side,go by;ati=descendant,clan)、「男らしい・通り過ぎて行く・部類に属する(雨。夕立)」(「タネ」が「サン」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」となり、そのA音が「アチ」の語頭のA音と連結して「タチ」から「ダチ」となった)

  「イ・ツ・カカイ・アワ・マエ」、I-TU-KAKAI-AWHA-MAE(i=past tense,from,by,at;tu=fight with,energetic;kakai=frequentative;awha=storm,rain;mae=languid,listless,withered)、「(夏季に)懸命に・しばしば・降る・元気のない・雨(夕立)」(「ツ」が「ッ」と、「カカイ」のAI音がE音に変化して「カケ」と、「アワ」のWH音が脱落して「ア」と、「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」となった。また「ワカ」が「ワガ」となった)イッカケアメ

  「タ・タツ」、TA-TATU(ta=the...of,dash,beat,lay;tatu=reach the bottom,be at ease,strike one foot against the other,stumble)、「休む間なしに・(襲う)降ってくる(雨。夕立)」(「タ」が「サ」と、「タツ」が「ダッ」となった)

  「カハ・タプ・ウイ」、KAHA-TAPU-UI(kaha=strong,persistency;tapu=under religious or superstitious restriction,beyond one's power,sacred;ui=disentangle,relax or loosen a noose,ask)、「強力に・禁忌(タブー)を・破ったように(天の雨桶の出口を緩めたように激しく降る)(雨。夕立)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「タプ」の語尾のU音と「ウイ」の語頭のU音が連結して「タプイ」から「タブイ」となった)

  「カ(ン)ガ・タハ・チ・アワ・マエ」、KANGA-TAHA-TI(kanga=curse,abuse,execrate;taha=side,spasmodic twitching of the muscles,pass on one side,go by;ti=throw,cast,overcome;awha=storm,rain;mae=languid,listless,withered)、「呪いをかけられたように・急にやってきて・下して圧倒するもの(雷)とともに降る・元気のない・雨(夕立)」(「カ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カナ」から「カン」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」から「ダ」と、「アワ」のWH音が脱落して「ア」と、「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」となった)

  「ラヒ・タ・マ・アワ・マエ」、RAHI-TA-MA-AWHA-MAE(rahi=great,abundant,loud;ta=dash,beat,lay;ma=white,clean;awha=storm,rain;mae=languid,listless,withered)、「轟音を轟かせる・清らかに・座す神(雷)とともにやってくる・元気のない・雨(夕立)」(「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」と、「タ」が「サ」と、「アワ」のWH音が脱落して「ア」と、「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」となった)

  「イオ・ラ・アチ」、IO-RA-ATI(io=tough,hard,obstinate;ra,rara=make a continued dull sound,roar;ati=descendant,clan)、「激しい・雷音を轟かす・部類に属する(雨。夕立)」(「イオ」が「ヨ」と、「ラ」のA音が「アチ」の語頭のA音と連結して「ラチ」となった)

  「ト・パエ」、TO-PAE(to=drag,haul;pae=horizen,lie on one side,perch)、「(やがて)休み場所へ・引いて行く(降り止む)(雨。夕立)」(「ト」が「ソ」と、「パエ」が「バエ」となった)

  「ヰウ・ツ」、WHIU-TU(whiu=throw,place,be gathered together;tu=fight with,energetic)、「懸命に・叩き付けるように降る(雨。夕立)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユー」と、「ツ」が「ズ」となった)

  「タカ・ヌイ・チヒ・パイ」、TAKA-NUI-TIHI-PAI(taka=fall off,fall away;nui=large,many;tihi=summit,top;pai=good,excellent,suitable)、「大量に・最高に・いい加減で・(空から)降る(雨・夕立)」(「ヌイ」が「ヌ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シー」と、「パイ」が「バイ」となった)

の転訛と解します。

212ゆうべ(昨夜)・ユンベ・ユンベナ・インベ・ヨンベナ・ヨンベ・キニョーノバン・ユービ・チヌーヌユル・サギノバンゲ・ヤゼン・キノノバン

 「ゆうべ」の方言には、北海道、青森などの「ユンベ」、岩手、宮城などの「ユンベナ」、栃木の「インベ」、東京、神奈川などの「ユーベ」(「ゆうべ」と同語源)、新潟の「ヨンベナ」、石川、福井などの「ヨンベ」、広島の「キニョーノバン」、鹿児島の「ユベ」(「ゆうべ」と同語源)、沖縄那覇の「ユービ」、沖縄首里の「チヌーヌユル」があります。

 上記のほか、青森の「サギノバンゲ」、京都の「ヤゼン」(古)、香川の「キノノバン」などがあります。

 この「ゆうべ」、「ユンベ」、「ユンベナ」、「インベ」、「ヨンベナ」、「ヨンベ」、「キニョーノバン」、「ユービ」、「チヌーヌユル」、「サギノバンゲ」、「ヤゼン」、「キノノバン」は、

  「ヰウ・パエ」、WHIU-PAE(whiu=throw,place,be gathered together;pae=horizen,lie on one side,perch)、「(昼間の仕事でくたくたになって)倒れ込むように・体を横たえた(時刻。昨夜)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」、「ユウ」または「ユー」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベ」となった)

  「ヰウ・ナ・パエ」、WHIU-NA-PAE(whiu=throw,place,be gathered together;na=by,belonging to;pae=horizen,lie on one side,perch)、「(昼間の仕事でくたくたになって)倒れ込むように・体を横たえた・部類の(時刻。昨夜)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」と、「ナ」が「ン」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベ」となった)

  「ヰウ・ナ・パエ(ン)ガ」、WHIU-NA-PAENGA(whiu=throw,place,be gathered together;na=by,belonging to;paenga=place where anything is laid on one side or across,margin)、「(昼間の仕事でくたくたになって)倒れ込むように・体を横たえた・部類の(時刻。昨夜)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」と、「ナ」が「ン」と、「パエ(ン)ガ」のAE音がE音に、NG音がN音に変化して「ペナ」から「ベナ」となった)

  「イ・ナ・パエ」、I-NA-PAE(i=past tense;na=by,belonging to;pae=horizen,lie on one side,perch)、「(昼間の仕事でくたくたになって)倒れ・込んだ・部類の(時刻。昨夜)」(「ナ」が「ン」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベ」となった)

  「イ・アウ(ン)ガ・パエ(ン)ガ」、I-AUNGA-PAENGA(i=past tense;aunga=not including;paenga=place where anything is laid on one side or across,margin)、「(昼間の仕事でくたくたになって)頭の中が空白に・なって・体を横たえた(時刻。昨夜)」(「アウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「オナ」となり、「イ・オナ」が「ヨナ」から「ヨン」と、「パエ(ン)ガ」のAE音がE音に、NG音がN音に変化して「ペナ」から「ベナ」となった)

  「イ・アウ(ン)ガ・パエ」、I-AUNGA-PAE(i=past tense;aunga=not including;pae=horizen,lie on one side,perch)、「(昼間の仕事でくたくたになって)頭の中が空白に・なって・体を横たえた(時刻。昨夜)」(「アウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「オナ」となり、「イ・オナ」が「ヨナ」から「ヨン」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベ」となった)

  「キ・(ン)ギオ・ノ・パ(ン)ゴ」、KI-NGIO-NO-PANGO(ki=full,very;ngio=extinguished,faded;no=of;pango=black,of dark colour)、「(太陽の光が)十分に・消えて・あたりが・暗くなった(時刻。昨夜)」(「(ン)ギオ」のNG音がN音に変化して「ニオ」から「ニョー」と、「パ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「パノ」から「バン」となった)

  「ヰウ・ピ」、WHIU-PI(whiu=throw,place,be gathered together;pi=young of birds etc.(pipi=half-grown,the young fighting men of an army))、「(昼間の初めての狩猟でくたくたになった)若者のように・倒れ込んだ(時刻。昨夜)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユー」と、「ピ」が「ビ」となった)

  「チ・ヌヌイ・ウル」、TI-NUNUI-URU(ti=throw,cast;nunui=large,many,greatness;uru=enter,arrive,west)、「偉大なもの(太陽)が・西に・沈んだ(時刻。昨夜)」(「ヌヌイ・ウル」が「ヌーヌユル」となった)

  「タ・(ン)ギ(ン)ギオ・パ(ン)ゲ」、TA-NGINGIO-PANGE(ta=the...of,dash,beat,lay;ngingio=withered,shrivelled;pange=tinder,touchwood)、「火口(ほくち)の・微かな光が・残っている(時刻。昨夜)」(「タ」が「サ」と、「(ン)ギ(ン)ギオ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ギニオ」から「ギノ」と、「パ(ン)ゲ」のNG音がG音に変化して「バンゲ」となった)

  「イア・タイナ」、IA-TAINA(ia=indeed;taina=singe)、「全く・焦げた(黒くなった)(時刻。昨夜)」(「イア」が「ヤ」と、「タイナ」のAI音がE音に変化して「テナ」ら「ゼン」となった)

  「キ・(ン)ゴ(ン)ゴ・パ(ン)ゴ」、KI-NGONGO-PANGO(ki=full,very;ngongo=waste away,become thin,suck;pango=black,of dark colour)、「(太陽の光が)十分に・薄くなって・暗くなった(時間。昨夜)」(「(ン)ゴ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「ノノ」と、「パ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「パノ」から「バン」となった)

の転訛と解します。

213ゆっくり・ジンタンジンタン・ユッタド・ソロソロド・モックラモックラ・ユッタラ・ジックリ・ボツボツ・ユックラ・ユルット・ボチボチ・ソロット・ユーニ・オチラト・シワシワ・オッチラ・ソーロー・ソローソロ・ヨーラヨラ・ユックル・ユックイ・ヨンナー・チョッコシズツ・ユッタリ

 「ゆっくり」の方言には、北海道の「ジンタンジンタン」、青森の「ユッタド」、岩手の「ソロソロド」、山形の「モックラモックラ」、栃木の「ユッタラ」、石川の「ジックリ」、福井の「ボツボツ」、長野、和歌山の「ユックラ」、愛知の「ユルット」、大阪、大分の「ボチボチ」、兵庫の「ソロット」、鳥取、広島などの「ユーニ」、島根の「オチラト」、徳島の「シワシワ」、愛媛の「オッチラ」、高知の「ソーロー」、福岡の「ソローソロ」、佐賀の「ヨーラヨラ」、長崎の「ユックル」、熊本の「ユルーット」(「ユルット」と同語源)、鹿児島の「ユックイ」、沖縄那覇の「ヨンナー」、沖縄首里の「ヨーンナー」(「ヨンナー」と同語源)があります。

