バートリの秘法

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エリザベト・バートリ
キーパー:さて、読書を始めて30分ほど経過した頃、読んでいる小説から顔も上げずに、エリザがこう言ってきます。(エリザ)「先生、エリザベト・バートリって知っていますか?」
泰野教授:「え!? 何、急に……」 〈知識〉……?
キーパー:……か、〈歴史〉か、どちらかで。
泰野教授〈歴史〉90%か。(コロコロ……)27、成功。

エリザベト・バートリ
 16~17世紀に生きたハンガリー王国の貴族。召使や侍女を惨たらしく殺害し、その血を浴びることで自らの美貌が保たれると信じていた。黒魔術を使ったとの証言もある。その残虐行為の犠牲者は650人にも及ぶと言われている。

エリザベト・バートリ 泰野教授:あーあー、アレか!
キーパー:実在の人物ですね。吸血鬼のモデルになったとも言われています。レ・ファニュの『吸血鬼カーミラ』のモデルになったのではないかとも言われています。なお、エリザの読んでいる文庫のタイトルである『血の伯爵夫人(ブラッド・カウンテス)』とはエリザベト・バートリの二つ名です。
泰野教授:そうなんだ。
キーパー:エリザは陶酔した表情を浮かべてこのように言います。「飽くことなく美を追求したバートリって、凄く尊敬できる人だと思うんですよ……」 ここで〈精神分析〉技能ロールを。
泰野教授1%! (コロコロ……)失敗(※成功していれば、エリザがバートリを崇拝していることが理解できました)
キーパー:エリザは立て板に水を流すかのように、滔々とバートリの素晴らしさについて話し続けています。(エリザ)「美を極めるにはここまでのことをしないといけないと思うんですよね~」
泰野教授:ある程度は耳を傾けますけど、途中で遮るように「ちょ、ちょっと、大丈夫?」と声を掛けますけど。
キーパー:(エリザ)「え? 何がですか?」 というところでCON×5%のロールをしてください。
泰野教授35%……(コロコロ……)84、失敗。
キーパー:すると突然、目に見えているものが色鮮やかに変わります。先ほどまでは暗赤色だったEBコスメの化粧品のボトルが鮮やかな赤色に見えます(※飲まされたドリンクの影響)
泰野教授:はい。
キーパー:今日は撮影があるということで、先生は一張羅の黄土色の服に濃い紫のスカートを合わせてきちゃったんですけど(泰野教授:「ダッサ……」)、それが鮮やかなレモン色と軽やかなパープルに見えます。
泰野教授:「照明によってはこんな色に見えるのかしら~?」
キーパー:気が付くと、窓から射し込む光が鮮やかな赤色をしています。さらに窓のすぐ外に、直径5メートルほどの環状に回転するかのような気流が、はっきりとその目に見えます。
泰野教授:は? 環状の気流? ここって7階だよね?
キーパー:そうですね。その気流が鮮やかな赤色の空を背景に、フラフラと揺れながら浮かんでいます。
泰野教授:窓際にいるのは羽場塚さんだったよね? じゃあ羽場塚さんに向かって「何、あれ!?」と聞きます。
キーパー:窓から射し込む赤い光があまりに鮮やかで、逆光になって羽場塚の顔は見えません。天井で灯っていた蛍光灯の白い光は、射し込んでいる赤い光に負けてしまって羽場塚の顔を照らしません。というところで正気度ロールを。
泰野教授正気度……71か。おりゃー(コロコロ……)64、成功です。
キーパー:では1ポイント喪失です。気流はまるで実体があるかのように窓の外で揺れています。もし説明をつけるとすれば、それはドーナツ型のUFOです。異変に気付いて椅子から立ち上がろうとすると、先生は気を失って床に倒れてしまいました。
泰野教授:くはー……。


