境界上に建つ館

5

発見

キーパー:夜は明けます。朝になると倫子が皆さんをダイニング・ルームに集めて「では、昨晩どのようなことが起きたのか、説明してください」

 探索者たちは倫子に事実をどこまで話すかについて協議します。倫子を不安がらせないようにするためにブタ人間の存在は隠しておくかどうかが争点となりましたが、佐川の負傷という被害も実際に出てしまっていることから、正直にこれまで判明していることすべてを彼女に明かすことにしました。
 とりあえず、怪しい『窓』と『階』の絵は屋根裏部屋の他の階がと一緒に一時保管することを申し出て、倫子の許可を得ます。

キーパー:豚のような鳴き声を聞いたとか、不審者は絵の前で消えたとか、ちょっと荒唐無稽に思える報告ですが、何か心当たりがあるのか、倫子はその話を全面的に受け入れます。「やっぱり……そうなのかしら……」
照葉:「まるで豚が鳴き交わしているような声を聴いたという話なのですが、それについて何かピンと来るようなことはありませんか?」
キーパー:倫子はちょっと考え込んで、何かを口にしようかするまいか、迷っているような様子を見せます。
佐川:説得だ!
キーパー:話を引き出すには<言いくるめ><説得>ロールをしてください。
照葉<説得>70%で行きます。(コロコロ)……84! 失敗か。結構口が堅くて……(笑)
田中:何かカードはありませんか?
照葉:もういいや、ここで【千載一遇】(※効果:失敗したロール(技能ロール、抵抗表のロールなど)を振りなおす)! 振り直します。(コロコロ)……90(笑)
一同:あるある(爆笑)
川上神父:私もやってみましょうか? それとも挑戦できるのは一人だけ?
キーパー:そうですなぁ……二人目以降は1/2ロールにします。
川上神父:(コロコロ)……う~ん、1/2じゃなければ成功だったんだけどねぇ。
キーパー:他にロールを振る人はいませんか? カードを使えば挑戦できる人もいるんじゃないですかね? ぶっちゃけると、これ、凄く重要なロールです。
間之原:【乾坤一擲】(※効果:次の技能ロールに+50%のボーナスを得る)があるけど、う~ん……。
照葉:私たちは戦闘局面までカードを温存しておくとか考えちゃだめですよ(笑)
間之原:そうだね。<言いくるめ>を65%にして……(コロコロ)……よし、成功!
一同:おお~!
キーパー:(倫子)「間之原君、実はね……」ということで、ポツリポツリと話し始めます。倫子はここ数日、悪夢に悩まされています。「無数の豚が甲高い声で咆哮するような気も狂わんばかりの音の中を、地獄めいた闇の洞窟へ落ちていくという恐ろしく生々しい悪夢を見続けているの」
照葉:「もしかして、昨晩もその夢を?」
キーパー:(倫子)「え、ええ……」
照葉:「実は、倫子さんの寝室から豚のいななく声が聞こえたので急いで駆け付けたのです。その時には何の異常もありませんでした。でも、声は私も確かに聞いていたんです」
キーパー:(倫子)「そ、そう……なの?」 その場にいる人たちは<心理学>ロールをどうぞ。(川上神父が成功)では神父様には分かりますが、照葉が豚の声を聴いたと話した時に、倫子は何となく、ばつの悪いような表情を見せます。
一同:ふ~む?
田中:「落ちていく洞窟というのは、あの屋根裏にあった絵(※「私はあそこへ行く」と書かれていた絵)でしょうか?」
キーパー:その絵を倫子に見せる? それなら彼女は「ええ! まさにその絵の通りです!!」
間之原:う~む。
キーパー:(倫子)「……このような悪夢を見始めたのは、この館の三代前の持ち主、鎗田庄助さんの残した手記を読んだからだと思うのです」 相続の関係書類などの中に、その「手記」なるものが紛れ込んでいたとのことです。鎗田庄助は、交通事故で亡くなった倫子の旦那さんの叔母の父親に当たります。
照葉:はいはい。
キーパー:鎗田庄助の手記には、この風見館にいる豚の幽霊について記されていました。倫子はその手記をパラ読みしたために、「館には豚の幽霊が出る」と刷り込まれ、それに影響されて悪夢を見始めたのだと考えています。
照葉:「その手記というのは、今はどちらに?」
キーパー:(倫子)「もしお読みになりたいのなら、お貸しできますが……」
間之原義治間之原:「是非」
キーパー:倫子は大量の相続関係書類と一緒に手記を持ってきます。手記の体裁は、いわゆる大学ノートです。日記帳のような用意された大層なものではなく、もしかしたら、手慰みに始めたことに熱中していってしまったのかもしれませんね。『鎗田庄助の手記』を読むのには、ゲーム的に丸一日かかります。誰が読みますか?
田中:私と佐川は昼間は寝て、夜に起きるシフトを取ります。
間之原:そうだね、よろしく。じゃあ、俺が読もうか。他の人はどうします?
川上神父:私は地下室を調べるつもりですが。
間之原:そうか、地下室か! 地下室も気になるんだよなぁ。
照葉:では、私が手記を読みましょうか?
間之原:じゃあ、お願いします。俺も地下室に行きますわ。