 上記のほか、富山の「チョッコシズツ」、徳島の「ソロソロ」(「ソローソロ」と同語源)、愛媛の「ユッタリ」、福岡の「ソローット」(「ソロット」と同語源)があります。

 この「ゆっくり」、「ジンタンジンタン」、「ユッタド」、「ソロソロド」、「モックラモックラ」、「ユッタラ」、「ジックリ」、「ボツボツ」、「ユックラ」、「ユルット」、「ボチボチ」、「ソロット」、「ユーニ」、「オチラト」、「シワシワ」、「オッチラ」、「ソーロー」、「ソローソロ」、「ヨーラヨラ」、「ユックル」、「ユックイ」、「ヨンナー」、「チョッコシズツ」、「ユッタリ」は、

  「ヰウ・ツ・クリ」、WHIU-TU-KURI(whiu=throw,place,drive,whip,collect;tu=fight with,energetic;kuri=dog,any quadruped)、「犬(または四つ足の動物)を・根気よく・調教するように(ゆっくり)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「チナ・タ(ン)ガ・チナ・タ(ン)ガ」、TINA-TANGA-TINA-TANGA(tina=fixed,firm,steady;tanga,tatanga=alert,prompt)、「着実に・注意して・着実に・注意して(ゆっくり)」(「チナ」が「ジン」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」となった)

  「ヰウ・ツ・タタウ」、WHIU-TU-TATAU(whiu=throw,place,drive,whip,collect;tu=fight with,energetic;tatau=tie with a cord,count,repeat one by one,settle down upon,draw or push a sliding board)、「数を・根気よく・数えるように(ゆっくり)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」と、「ツ」が「ッ」と、「タタウ」のAU音がO音に変化して「タト」から「タド」となった)

  「トロ・トロ・ト」、TORO-TORO-TO(toro=stretch forth,extend,arrange the food in a earth-oven after the fire has been removed;to=drag,haul)、「(地中の)蒸し焼き竈から・(調理が済んだ)食料を引き出すように(ゆっくり)」(「トロ」が「ソロ」と、「ト」が「ド」となった)

  「モツ・クラ・モツ・クラ」、MOTU-KURA-MOTU-KURA(motu=severed,separated,moved to a distance;kura=ornamented with feathers,treasure,valued possession)、「宝物を・遠くに運ぶように(ゆっくり)」(「モツ」が「モッ」となった)

  「ヰウ・ツ・タラ」、WHIU-TU-TARA(whiu=throw,place,drive,whip,collect;tu=fight with,energetic;tara=appearing brfore sunrise,wane of the moon,affect by incantation)、「月が・少しずつ・満ち欠けするように(ゆっくり)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「チ・ツ・クリ」、TI-TU-KURI(ti=throw,cast,overcome;tu=fight with,energetic;kuri=dog,any quadruped)、「犬(または四つ足の動物)を・根気よく・思いのままに支配するように(ゆっくり)」(「チ」が「ジ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「パウ・ツ・パウ・ツ」、PAU-TU-PAU-TU(pau=consumed,exhausted;tu=fight with,energetic)、「着々と・消耗して・着々と・消耗して(ゆっくり)」(「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボ」となった)

  「ヰウ・ツ・クラ」、WHIU-TU-KURA(whiu=throw,place,drive,whip,collect;tu=stand,settle;kura=ornamented with feathers,treasure,valued possession)、「宝物を・きちんと・据えて置くように(ゆっくり)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「イ・ウルツ・ト」、I-URUTU-TO(i=past tense,from,by,at;urutu=be brought to a standstill;to=drag,haul)、「停止・した状態に・移行するように(ゆっくり)」(「イ・ウルツ」が「ユルッ」または「ユルーッ」となった)

  「パウ・チ・パウ・チ」、PAU-TI-PAU-TI(pau=consumed,exhausted;ti=throw,cast)、「少しずつ・消耗して・少しずつ・消耗して(ゆっくり)」(「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボ」となった)

  「トロ・ト」、TORO-TO(toro=stretch forth,extend,arrange the food in a earth-oven after the fire has been removed;to=drag,haul)、「(地中の)蒸し焼き竈から・(調理が済んだ)食料を引き出すように(ゆっくり)」(「トロ」が「ソロッ」または「ソローッ」となった)

  「ヰウ・ニヒ」、WHIU-NIHI(whiu=throw,place,drive,whip,collect;nihi=steep,move stealthly)、「(物を)うず高く・積み上げるように(ゆっくり)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユー」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

  「オチ・ラト」、OTI-RATO(oti=finished,gone or come for good;rato=be served or provided,be distributed)、「食事の給仕を・きちんと果たすように(ゆっくり)」

  「チワチワ」、TIWHATIWHA(dark,gloomy in mind,sad)、「憂鬱な気分で(ゆっくり)」(「チワチワ」が「シワシワ」となった)

  「オチ・ラハ」、OTI-RAHA(oti=finished,gone or come for good;raha=open,extended)、「(仕事を)堂々と・きちんと果たすように(ゆっくり)」(「オチ」が「オッチ」と、「ラハ」のH音が脱落して「ラ」となった)

  「トロ」、TORO(stretch forth,extend,arrange the food in a earth-oven after the fire has been removed)、「(地中の蒸し焼き竈から調理が済んだ)食料を取り出すように(ゆっくり)」(「トロ」が「ソーロー」となった)

  「トロ・トロ」、TORO-TORO(toro=stretch forth,extend,arrange the food in a earth-oven after the fire has been removed)、「(地中の)蒸し焼き竈から・(調理が済んだ)食料を取り出すように(ゆっくり)」(「トロ・トロ」が「ソローソロ」となった)

  「イ・オラ・イ・オラ」、I-ORA-I-ORA(i=past tense,from,by,at;ora=wedge for spliting timber)、「木材を・楔で割って板にする(ゆっくり)」(「イ・オラ・イ・オラ」が「ヨーラヨラ」となった)

  「ヰウ・ツ・クル」、WHIU-TU-KURI(whiu=throw,place,drive,whip,collect;tu=fight with,energetic;kuru=strike with the fist,thump,pound,an ornament of greenstone)、「翡翠の勾玉などを・根気よく・加工するように(ゆっくり)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「ヰウ・ツ・クイ」、WHIU-TU-KUI(whiu=throw,place,drive,whip,collect;tu=fight with,energetic;kui=woman)、「女を・根気よく・躾けるように(ゆっくり)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「イオ・ナナ」、IO-NANA(io=tough,hard,obstinate;nana=tend carefully,nurse,tattoo marks between eyebrows)、「丁寧に・看護するように(ゆっくり)」または「しっかりと・眉間に入れ墨を入れるように(ゆっくり)」(「イオ」が「ヨ」と、「ナナ」が「ンナー」または「ーンナー」となった)

  「チオホ・コチ・ツツ」、TIOHO-KOTI-TUTU(tioho=apprehensive;koti=cut in two,divide,separate;tutu=set on fire,be raised as dust,violent)、「(心配しながら)慎重に・力強く・切り離して行くように(ゆっくり)」(「チオホ」のH音が脱落して「チョ」から「チョッ」と、「コチ」が「コシ」と、「ツツ」が「ズツ」となった)

  「ヰウ・ツ・タリ」、WHIU-TU-TARI(whiu=throw,place,drive,whip,collect;tu=fight with,energetic;tari,tatari=wait,noose for catching birds etc.)、「鳥獣が罠にかかるのを・根気よく・待つように(ゆっくり)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」と、「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

214ゆでる(茹でる)・ユガグ・ユンデル・ニル・ウデル・モドル・ユレル・エデー・イデル・インデル・イガク・イズッ・イズル・ユズッ・ユリーン・ユディーン

 「ゆでる」の方言には、北海道の「ユガグ」、青森、岩手などの「ユンデル」、福島の「ニル」、茨城、栃木などの「ウデル」、新潟の「モドル」、石川、静岡などの「ユガク」(「ユガグ」と同語源)、和歌山の「ユレル」、島根の「エデー」、徳島、香川などの「イデル」、高知の「インデル」、福岡、大分の「イガク」、佐賀の「イズッ」、長崎の「イズル」、鹿児島の「ユズッ」、沖縄那覇の「ユリーン」、沖縄首里の「ユディーン」があります。

 この「ゆでる」、「ユガグ」、「ユンデル」、「ニル」、「ウデル」、「モドル」、「ユレル」、「エデー」、「イデル」、「インデル」、「イガク」、「イズッ」、「イズル」、「ユズッ」、「ユリーン」、「ユディーン」は、

  「イ・フ・タイルヒ」、I-HU-TAIRUA(i=ferment,be stirred;hu=resound,bubble up;tairuhi,whakatairuhi=be listless,idle,dawdle)、「発酵のような・(泡を立てて)沸騰する(=湯で)・軟らかくする(茹でる)」(「フ」のH音が脱落して「ウ」となり、「イ・ウ」が「ユ」と、「タイルヒ」のAI音がE音に変化し、H音が脱落して「テル」から「デル」となった)

  「イ・フ・(ン)ガク」、I-HU-NGAKU(i=ferment,be stirred;hu=resound,bubble up;ngaku=strip,shred(ngakungaku=reduced to shreds,soft,ripe))、「発酵のような・(泡を立てて)沸騰する(=湯で)・軟らかく(または熟成、渋抜きを)する(茹でる)」(「フ」のH音が脱落して「ウ」となり、「イ・ウ」が「ユ」と、「(ン)ガク」のNG音がG音に変化して「ガク」から「ガグ」となった)

  「イ・フ・ナ・タイルヒ」、I-HU-NA-TAIRUA(i=ferment,be stirred;hu=resound,bubble up;na=by,belonging to;tairuhi,whakatairuhi=be listless,idle,dawdle)、「発酵のような・(泡を立てて)沸騰する(=湯)・の部類に属する温水で・軟らかくする(茹でる)」(「フ」のH音が脱落して「ウ」となり、「イ・ウ」が「ユ」と、「ナ」が「ン」と、「タイルヒ」のAI音がE音に変化し、H音が脱落して「テル」から「デル」となった)

  「ニヒ・イ・ル」、NIHI-RU((Hawaii)nihi=stealthly,quietly,softly;i=ferment,be stirred;ru=shake,agitate,scatter)、「静かに・発酵のように・(奮起して)熱する(茹でる)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となり、そのI音と「イ」のI音が連結して「ニ」となった)

