巴比崙の大淫婦


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キーパー:新城の犠牲によって澄山夫妻は10番出入口から脱出し、泰野先生と山田は1番出入口から外に出てきます。由伸の提案で、一旦研川邸に身を隠します。やがて研川幸夫も戻ってきて、「二人、帰ってこられなかったか……。まあ、澄山さんの奥さんも含めて四人戻ってこられたなら、上々だろう。落ち着きを取り戻す前に、町を立ち去った方が良い」と提案されます。
泰野教授:そりゃ、そうだよね。
山田:うん。そうしましょう。
キーパー:別れ際に、研川は皆さんにこのように頼みます。(研川)「メディアでも、警察でも、自衛隊でも、何でもいい。このわけのわからないことを終わらせるように、動かしてくれ」

ライン

キーパー:泰野先生と山田と澄山夫妻はとりあえず石切町からは生還しました。この後は報告というか事後処理になりますが、どうしますか?
山田:「無責任かもしれませんが、私はしがない探偵なので、先生の判断にお任せしますよ」
泰野教授:戻ったら、当然日下部理事には詳しく報告します。
日下部麻希キーパー:(日下部麻希)「……いつもと同じで、公表はマズいんじゃないの?」という論調です。
泰野教授:そう言われるとは思っていましたけど。「今回は二人も犠牲にしてしまったわけですし、いつもみたいに闇に葬るというのは、私も収まりがつかないというか、納得はできません。論文という形ではなくとも、協会の発行する研究レポートという形で良いから、見たことをそのまま形に残したいと思います」
キーパー:(日下部麻希)「……SPHFとしては、ちょっと協力しかねます。もしこれを協会の名で出してしまうと、禁足地の権利者のイスキリ教会からクレームが入るのは確実ですので」
泰野教授:そうか……そうだよね。じゃあ、コミケか?(笑) まあ、冗談はともかくとして、もう学界でも異端者として知られていると思うので、できる範囲内で発表してしまいます。
キーパー:わかりました。〈信用〉ロールをしてください。
泰野教授:(コロコロ)……失敗。
キーパー:禁足地への無断立ち入りということで猛烈に非難されます。名声を得るようなことはさらさらなく、さらに異端視されるようになったため、泰野先生の〈信用〉は20%下がります。
泰野加代子泰野教授:でしょうね(泣)
キーパー:SPHFとしては協会関係者が禁足地に無断で足を踏み入れたことについて、遺憾の意を表明します。巻き込まれ事故的に日下部麻希が「当協会の関係者がこのような不祥事を起こしてしまい、誠に申し訳ありませんでした」と謝罪会見を開きます。
泰野教授:申し訳ない(笑)
キーパー:この件はしばらく叩かれ続けます。そんな批判意見の中にはイスキリ教会から送られたメールもあります。それには短く、こう書かれています。「忠告ではなく警告だといったはずだ。ゆめゆめ、忘れるな、と」
一同:あぁ……。
キーパー:澄山夫妻は生還できましたが、その後はちょっと大変だったらしいです。

 協会には澄山由伸が一人でやって来て、事後報告をします。
 阿紀は身籠っていた3体の子供の中絶手術を受けたそうですが、そのどれもが“奇形児”だったそうです。
 そして澄山夫妻はSPHFを正式に退会して、行き先を告げることなく転居していきました。