キーパー:地下室に向かう二人はD10をロールしてください。
間之原:(コロコロ)……7。
川上神父:(コロコロ)……3。
キーパー:「では地下室へ参ろうか!」と言って階段へ向かった二人ですが、間之原君は二階へ続く階段を上がっていこうとします。
一同:(笑)
川上神父:またかよ! 「朝から寝ぼけているのかね、君は?」
間之原:「え? 何ですか?」
川上神父:「そっちは上だぞ?」
間之原:「あ? あ~」って感じなんでしょ?
川上神父:「昨日から、何かおかしいんじゃないか?」
間之原:「……疲れているのかな」
キーパー:(なんだか、間之原しか違和感を覚えないな~)
照葉:確かにおかしいですな(笑)
キーパー:地下室には雑多な道具類があるだけです。予備室も含めて、すべて物置に使われていると考えてくださって結構です。バケツとか、梯子とか、ロープとか、様々なツール類があります。
川上神父:石炭入れやコールシュートを調べてみますが?
キーパー:どちらにも石炭があるだけで、特に場違いな物は見当たりませんね。
間之原:特に異常はなしか。
キーパー:色々やって、半日ってところですかね。

川上神父:午後は何しようかね?
間之原:俺は許可をもらって、絵を壁から外して屋根裏の物置へとしまいます。
キーパー:(倫子)「大事なものですので、取り扱いには注意してください」
間之原:「重々承知しております」
佐川:扉に鍵は掛けるんですか?
間之原:そうだね。厳重に施錠しましょう。
川上始川上神父:私は図書館にでも行って、風見館の歴史とか、代々の持ち主の情報を探してみます。
キーパー:了解です。<図書館>ロールで資料を探してみましょうか。
川上神父:(コロコロ)……95、失敗!
間之原:なんだか平均して目が悪いね(笑)
川上神父:【名誉挽回】(※効果:失敗した技能ロールを振りなおす)を使います。(コロコロ)……14。
一同:おお~。
キーパー:「郷土の歴史」のような本を見つけて、半日かけてそれを調べます。洋館街は「郷土の歴史」に載るような奇異な場所なので。それには風見館の歴代の所有者が記されています。まず、画家の風見兵衛という人物が風見館を建てました。なお、「風見衛」はこの風見兵衛の雅号です。その後の歴代の持ち主の名前と職業が列挙されています。

風見兵衛…画家
国上修…政治家(元弁護士)
鈴木信次郎…会社社長(建設業)
御子柴久秀…会社社長(金属加工業)
ウィリアム・クレーグ…大学教授(神学者)
キャサリン・オーエン=クレーグ…上記ウィリアム・クレーグの妻
鎗田庄助…土地所有者/地主

川上神父:明治に建てられた割には、所有者の代替わりが激しい気がするね。
間之原:経済的な理由で数年で手放したりした人もいるんでしょ。
キーパー:調査は夕方くらいまでかかりました。

キーパー:『鎗田庄助の手記』は市販のノートに書かれていて、日記というよりはメモ帳に近いものです。日付のない書き込みも結構あります。
照葉:はいはいはい。
キーパー:どうやら風見館を購入した鎗田庄助は、まるで神父様がやったのと同じことをするかのように、来歴を調べたようです。鎗田庄助が調べた歴代の持ち主と、その行方が記されています。
川上神父:……私がやったことは無駄だったのでは?(笑)
田中:まぁまぁ、2ラインで調べることは重要ですから。
キーパー:持ち主の「行方」が書かれている所が図書館資料との違いですね。逆に、図書館と違って持ち主の職業が記されていません。