  「フ・タイルヒ」、HU-TAIRUA(hu=resound,bubble up;tairuhi,whakatairuhi=be listless,idle,dawdle)、「(泡を立てて)沸騰する(=湯で)・軟らかくする(茹でる)」(「フ」のH音が脱落して「ウ」と、「タイルヒ」のAI音がE音に変化し、H音が脱落して「テル」から「デル」となった)

  「ニヒ・イ・ル」、MOTO-RU((Hawaii)nihi=stealthly,quietly,softly;i=ferment,be stirred;ru=shake,agitate,scatter)、「静かに・発酵のように・(奮起して)熱する(茹でる)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となり、そのI音と「イ」のI音が連結して「ニ」となった)

  「マウ・タウ・ル」、MAU-TAU-RU(mau=food product;tau=come to rest,float,lie steeping in water;ru=shake,agitate,scatter)、「食品を・水に浸して・(奮起して)熱する(茹でる)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」となった)

  「イ・フ・レイ・ル」、I-HU-REI-RU(i=ferment,be stirred;hu=resound,bubble up;rei=leap,rush,run;ru=shake,agitate,scatter)、「発酵のような・(泡を立てて)沸騰する(=湯で)・元気よく・(奮起して)熱する(茹でる)」(「フ」のH音が脱落して「ウ」となり、「イ・ウ」が「ユ」と、「レイ」の語尾のI音が脱落して「レ」となった)

  「エ・タイ」、E-TAI(e=to denote action in progress or temporary condition;tai,taitai=dash,strike,knock)、「(湯で)打撃を・加えている(茹でる)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「デー」となった)

  「イ・タイルヒ」、I-TAIRUA(i=ferment,be stirred;tairuhi,whakatairuhi=be listless,idle,dawdle)、「発酵のような(泡を立てる湯で)・軟らかくする(茹でる)」(「タイルヒ」のAI音がE音に変化し、H音が脱落して「テル」から「デル」となった)

  「イ・ナ・タイルヒ」、I-NA-TAIRUA(i=ferment,be stirred;na=by,belonging to;tairuhi,whakatairuhi=be listless,idle,dawdle)、「発酵のような(泡を立てる湯の)・部類に属する(温水で)・軟らかくする(茹でる)」(「ナ」が「ン」と、「タイルヒ」のAI音がE音に変化し、H音が脱落して「テル」から「デル」となった)

  「イ・(ン)ガク」、I-NGAKU(i=ferment,be stirred;ngaku=strip,shred(ngakungaku=reduced to shreds,soft,ripe))、「発酵のような(泡を立てる湯で)・軟らかく(または熟成、渋抜きを)する(茹でる)」(「(ン)ガク」のNG音がG音に変化して「ガク」となった)

  「イ・ツツ」、I-TUTU(i=ferment,be stirred;tutu=set on fire,be raised as dust,violent)、「発酵のような(泡を立てる湯で)・(火に掛ける)加熱する(茹でる)」(「ツツ」が「ズッ」となった)

  「イ・ツ・ル」、I-TU-RU(i=ferment,be stirred;tu=fight with,energetic)、「発酵のような(泡を立てる湯で)・懸命に・(奮起して)熱する(茹でる)」(「ツ」が「ズ」となった)

  「イ・フ・ツツ」、I-HU-TUTU(i=ferment,be stirred;hu=resound,bubble up;tutu=set on fire,be raised as dust,violent)、「発酵のような・(泡を立てて)沸騰する(=湯で)・(火に掛ける)加熱する(茹でる)」(「ツツ」が「ズッ」となった)(「フ」のH音が脱落して「ウ」となり、「イ・ウ」が「ユ」と、「ツツ」が「ズッ」となった)

  「イ・フ・リノ」、I-HU-RINO(i=ferment,be stirred;hu=resound,bubble up;rino=swirl,eddy,twist)、「発酵のような・(泡を立てて)沸騰する(=湯が)・(小さな渦を巻いて)加熱する(茹でる)」(「フ」のH音が脱落して「ウ」となり、「イ・ウ」が「ユ」と、「リノ」が「リーン」となった)

  「イ・フ・タイナ」、I-HU-TAINA(i=ferment,be stirred;hu=resound,bubble up;taina=singe)、「発酵のような・(泡を立てて)沸騰する(=湯が)・(焦がす)加熱する(茹でる)」(「フ」のH音が脱落して「ウ」となり、「イ・ウ」が「ユ」と、「タイナ」のAI音がEI音に変化して「テイナ」から「ディーン」となった)

の転訛と解します。

「ヨ」

215よだれ(涎)・ビロ・ベロッコ・ヨンダレ・ユダレ・ヨズ・ヨド・ゴボジ・ユライ・ユダイ・ベロ・ツバ・ツバキ・イダレ・ツ・ヨラレ

 「よだれ」の方言には、北海道、青森などの「ビロ」、岩手の「ベロッコ」、宮城、山形などの「ヨンダレ」、福島、茨城などの「ユダレ」、新潟の「ヨズ」、愛知、鳥取の「ヨド」、島根の「ゴボジ」、岡山、香川の「ヨーダレ」(「よだれ」と同語源)、沖縄那覇の「ユライ」、沖縄首里の「ユダイ」があります。

 上記のほか、北海道の「ベロ」、「ツバ」、「ツバキ」(古)、秋田の「イダレ」、岡山の「ツ」、福岡の「ヨラレ」などがあります。

 この「よだれ」、「ビロ」、「ベロッコ」、「ヨンダレ」、「ユダレ」、「ヨズ」、「ヨド」、「ゴボジ」、「ユライ」、「ユダイ」、「ベロ」、「ツバ」、「ツバキ」、「イダレ」、「ツ」、「ヨラレ」は、

  「イオ・タレ」、IO-TARE(io=tough,hard,obstinate;tare=hang,be drawn towards,be intent upon)、「(口から特に子供が)しつこく・垂れ流すもの(涎)」(「イオ」が「ヨ」または「ヨー」と、「タレ」が「ダレ」となった)

  「ピヒ・ロ」、PIHI-RO(pihi=spring up,begin to grow,sprout;ro=roto=the inside)、「(口の)中から・湧いて出るもの(涎)」(「ピヒ」のH音が脱落して「ピ」から「ビ」となった)

  「ペロ・ツ・コ」、PERO-TU-KO(pero=dog;tu=fight with,energetic;ko=of place,to,at)、「犬が・盛んに・(その口から)垂らすもの(涎)」(「ペロ」が「ベロ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「イオ・ナ・タレ」、IO-NA-TARE(io=tough,hard,obstinate;na=by,belonging to;tare=hang,be drawn towards,be intent upon)、「(口から特に子供が)しつこく・といってよいように・垂れ流すもの(涎)」(「イオ」が「ヨ」と、「ナ」が「ン」と、「タレ」が「ダレ」となった)

  「ヰウ・タレ」、WHIU-TARE(whiu=satisfied with food,surfeited;tare=hang,be drawn towards,be intent upon)、「(食物を食べて)満足すると・垂れ流すもの(涎)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」と、「タレ」が「ダレ」となった)

  「イオ・ツ」、IO-TU(io=tough,hard,obstinate;tu=fight with,energetic)、「(口から特に子供が)しつこく・懸命に(垂れ流すもの)(涎)」(「イオ」が「ヨ」と、「ツ」が「ズ」となった)

  「イオ・ト」、IO-TO(io=tough,hard,obstinate;to=drag,haul)、「(口から特に子供が)しつこく・引き流すもの)(涎)」(「イオ」が「ヨ」と、「ト」が「ド」となった)

  「(ン)ガウ・ポチ」、NGAU-POTI(ngau=bite,hurt,act upon,affect,attack;poti=corner,basket for cooked food)、「料理を盛った皿・(が作用する)を見ると出てくるもの(涎)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「ポチ」が「ボジ」となった)

  「ヰウ・ラヒ」、WHIU-RAHI(whiu=satisfied with food,surfeited;rahi=great,plentifull)、「(食物を食べて)満足すると・大量に(出てくるもの)(涎)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」と、「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」となった)

  「ヰウ・タイ」、WHIU-TAI(whiu=satisfied with food,surfeited;tai=tide,wave)、「(食物を食べて)満足すると・流れるように(出てくるもの)(涎)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」と、「タイ」が「ダイ」となった)

  「ペロ」、PERO(dog)、「犬が(盛んにその口から)垂らすもの(涎)」(「ペロ」が「ベロ」となった)

  「ツハ」、TUHA(=tuwha=spit,expectrate)、「(口から)吐くもの(唾=涎)」(「ツハ」が「ツバ」となった)

  「ツハ・キ」、TUHA-KI(tuha=tuwha=spit,expectrate;ki=full,very)、「(口から)大量に・吐くもの(唾=涎)」(「ツハ」が「ツバ」となった)

  「イ・タレ」、I-TARE(i=past tense,beside,from,by,at;tare=hang,be drawn towards,be intent upon)、「(口から特に子供が)垂れ・流すもの(涎)」(「タレ」が「ダレ」となった)

  「ツ」、TU(fight with,energetic)、「(口から特に子供が)懸命に(垂れ流すもの)(涎)」

  「イオ・ラレ」、IO-RARE(io=tough,hard,obstinate;rare=lie,rest,carry)、「(口に)しつこく・貯めているもの(涎)」(「イオ」が「ヨ」となった)

の転訛と解します。

216よめ(嫁)・ヨメッコ・アネチャン・ヨメサマ・ヨメサン・ヨメハン・ヨメサ・ヨメクサン・ヨメジョ・ユミ・アネ・オンバコ・オカチャン・オナケー・ハナカッサン・ネー・ゴリョンサン・カカ

 「よめ」の方言には、岩手、静岡の「ヨメッコ」、宮城、愛知などの「ヨメゴ」(「ヨメッコ」と同語源)、山形の「アネチャン」、福島、栃木の「ヨメサマ」、埼玉、滋賀などの「ヨメサン」、富山の「ヨメハン」、石川の「ヨメサ」、佐賀の「ヨメクサン」、長崎、宮崎の「ヨメジョ」、沖縄那覇・首里の「ユミ」があります。

 上記のほか、青森の「アネ」(長男の嫁)、「オンバコ」(次男の嫁)、山形の「オカチャン」(家計を任されるようになった時)、山梨の「オナケー」(自分の妻)、「ハナカッサン」(花嫁)、高知の「ネー」(姑などが他人に言う場合)、福岡の「ゴリョンサン」(主婦の敬称)、大分の「カカ」(古)があります。

 この「よめ」、「ヨメッコ」、「アネチャン」、「ヨメサマ」、「ヨメサン」、「ヨメハン」、「ヨメサ」、「ヨメクサン」、「ヨメジョ」、「ユミ」、「アネ」、「オンバコ」、「オカチャン」、「オナケー」、「ハナカッサン」、「ネー」、「ゴリョンサン」、「カカ」は、

