巴比崙の大淫婦


6

 探索者たちは澄川阿紀救出作戦に協力することになります。
 研川幸夫によると、巴比山の内部は迷路になっており、闇雲に突入すれば中で迷子になる可能性が高いといいます。しかし、阿紀は「繁殖室」と呼ばれる場所にいると思われ、そこへ行くには1番出入口から侵入して、常に北へ進めばたどり着けるとのことです。
研川幸夫 なお、研川自身は探索者たちには同行せず、巴比山の洞窟内を飛び回って玃たちの邪魔をしたり、探索者たちのサポートをしたりします。


キーパー:懐中電灯と予備の電池は潤沢にありますので、全員に配布されます。
新城:ほかには……何か武器になりそうなものを見繕っておきますか?
宇乃:どうやって戦うの? ……戦わないで、脱出するのが目的か。
キーパー:(研川)「戦いは極力避けた方が良いだろう。玃の数は3~4体ではない。総数は――確かなことは言えないが――100体は下らないだろう」
泰野教授:光がどれだけ効くかっていう話だな……。
キーパー:玃は光を嫌うそうですが、別に光を当てたからといってダメージを与えられるわけではありません。顔に光を当てることができたなら、玃を怯ませることができる程度だと思ってください。

ライン

キーパー:それでは日も暮れて、作戦決行の時刻になります。この時点で研川は別行動をとります。3番出入口の故障は研川が引き起こしますので、澄山由伸と皆さんはその隙に1番出入口から巴比山内に侵入することになります。
一同:はい。
キーパー:予定時刻になると3番出入口の投光器が消えて、「ウ~、ウ~」というサイレンの音とともに「機器の故障が検出されました。速やかに対応1に沿った行動をしてください」という防災放送が流れます。途端に町はざわめき出して「また3番か?」「どうなっているんだ!?」などの怒号が飛び交い始めます。
新城:「よし、行きましょう!」
澄山由伸キーパー:1番出入口は、3番出入口に対して山を挟んだほぼ裏側に位置します。1番出入口の脇にはちょろちょろとした小さな滝があって、金色の杯で流れ落ちてくる水を受けています。(由伸)「この水を飲むと、玃から逃れることができると伝えられている。ただし、あまり飲まない方が良い、とも」
泰野教授:「……え? それは、どういう?」(笑)
新城:ま、そういうことなんでしょうね(笑)
キーパー:由伸は当然飲みます。ゲーム的に言うと、これを飲むことで玃の発見から一回逃れられます。
泰野教授:あまり飲まない方が良いっていうのがねぇ……。
新城:う~ん……じゃあ、いいや。私は今回は飲まないで行きます。
泰野教授宇乃山田:飲みます。
宇乃:味は普通の水ですか?
キーパー:味と臭いに少し酸味があります。明らかに水道水とは違います。「飲まなきゃ良かったな……」という後悔がよぎります。

ライン

キーパー:皆さんは由伸を先頭に出入口から中に入ります。
泰野教授:北を目指します。
キーパー:背後から照らしてくれていた投光器の光は、すぐに届かなくなります。断続的に現れては消える脇道に逸れることなく、皆さんは北へ、北へと進んでいきます。しばらく行くと、直径20メートルほどの岩屋にたどり着きます。皆さんが入ってきたちょうど反対側に、さらに奥へと続く通路への開口部があります。由伸は「ここが繁殖室のはずなのだが……」と戸惑った声を上げます。
宇乃:え? 玃や、ほかの犠牲者もいない?
キーパー:少なくとも見える範囲に動くものはいません。この部屋は、おそらく巴比山ではかなり重要度の高い場所のはずですので、この様子は何かおかしいですね。由伸によると前回、阿紀を発見した場所はここだそうです。「どうして……」と由伸はかなり狼狽しています。
新城:阿紀さんがここにいないとなると……研川さんはとにかく北を目指せと言っていましたから、北を目指しましょう。
山田:ここから北へ向かう道はあるんだっけ?
キーパー:この繁殖室までの道は北へ進み続ければ良いという指示でしたが、ここから先がどうなっているのかは知らされていないので、どの方角へ進むのかは重要ではありません。来た道を南へ戻っていくか、方角に関係なく先へ進むかしかありません。由伸の目的は阿紀を救出することなので、ここで引き返すという選択はありません。由伸は反対側の開口部へと進みます。
新城:我々も先へ進みますか。
宇乃:方角が北に限定されないなら、ルートを覚えておかなくては戻れなくなりますよ。目印をつけておくとか。
泰野教授:そうだね。
キーパー:脇道があるたびに進んだ方向が分かるように目印をつけていくということですね。了解です。
 目印をつけながらさらに奥へと進んでいくと、直径100メートル、高さ10メートルほどの大空洞に行きつきます。空洞にはところどころに床から天井まで伸びる岩があって、柱のように空間を支えています。〈ナビゲート〉ロールをしてください(※山田が成功)。山田には分かりますが、ここはおそらく巴比山の中央付近です。この空間からは、皆さんがたどってきたものも含めて、七本の通路が延びています。
三たび呪はれし民宇乃:七本の道、ということか。
キーパー:この大洞窟、“広場”と呼びますが、ここには100体ほどの玃たちがひしめき合っています。大気には酸っぱいミルクのような臭いが漂っています。
宇乃:それは我々が入り口で飲んだものに近い臭いですか?
キーパー:似ています。
宇乃:だよね。
キーパー:玃たちは皆さん――というよりは(※滝の水を飲まなかった)新城――が入ってきたことに気づくと、敵対的な、まるでいびきのような唸り声で威嚇してきます。〈正気度〉ロールをしてください。
新城宇乃山田:成功です。
泰野教授:……失敗。
キーパー:成功したら喪失なしです。失敗すると100体の玃を見たことに対する喪失なので6正気度ポイントを失います。一回の喪失で5ポイント以上減少するのでINTロールです。
泰野教授:(コロコロ……)失敗!
一同:おお!!
キーパー:泰野先生は恐ろしい光景に大きなショックを受けますが、幸いにもまだ自我を保っています。ひしめく玃たちに囲まれるようにして、腹を大きく膨らませた阿紀が横たわっています。「阿紀!」と叫んで駆け寄る由伸の懐中電灯の光を受けると、玃たちは少し退いていきます。阿紀のもとにたどり着いた由伸は彼女を抱き起こします。すると、“外から来た母”を奪われまいと、玃たちは一斉に皆さんに襲いかかってきます。ここからチェイスです。