今宵、星降らぬ流星の夜に


漆
石原 郁美のケース

8月9日(火)

亜衣@電話 キーパー:さて、この日、先生の所に眞仲亜衣から電話がかかって来ます。
泰野教授:(電話を持つ仕草)「あら、どうしたの? 珍しい」
キーパー:(亜衣@電話)「突然すみません。先生、今日って時間ありますか? できれば日中、お昼過ぎ頃が良いんですけど」
泰野教授:「別に大丈夫だけど?」
キーパー:(亜衣@電話)「お忙しいところすみません(コホ、コホ)」 亜衣は電話の向こうで咳をしています。「実は、私の知り合いで石原さんという方がいるのですが、どうしても先生にお会いしたいと言っているんです」
泰野教授:「……何で?」
キーパー:(亜衣@電話)「(コホ、コホ)石原さんは私をSSCに誘ってくれた職場の元先輩なんですけど、今、入院中なんです。先日、メールで先生のことをお話ししたら、どうしても会ってみたいと言うんです。実は石原さん、ひどく体調を崩していまして……」 言下に匂わせますが、ずいぶん重い病気っぽいです。
泰野教授:ほほぉ。
キーパー:(亜衣@電話)「石原さんは、もう辞めてしまったんですけど、職場の先輩だった人で、入社した時にすごくお世話になったんです。だから、少しでも元気づけてあげられたらと思いまして。お見舞い品とかは気にしていただかなくて結構ですので、少しだけでも一緒にお話ししてあげてくれないでしょうか?」
泰野教授:「そういうことだったら、別に良いけど……」
キーパー:(亜衣@電話)「ありがとうございます! では待ち合わせ場所は……」ということで、適当な待ち合わせ場所で13時に亜衣と待ち合わせをすることになりました。
泰野教授:とりあえず2人(=新城&須堂)には電話して、「こういうことになったから」
新城:「分かりました。では夕会はいつもの焼肉屋で」
須堂:「承知しました(この人たち、本当に毎日焼き肉食ってるな)」
キーパー:先生はそんな感じですが、他の2人は今日はどうしますか?
新城:どうするかな……。木棺の紋様っていうか、アレを調べてみたい気もするんですよね~。うん、大学の図書館に行って調べ物をする態勢に入ります。今日は1日調べものかな。
キーパー:了解です。では國史院大学附属図書館に行って調べものですが、どんなアプローチで調べ物をするかですね。〈オカルト〉なのか、ちゃんとした学術に関する方面からなのか。
新城:最初に気づいたのがオカルト的アプローチなので、〈オカルト〉でしょうなぁ。
キーパー:分かりました。須堂は何を調べる?
須堂:私は『流星文書』を参照しやすいように現代語に訳してワープロ打ちしておきます。
キーパー:……了解(他に調べておかなきゃならないことがあると思うんだがなー)。

キーパー:ではお見舞いから。
泰野教授:適当にお見舞いフルーツを見繕って行きます。
キーパー:(亜衣)「(コホ、コホ)会っていただくのは石原郁美さんです」ということで病室の前まで来ました。石原郁美は32歳だそうです。妙星尼が自ら護符を託した人物がいることを亜衣から聞いた郁美がどうしてもその人に会ってみたいと言い出して、今日のお見舞いが実現しました。
泰野教授:「ははぁ、そういうことなの」
キーパー:(亜衣)「詳しい病名とかは私も知らないんですけど、たぶんかなり重い病気なんだと思います」
泰野教授:「会って少しお話をしてあげることくらいしかできないけど、それで多少でも気が紛れるのなら」と言いながら病室に入ります。
キーパー:ベッドに半身を起こした状態で石原郁美はあなたたち2人を出迎えます。かなりげっそりと痩せています。郁美は病院着を着ているのですが、例の護符を下げていると思われる紐が首の周りに見て取れます。(石原郁美)「初めまして。石原郁美と申します。あなたが亜衣の話してくれた先生なんですね?」