  「イ・アウ・マイ」、I-AU-MAI(i=beside;au=firm,intense;mai,maimai=a dance)、「傍に・近く寄り添う・(踊りを踊る)女(嫁)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「イ・オ」が「ヨ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

  「イ・アウ・マイ・コ」、I-AU-MAI-KO(i=beside;au=firm,intense;mai,maimai=a dance;ko=addressing to girl or males)、「傍に・近く寄り添う・(踊りを踊る)女の・子(嫁)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「イ・オ」が「ヨ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」から「メッ」となった。また「コ」が「ゴ」となった)

  「ア・ネヘ・チア(ン)ゴ」、A-NEHE-TIANGO(a=the...of,belonging to;nehe=ancient times,old age;tiango=shrunk,contracted)、「年長の・可愛らしい(小さい=愛称)・人(嫁)」(「ネヘ」のH音が脱落して「ネ」と、「チア(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「チアノ」から「チャン」となった)

  「イ・アウ・マイ・タ・マ」、I-AU-MAI-TA-MA(i=beside;au=firm,intense;mai,maimai=a dance;ta=dash,beat,lay;ma=white,clear)、「傍に・近く寄り添う・(踊りを踊る)女で・清らかに・座しているもの(嫁)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「イ・オ」が「ヨ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」と、「タ」が「サ」となった)

  「イ・アウ・マイ・タナ」、I-AU-MAI-TANA(i=beside;au=firm,intense;mai,maimai=a dance;tana=his,her,its)、「傍に・近く寄り添う・(踊りを踊る)女の・人(嫁)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「イ・オ」が「ヨ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」と、「タナ」が「サン」となった)

  「イ・アウ・マイ・ハナ」、I-AU-MAI-HANA(i=beside;au=firm,intense;mai,maimai=a dance;hana=shine,glow)、「傍に・近く寄り添う・(踊りを踊る)女で・光り輝く(=愛称)人(嫁)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「イ・オ」が「ヨ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」と、「ハナ」が「ハン」となった)

  「イ・アウ・マイ・タ」、I-AU-MAI-TA(i=beside;au=firm,intense;mai,maimai=a dance;ta=dash,beat,lay)、「傍に・近く寄り添う・(踊りを踊る)女で・(家に)座す人(嫁)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「イ・オ」が「ヨ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」と、「タ」が「サ」となった)

  「イ・アウ・マイ・ク・タナ」、I-AU-MAI-KU-TANA(i=beside;au=firm,intense;mai,maimai=a dance;ku=silent;tana=his,her,its)、「傍に・近く寄り添う・(踊りを踊る)女の・静かな・人(嫁)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「イ・オ」が「ヨ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」と、「タナ」が「サン」となった)

  「イ・アウ・マイ・チオホ」、I-AU-MAI-TIOHO(i=beside;au=firm,intense;mai,maimai=a dance;tioho=apprehensive)、「傍に・近く寄り添う・(踊りを踊る)女で・気配りをする人(嫁)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「イ・オ」が「ヨ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」と、「チオホ」のH音が脱落して「チオ」から「ジョ」となった)

  「ヰウ・ミヒ」、WHIU-MIHI(whiu=throw,place,drive,whip,satisfied with food,surfeited;mihi=sigh for,greet,admire,express discomfort)、「(家に)在って・尊敬されている人(嫁)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

  「ア・ネヘ」、A-NEHE(a=the...of,belonging to;nehe=ancient times,old age)、「年長の・人(嫁)」(「ネヘ」のH音が脱落して「ネ」となった)

  「オ(ン)ゲ・パコ」、ONGE-PAKO(onge=scarce,rare,rarity;pako=cultivate,glean(pakopako=gleanings,scraps of food))、「残飯(廃棄物)が・極めて少ない(始末がよい)(嫁)」(「オ(ン)ゲ」のNG音がN音に変化して「オネ」から「オン」と、「パコ」が「バコ」となった)

  「オ・カ・チア(ン)ゴ」、O-KA-TIANGO(o=the...of;ka=take fire,be lighted,burn;tiango=shrunk,contracted)、「例の・(家の)火を司る・可愛らしい(小さい=愛称)人(嫁)」(「チア(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「チアノ」から「チャン」となった)
  または「オ・カハ・チア(ン)ゴ」、O-KAHA-TIANGO(o=the...of;kaha=strong,able;tiango=shrunk,contracted)、「例の・強い発言力を持つ・可愛らしい(小さい=愛称)人(嫁)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「チア(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「チアノ」から「チャン」となった)

  「オ(ン)ガ・ケイ」、ONGA-KEI(onga=decoy,lure birds;kei=at,on,in,with,in possession of)、「私の・(私を)強く惹きつける人(嫁)」(「オ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「オナ」と、「ケイ」が「ケー」となった)

  「ハナ・カ・タナ」、HANA-KA-TANA(hana=shine,glow;ka=take fire,be lighted,burn;tana=his,her,its)、「光り輝く(=愛称)・(家の)火を司る・人(嫁)」(「カ」が「カッ」と、「タナ」が「サン」となった)

  「ネヘ」、NEHE(ancient times,old age)、「年長の(人)(嫁)」(「ネヘ」のH音が脱落して「ネー」となった)

  「(ン)ゴリ・オ(ン)ガ・タナ」、NGORI-ONGA-TANA(ngori=weak,listless;onga=decoy,lure birds;tana=his,her,its)、「(弱々しい)たおやかで・(人を)強く惹きつける・人(嫁)」(「(ン)ゴリ」のNG音がG音に変化して「ゴリ」と、「オ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「オナ」となり、「ゴリ・オナ」が「ゴリョン」と、「タナ」が「サン」となった)

  「カ・カハ」、KA-KAHA(ka=take fire,be lighted,burn;kaha=strong,able)、「(家の)火を司る・強い発言力を持つ人(嫁)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

「ワ」

217わがまま・カラキジ・カッテ・ダジャグ・キママ・ワガンマ・ヨクナシ・ガテレン・ジブンカッテ・オーチャク・カッテモン・キママハッピャク・キズイ・ワガサ・ジラ・ワゲママ・ワガイチマキバカユー・シタカホーダイ・ワガエーゴツ・キカンタロ・ルーナーカッティー・フンデー・ダハンコギ

 「わがまま」の方言には、青森の「カラキジ」、岩手の「カッテ」、秋田の「ダジャグ」、山形、福島などの「キママ」、栃木、群馬の「ワガンマ」、新潟の「ヨクナシ」、山梨の「ガテレン」、静岡の「ジブンカッテ」、愛知の「オーチャク」、滋賀、兵庫の「カッテモン」、大阪の「キママハッピャク」、鳥取の「キズイ」、岡山の「ワガサ」、山口の「ジラ」、香川の「ワゲママ」、高知の「ワンガママ」(「わがまま」と同語源)、佐賀の「ワガイチマキバカユー」、長崎の「シタカホーダイ」、熊本の「ワガエーゴツ」、宮崎の「キカンタロ」、沖縄那覇の「ルーナーカッティー」、沖縄首里の「フンデー」があります。

 上記のほか、北海道の「ダハンコギ」(古)があります。

 この「わがまま」、「カラキジ」、「カッテ」、「ダジャグ」、「キママ」、「ワガンマ」、「ヨクナシ」、「ガテレン」、「ジブンカッテ」、「オーチャク」、「カッテモン」、「キママハッピャク」、「キズイ」、「ワガサ」、「ジラ」、「ワゲママ」、「ワガイチマキバカユー」、「シタカホーダイ」、「ワガエーゴツ」、「キカンタロ」、「ルーナーカッティー」、「フンデー」、「ダハンコギ」は、

  「ワ(ン)ガ・ママ」、WHANGA-MAMA(whanga=wait,stride,measure with the extended arms,repeat after another;mama=free from tapu)、「禁忌に拘束されずに・(人を)待たせる(わがまま)」(「ワ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ワガ」となった。また「ワ(ン)ガ」が「ワンガ」となった)

  「カラ・キ・チ」、KARA-KI-TI(kara=secret plan,conspiracy;ki=full,very;ti=throw,cast)、「秘密の計画を・たくさん・提示する(わがまま)」(「チ」が「ジ」となった)

  「カ・ツ・タエ」、KA-TU-TAE(ka=take fire,be lighted,burn;tu=fight with,energetic;tae=arrive,come,go,extend to,proceed to)、「(火が燃えるように)熱くなって・懸命に・突っ走る(わがまま)」(「ツ」が「ッ」と、「タエ」のAE音がE音に変化して「テ」となった)

  「タ・チア・(ン)グ」、TA-TIA-NGU(ta=dash,beat,lay;tia=stick in,take a vigorous stroke in paddling;ngu=a person unable to swim)、「泳げない男が・力を振るって・舟を漕ぐ(わがまま)」(「タ」が「ダ」と、「チア」が「ジャ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「キ・ママ」、KI-MAMA(ki=full,very;mama=free from tapu)、「いつも・禁忌に拘束されずに行動する(わがまま)」

  「ワ(ン)ガ・ナ・マ」、WHANGA-NA-MA(whanga=wait,stride,measure with the extended arms,repeat after another;na=by,belonging to;ma=free from tapu)、「禁忌に拘束されない・部類に属するようなやり方で・(人を)待たせる(わがまま)」(「ワ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ワガ」と、「ナ」が「ン」となった)

  「イオ・クフ・ナチ」、IO-KUHU-NATI(io=tough,hard,obstinate;kuhu=insert,conceal;nati=pinch or contract,restrain)、「執着心を・隠して・小さく縮めた(わがまま)」(「イオ」が「ヨ」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「ナチ」が「ナシ」となった)

  「(ン)ガテ・レ(ン)ガ」、NGATE-RENGA(ngate=move,shake;renga=overflow,be full,fill up)、「はじけるように・動く(わがまま)」(「(ン)ガテ」のNG音がG音に変化して「ガテ」と、「レ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「レナ」から「レン」となった)

  「チプ・ナ・カ・ツ・タエ」、TIPU-NA-KA-TU-TAE(tipu=tupu=genuin,own;na=by,possessing by,belonging to;ka=take fire,be lighted,burn;tu=fight with,energetic;tae=arrive,come,go,extend to,proceed to)、「自分・自身が・(火が燃えるように)熱くなって・懸命に・突っ走る(わがまま)」(「チプ」が「ジブ」と、「ナ」が「ン」と、「ツ」が「ッ」と、「タエ」のAE音がE音に変化して「テ」となった)

