フロム・ウラヌス



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【連続後ろ脚強奪事件】

リンカーンキーパー:アビーとプロンはアーカムの南西、アーカムホラーで言うところの赤の区域、アップタウンを縄張りにしている十二匹の猫からなるグループの一員です。グループのボスはリンカーンという名の大柄な虎猫です。「猫の猫による猫のための政治」をアーカムの役所に掛け合うつもりでいますが、いつも役人に「シッ! シッ!」と追い払われています。
アビー:(笑)
キーパー:リンカーンには用心棒として、体の大きな雌の黒猫のチッピと、昔、野犬と戦って背中に大きな傷を負った青傷と呼ばれる茶色の猫がいます。彼らはSIZが1.9(端数切捨)くらいあります。
プロン:アップタウンって何があったっけ?
キーパー:病院とか秘術店ですな(※アーカムホラー)
アビー:買い物しておかないと(笑)
キーパー:さて、今宵は猫の集会が行われております。病院裏の空き地に集まってお互いの生存確認と情報交換が行われます。アビーとプロンにはパセリという名前の白黒斑の子猫が弟分として付きまとっています。<裏社会>が高いのはどちらですか?
アビー:16%ある私の方ですな。
キーパー:ではパセリが餓死しそうになっていた時に、<裏社会>の知識で「ここに行けばエサにありつけるぜ」と教えてあげたことがあるので、彼はアビーに恩を感じていることにします。(パセリ)「アビーの兄貴! お疲れ様です!」
アビー:「おう。お疲れさん」
キーパー:パセリはプロンを見て「……チッ、この雑種野郎が」
プロン:お前も雑種だろ!(笑) ところで情報交換っていうのはどんなことが行われるの?
キーパー:「最近どこそこの店の裏では良いものが食べられる」とか、「あそこに住んでいた猫好きの爺さんがこの間、死んでしまった」とか基本は日常的なものです。
プロン:では俺も「近々固定資産税が上がるらしいぜ」と飼い主のとっている新聞から仕入れた情報を提供します(※プロンは[学者先生]のトリックで英語が読めます)
キーパー:すると他の猫たちが色めき立ちます。「ナ、ナンダッテー!」
アビー:(笑)
キーパー:さて、そのような平和な情報交換が一段落したところで、ちょっと不穏な情報が伝えられます。最近、後ろ脚が切断されて殺されるという殺猫事件が続発しているのだそうです。このグループの中からも被害猫が二匹出ていて、コロナという名前の雌の白猫と、タビーという雄の斑猫が犠牲になっています。
アビー:ふーむ。
プロン:二匹は飼い猫? それとも野良猫?
キーパー:コロナは飼い猫です。タビーは野良猫でした。被害はこのグループだけではなく、他のグループからも出ているという話です。標的は無差別のようです。特定のグループ、野良猫か飼い猫か、雌雄、体色に統一性はなく、てんでバラバラです。
プロン:無差別か。猫たちが殺された現場に規則性はないの? 街中とか、郊外とか。
キーパー:現場は街中も郊外もありますが、今のところはアーカムの南西部に偏っています。
アビー:「人間のしわざなのかねぇ? 切り取られているってことは、他の動物のしわざではないよね」
プロン:「確かに。食いちぎられているってことなら狼とかも考えられたけど……」 切断された脚って?
キーパー:見つかっていません。持ち去られたようです。死因は脚の切断によるものとは限りません。
アビー:うーむ。
プロン:なるほど。殺されてから切断された可能性もあるってことか。「鑑識は何やっているんだ!」
キーパー:鑑識班は人間の探索者が探索中の別の凶悪シナリオにかかりっきりになっているんでしょう。
アビー:なるほど(笑)
パセリキーパー:ではアビーに向かってパセリが「兄貴、兄貴! 西にある廃墟で人間の子供ほどもある見慣れない怪物を、ボク、見かけましたよ!」と言います。アーカムの西部に廃墟マニア垂涎のクラークズ・コーナーズという廃墟群があります。
アビー:「何!?」
キーパー:(パセリ)「あれが犯人かもしれませんよ!」
プロン:「人間くらいの大きさの、見慣れない怪物? 人間とはどう違っていたんだ?」
キーパー:(パセリ)「四つん這いで歩いていたよ! いや……六つん這い、かな?」
アビー:「六つん這い!?」
プロン:「なるほど。人間とは違うな」(笑) 
キーパー:クラークズ・コーナーズ廃墟群はグループの縄張りからは遠く離れていますが、パセリがたまたま大冒険に行って来て、怪物を見て逃げかえってきたらしいです。(パセリ)「危ういところでした……(汗を拭う仕草)」
アビー:(笑)
キーパー:それを聞いたリンカーンが「おう、それなら誰かにそこを調べてきてもらわなければならねぇな」と言って一同の顔を見回します。すると、アビーのアビシニアンとしての勇敢さが沸々と湧き上がって来ます。
アビー:「この勇者アビーにお任せあれ!!」
プロン:「オイオイオイ!」(笑)
キーパー:(パセリ)「一の子分、パセリにもお任せあれ!」 で、「二の子分は?」という目でパセリはプロンを見ます(笑)
プロン:誰が二の子分だよ! 「……しょうがねえなあ」(手を上げる)
キーパー:すると他の猫たちが「さすが学者先生だ!」とざわざわします。
プロン:……眼鏡をキラッと光らせます。
アビー:(笑)
キーパー:(リンカーン)「おう、じゃあアビーとパセリとプロン、頼んだぜ」
アビー:廃墟までは猫の足でどのくらいなんでしょうかね?
キーパー:行って帰って一日くらいってことにしましょうか。
プロン:「じゃあ、とりあえずその廃墟へ行ってみようか。楽しそうだし」という猫らしい発想で。「好奇心は猫を殺すと言いますからな」
キーパー:(グループの猫たち)「さすが学者先生だ! 難しい言葉を知っている!」
プロン:「キラッ!」(眼鏡をなおす仕草)
アビー:(笑)



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