 石原郁美はSSCの熱心なメンバーです。かつて務めていた金融機関を辞めて、夢だったフリーのイラストレーターになりました。白凰市の女性向けタウン誌にイラストを描くなど仕事が順調に増えていた矢先に、病気で入院することになってしまいました。
 転職を後押ししてイラストレーターとなる夢をかなえてくれたのはSSCの教えだと郁美は強く信じており、妙星尼に心酔しています。

キーパー:(石原郁美)「妙星尼様の教えで夢を叶えられたのに、こんなことになってちょっと残念だけど」と言って弱々しく笑います。石原郁美はゴホゴホとかなりひどい咳をします。
泰野教授:病名を聞くわけにはいかないだろうから、とりあえず「早く良くなると良いですね」と社交辞令を述べます。
キーパー:郁美は「妙星尼様は私のことを何か言っていました?」とか「私が出席できないことでサークル運営に滞りはない?」などとしきりに聞いてきます。
泰野教授:「私は最近になってSSCに参加し始めたから運営のことについてはよく分からないけど、皆があなたが戻ってくるのを待っていると思うよ」的なことを言っておきます。
キーパー:(石原郁美)「あなたとは今日初めてお会いしたけど、同じSSCのメンバーだもの。ズッ友だょ!」
須堂:……ムズカシイ人だ。
泰野教授:ムズカシイ人だな。
一同:(笑)
キーパー:亜衣は先日のミーティングのレジュメを渡します。受け取ると郁美はそれを貪るように読みます。(石原郁美)「早く元気になって、サークルに行きたいわ。あ、そういえば、先生も大祭には参加するんですよね?」
泰野教授:「大祭?」
キーパー:(亜衣)「あら? 先生の所には連絡入っていないんですか?」 亜衣は自分のスマホを操作してメールを見せます。
泰野教授:「え? 特には来ていないけど。昨日、流星寺にお伺いした時も何も言われなかったし」
キーパー:(亜衣)「そうなんですか。古参の私たちは大祭があることを当然と思っていたけど、確かに新参の人たちには何か予定表でも張り出されていたりしないと分からないかもしれませんね」 8月12日の夜に流星寺の前庭で大祭が開かれるとのことです。
泰野教授:「何をするお祭りなの?」
キーパー:(亜衣)「流星寺に集まって、お庭で妙星尼様と一緒に御仏に祈りを捧げるというものです」
泰野教授:「ふ~ん」
キーパー:(石原郁美)「これが初めての大祭だからどうしても参加したくて、一時帰宅の申請を出しているんですよ。もし認められなかったら、病院を抜け出してでも参加する(笑)」
新城:郁美さんでも初めてってことか。
須堂:復興して1年くらいのお寺ってことでしたからね。
キーパー:しばらくすると女性しかいない病室にミニスカの看護婦さんが無駄なセックスアピールをしながら入ってきて「石原さん、点滴の時間ですよ」と言って面会の終わりを告げます。亜衣が「またお見舞いに来ますね」と郁美に告げて、あなたたち2人は病室を辞しました。

キーパー:では図書館で調査の新城ですね。調査テーマは〈オカルト〉と決まっているので、ロールをしてください。
新城:(コロコロ……)26、成功です。
キーパー:了解です。オカルト的な話なので、ウルトラC的にどこをどう繋がったかはともかくとして、この引っ掻き傷と梵字の配列ですが、エジプトのピラミッドの中の壁画とかに通じるものがあることに気づきます。
新城:ほほう!
キーパー:つまり、死者の復活に関連するものです。まったく題材は違うのですが、何か通底するものがある、それがオカルトってもんです。
泰野教授:なるほど。
新城:似た雰囲気を感じ取れるってわけですね。そういえば、どちらもミイラが関連するのか。エジプトのミイラも死後の復活を目的としたもんだよな。


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