  「オチ・アク」、OTI-AKU(oti=finished,gone or come for good;aku=delay,take time over anything,cleanse)、「何をしても・(人を)待たせる(わがまま)」(「オチ・アク」が「オチャク」から「オーチャク」となった)

  「カ・ツ・タエ・モナ」、KA-TU-TAE-MONA(ka=take fire,be lighted,burn;tu=fight with,energetic;tae=arrive,come,go,extend to,proceed to;mona=for him,for her)、「(火が燃えるように)熱くなって・懸命に・突っ走る・人(わがまま)」(「ツ」が「ッ」と、「タエ」のAE音がE音に変化して「テ」と、「モナ」が「モン」となった)

  「キ・ママ・ハピ・イ・アク」、KI-MAMA-HAPI-I-AKU(ki=full,very;mama=free from tapu;hapi=native oven or cooking pit;i=past tense;aku=delay,take time over anything,cleanse)、「いつも・禁忌に拘束されずに行動して・(地中の)蒸し焼き竈(で調理した料理による会食)に・遅刻・する(わがまま)」(「ハピ」が「ハッピ」と、「イ・アク」が「ャク」となった)

  「キ・ツイ」、KI-TUI(ki=full,very,to,upon,at,for,of;tui=parson bird)、「エリマキミツスイ(鳥)の・(自由な)行動のように(わがまま)」(「ツイ」が「ズイ」となった)

  「ワ(ン)ガ・タ」、WHANGA-TA(whanga=wait,stride,measure with the extended arms,repeat after another;ta=dash,beat,lay)、「禁忌に拘束されずに・突進する(わがまま)」(「ワ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ワガ」と、「タ」が「サ」となった)

  「チヒ・イラ」、TIHi-IRA(tihi=summit,top;ira=variegated,glittered)、「極まりなく・変色する(わがまま)」(「チヒ」のH音が脱落して「ジ」となり、そのI音と「イラ」の語頭のI音が連結して「ジラ」となった)

  「ワ(ン)ガイ・ママ」、WHANGAI-MAMA(whangai=feed,nourish,offer as food,propitiate;mama=free from tapu)、「禁忌に拘束されずに・(人に)食事を供する(わがまま)」(「ワ(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「ワゲ」となった)

  「ワ(ン)ガイ・」、WHANGAI-TI-MAKI-PAKA-WHIU(whangai=feed,nourish,offer as food,propitiate;ti=throw,cast;maki=invalid,sick person;paka=scorched,dried,baked,scraps;whiu=throw,place,drive,whip,satisfied with food,surfeited)、「(人に)食事を供するのに・病人に・乾燥した(固い)ものを・満腹するまで・出す(わがまま)」(「ワ(ン)ガイ」のNG音がG音に変化して「ワガイ」と、「パカ」が「バカ」と、「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユー」となった)

  「チタカ・ホウ・タイ」、TITAKA-HOU-TAI(titaka=wobble,move about irregularly,turn round;hou=dedicate or initiate a person etc.,establish by rites as above,ceremony of dedication or initiation;tai=anger,rage violence)、「神事の席で・荒々しく・動き回る(わがまま)」(「チタカ」が「シタカ」と、「ホウ」が「ホー」と、「タイ」が「ダイ」となつた)

  「ワ・(ン)ガエ・(ン)ガウ・ツ」、WA-NGAE-NGAU-TU(wa,whakawa=accuse,condemn;ngae=wheeze,of the cry of the kaka(bittern);ngau=bite,hurt,act upon,affect,attack;tu=fight with,energetic)、「ゴイサギの鳴き声が・うるさいと・懸命に・叩く(わがまま)」(「(ン)ガエ」のNG音がG音に変化して「ガエー」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)ワガエーゴツ

  「キ・カナ・タロ」、KI-KANA-TARO(ki=full,very;kana=stare wildly,bewitch;taro=denoting the lapse of a short interval of time)、「しょっちゅう・一瞬ではあるが・(人を)睨み付ける(呪う)(わがまま)」(「カナ」が「カン」となった)

  「ルナ・カ・ツ・テイ」、RUNA-KA-TU-TEI(runa=draw together with a cord,keep in line or rank(runaruna=pastime);ka=take fire,be lighted,burn;tu=fight with,energetic;tei=high,tall,summit,top)、「遊びで・(火が燃えるように)熱くなって・最高に・懸命に動く(わがまま)」(「ルナ」が「ルーナー」と、「ツ」が「ッ」と、「テイ」が「ティー」となった)

  「フヌ・テイ」、HUNU-TEI(hunu,huhunu=double canoe;tei=high,tall,summit,top)、「(海洋を渡航する大型の)ダブル・カヌーの・(部族長しか座れない)高楼に座る(わがまま)」(「フヌ」が「フン」と、「テイ」が「デー」となった)

  「タハ(ン)ガ・カウ・(ン)ギア」、TAHANGA-KAU-NGIA(tahanga=naked,empty;kau=swim,wade;ngia=seem,appear to be)、「裸で(何も付けずに)・泳いでいる・ようだ(わがまま)」(「タハ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タハナ」から「ダハン」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となった)

の転訛と解します。

218わずらわしい(煩わしい)・シチメンドクサイ・オモヤミダ・メンドクセァ・ズンケネー・スズメンドクサエ・メンドクセー・ヤッカイ・ショウシナイ・シンキクサイ・ヤブセッテー・ヤッカイダ・メンドクサェー・ウルサイ・ヤヤコシー・シンドクサイ・オトロシイ・ウタテー・メンダー・メンダクセ・ヤゲローシー・ヤネコイ・センナイ・メンドイ・シワシカ・シェカラシカ・ヒチメンドクサカ・ヒッチャカマシカ・ノサン・ミンローサン・カシマサン・セズネー・メンドナ・ジャマクサイ・ウルサェァ・シャーシカ・セカラシカ・シシカマシー・ウットーシー・セセロシー

 「わずらわしい」の方言には、北海道の「シチメンドクサイ」、青森、秋田の「オモヤミダ」、岩手の「メンドクセァ」、宮城の「ズンケネー」、山形の「スズメンドクサエ」、福島、茨城などの「メンドクセー」、栃木、神奈川の「ヤッカイ」、群馬、岐阜の「ヤッケー」(「ヤッカイ」と同語源)、東京、京都の「ワズラワシー」(「わずらわしい」と同語源)、新潟の「メンドークッセァ」(「メンドクセァ」と同語源)、富山の「ショウシナイ」、石川の「シンキクサイ」、福井、長野などの「メンドクサイ」(「メンドクセー」と同語源)、山梨の「ヤブセッテー」、静岡の「ヤッカイダ」、愛知の「メンドクサェー」、滋賀の「ウルサイ」、大阪の「ヤヤコシー」、兵庫の「シンドクサイ」、奈良の「オトロシイ」、和歌山の「ウタテー」、鳥取の「メンダー」、島根の「メンダクセ」、岡山の「ヤゲローシー」、広島の「ヤネコイ」、山口の「センナイ」、愛媛の「メンドイ」、福岡の「シワシカ」、佐賀の「シェカラシカ」、長崎の「ヒチメンドクサカ」、熊本の「ヒッチャカマシカ」、宮崎の「ノサン」、鹿児島の「メンドクセ」(「メンドクセー」と同語源)、沖縄那覇の「ミンローサン」、沖縄首里の「カシマサン」があります。

 上記のほか、福島の「セズネー」、石川の「メンドナ」、福井の「ジャマクサイ」、愛知の「ウルサェァ」、福岡の「シャーシカ」、「セカラシカ」、大分の「シシカマシー」、「ウットーシー」、「セセロシー」があります。

 この「わずらわしい」、「シチメンドクサイ」、「オモヤミダ」、「メンドクセァ」、「ズンケネー」、「スズメンドクサエ」、「メンドクセー」、「ヤッカイ」、「ショウシナイ」、「シンキクサイ」、「ヤブセッテー」、「ヤッカイダ」、「メンドクサェー」、「ウルサイ」、「ヤヤコシー」、「シンドクサイ」、「オトロシイ」、「ウタテー」、「メンダー」、「メンダクセ」、「ヤゲローシー」、「ヤネコイ」、「センナイ」、「メンドイ」、「シワシカ」、「シェカラシカ」、「ヒチメンドクサカ」、「ヒッチャカマシカ」、「ノサン」、「ミンローサン」、「カシマサン」、「セズネー」、「メンドナ」、「ジャマクサイ」、「ウルサェァ」、「シャーシカ」、「セカラシカ」、「シシカマシー」、「ウットーシー」、「セセロシー」は、

  「ワツ・ラワ・チヒ」、WHATU-RAWA-TIHI(whatu=weave garment or baskets etc.;rawa=goods,object,quite,very,intently,carefully,really;tihi=summit,top)、「最高に・注意を払って・着物を織り上げる(煩わしい)」(「ワツ」が「ワズ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シイ」となった)

  「チチ・メネ・トフ・クタイタイ」、TITI-MENE-TOHU-KUTAITAI(titi=adorn by sticking in feathers;mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kutaitai=of a disagreeable taste)、「頭に羽根飾りを付けて・顔を顰めて・不快な感情を・みせる(煩わしい)」(「チチ」が「シチ」と、「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」と、「クタイタイ」の反復語尾が脱落して「クサイ」となった)

  「オモオモ・イア・ミヒ・タ」、OMOOMO-IA-MIHI-TA(omoomo,whakaomoomo=tend a child or invalid;ia=indeed:mihi=sigh for,greet,express discomfort;ta=dash,beat,lay)、「子供や病人の世話は・実に・不愉快・だ(煩わしい)」(「オモオモ」の反復語尾が脱落して「オモ」と、「イア」が「ヤ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「タ」が「ダ」となった)

  「メネ・トフ・クタイタイ・イア」、MENE-TOHU-KUTAITAI-IA(mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kutaitai=of a disagreeable taste;ia=indeed)、「顔を顰めて・実に・不快な感情を・みせる(煩わしい)」(「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」または「ドー」と、「クタイタイ」の反復語尾が脱落し、その語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「クサイア」となり、そのAI音がE音に変化して「クセア」または「クッセァ」となった)

  「ツ(ン)ガ・ケネ」、TUNGA-KENE(tunga=circumstance of standing,foundation;kene=mud,mire)、「湿地に・住居を構える(煩わしい)」(「ツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツナ」から「ズン」と、「ケネ」が「ケネー」となった)

  「ツツ・メネ・トフ・クタ・エ」、TUTU-MENE-TOHU-KUTA-E(tutu=stand erect,be prominent;mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kuta=encumbrance,clog as old and infirm people on a march;e=calling attention or expressing surprise)、「顕著に・顔を顰め・実に・足手まといのような・(不快な感情を)みせる(煩わしい)」(「ツツ」が「スズ」と、「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」と、「クタ」が「クサ」となった)