<歴代の持ち主とその行方>
初代 所有者:風見兵衛
所有期間:1906~1912
所有経緯:建築
譲渡経緯:売却
その他:所有者が行方不明

二代目 所有者:国上修
所有期間:1913~1922
所有経緯:購入
譲渡経緯:売却
その他:使用人二人が行方不明、後に所有者が発狂

三代目 所有者:鈴木信次郎
所有期間:1925~1926
所有経緯:購入
譲渡経緯:売却
その他:所有者が発狂により親族が売却

四代目 所有者:御子柴久秀
所有期間:1930~1955
所有経緯:購入
譲渡経緯:売却
その他:所有者は自然死(病死)

五代目 所有者:ウィリアム・クレーグ
所有期間:1955~1961
所有経緯:購入
譲渡経緯:相続
その他:所有者が行方不明

六代目 所有者:キャサリン・オーエン=クレーグ
所有期間:1961~1971
所有経緯:相続
譲渡経緯:売却
その他:所有者が発狂

キーパー:キャサリン・クレーグ夫人が売った風見館を購入したのが鎗田庄助になります。まぁ、実際に売ったのは発狂したキャサリン夫人の親族か誰かなのでしょうが。その後、手記の筆者である鎗田庄助も行方不明になっています。そして鎗田庄助の娘である成嶋芳江が相続し、芳江氏は病死。子供のなかった芳江氏の財産が甥の成嶋邦洋氏に渡り、邦洋氏の事故死により倫子奥様が相続して現在に至る、です。
梶原照葉照葉:はい。
キーパー:で、いよいよ豚の幽霊に関わる個所ですが、どうやら幽霊は親分幽霊と子分幽霊の二種類いるらしいことを、鎗田庄助は突き止めています。鳴き声が聞こえたり、朧な姿を見かけたりしたと記されています。
一同:ほほぉ。
キーパー:以前の所有者である国上修、キャサリン・クレーグが豚幽霊に悩まされた末に、精神に異常を来したことが「分かった」と書かれています。情報のソースは書かれていません。同様に発狂した鈴木信次郎の原因は、どうやら突き止められなかったようですが、おそらく理由は同じであろうと彼は推測しています。
照葉:ふむふむ。
キーパー:どうやら、子分の豚幽霊は四体いると鎗田庄助は考えていたようです。
照葉:……昨晩現れたブタ人間と数的には一致している。
佐川:一致しましたね……。
キーパー:で、手記の最後に、どうやら幽霊は地下室の出入口を利用して出て来るらしいと記されています。
照葉:(風見館の見取り図を見ながら)地下室の、出入口……?
キーパー:その出入口は、「暖房炉の床にある落とし戸である」と。
川上神父:我々が探した時には見つからなかったのに?
キーパー:暖房炉は探していませんでしたからね。
間之原:確かにね。
田中:うん。探してないですね。
キーパー:えー、鎗田庄助の手記の要点は次の通りです。

鎗田庄助の手記(抜粋)
 この風見館に幽霊が出るのは間違いない。しかもそれは豚の幽霊だ。どこからともなく聞こえてくる鳴き声と、深夜におぼろに見かけた姿は、まるで立って歩く豚のようだった。

 豚幽霊には親分幽霊と子分幽霊の二種類があるようだ。

 どうやら国上修とクレーグ夫人は幽霊に取りつかれた挙句に精神に異常を来してしまったらしい。鈴木信次郎については確証を得られなかったが、きっと同じ理由だろう。

 豚幽霊は、どうやら四人いるらしい。

 地下に見つけた落とし戸が豚幽霊の隠れ家に通じるのは間違いない。準備が整い次第、隠れ家へ幽霊退治に出かけよう。

 準備は整った。これで風見館の怪談も終わりだ。(手記はここで終わっている)