アブダクト
キーパー:ハッと目を覚ますと、先生は自分が椅子に座っていることに気づきます。テーブルの向こう、気を失う前に見た位置にエリザが座っています。二人とも椅子に座っていますが、その足元には血だまりができています。
泰野教授:ヒッ! 思わず両足を上げます。
キーパー:ピチャともニチャとも聞こえる、いやらしい音が耳に届きます。
泰野教授:窓際に座っていた羽場塚さんの姿を探しますけど。
キーパー:椅子は残っていますが、羽場塚の姿はありません。
泰野教授:エリザの様子はどうなの?
キーパー:彼女も気を失っていたらしく、ほぼ同時に目を覚ました様子です。椅子に座ったまま周囲を見回しています。体をさすって、自分に怪我がないことを確認している様子です。
泰野教授:彼女に向かって「どうしたのコレ? どうなっているのコレ!?」と問いただします。
キーパー:とりあえず、先生も身体のどこにも痛みは感じません。しかし足下の赤い液体は明らかに血です。ここで正気度ロールをどうぞ。
泰野教授:ですよねー。(コロコロ……)57、成功(※喪失なし)
キーパー:さらに〈アイデア〉ロールを。
泰野教授70以下……(コロコロ……)40で成功。
キーパー:体をさすっているエリザの姿を見てふと気づくのですが、なんだか彼女の容姿に違和感を覚えます。まるで、そうですね、容姿が“劣化”したかのような印象を受けます。肌の張り艶が、最前よりなくなっているかのように感じます。
泰野教授:やつれたっていうか、そんな感じなのか?
キーパー:逆に、エリザはあなたを見ると目を見張ります。そして窓の方を向きます。既に空は赤くなくなっていて、夜の暗さに変わっています。蛍光灯が点いているので、ガラスには室内の様子が映っています。エリザは窓に映った自分の姿を見て「ギャーーーーーッ!」という、可愛らしさの欠片もない悲鳴を上げます。
泰野教授:彼女に駆け寄って「大丈夫? どうしたの!?」と言います。
キーパー:エリザはガラスの方を指さします。
泰野教授:「?」 見ますけど?
キーパー:エリザの容姿が劣化したのに反比例して、泰野先生の容姿が向上しています。その様子は、「間違いなく泰野加代子という人間だが、それを覆うテクスチャが劇的に変わってしまった」と描写されるものです。
泰野教授:誰だか分からない別人になってしまったんじゃないけど、凄い美人になった泰野加代子がいるって感じ?
キーパー:そうです。では、泰野教授のAPPが上がります。
泰野教授:おぉ……!
キーパー:泰野教授のAPPは現在11で、エリザのAPP18です。ということで、泰野先生はAPP18まで上げられます。
泰野教授:おぉ!!
キーパー:ただし、上昇させるAPP 1ポイントにつき、正気度1D3ポイント喪失します。
泰野教授:おぉ……。
キーパー:つまり、最大7D3ポイント失います。何ポイント上げますか? 18まで上げられます。
泰野教授:う~ん、まぁまぁまぁ、そうね。ふ~む、難しいな(笑)。……最大で正気度21下がるのか。
キーパー:……18まで上げられます。
泰野教授:そっか……(笑)。3くらい上げるか。APP 14なら結構――
キーパー:いやいや、18まで上げられます!
泰野教授:――18まで上げます!
キーパー:そうですよね、それしかないと思っていました(笑)
泰野教授:(笑)。エリザみたいな容姿を目指して、おりゃー……(正気度喪失ロール7D3、コロコロ……)。
キーパー:……15
泰野教授:結構行ったな(笑)。正気度が55まで落ちたわ。見た瞬間に自分の容姿が変わっていることに気づくくらいなんだよね?
キーパー:自分でも相当ショックを受けるくらい(※正気度ポイント-15相当)、変化が知覚できます。とりあえず一時的発狂突入なので〈アイデア〉ロールですね。
泰野教授:(コロコロ……)失敗!
キーパー:OK。なんだか多くのことが起りすぎて、深い所まで考えられない状態です。
泰野教授:「何だか分からないけど、すごくキレイになっている、私!」
キーパー:逆に半狂乱になったエリザは、自分の足下から血を掬い取って肌に塗りつけるんですけど、もちろん何の変化もありません。彼女はやおら立ち上がると、部屋から走り出ていきます。
泰野教授:「あ、ちょっと!」
キーパー:(エリザ)「ちょっとウヴァヅカ! どうなってんのよ!?」 ビルの階段を駆け下りるヒールのカツカツカツという足音が遠ざかっていきます。最後に「……痛っ! 転んじゃった! ウケるんだけど!!」という声が聞こえました。
泰野教授:(笑)


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