  「メネ・トフ・クタイタイ」、MENE-TOHU-KUTAITAI(mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kutaitai=of a disagreeable taste)、「顔を顰めて・不快な感情を・みせる(煩わしい)」(「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」と、「クタイタイ」の反復語尾が脱落して「クサイ」となり、そのAI音がE音に変化して「クセ」から「クセー」となった)

  「イア・ツ・カイ」、IA-TU-KAI(ia=indeed;tu=fight with,energetic;kai=fulfil its proper function,have full play)、「実に・懸命に・全力を出す(煩わしい)」(「イア」が「ヤ」と、「ツ」が「ッ」となった。また「カイ」のAI音がE音に変化して「ケー」となった)

  「チオホ・チ・ナイ」、TIOHO-TI-NAI(tioho=apprehensive;ti=throw,cast;nai=nei,neinei=stretch forward,reaching out)、「ずっと・心配を・し続ける(煩わしい)」(「チオホ」のH音が脱落して「チオオ」から「ショウ」と、「チ」が「シ」となった)

  「チノ・キ・クタイタイ」、TINO-KI-KUTAITAI(tini=essentiality,self,reality;ki=full,very;kutaitai=of a disagreeable taste)、「実に・真実過ぎて・不愉快になる(煩わしい)」(「チノ」が「シン」と、「クタイタイ」の反復語尾が脱落して「クサイ」となった)

  「イア・プ・テイテイ」、IA-PU-TEITEI(ia=indeed;pu=tribe,heap,skilled person,wise one;teitei=high,tall,summit,top)、「実に・最高の・賢者で居る(煩わしい)」(「イア」が「ヤ」と、「プ」が「ブ」と、「テイテイ」が「セッテー」となった)

  「イア・ツ・カイ・タ」、IA-TU-KAI-TA(ia=indeed;tu=fight with,energetic;kai=fulfil its proper function,have full play;ta=dash,beat,lay)、「実に・懸命に・全力を出して・突進する(煩わしい)」(「イア」が「ヤ」と、「ツ」が「ッ」と、「タ」が「ダ」となった)

  「メネ・トフ・クタ・エ」、MENE-TOHU-KUTA-E(mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kuta=encumbrance,clog as old and infirm people on a march;e=calling attention or expressing surprise)、「顔を顰め・実に・足手まといのような・(不快な感情を)みせる(煩わしい)」(「ツツ」が「スズ」と、「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」と、「クタ」が「クサ」と、「エ」が「ェー」となった)

  「ウル・タイ」、URU-TAI(uru=enter,associate oneself with,participate in;tai=anger,rage,violence)、「乱痴気騒ぎに・参加する(煩わしい)」(「タイ」が「サイ」となつた)

  「イアイア・コチ」、IAIA-KOTI(iaia=sinews,veins;koti=spurt out,flow,divide,interrupt)、「元気が・溢れ出す(煩わしい)」または「元気の・腰を折る(煩わしい)」(「イアイア」が「ヤヤ」と、「コチ」が「コシー」となった)

  「チノ・トフ・クタイタイ」、TINO-TOHU-KUTAITAI(tini=essentiality,self,reality;tohu=mark,point out,show;kutaitai=of a disagreeable taste)、「真実が・あからさまになり過ぎて・不愉快になる(煩わしい)」(「チノ」が「シン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」と、「クタイタイ」の反復語尾が脱落して「クサイ」となった)

  「オ・トロチ・イ」、O-TOROTI-I(o=madman,idiot;toroti=spurt out,exude;i=past tense)、「狂人が・暴発・した(煩わしい)」(「トロチ」が「トロシ」となった)

  「ウ・タタイ」、U-TATAI(u=be firm,be fixed,reach its limit;tatai=measure,arrange,recite genealogies etc.,adorn)、「極限まで・家系をあげつらう(煩わしい)」(「タタイ」のAI音がE音に変化して「タテー」となった)

  「メネ・タハ」、MENE-TAHA(mene=show wrinkles,comtort the face;taha=side,edge,spasmodic twitching of the muscles)、「顔を顰めて・片側を引きつらせる(煩わしい)」(「メネ」が「メン」と、「タハ」のH音が脱落して「タア」から「ダー」となった)

  「メネ・タ・クタイタイ」、MENE-TA-KUTAITAI(mene=show wrinkles,comtort the face;ta=dash,beat,lay;kutaitai=of a disagreeable taste)、「顔を顰めて・不快な感情を・みせる(煩わしい)」(「メネ」が「メン」と、「タ」が「ダ」と、「クタイタイ」の反復語尾が脱落して「クサイ」となり、そのAI音がE音に変化して「クセ」となった)

  「イア・(ン)ゲロ・チ」、IA-NGERO-TI(ia=indeed;ngero,ngengero=whaler shark;ti=throw,cast)、「実に・大型のサメが・(浜に)打ち上げられた(煩わしい)」(「イア」が「ヤ」と、「(ン)ゲロ」のNG音がG音に変化して「ゲロー」と、「チ」が「シー」となった)

  「イア・ネイ・コイ」、IA-NEI-KOI(ia=indeed;nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,bobbing up and down;koi=move about)、「(不満から)実に・手足をバタバタさせて・転げ回る(煩わしい)」(「イア」が「ヤ」と、「ネイ」が「ネ」となった)

  「テネ・ナイ」、TENE-NAI(tene=be importunate;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,bobbing up and down)、「(不満から)しつこく・手足をバタバタさせる(煩わしい)」(「テネ」が「セン」となった)

  「メネ・トイ」、MENE-TOI(mene=show wrinkles,comtort the face;toi=tingle,be galled,be irritated)、「いらいらして・顔を顰める(煩わしい)」(「メネ」が「メン」と、「トイ」が「ドイ」となった)

  「チワ・チカ」、TIWHA-TIKA(tiwha=appeal for assistance in war;tika=straight,keeping a direct course,fair,correct)、「正道を取って・戦いの援助を申し出る(煩わしい)」(「チワ」が「シワ」と、「チカ」が「シカ」となった)

  「チエ・カラ・チカ」、TIE-KARA-TIKA(tie=abundance,plentu;kara=secret plan,a request for assistance in war;tika=straight,keeping a direct course,fair,correct)、「正義を選んで・膨大な・戦いの援助を申し出る(煩わしい)」(「チエ」が「シェ」と、「チカ」が「シカ」となった)

  「ヒ・チ・メネ・トフ・クタ・カ」、HI-TI-MENE-TOHU-KUTA-KA(hi=make a hissing noise;ti=throw,cast;mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;kuta=encumbrance,clog as old and infirm people on a march;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「(不快・怒りなどを表す)シーという声を・上げ・顔を顰めて・足手まといのような・(不快な感情を)みせる・ものだね(面倒)」(「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」と、「クタ」が「クサ」となった)

  「ヒ・チ・アカ・マチカ」、HI-TI-AKA-MATIKA(hi=make a hissing noise;ti=throw,cast;aka=yearning,affection;matika=carry on a litter)、「(不快を表す)シーという声を・上げ・担架で運ぶことを・願う(煩わしい)」(「ヒ」が「ヒッ」と、「チ・アカ」が「チャカ」と、「マチカ」が「マシカ」となった)

  「ナウ・タ(ン)ガ」、NAU-TANGA(nau,naunau=angry;tanga=be assembled)、「怒りに・満ちている(煩わしい)」(「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

  「ミナ・ロウ・タ(ン)ガ」、MINA-ROU-TANGA((Hawaii)mina=to regret,be sorry,grieve,sorrow;rou=reach or procure,stretch out;tanga=be assembled)、「悲嘆に・暮れるのが・続く(煩わしい)」(「ミナ」が「ミン」と、「ロウ」が「ロー」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

  「カチ・マタナ」、KATI-MATANA(kati=bite,nip;matana=food set apart for a god,violation of the sanctity,of such food)、「神饌を・汚す(煩わしい)」(「カチ」が「カシ」と、「マタナ」が「マサン」となった)

  「テ(ン)ガ・ツ(ン)ゲヘ」、TENGA-TUNGEHE(tenga=Adam's apple,goitre;tungehe=quail,be alarmed)、「喉が・(おじけずく)衰弱している(息苦しい)(煩わしい)」(「テ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「テ」から「セ」と、「ツ(ン)ゲヘ」のNG音がN音に変化し、H音が脱落して「ツネ」から「ズネー」となった)

  「メネ・トフ・ナ」、MENE-TOHU-NA(mene=show wrinkles,comtort the face;tohu=mark,point out,show;na=by,belonging to)、「顔を顰めて・(不快な感情を)みせる・ような(煩わしい)」(「メネ」が「メン」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ド」となった)

  「チア・マ・クタイタイ」、TIA-MA-KUTAITAI(tia=adorn by sticking in feathers;ma=white,clear;kutaitai=of a disagreeable taste)、「白い・羽根飾りに・不快な感情をもつ(煩わしい)」(「チア」が「ジャ」と、「クタイタイ」の反復語尾が脱落して「クサイ」とななった)

  「ウル・タイ・エア」、URU-TAI-EA(uru=enter,associate oneself with,participate in;tai=anger,rage,violence;ea=appear above water,be flooded,be brought to land)、「(そこに)出現した・乱痴気騒ぎに・参加する(煩わしい)」(「タイ」が「サイ」と、「サイ・エア」が「サェァ」となつた)

  「チア・アチ」、TIA-ATI(tia=slave,servant;ati=offspring,descendant)、「奴婢の・子供たち(の処遇)(煩わしい)」(「チア・アチ」が「シャーシ」となった)

  「テ・カラ・チカ」、TE-KARA-TIKA(te=the;kara=secret plan,a request for assistance in war;tika=straight,keeping a direct course,fair,correct)、「正に・正義を選んで・戦いの援助を申し出る(煩わしい)」(「テ」が「セ」と、「チカ」が「シカ」となった)

  「チチ・カマ・チヒ」、TITI-KAMA-TIHI(titi=go astray;kama=eager;tihi=summit,top)、「ひたすら・懸命に・彷徨き回る(煩わしい)」(「チチ」が「シシ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シー」となった)

  「ウツ・トフ・チヒ」、UTU-TOHU-TIHI(utu=return for anything,make response(whakautu=fondle,caress);tohu=mark,point out,show;tihi=summit,top)、「最高に・可愛がる・さまを見せる(煩わしい)」(「ウツ」が「ウッ」と、「トフ」のH音が脱落して「トー」と、「チヒ」のH音が脱落して「シー」となった)