照葉:で、鎗田庄助は行方不明になっているんですよね?
キーパー:そうです。

照葉:読み終えた頃には……夕方でしょうか。
川上神父:私は図書館から帰って来て――
間之原:俺は絵の片付けが終わって、一息ついたところです。
佐川:我々は――
田中:目を覚まして夜間警備に備える時間だな。
照葉:ではダイニング・ルームで情報の整理をしましょうか。倫子さんは手記には一通り目を通しているんでしたよね?
キーパー:そうですね。ゲーム的に言うと「斜め読み」ですが。では倫子を含めて、皆さんダイニング・ルームで夕会を開くということで。
照葉:「暖房炉の床に落とし戸があるということでしたが……」
間之原:「さすがに燃えカスをかき分けて床を調べるまではしませんでした」
照葉:「ちょっと、調べてみますか」
田中:クライアントはどうしますか? 奥様が見に行くというのなら、我々も同行しますし、奥様が残るというのなら、警備員の内のどちらか一人を奥様のそばに残しますが。
キーパー:(倫子)「同行します」 彼女としては、原因を知りたいから皆さんを集めているわけですからね。
田中:「それなら全員で行きましょう」
川上神父:夜になるこれから調査に行くのもどうかと思いますが。
照葉:でも、落とし戸の中に入ったら昼も夜もないと思いますので……。
間之原:とにかく、落とし戸があるかどうかの確認だけはしておきたいじゃん。戸を開けて入るかどうかは、また検討しましょう。
キーパー:地下室へは全員で行く、と。作業者は誰ですか?
田中:やりましょう。
間之原:二人で作業するスペースはある? それなら俺もやりましょう。
佐川:背後で警棒を構えて警戒します。
キーパー:作業自体はそれほど困難ではありません。燃えカスをかき出す道具類も揃っていますので。暖房炉の床に落とし戸は見つかりました。
間之原:材質は木なの? でも、それだと燃えちゃうか(笑)
キーパー:石です(笑)。おそらくは正方形だったのでしょうが、物凄い圧力を受けたかのように歪んでしまって、もうほとんど菱形になっています。
一同:は?
間之原:床に落とし戸があるんだよね? 暖房炉自体は正方形なんだよね? それだと、落とし戸はちゃんと閉まってなくない?
キーパー:落とし戸はピッタリと閉まっています。つまり、落とし戸の嵌まっていた穴ごと菱形になってしまっているということです。
一同:はぁ!?
キーパー:初日に風見館に違和感を覚えた三人(※照葉とWヒロシ)は、「この落とし戸を中心に館が歪んでいたんだ!」ということに気づきます。目で見ても気づきませんが、ここを中心に、外へ向かうほど歪みは大きくなっているのでしょう。間之原君は何度か階段の上下を勘違いしたりしたことがありましたよね?
間之原:! そうか、これが原因か!
田中:周りの床石にヒビが入ったりはしていない?
キーパー:していないね。
間之原:空間ごとぐんにゃりと歪んでしまった感じ?
キーパー:そうです。「なんじゃこりゃ!?」って感じです。
田中:「開けてみますか?」 開けるための取っ手は付いているんですよね?
キーパー:もちろん付いています。
照葉:「……開けてみましょう」
キーパー:ゴリゴリと周りの石に干渉しながらも、落とし戸は開きます。ぽっかりと口を開けた菱形の穴の下は、真っ暗です。
田中:業務用マグライトで中を照らしてみます。
キーパー:光の届く範囲には何も見えません。文字通り、何も。
田中:梯子とかもない?
キーパー:そもそも、穴の側壁がないです。
一同:……はい?
キーパー:つまり、見たところ、この落とし戸の下には穴があるのではなく、真っ暗で広大な空間があるということです。逆に、真っ暗で広大な空間の上の薄皮一枚の上に、この館は建っているとも言えます。
川上神父:もし降りるとしたら、ロープか何かを使ってぶら下がって降りていくしかないということですな。
佐川:石炭でも投げ入れて、深さを確認してみた方が良いんじゃないですか?
キーパー:ではポイッと石炭の欠片を穴に投げ入れてみますが、何時まで経っても穴の底に落ちたような音は返って来ません。
佐川::「相当深いのか、あるいはどこか別次元にでも通じているのか……?」
キーパー:そうだね、普通じゃないね、明らかに。それに気づいてしまった皆さんは……。
一同SANチェック!!(※佐川が失敗して、正気度を1ポイント失いました)

 その後、探索者たちは話し合い、田中の腰にロープを巻き付けて、穴の中に降ろしてみることにしました。しかし、目に見えている以上の事実は判明しません。幸い、田中は無事に引き上げられました。

川上神父:今夜は絵をしまった屋根裏の物置と、この落とし戸を重点的に見張るしか手はないんじゃないかね?
田中:暖房炉の扉は外開きの金属製ですよね? じゃあ閂でも掛けておきますか?
間之原:まぁ、せめてもの物理的抵抗としてね。鎗田庄助の手記にあったルートが本当にここかどうかも分からなくなったしね。
照葉:なにせ、帰ってきていませんからね。
田中:ここを封じておけば、ブタ人間の侵入ルートの絞り込みには役に立つはずですよ。
間之原:侵入ルートは絵なんじゃないの?
田中:それはまだ確定していませんね。退去ルートが絵かもしれませんが。
間之原:なるほど。侵入ルートはまだ確定はされていないのか。それにこの穴が今回の事件とは無関係とは考えられないからな。
照葉:関係はあるでしょうね。
田中:ここは何かおかしいですが、尋常な手段では解析不能。暖房炉の前には物置に置かれている家具類でバリケードでも築いておきましょう。


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