キャス・パリーグ


4:調査
捜索者たち、調査を行なうこと。

 翌日、探索者たちは明るい内に事件現場を再訪してみることにします。なお、泰野教授は何となく展覧会と殺人事件の間につながりがあるのではないかと(メタ的に)推理して、博物館で撤収作業をしている丸川教授を訪ねることにします。


キーパー:まず、千疋町にやって来たチームから。
宇乃:昨日、犯人を追いかけて行った方向に何があるのか、どこへ向かったのかを調べてみます。
新城:メタ的に言うと、博物館の方向へ逃げたんじゃないかって話ですよね。
キーパー:博物館の方向へ逃げていますね。今、ここに泰野先生はいませんが、彼女が見た女性というのは博物館とは反対方向へ立ち去ったと言えますね。
宇乃:犯人の服装とかは分からなかったの?
キーパー:相手の背中を追いかけたという段階にはなっていないので、服装とかも分かりません。二足歩行でかなり大柄なシルエットというのが現状で分かり得る限界ですね。
新城:ルール的に言うとチェイスにすらならない段階だったってことか。
山田:「あっちへ向かった!」と追いかけて行ったけど、姿形を捕えることはできなかったってわけですな。

スカラベ

泰野加代子泰野教授:私は博物館に丸川先生を訪ねていきます。
キーパー:丸川は博物館にいます。発泡スチロール製の神殿のオブジェをバラして、地下倉庫に移す作業の指示をしているようです。(丸川)「やあ。先日はありがとう」普段と変わらない様子で出迎えます。
泰野教授:作業を見学しながら、「今回、コーンウォールの博物館の収蔵品をメインに展覧会を開かれたと思うのですが、具体的にどのような点に目を引かれたのですか?」
キーパー:(丸川)「有名なエジプトの遺物なら、既に東京の博物館などで展示実績があるのだよ。同じことをしても意味はないとは思わないかね?」
泰野教授:「まあ、確かに」
キーパー:(丸川)「その通り、私もそう考えた。だったら、エジプトとはほとんど関係のないコーンウォールでどのようにエジプト研究が進められているのか? どのように興味を持たれているのか? それを日本に紹介した前例について、泰野先生は聞いたことはあるかね?」
泰野教授:「まあ、ないですね」
キーパー:(丸川)「そう。だから私が初めてそれをやったのだ。それに意義はなかったと、泰野先生はそう言うのかな?」
泰野教授:「……そういうことでしたら、意義がなかったとは言えませんね。では、特に何かに目を引かれたというわけではないのですね?」
キーパー:(丸川)「エジプトがどのようにコーンウォールに受け入れられたのかを伝えたかったのだ。たとえばツタンカーメンのマスクについてであれば、ネットを調べればかなり詳細な情報が得られる。将来的に、再び日本国内で展示される機会もあるだろう。しかし、おそらくコーンウォールの私設博物館の収蔵品を日本国内で見る機会はもうないだろう」
泰野教授:「はあ、分かります」
キーパー:(丸川)「確かに会期は短縮されてしまったが、私は自分がやろうとしたことは存分にできたと思っている」
泰野教授:「なるほど。今回の展覧会はエジプトというより“コーンウォールからの視点”ということが重要だったんですね」
キーパー:(丸川)「エジプトとコーンウォールのつながりを紹介できたのは、非常に有意義だった」
泰野教授:「つながり……なるほど。そのつながりというのを、私は上手く読み取れなかったのですが、現地でどういうものを見て、どのように感じられたのですか?」
キーパー:(丸川)「仮定の話として、もし、古代にエジプトから船を出して、コーンウォールにたどり着いた者たちがいたとしたらどうする?」
泰野教授:「あり得ない話ではないですが……相当驚くべきことだと思います」
キーパー:(丸川)「ふむ。この世の中、相当驚くべきことが起こり得るものだ。それを調べて解明するのが、我々考古学者の使命の一つではある」
泰野教授:「……そうですね。先生がコーンウォールについて興味を持たれたのはいつからですか?」
キーパー:(丸川)「ずっと昔から、私はコーンウォールに興味を持っていたよ。本当に、ずーっと昔からね」そう言うと、丸川は地下倉庫作業へと戻って行きます。

スカラベ

泰野教授:う~ん、何か腑に落ちないなぁ。どうして突然コーンウォールなんだろう?
キーパー:最初に展覧会の準備協力をされたときには、コーンウォールのコの字も出てきませんでしたからね。先生と新城は「展示品は本場エジプトから借りて来るんだよね?」という認識で話していました。
泰野教授:そうだよね。何かがあって突然方向転換をした。それが何か? なぜか? 「ずっと昔から興味を持っていた」というのは嘘だと思うんだよね。
宇乃:何かがあったのだとしたら、あの船のおもちゃを持って帰って来たからだよね、きっと。
佐山:船が壊れたときかもしれませんね。
新城:壊れたっていうのはあくまで丸川先生が言っていることだけどね。
宇乃:このテーマで展覧会が成功しないのは丸川教授も分かっていたはずだから、コーンウォールのイベントを開催しなくてはダメだった何かがあるんですよ。おそらく、コーンウォールの私設博物館にある何かを日本に持ってこなくてはならなかったんじゃないですか?
泰野教授:うん。
宇乃:それがあの破損しちゃったパネルなんじゃない?
新城:パネルと称して何かを持ち込みたかった?
宇乃:バステトとかでエジプトと猫の親和性はありますから、化け猫の話とつなげることはできるんじゃない? そうなると、この後できることって丸川先生の研究室に入ってみるとか、夜中に千疋町に行ってみるとかですよ。
泰野教授:方向性としてはアリだよね。
宇乃:化け猫と対峙するのは最終手段だと思うので、それまでに対抗策みたいなものを集めておきたいよね。研究室に入って丸川先生のメール履歴を調べたり、クトゥルフ的に、書置きみたいなものがあったりしないかな~と思うんですよ。
新城:誰か〈鍵開け〉持っているんでしたっけ?
山田:町の鍵屋さんレベルの61%持っていますよ。
泰野教授:よし。それじゃあ、丸川先生の研究室に、先生が博物館にいる間に行ってみましょう。〈コンピューター〉が得意な佐山くんも連れて行きます。