  「テテ・ロ・チ」、TETE-RO-TI(tete=lie,be in a position(whakatete=molest,annoy.pick a quarrel with,quarrel,disagreement);ro=roto=the inside;ti=throw,cast)、「喧嘩の・種を胸の奥に・しまい込む(何時火を噴くか分からない)(煩わしい)」(「テテ」が「セセ」と、「チ」が「シー」となった)

の転訛と解します。

219わんぱくもの(わんぱく者)・キカンボ・キカネーワラシ・キカネヤズ・オダズモッコ・キカナス・キカズボー・アバレ・アンパク・ワンパク・イタズラッコ・キカンコ・ヤンチャボ・ガータク・ワンパクボーズ・ドーチャークボー・コマリモン・オーチャクモン・ゴンタ・ヤンチャ・ヤンチャボシ・ショーカラゴ・イケジゴ・ガンボー・テンゴ・ワリコトシー・ガキ・ワルソー・ワルソボー・オードボーズ・ワルゴロ・ワルガネ・ワレコッボ・ッウーマクー・ウーマク・ワンパクコ・ヤンチャモン・オテンバ・ドーチャクアマ・ドムナランコー・ショーカラ・ニガシロ・ワルボーズ・マクワラビ・ボーチリムン

 「わんぱくもの」の方言には、北海道、福島などの「キカンボ」、青森の「キカネーワラシ」、岩手の「キカネヤズ」、宮城の「オダズモッコ」、秋田の「キカンポ」(「キカンボ」と同語源)、山形の「キカナス」、茨城の「キカズボー」、群馬の「アバレ」、埼玉の「アンパク」、千葉の「ワンパク」、神奈川の「イタズラッコ」、石川の「キカンコ」、福井の「ヤンチャボ」、山梨の「ガータク」、長野の「ワンパクボーズ」、岐阜の「ドーチャークボー」、静岡の「コマリモン」、愛知、滋賀の「オーチャクモン」、三重、大阪などの「ゴンタ」、京都、奈良の「ヤンチャ」、和歌山の「ヤンチャボシ」、鳥取、岡山の「ショーカラゴ」、島根の「イケジゴ」、広島の「ガンボー」、山口の「テンゴ」、徳島の「ワリコトシー」、愛媛の「ガキ」、高知の「ワリコトシ」(「ワリコトシー」と同語源)、福岡の「ワルソー」、佐賀の「ワルソボー」、長崎の「オードボーズ」、熊本の「ワルゴロ」、大分の「ワルガネ」、鹿児島の「ワレコッボ」、沖縄那覇の「ッウーマクー」、沖縄首里の「ウーマク」があります。

 上記のほか、福島の「アンパグ」(「アンパク」と同語源)、神奈川の「ワンパクコ」、石川の「ヤンチャモン」、長野の「オテンバ」(女の子)、岐阜の「ドーチャクアマ」(女の子)、三重の「ドムナランコー」、鳥取の「ショーカラ」、熊本の「ニガシロ」、大分の「ワルボーズ」、沖縄首里の「マクワラビ」、「ボーチリムン」(度の過ぎた子)などがあります。

 この「わんぱくもの」、「キカンボ」、「キカネーワラシ」、「キカネヤズ」、「オダズモッコ」、「キカナス」、「キカズボー」、「アバレ」、「アンパク」、「ワンパク」、「イタズラッコ」、「キカンコ」、「ヤンチャボ」、「ガータク」、「ワンパクボーズ」、「ドーチャークボー」、「コマリモン」、「オーチャクモン」、「ゴンタ」、「ヤンチャ」、「ヤンチャボシ」、「ショーカラゴ」、「イケジゴ」、「ガンボー」、「テンゴ」、「ワリコトシー」、「ガキ」、「ワルソー」、「ワルソボー」、「オードボーズ」、「ワルゴロ」、「ワルガネ」、「ワレコッボ」、「ッウーマクー」、「ウーマク」、「ワンパクコ」、「ヤンチャモン」、「オテンバ」、「ドーチャクアマ」、「ドムナランコー」、「ショーカラ」、「ニガシロ」、「ワルボーズ」、「マクワラビ」、「ボーチリムン」は、

  「ワナ・パク・モノ」、WANA-PAKU-MONO(wana=bud,seedling(wananga=threatening,defiant words and behaviour);paku=make a sudden sound or report,extend,beat,knock;mono,momono=whakangungu=fend,ward off,protect,shield)、「(若くて)反抗的な言葉や態度を・投げ付ける・(保護される)者(わんぱく者)」(「ワナ」が「ワン」となった)

  「キ・カネ・パウ」、KI-KANE-PAU(ki=full,very;kane=choke;pau=consumed,denoting the complete or exhaustive character of any action)、「しょっちゅう・(人を窒息させる)言葉を詰まらせる・(暴れたあげくに)消耗してしまう者(わんぱく者)」(「カネ」が「カン」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボ」となった)

  「キ・カネ・ワラ・チ」、KI-KANE-WARA-TI(ki=full,very;kane=choke;waradesire,indistinct sound;ti=throw,cast)、「しょっちゅう・(人を窒息させる)言葉を詰まらせる・要求を・つきつける者(わんぱく者)」(「カネ」が「カネー」と、「チ」が「シ」となった)

  「キ・カネ・イア・ツ」、KI-KANE-IA-TU(ki=full,very;kane=choke;ia=indeed;tu=fight with,energetic)、「しょっちゅう・(人を窒息させる)言葉を詰まらせる・実に・精力的な者(わんぱく者)」(「カネ」が「カネー」と、「チ」が「シ」となった)

  「オ・タツ・モコ」、O-TATU-MOKO(o=the...of;tatu=strike one foot against the other,stumble;moko=tatooing on the face or body,person)、「例の・入れ墨に(それを入れようとすると)・ひるむ者(わんぱく者)」(「タツ」が「ダズ」と、「モコ」が「モッコ」となった)

  「キ・カ・ナツ」、KI-KA-NATU(ki=full,very;ka=take fire,be lighted,burn;natu=scratch,stirr up,show ill feelings,angry)、「しょっちゅぅ・(火が付いたように)顔を真っ赤にして・いきり立つ者(わんぱく者)」(「ナツ」が「ナス」となった)

  「キ・カ・ツ・パウ」、KI-KA-TU-PAU(ki=full,very;ka=take fire,be lighted,burn;tu=fight with,energetic;pau=consumed,denoting the complete or exhaustive character of any action)、「しょっちゅぅ・(火が付いたように)顔を真っ赤にして・懸命に騒ぎ立てて・消耗してしまう者(わんぱく者)」(「ツ」が「ズ」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボー」となった)

  「アパ・レア」、APA-REA(apa=spirit of one dead visiting or inspiring a medium;rea=spring up,grow,numerous)、「死者の霊魂が霊媒に乗り移ったように・活発に(活動する者)(わんぱく者)」(「アパ」が「アバ」と、「レア」の語尾のA音が脱落して「レ」となった)

  「ア(ン)ガ・パク」、ANGA-PAKU(anga=a=driving force,force driven,etc.;paku=make a sudden sound or report,extend,beat,knock)、「主張しまくり・打ってかかる者(わんぱく者)」(「ア(ン)ガ」」のNG音がN音に変化して「アナ」から「アン」となった。また「パク」が「バグ」となった)

  「ワナ・パク」、WANA-PAKU(wana=bud,seedling(wananga=threatening,defiant words and behaviour);paku=make a sudden sound or report,extend,beat,knock)、「(若くて)反抗的な言葉や態度を・投げ付ける者(わんぱく者)」(「ワナ」が「ワン」となった)

  「イタ・ツラ・コ」、ITA-TURA-KO(ita=tight,fast;tura,turatura=molest,spiteful;ko=addressing in girl and males)、「ちょっとした・(人を)悩ませる仕業をする・子(わんぱく者)」(「ツラ」が「ズラッ」となった)

  「キ・カネ・コ」、KI-KANE-KO(ki=full,very;kane=choke;ko=addressing in girl and males)、「しょっちゅう・(人を窒息させる)言葉を詰まらせる・子(わんぱく者)」(「カネ」が「カン」となった)

  「イア・ナチ・アパ・ウ」、IA-NATI-APA-U(ia=indeed;nati=pinch or contract;apa=spirit of one dead visiting or inspiring a medium;u=be firm,be fixed,reach its limit)、「実に・小さいのに・死者の霊魂が霊媒に乗り移ったように・とことん(活発に)行動する・子(わんぱく者)」(「イア」が「ヤ」と、「ナチ・アパ」が「ンチャパ」となり、その語尾のA音と「ウ」のU音が連結したAU音がO音に変化して「ンチャボ」となった)

  「(ン)ガハ・タク」、NGAHA-YAKU(ngaha,ngahangaha=frivorous;taku=threaten behind one's back)、「勝手気ままに・(人の)背後から襲うようなことをする(わんぱく者)」(「(ン)ガハ」のNG音がG音に、H音が脱落して「ガー」となった)

  「ワナ・パク・パウ・ツ」、WANA-PAKU-PAU-TU(wana=bud,seedling(wananga=threatening,defiant words and behaviour);paku=make a sudden sound or report,extend,beat,knock;pau=consumed,denoting the complete or exhaustive character of any action;tu=fight with,energetic)、「(若くて)反抗的な言葉や態度を・投げ付ける・懸命に騒ぎ立てて・消耗してしまう者(わんぱく者)」(「ワナ」が「ワン」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボー」と、「ツ」が「ズ」となった)

  「ト・ウチ・アク・パウ」、TO-UTI-AKU-PAU(to=drag,haul;uti=bite(utiuti=annoy,worry);aku=delay,scrape out(akuaku=firm,strong);pau=consumed,denoting the complete or exhaustive character of any action)、「引いては・大いに・人を悩ませ・消耗させる者(わんぱく者)」(「ト・ウチ・アク」が「ドーチャーク」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボー」となった)

  「コマ・アリ・モナ」、KOMA-ARI-MONA(koma=pale,whitish;ari=clear,appearance,guise;mona=for him,for her)、「(彼のために)顔面が・蒼白になる・者(わんぱく者)」(「コマ」の語尾のA音と「アリ」の語頭のA音が連結して「コマリ」と、「モナ」が「モン」となった)

  「オ・ウチ・アク・モナ」、O-UTI-AKU-MONA(o=the...of;uti=bite(utiuti=annoy,worry);aku=delay,scrape out(akuaku=firm,strong);mona=for him,for her)、「例の・大いに・人を悩ませる・者(わんぱく者)」(「オ・ウチ・アク」が「オーチャク」と、「モナ」が「モン」となった)

