今宵、星降らぬ流星の夜に


肆
流星寺の寺宝

8月4日(木)

キーパー:翌日、流星寺へ行くと井上さんが出迎えてくれます。「鍵は開けておきましたので、よろしくお願いします」
一同:「ありがとうございま~す」
泰野教授:「さあ、今日からバリバリやるわよ!」
キーパー:新城、須堂両名には分かりますが、いつもは低血圧でボサボサの髪を掻き毟りながら午前中を過ごす泰野先生が、打って変わって活き活きとしています。ゲーム的に言うと、マジック・ポイントが5ポイント増えているように感じます。
新城:「先生、ヤル気満々デスネー(棒読み)」
泰野教授:(笑)。バラック建ての倉庫の扉をガラッと開けて、中に入ります。
キーパー:倉庫の中は簡単なラックのようなものが設えられていて、書物、巻物、何が入っているか分からない木箱等、雑然と荷物が収められています。
新城:「さて、どうやって手分けをするかですね」
泰野教授:「とりあえず、私と新城君は巻物・書物関係を開いて、おおざっぱな分類から始めてみましょう」
新城:「分かりました」 書物はいわゆる綴じ本ですか?
キーパー:そうですね。
泰野教授:「須堂君は箱の中のチェックをお願い」
須堂:ノートPCとカメラを持ち出してリストを作ります。

キーパー:では書物隊は〈図書館〉技能ロールをしてください。
泰野教授新城:(コロコロ……)成功です。
キーパー『喪星記』を見つけます。
一同:おおっ!?
キーパー:それ以外にも経典等がありますが、状態が悪く、希少価値もありません。他に読めそうなのは……『流星文書』という冊子です。内容は、どうやら日記っぽいですね。当然、どちらの書物も分かりやすい日本語で書かれているわけではないので、読んで理解するためには時間がかかるでしょう。と言うことが、この日の分類調査で分かったということで。
泰野教授新城:なるほど。

キーパー:須堂の調べた箱の中ですが、下半身しかない、あるいは一部腐っちゃったような価値のない木造の仏像が入っていたりします。目を引いたのは13個の赤い香炉です。これは比較的保存状態が良いですね。
須堂:金属製ですか?
梵字 アンキーパー:陶器です。13個すべてにアンの梵字が書かれています。後はこれで焚くと思われる香木ですね。
須堂:香炉が何焼とかは分かりませんか?
キーパー〈芸術(陶芸)〉技能を持っていたらロールをどうぞ。少なくとも益子焼とか九谷焼という表示はありません。
須堂:……。
泰野教授:これは写真を撮って詳しい人に鑑定してもらいましょう。
須堂:箱はありませんか?
泰野教授:箱に何か情報が書かれていたりするかも。
キーパー:13個の小さな木箱に小分けされていました。しかしこの箱は後で設えられたものなんでしょう。明らかに新しいです。おそらくは散逸していたものを集めた時に用意されたものです。

新城:今の所、目ぼしいものと言えばそんな感じですか。じゃあ、いらない物はゴミ袋にまとめて……。
泰野 加代子泰野教授:いやいやいや(笑)。整理ってそういうことじゃないから。とりあえず今日の所はこんな感じかね。ラックにそれっぽく年代順に並べておきましょう。じゃあ、最後に井上さんに声掛けしましょうか。
キーパー:ちなみに井上さんは時々顔を出してお茶や食事を差し入れてくれていました。「本日はお疲れ様でした」
須堂:「この『喪星記』や『流星文書』、赤い香炉はどこから回収したかお分かりになりますか?」
キーパー:(井上)「ええ。これは私の実家からです」
泰野教授:「! 井上さんは元々流星寺に御縁のあるお方なんですか?」
キーパー:(井上)「私は寺族なんです」
泰野教授:「では、妙星尼さんともご親戚か何かで?」
キーパー:(井上)「ええ。近い関係です」
泰野教授:「では、このお寺を再興させようというお話が始まったのも、井上さんの御実家からですか?」
キーパー:(井上)「ええ。流星寺の住職は私ですから」
一同:「え!?」
泰野教授:「ちょっと誤解していました。では妙星尼さんはこのお寺的にはどんな立場のお方なんですか?」
キーパー:(井上)「流星寺に所属しているお坊さんの一人ですが、住職自体は私です。妙星尼様には復興に当たってお声掛けして、招請したのです」
泰野教授:「そうですか……。井上さんの御実家っていうのはこの近くなんですか?」
キーパー:(井上)「はい。白凰市内にあるお寺です」
泰野教授:「昨年あたりにお寺を再興なさったということですが、何かきっかけがあってのことですか?」
キーパー:(井上)「ええ……。実は私の長男が病死しまして、その悲しみから立ち直るのに、御仏の心が私を大変励ましてくれました。御仏への報恩に流星寺の復興を思い立ちまして、実家の援助を受けながら、ここまで漕ぎ付けた次第です」(合掌)
泰野教授:「そうでしたか……。それは辛いお話を聞いてしまってすみません」
新城:見つけたものは寺から持ち出すことはできないわけですよね? では今日はここまでにして、明日また来ることにしますか。見つけたものを読まないと。それと、ご本尊の曼陀羅もまだ手付かずですもんね。
泰野教授:「しばらく通うことになると思いますので、よろしくお願いいたします」と井上さんに言って、今日は帰りましょう。また明日皆で来ましょう。
新城:では焼き肉屋経由で解散ということで(笑)


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