  「(ン)ガウ・(ン)ガタ」、NGAU-NGATA(ngau=bite,hurt,attack;ngata=man)、「(見境なしに人に噛み付く)異を唱える・人(わんぱく者)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「(ン)ガタ」のNG音がN音に変化して「ナタ」から「ンタ」となった)

  「イア・ナチ・ア」、IA-NATI-A(ia=indeed;nati=pinch or contract;a=drive,urge,compel)、「実に・小さい(子)なのに・強く主張する(わんぱく者)」(「イア」が「ヤ」と、「ナチ・ア」が「ンチャ」となった)

  「イア・ナチ・ア・パウ・チ」、IA-NATI-A-PAU-TI(ia=indeed;nati=pinch or contract;a=drive,urge,compel;pau=consumed,denoting the complete or exhaustive character of any action;ti=throw,cast)、「実に・小さい(子)なのに・強く主張して・(人を)消耗・させる者(わんぱく者)」(「イア」が「ヤ」と、「ナチ・ア」が「ンチャ」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ボ」と、「チ」が「シ」となった)

  「チオホ・カラ・(ン)ガウ」、TIOHO-KARA-NGAU(tioho=apprehensive;kara=old man;ngau=bite,hurt,attack)、「心配性の・老人に・(噛み付く)異を唱える者(わんぱく者)」(「チオホ」のH音が脱落して「ショー」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

  「イケ・チ・コ」、IKE-TI-KO(ike=strike with a hammer or other heavy instrument;ti=throw,cast;ko=addressing in girl and males)、「金槌で打撃を・与えるような・子(わんぱく者)」(「チ」が「ジ」と、「コ」が「ゴ」となった)

  「(ン)ガナ・パウ」、NGANA-PAU(ngana=be eagerly intent,persist,obstinate,strong;pau=consumed,denoting the complete or exhaustive character of any action)、「強く固執して・消耗する者(わんぱく者)」(「(ン)ガナ」のNG音がG音に変化して「ガナ」から「ガン」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ボ」となった)

  「テナ・(ン)ガウ」、TENA-NGAU(tena=encourage,urge forward;ngau=bite,hurt,attack)、「強く主張して・(人に噛み付く)異を唱える者(わんぱく者)」(「テナ」が「テン」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

  「ワ・リコ・トチ」、WHA-RIKO-TOTI(wha=be disclosed,get abroad;riko=wane,dazzled,dirt,foulness;toti=limp,halt)、「粗暴さを・むき出しにして・のろのろと歩く者(わんぱく者)」(「トチ」が「トシ」から「トシー」となった)

  「(ン)ガキ」、NGAKI(cultivate,avenge,strive for)、「懸命に頑張る者(わんぱく者)」(「(ン)ガキ」のNG音がG音に変化して「ガキ」となった)

  「ワ・アル・トフ」、WHA-ARU-TOHU(wha=be disclosed,get abroad;aru=follow,pursue(aruaru=chase,woo,interrupt);tohu=mark,point out,show)、「剥き出しになった・しつこく追い求めるさまを・見せつける者(わんぱく者)」(「ワ」のA音と「アル」の語頭のA音が連結して「ワル」と、「トフ」のH音が脱落して「ソー」となった)

  「ワ・アル・トフ・パウ」、WHA-ARU-TOHU-PAU(wha=be disclosed,get abroad;aru=follow,pursue(aruaru=chase,woo,interrupt);tohu=mark,point out,show;pau=consumed,denoting the complete or exhaustive character of any action)、「剥き出しになった・しつこく追い求めるさまを・見せつけて・消耗する者(わんぱく者)」(「ワ」のA音と「アル」の語頭のA音が連結して「ワル」と、「トフ」のH音が脱落して「ソ」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ボー」となった)

  「アウト・パウ・ツ」、AUTO-PAU-TU(auto=trailing behind;pau=consumed,denoting the complete or exhaustive character of any action;tu=stand,settle)、「(しつこく)後を追いかけて・消耗して・しまう者(わんぱく者)」(「アウト」」のAU音がO音に変化して「オト」から「オード」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ボー」と、「ツ」が「ズ」となった)

  「ワ・アル・(ン)ゴロ」、WHA-ARU-NGORO(wha=be disclosed,get abroad;aru=follow,pursue(aruaru=chase,woo,interrupt);ngoro=snore,utter exclamations of surprise or admiration)、「剥き出しになった・しつこく追い求めながら・驚きの叫び声を上げる者(わんぱく者)」(「ワ」のA音と「アル」の語頭のA音が連結して「ワル」と、「(ン)ゴロ」のNG音がG音に変化して「ゴロ」となった)

  「ワ・アル・(ン)ガネフネフ」、WHA-ARU-NGANEHENEHE(wha=be disclosed,get abroad;aru=follow,pursue(aruaru=chase,woo,interrupt);nganehenehe=querulous,peevish)、「剥き出しになった・しつこく追い求める・怒りっぽい者(わんぱく者)」(「ワ」のA音と「アル」の語頭のA音が連結して「ワル」と、「(ン)ガネフネフ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に、H音が脱落して「ガネ」となった)

  「ワ・レコ・ツポ」、WHA-REKO-TUPO(wha=be disclosed,get abroad;reko=white of hair(rekoreko=dazzled);tupo=ill omen,dank,gruesome)、「剥き出しになった・目がくらんで是非の判断がつかない・恐ろしい者(わんぱく者)」(「ツポ」が「ッボ」となった)

  「ツ・ウ・マク」、TU-U-MAKU(tu=fight with,energetic;u=be firm,be fixed,reach its limit;maku,mamaku=dress timber in a particular way with the adze)、「懸命に・極限に達するまで・(特殊な方法で木材を削るように)まくしたてる者(わんぱく者)」(「ツ」が「ッ」と、「ウ」が「ウー」と、「マク」が「マクー」となつた)

  「ウ・マク」、U-MAKU(u=be firm,be fixed,reach its limit;maku,mamaku=dress timber in a particular way with the adze)、「極限に達するまで・(特殊な方法で木材を削るように)まくし立てる者(わんぱく者)」(「ウ」が「ウー」となつた)

  「ワナ・パク・コ」、WANA-PAKU-KO(wana=bud,seedling(wananga=threatening,defiant words and behaviour);paku=make a sudden sound or report,extend,beat,knock;ko=addressing in girl and males)、「(若くて)反抗的な言葉や態度を・投げ付ける・子(わんぱく者)」(「ワナ」が「ワン」となった)

  「イア・ナチ・ア・モナ」、IA-NATI-A-MONA(ia=indeed;nati=pinch or contract;a=drive,urge,compel;mona=for him,for her)、「実に・小さい(子)なのに・強く主張する・者(わんぱく者)」(「イア」が「ヤ」と、「ナチ・ア」が「ンチャ」と、「モナ」が「モン」となった)

  「オ・タイナ・パ」、O-TAINA-PA(o=the...of;taina=younger brother of a man,younger sister of a woman;pa=touch,reach,strike,accost)、「例の・ずうずうしく人に(話しかけるなど)接する・若い娘(お転婆)」(「タイナ」のAI音がE音に変化して「テナ」から「テン」と、「パ」が「バ」となった)

  「ト・ウチ・アク・アマ」、TO-UTI-AKU-AMA(to=drag,haul;uti=bite(utiuti=annoy,worry);aku=delay,scrape out(akuaku=firm,strong);(Hawaii)ama=talkative,light,bright,young)、「引いては・大いに・人を悩ませる・若者(わんぱく者)」(「ト・ウチ・アク」が「ドーチャーク」となった)

  「ト・ムナ・ラ(ン)ガ・コ」、TO-MUNA-RANGA-KO(to=drag,haul;muna=mina=desire,feel inclination for,affected by;ranga=raise,cast up;ko=addressing in girl and males)、「引いては・強い意欲が・湧いて来る・子(わんぱく者)」(「ト」が「ド」と、「ラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ラナ」から「ラン」と、「コ」が「コー」となった)

  「チオホ・カラ」、TIOHO-KARA(tioho=apprehensive;kara=old man)、「老人が・心配する(対象の)者(わんぱく者)」(「チオホ」のH音が脱落して「ショー」となった)

  「ニヒ・(ン)ガハ・チロ」、NIHI-NGAHA-TIRO(nihi=steep;ngaha,ngahangaha=frivorous;tiro=look)、「(その言動が)とんでもなく・無責任だと・見られている者(わんぱく者)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「(ン)ガハ」のNG音がG音に変化し、H音が脱落して「ガ」と、「チロ」が「シロ」となった)

  「ワ・アル・パウ・ツ」、WHA-ARU-PAU-TU(wha=be disclosed,get abroad;aru=follow,pursue(aruaru=chase,woo,interrupt);pau=consumed,denoting the complete or exhaustive character of any action;tu=stand,settle)、「剥き出しになった・しつこく追い求めて・消耗して・しまう者(わんぱく者)」(「ワ」のA音と「アル」の語頭のA音が連結して「ワル」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ボー」と、「ツ」が「ズ」となった)

  「マク・ワラ・ピ」、MAKU-WARA-PI(maku,mamaku=dress timber in a particular way with the adze;wara=make an indistinct sound,rustle,desire;pi=young of birds etc.)、「(特殊な方法で木材を削るように)まくし立て・精力的に行動する・若者(わんぱく者)」(「ピ」が「ビ」となった)

  「パウ・チリ・ムナ」、PAU-TIRI-MUNA(pau=consumed,denoting the complete or exhaustive character of any action;tiri=throw or place one by one,scatter,stack;muna=mina=desire,feel inclination for,affected by)、「次から次に提案を出し・強く要望して・消耗してしまう者(わんぱく者)」(「パウ」のAU音がO音に変化して「ボー」と、「ムナ」が「ムン」となった)

の転訛と解します。

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<修正経緯>

1 平成22年5月20日

 181ふざける(巫山戯る)の項の「アラビル」の解釈を修正しました。

2 平成24年7月1日

 176びっくりするの項の「オドロク」の解釈を修正しました。

3 平成27年8月5日

 207もったいないの解釈を修正しました。

国語篇(その十六)終り


U R L:  http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/
タイトル:  夢間草廬(むけんのこや)
       ポリネシア語で解く日本の地名・日本の古典・日本語の語源
作  者:  井上政行(夢間)
Eメール:  muken@iris.dti.ne.jp
ご 注 意:  本ホームページの内容を論文等に引用される場合は、出典を明記してください。
(記載例  出典:ポリネシア語で解く日本の地名・日本の古典・日本語の語源
http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/timei05.htm,date of access:05/08/01 など)
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